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【指定廃棄物火災】「報道で初めて知った」怒る近隣住民。郡山市は注意喚起せず。住民守らぬ縦割り行政

福島県郡山市産廃処理場「郡山リサイクル協同組合」(郡山市日和田町高倉)で16日未明、指定廃棄物の入ったフレコンバッグが燃える火災が起きた。しかし、内部被曝への危機感の低い郡山市役所は、周辺住民への注意喚起をせず、環境省に丸投げ。「報道で初めて指定廃棄物が燃えたと知った」と住民は怒る。健康に影響が無いか否かは結果論。まずは防護をするという予防原則などどこ吹く風。縦割り行政の弊害もあって、住民の放射線防護は全くなされていない実態が浮き彫りになった。


【「吸い込むのは俺たちなんだ」】
 「まさか指定廃棄物が燃えたとは知らなかった。消防車が何台も停まっていたから火災が起きているのは分かっていたけれど…」
 自宅が火災現場に隣接する男性の表情は、怒りに満ちていた。地元テレビ局のニュースを見て、初めて指定廃棄物が燃えたと知った。すぐに郡山市役所に電話で問い合わせた。住民とすれば当然、まず地元自治体が対応しているものと考える。しかし、電話に出た市職員の対応は淡泊だったという。
 「『指定廃棄物は環境省の管轄だ』とばかり言って逃げるんですよ。どこが担当かなんて俺たちには関係ないでしょ。何のために市に税金を納めているんですか。行政の怠慢です」
 男性の自宅には、日頃から砂ぼこりが舞って来る。これまでにも何度、苦情を申し入れたか分からない。車やサッシは、洗い流してもすぐに汚れてしまう。国道4号から産廃処理施設につながる道路は、業者側が1日に何回も散水をしているが、すぐに乾いてしまう。風が吹けば舞い上がる。それに加えて今回の火災。詳細な情報が無ければ、マスクをするなどの防護が出来ない。「なぜ注意喚起をしないのか。健康に影響が無いというのはあくまで結果論でしょ。実際に吸い込むのは俺たちなんですよ」。男性の怒りはもっともだった。
 ようやく業者幹部が火災の説明に来たが「環境省が空間線量を何カ所も測っているが、全く上昇していないから心配は要らない」と強調したという。しかし、具体的な数値を回覧板で周知するような事は無い。「口でいくら言われてもね…。そもそも、その数字が本当かどうかも、俺たちには分からない」。
 男性が至極当然の怒りを口にする一方で、他の住民の中には業者へ好意的な言葉を口にする人もいた。「そりゃそうでしょう。そういう人たちは業者に土地を貸して収入を得ていたり、工場で働いていたりする人たちですから。悪い事は言えないでしょう」。産廃処理も、原発と構図は同じなのだ。
 「どうしてこんな酷い話が全国ニュースにならないんですかね?きちんと書いてください」
 男性はそう言って頭を下げた。
 処理場に隣接する土地で、手元の線量計は0・3μSv/hを超えた。



(上)焼却炉で発生した焼却灰のうち、8000Bq/kgを超えたものが「指定廃棄物」として保管されている。
(下)火災が起きたのは倉庫の一番奥。「たてこんでいる」として撮影は拒否された。


