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【自主避難者から住まいを奪うな】聴く耳持たぬ福島県職員。「内堀知事の政策決定に誤りは無い」と来月末で無償提供打ち切りへ~第6回福島県庁交渉

原発事故による〝自主避難者〟への住宅無償提供が来月末で打ち切られることに反対して行われている避難者団体と福島県庁職員との6回目の交渉が2日午後、福島県庁近くの中町会館会議室で開かれた。避難者側は内堀雅雄知事との直接面会や打ち切りの撤回・一時凍結を強く求めたが、県側はこの日も拒否。4月以降は無償提供しない方針を崩さなかった。打ち切り強行まで60日を切った。当事者の意向は無視されたまま、避難の合理性も否定されたまま、被曝リスクを避けるために動いた人々が切り捨てられようとしている。


【知事に訴えても「報告ない」】
 「内堀知事の政策決定に誤りがあるという事はありません」
 「福島県は、国と再協議をやるつもりもありません」
 福島県生活拠点課の新妻勝幸主幹が半ば、逆ギレ気味に言い放つと、避難者たちからブーイングが起きた。〝自主避難者〟の窮状をどれだけ訴えても、住宅の無償提供打ち切り方針を曲げない。丸6年での打ち切り判断に間違いは無いと断言する。もちろん、絶対に内堀雅雄知事を交渉の場に出さない。新妻主幹が顔を紅潮させながら必死に守ろうとしているものは何なのか。
 避難者側は、これまでと同様に「担当課の説明が論理的でなく納得出来ないから、内堀知事に出て来てもらいたいんだ」と何度も求めたが、新妻主幹の回答も従来通り。「何度も繰り返しになって恐縮ですが、こういった県政に対する特定の要望に関しては組織として対応する事になっている。何も皆さんにだけ特別な対応をしているわけでは無く、全て担当課が対応して知事に報告するようになっている。皆さんのご要望については内堀知事にきちんと報告させていただいている。納得出来ないというのは何度も伺っているが、御理解いただきたい」。
 新妻主幹はさらに、こうも言って内堀知事を擁護した。
 「私は直接の担当では無いので出席しなかったが、昨年12月に東京国際フォーラムで開かれた『ふくしま避難者交流会』で内堀知事が避難者の方々とお話をしたと聞いている。避難者の話を聴かないわけでは無い」
 これには、実際に交流会に出席した避難者たちが怒った。村田弘さん(南相馬市から横浜市)は「私は内堀知事に直接、尋ねましたよ、どうして交渉の場に出て来てくれないのかって。知事は何と答えたと思いますか。『私は忙しいんです。24時間しか無いんですよ』という答えでした」。熊本美彌子さん(田村市から東京都)も「具体的な例を挙げて私も内堀知事に直接、お話ししました。『それでは職員から連絡させます』という事だったが全然、連絡がありません。これで『寄り添っている』と言えるのか」と怒った。新妻主幹は「私は聞いていない。報告のペーパーには無かった」と答えた。これが、県庁職員が「知事は避難者の話に耳を傾けている」と胸を張る交流会の実態だ。




住宅の無償提供打ち切り撤回を求める文書を内堀知事宛てに提出したルポライターの鎌田慧さん。記者会見では「困っている人を足蹴にする非人道的な政策だ」と批判した=福島県福島市

