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【自主避難者から住まいを奪うな】「チョコでなく『住宅打ち切り反対』の願い受け取って」。寒風の中「1人も路頭に迷わすな」と福島県庁前などで抗議行動

バレンタインデーの14日、原発事故による被曝リスクを避けようと福島から県外に避難した〝自主避難者〟たちが福島県庁に集まり、来月末で打ち切られる住宅の無償提供継続を訴えた。住まいは唯一の公的支援。避難者たちは意向を尋ねられることも意見を述べる機会を与えられる事も無く一方的に打ち切りを決められた。いまだ避難者に会おうともしない福島県の内堀雅雄知事にチョコレートならぬ切なる願いを届けようと、寒さに震えながらのスタンディング。打ち切り強行まで40日余。避難者切り捨ては着々と迫る。


【「置き去りにされたんだ」】
 氷点下0.6℃。雪こそ降っていなかったが、冷え切った風で顔や手が痛い。福島県庁前の噴水の水は凍っていた。しかし、住宅の無償提供打ち切りまで40日余。避難者や支援者たちは、どうしても内堀雅雄知事に伝えたかった。「追い出さないで」、「避難者を路頭に迷わせないで」。切羽詰まった訴えだった。
 「そもそも、私たちは〝自主避難者〟じゃない。置き去りにされたんだ。でも、避難先では『勝手に怖がって逃げた』と言われてしまう。本当に悔しい」
 福島市から山形県米沢市に避難中の70代男性は、怒りを込めて強い口調で語った。現在、暮らしている雇用促進住宅は3月末での退去を迫られている。この日、抗議行動に参加したくても出来なかった娘たちのためもあり「住宅の無償提供延長を!」と書かれたプラカードを手に県庁前に立った。
 「孫が4人います。残念ながら福島市はまだ、安心して戻れる状態ではありません」。妻と暮らしていた自宅は売却した。そのお金で、娘たち家族が住んでいた借家の家賃を払い続けている。「切るのは簡単なんです。でもね、孫たちにとっては大切な故郷。いつの日か戻ることが出来るようになる時のためにね」。男性は手袋を外して涙を拭った。
 福島市は原発事故直後、公式発表でも20μSv/hを上回った。水道水からは放射性ヨウ素が検出された。しかし国の避難指示は出されず「基準値以下」、「冷静な行動を」などと連日、広報された。住民の大量流出を避けたい地元自治体と、東北新幹線など主要交通網の寸断を嫌った国や企業の思惑が一致した措置だとの見方が強い。
 その中で必死に被曝リスクから離れた人々には、数十万円の賠償金と6万円を上限とした家賃補助、日赤の家電セットだけがもたらされた。それすら得られず、全て自力で避難しているために「避難者」として集計されていない人も少なくない。やっと入居した公営住宅は古く、夏は暑くて冬は寒い。先の男性は出産直後の娘のためにシャワーの設置を願い出たが、認められなかった。そして間もなく家賃も自己負担となる。「避難の権利」など、当初から一貫して尊重されて来なかったのだ。








バレンタインデーにあわせ、避難者らが福島県庁や福島駅前で抗議のスタンディングを行った。気温が氷点下にまで下がった午前8時から立ち、出勤してくる県庁職員らに窮状と撤回の理不尽さを訴えた