【「安心して欲しい」と産廃業者】
 福島市にある「環境省福島環境再生事務所放射能汚染廃棄物対策第二課」が福島県政記者クラブに流した「お知らせ」によると、郡山地方広域消防組合消防本部に火災の一報が入ったのが16日午前3時43分。7時30分に鎮火を確認したという。「人的被害や周囲の建物等への被害はなし」、「出火点近くのモニタリングポスト(大口原緑地)の値は、火災の前後で大きな変化はありませんでした」として、16日午前8時に0・192μSv/hだったと記載。「周辺環境や健康に影響はない」と結論付けている。
 火災現場で取材に応じた「郡山リサイクル協同組合」の男性専務は「これまでも、これからも問題はありません。たてこんでいるのでフレコンバッグの保管場所まで案内する事は出来ませんが、何も隠すことはありません。安心して欲しい」と繰り返した。
 同組合は木くずや金属くず、がれきなどの産業廃棄物や動物の死体を受け入れ焼却する中間処理施設。焼却炉で生じた焼却灰を測定し、8000Bq/kgを超えるものは「指定廃棄物」となるため、環境省に引き渡すまで倉庫で分けて保管。その数は800個ほどで、今回は保管倉庫に隣接する物置から出た火で、一部のフレコンバッグが燃えたという。「100~200個が燃えた」という報道もあったが、専務は「誰がそんなことを言ったのか。数は分からない」と首を傾げた。消防本部にも取材をしたが「現在、調査中。特殊な事案なので概要がまとまるまでに時間がかかるだろう」との回答だった。
 同組合で受け入れている産廃は郡山周辺のものが8割で中通りが中心。浜通りのものは受け入れていないという。「業者に測らせて0・3μSv/h以下の産廃しか受け入れていません。抜き打ちで測定することもあります。その場合は契約を打ち切ります。きちんとやっているんです」と専務。「今回の火災で穴が開き消火活動で焼却灰が濡れてしまったので、完全防水のフレコンバッグに入れ替えます。水は吸い取ってタンクに入れてあります」。
 専務は、環境省が敷地内の複数個所で定点測定した空間線量の書かれた紙を見せながら「中には逆に下がっている地点もあるほどですよ」と強調した。しかし「見せるだけ」と写真撮影は拒否。環境省福島環境再生事務所は、電話取材に対し「確かに数値は公表していない。いただいたご意見は参考にしたい」と今後の公表に含みを持たせた。
 なお、「指定廃棄物」のうち10万Bq/kg以下のものは富岡町の管理型処分場「フクシマエコテッククリーンセンター」に、10万Bq/kg超のものは中間貯蔵施設に埋め立てられることになっている。



(上)火災があった「郡山リサイクル協同組合」。専務は「皆さんが心配するような状況ではない」と強調した。
(下)敷地に隣接する土地で、手元の線量計は0・3μSv/hを超えた=郡山市日和田町高倉


【低すぎる内部被曝への危機感】
 住民が守られない最大の原因は縦割り行政による連携不足。そして何より、内部被曝への危機感の無さだ。
 郡山市廃棄物対策課は、取材に対し「指定廃棄物なので環境省の管轄になる。マスクなどの注意喚起? そういうこともあるかもしれないが、中途半端に市が住民に伝えるわけにもいかない」と話す。原子力災害総合対策課に至っては「保管場所も数も把握していない。保管責任者は事業者であり、監督するのは環境省」と言う始末。「こういう場合の対応方法も事前に決まっていなかった。市としては、どうしても受け身にならざるを得ない」。まるで他人事だ。
 「今回の案件を教訓として、環境省や事業者と連携をとっていきたい。住民への注意喚起についても検討する」と原子力災害総合対策課。議会答弁のような回答だが、本当に検討するのか。環境省福島環境再生事務所も「注意喚起をしないと、周辺住民が防護策をとれないというのは理解できる」と語るが、伊達市内の山林火災でもそうだったように、火災による放射性物質の拡散、住民が吸い込む事による内部被曝に対する危機感があまりにも低いと言えよう。
 郡山地方広域消防組合消防本部によると消防士は通常、黒煙を吸い込まぬようマスクで顔を覆い、酸素ボンベを背負って消火活動にあたる。今回もそのような装備が使われたという。しかし周辺住民には注意喚起もなく、どれだけ吸い込んでしまったのか分からない。今後、体調を崩したとしても、それが内部被曝による症状だという証明も出来ない。だからこそ、大げさであっても予防原則で対応するべきなのだ。初めから「大丈夫」ありきでは住民は守れない。
 放射性物質は少しもコントロールされてなどいない。これが汚染地の実態だ。安倍晋三首相は被曝のリスクも避難者も無きものにしたいと願っているようだが、首相こそ理解していただきたい。
 原発事故は現在進行形。


(了)
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プロフィール

鈴木博喜

Author:鈴木博喜
大手メディアが無視する「汚染」、「被曝」、「避難」を追い続けています。

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