【被曝リスクの議論は避ける】
 福島市や郡山市、いわき市など政府の避難指示が出されていない地域から福島県外に避難した人々は、〝区域外避難者〟または〝自主避難者〟と呼ばれ、わずかな賠償金と家賃免除しか得られずに、ほぼ自力で避難生活を継続してきた。しかも住宅の無償提供を受けられたのは、原発事故翌年の2012年12月28日までに申し込んだ避難者だけ。転居は原則として認められず、やむを得ず住まいを替えて無償提供を手放した避難者もいる。仕事の関係で夫を福島に残しての「母子避難」は二重家計に苦しみ、シングルマザーは子育てと労働で疲弊する中、住まいの無償提供はまさに〝命綱〟だった。
 国が早い段階で公的に被曝リスクと避難の権利を認めず、加害企業である東電の一方的な線引きを許してしまったために、世間の「勝手に怖がって逃げている」、「被曝リスクなど無いのに支援求めるな」、「自主避難者も多額の賠償金をもらっている」などの誤解や偏見、無用の対立を生んだ。〝避難したくても福島に残らざるを得なかった〟人々からは、「私たちも被曝リスクにさらされているのに家賃賠償も無い」などと時に厳しい言葉が避難者に浴びせられる。
 福島県庁は、それらを逆手に取って「無償提供は6年が限界」、「避難せず普通に暮らしている住民は多い」、「除染で生活環境は改善された」などと打ち切りを一方的に説明。4月から、2年間の家賃補助(初年度3万円、2年目2万円。ともに月額)を柱とした「新しい支援策」に移行する。事前の意向調査や打診は無し。この日も、新妻主幹は「もともと避難指示が出ていない地域だ」、「避難していない人がたくさんいる。果たして(災害救助法の)応急救護が必要な状態か」などと「避難の合理性」を否定する発言に終始した。挙げ句には、避難者から「被曝の危険性は3月末で無くなるんですか」と問われると、「そこの議論をされると困る」と逃げた。なお昨年12月28日現在、家賃補助金の交付が決定した避難者はわずか25世帯にとどまっている。
 福島市から山形県米沢市に避難中の武田徹さん(76)は「原子力災害を従来の法律に当てはめるのがおかしい。新たな法整備を国に申し入れるべきだ」、「アメリカでは、職を賭けてトランプ大統領に『おかしい』と言っている。皆さんも職を賭して、内堀知事に政策判断の誤りを上申するべきだ」と訴えたが、県庁職員は聞き流すだけだった。




(上)顔を紅潮させながら「内堀知事の政策決定に誤りは無い」「国との再協議をやるつもりはありません」と繰り返した福島県生活拠点課の新妻勝幸主幹
(下)福島県南相馬市から神奈川県横浜市に避難している村田弘さん。打ち切り強行を目前にしてもなお、かみ合わない交渉に思わず声を荒げる場面も

【「非人道的な政策」】
 交渉には、ルポライターで「さようなら原発1000万人アクション」の9人の呼びかけ人の1人である鎌田慧さん(78)も参加。「被曝を避ける避難生活は決して自己責任では無い」などとする要請書を内堀知事宛てに提出し、住宅の無償提供継続を求めた。避難者たちの交渉を見届けた後、福島県庁内の記者クラブで記者会見した鎌田さんは「困っている人を足蹴にする非人道的な政策。最後の1人まできちんと救う、行政にはそういう姿勢になって欲しい」と語った。
 大江健三郎さんや瀬戸内寂聴さんらと脱原発運動をけん引してきた鎌田さん。「振り返って見たら、膨大な被害者がいた。被曝者を置き去りにしてきたという心残りもある」とも。被害者救済にあまり力を注いでこなかったという〝反省〟が、この日の要請に結びついたと語る。
 打ち切り強行まで、あと1カ月余。生活支援課の新妻主幹は「3回目の戸別訪問中だが、無償提供に御納得いただけない方もいる。あと2カ月で説得出来るかというと難しいかと思う」と語り、避難者たちは「いったん凍結を」と何度も求めたが、平行線のまま終わった。いわき市議の佐藤和良さんは「被害者の合意形成を経ずに一方的に無償提供打ち切りを決めてしまった事で、これだけの禍根を残している。無理筋だから犠牲を伴う。1人も路頭に迷わせないという私たちの願いが反故にされようとしている。打ち切り決定の責任者(内堀知事)が説明責任を果たすべきだ」と、改めて内堀知事との直接交渉を求めた。
 2016年7月から毎月のように行われてきた福島県庁交渉だが、県側の姿勢は変わらない。この日は都内の国家公務員宿舎に入居している避難者も参加して入居継続を求めたが、新妻主幹は「国家公務員宿舎は恒久的住宅では無い。あくまでセーフティネットとして例外的に有償での入居を財務省に認めていただいたので、県の家賃補助の対象にはならないし今後の予定もございません」と語った。しかも、有償であっても入居を継続できるのは2年間だけ。「財務省から『いつまでだ』と問われたので『最大限2年間でお願いしたい』と答えた」と福島県側からの申し出である事を明かし、避難者から「なぜ県が期限を切るのか」と怒りを買った。しかし、ここでも新妻主幹は「では、皆さんは財務省と無償提供で交渉なさった事はあるんですか」と〝逆ギレ〟してみせた。
 何を言っても聴く耳を持たないのは、住宅問題も避難指示解除も同じ。3年後の東京五輪を見据え、原発事故被害者は切り捨てられていく。



(了)
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プロフィール

鈴木博喜

Author:鈴木博喜
(メールは hirokix39@gmail.com まで)

大手メディアが無視する「汚染」、「被曝」、「避難」を追い続けています。

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