【「追い出しにおびえている」】
 避難者たちは午後は福島駅前に移動。道行く人々に、住宅無償提供継続の必要性への理解を求めた。
 いわき市から東京都内に避難中の40代母親は「何も都会暮らしがしたくて、甘い気持ちで避難しているわけではありません。まだ汚染があるからなんです。避難したからずるいとかうらやましいではなく、助け合いましょう。全国で同じ福島県民が追い出しにおびえている現状を知ってください」と力をこめた。
 福島県は「個別の事情を聴きたい」と戸別訪問を実施しているが、当初から高圧的・威圧的な〝追い出し〟だとの指摘が絶えない。体調を崩して入院を余儀なくされた避難者もいる。そもそも、避難者の意向を尋ねる前に打ち切りが内堀雅雄知事によって決定された。結論が出た後に意向調査を実施するという本末転倒ぶり。これまでの交渉でも、国は「福島県が決めた事」と逃げ、福島県も「国の同意を得ている」の一点張り。〝復興五輪〟として福島の復興を世界にアピールしたい安倍政権にとって、避難者の存在は邪魔だ。〝支援〟と称して世界に金をばらまいている国にとって、80億円とも言われる避難者への住宅無償提供など実はたやすい。財源では無い。原発事故は終わった、避難者などいない。そういう状況が着々と作られようとしているのだ。帰還困難区域を除く避難指示も今春で解除される。全てが水面下でつながっている。
 「避難を認めない政策は本当に頭に来る。本来ならば福島県が国に無償提供継続を申し入れるべきだ。何としても打ち切りを覆したい」
 郡山市の60代女性もマイクを握った。26歳の娘は2012年1月から九州に避難し、アパートで6歳になる息子とともに生活している。不動産業者は4月以降の入居に関しては「家賃さえ支払ってくれれば問題無い」との姿勢だが、母子家庭にとって家賃負担は重い。「しかも、不動産業者には福島県の施策や方針が全く伝わっていないんです。避難者が自分で話さないと伝わらない。これが『避難者に寄り添う』の実態ですよ」と女性。福島県は「家賃補助を柱とした新たな支援策を用意している」と胸を張るが、それも2年間で終わる(1年目3万円、2年目2万円。それぞれ月額)。「故郷を捨てて勝手に逃げたのだから早く自立しろ」。内堀知事の本音はそこにあるのだろう。








避難者の願いは「住宅無償提供打ち切りの撤回」。「追い出さないで」「路頭に迷わせないで」などのプラカードを掲げて訴えた。避難者との直接対話から逃げている内堀知事へ抗議する避難者も

【尊重されぬ「避難の権利」】
 内堀雅雄知事はこの日、表敬訪問を受けた私立幼稚園の保護者たちからバレンタインチョコを贈られた。しかし、どれだけ避難者たちが面会を願い出ても内堀知事は会おうとしない。そもそも、知事に忠誠を誓う県庁職員たちが立ちはだかって会わせようとしない。
 「避難の権利」を尊重しない国や行政の姿勢は当然、避難しなかった(出来なかった)住民に歪んだ形で伝播する。福島駅前でアピールする避難者たちを横目に、ある女性は「ダメダメ。早く自立しようと考えなさいよ」と話した。「だって賠償金いっぱいもらってるんでしょ」とも。多額の賠償金など得ていない、と伝えても取り付く島も無い。「実際はそうじゃないとしたって、私たちはそういう目で見るんですよ」。別の男性も「通行の邪魔だ」と避難者たちをにらんだ。国や行政が汚染や被曝リスクの存在、避難の権利を認めて来なかった結果がこれだ。そこに「避難したくても出来なかった」、「避難を継続したくても戻らざるを得なかった」という悔しさや嫉妬心にも似た感情が絡まり、「あいつらは勝手に怖がって逃げているのに…」という雰囲気が醸成されてしまっている。
 避難者たちは避難先でのんびりと暮らしているわけではない。この日も当事者の参加は少なかったが、「お母さんたちがこういう運動に参加するのは難しいよ。子育てや仕事に追われているから」と「福島原発被災者フォーラム山形・福島」代表の武田徹さん(76)は代弁した。
 打ち切り決定にあたり、避難者たちは意見を述べる機会を一切与えられなかった。だから、無償提供打ち切りをいったん白紙にし、どういう軟着陸が1人の避難者も路頭に迷わせずに済むか話し合いたいと考えるのは当然だ。そもそも、避難したのは原発事故が起きたから。放射性物質が降り注いだから。故郷が汚されたから。しかし、この国に被曝リスクから逃れる権利は残念ながら無い。間もなく住まいが奪われる。



(了)
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プロフィール

鈴木博喜

Author:鈴木博喜
(メールは hirokix39@gmail.com まで)

大手メディアが無視する「汚染」、「被曝」、「避難」を追い続けています。

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