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【県民健康調査】福島県が人選?何のために設置?イメージできぬ「第三者機関」。星座長の〝暴走〟に清水修委員は「NO」~甲状腺ガン疑い1人増えて184人

原発事故後、福島県が実施している「県民健康調査」の第26回検討委員会が20日午後、福島市内のホテルで開かれた。甲状腺超音波検査の2巡目で「悪性または悪性疑い」と診断された子どもは、前回より1人増えて69人。1巡目からの通算では184人に達した(12月31日現在)。星北斗座長は、甲状腺検査評価部会を5月から6月ごろをめどに開催するよう提案。前回、突如として浮上した第三者機関についての質問が相次いだが、性格や人選方法など具体的な中身が全く分からないまま。これには委員からも異論が出されたが、星座長の〝暴走〟は止まらない。日本財団の影がちらつく中、原発事故が無かった事にされていく。


【「誰も駄目と言わなかった」】
 前回の検討委員会(2016年12月27日)で、突如として星北斗座長の口から飛び出した「第三者機関」。何のために設置して誰を委員に選び、誰の責任で運営するのか。イメージ出来ている人はいない。会議では春日文子委員(国立環境研究所特任フェロー)が「どう考えているのか。すぐに理解出来ない。前回、初めて聞いたので驚いたし分からなかった」などと質し、清水修二委員(福島大学特任教授)も「前回会議を欠席したので議事録を読んだが、この検討委員会として設置を求める手続きをとるべきでは無い」などと異を唱えた。
 しかし、星座長は「私は科学的、国際的知見から検証する第三者機関が必要だろうと福島県に球を投げた。ボールは県側にある。今日、資料が出ていないという事は固まっていないのだろう」などと答えるばかり。挙げ句には「ある意味、言い出しっぺの梅田さん…」と梅田珠実委員(環境省・環境保健部長)に発言を求める始末。しかし閉会後の記者会見では「言い出しっぺという意味では私」と発言が二転三転。「ボールは県にあります。責任は私にあるものではありません。最終的な決定権も無い」、「設置の根拠となるべき法律、予算は想定していませんが、国の予算でやるべきではないか」との発言に終始した。
 〝ボールを投げられた〟側の福島県も「この2カ月間、設置する必要性があるか、必要があればどういうものが良いか検討してきた。国や国際機関とも相談している」(県民健康調査課の小林弘幸課長)と答えるばかりで具体的な中身についての言及は無し。誰の責任で人選し、どういう性格の組織を何の目的で設置するのか。出席している委員も取材陣も分からない。しかし、星座長だけが「私の中では整理が出来ているが、伝わっていないのであれば説明が悪いのだろうと思う」、「我々の議論には限界があるという事は認識しなければならない」などと〝暴走〟している状態だ。星座長から「言い出しっぺ」とされた梅田委員は記者会見には出席しなかった。「所用のため」(小林弘幸課長)という。
 これに対し、清水修二委員は記者会見でも「この検討委員会が(第三者機関の設置を)要望したという形にはしないで欲しい」と述べた。しかし、実際には「皆さんに問いかけて『駄目』という事が無かった」(星座長)として、検討委の総意として県側が検討を進めているのが実態。会見後、取材に応じた清水委員は、言葉を選びながらも星座長の〝暴走〟にNOを突きつけた。
 「あれは検討委がボールを投げたんじゃない。個人的提案だ。僕と星座長は少し考え方が違うね」




(上)第三者機関の設置について「検討委がボールを投げたんじゃない。個人的提案だ」と星座長の〝暴走〟に異を唱えた清水修二委員
(下)この日の会議にも多くのメディアや傍聴者が集まったが、関係者に守られるように話し合いのテーブルは遥か先だ=福島市・ホテル福島グリーンパレス

【ちらつく日本財団の影】
 第三者機関の設置はそもそも、昨年12月9日に福島県の内堀雅雄知事に提出された提言「福島における甲状腺課題の解決に向けて~チェルノブイリ30周年の教訓を福島原発事故5年に活かす~」だった。
 日本財団(笹川陽平会長)が主催し、福島市内で9月に開催された「第5回放射線と健康についての福島国際専門家会議」を受けて「福島事故による一般住民の甲状腺被ばく線量は、チェルノブイリ事故に比べてはるかに低い量にとどまっている」、「福島におけるこの明らかな甲状腺異常の増加は、高性能な超音波診断機器を導入したために引き起された集団検診効果であると考えられる」、「この甲状腺がんの明らかな増加が、福島第一原発事故に起因するとは考えられない」などとして①健康調査と甲状腺検診プログラムは自主参加であるべき②福島原発事故の健康影響の低減と健康モニタリングに関する課題を取上げる専門作業部会の招集─などを提言している。これを受けて福島県内外から検査体制の維持・拡充を求める要望が相次いだ。
 しかし、星座長は会見で「一つの判断材料であった事は否定しないが、日本財団だけ特別扱いというのは違う。提出された要望書は全て、委員の皆さんに回覧してもらっている」、「(検査体制の)見直し論がある中で提案申し上げたまで。笹川に言われたから(第三者機関を)つくるわけでは無い」などと反論。発言の一貫性すら失っている。
 フォトジャーナリストの広河隆一さん(雑誌「DAYS JAPAN」)は会見で、第三者機関の人選について「誰が誰を選ぶのかが非常に重要。『ガンの多発は無い』と言い続ける方が座長になるようではいけない。そもそも検討委での議論がなされないまま県にボールが投げられて良いのか」などと質したが、星座長は「県と国あたりが協議して考えるだろう」と答えるばかり。これでは、原発事故による健康被害の発生を否定するために、都合の良い人選をして都合の良い結論を出そうとしていると勘ぐられても仕方ない。実際、提言の中心人物だった山下俊一氏(長崎大学副学長、福島県立医科大学副学長)は甲状腺エコー検査のデメリットや被曝リスクの存在を否定する発言を繰り返している。




(上)〝暴走〟し続ける星北斗座長(左)。右は長崎大学原爆後障害医療研究所の高村昇教授
(下)記者会見では第三者機関の性格や人選などに関する質問が相次いだが、明確な回答は無かった

【基金、新たに18人に給付】
 「3・11甲状腺がん子ども基金」(崎山比早子代表理事)は1月末までに、甲状腺ガン患者向け療養費給付事業(手のひらサポート)で新たに18人(男11人、女7人)の甲状腺ガン患者に10万円を給付した。都道府県別では福島県が15人、埼玉、東京、神奈川県が各1人だった。これで、給付を受けた人は初回と合わせて53人。8割近くが福島県民だが、東京、神奈川、宮城、群馬、千葉、埼玉、長野、新潟にも給付者が出ている。
 放射性物質の飛散も被曝リスクも県境では止まらない。だからこそ、宮城県仙台市の日本基督教団東北教区放射能問題支援対策室「いずみ」が実施している甲状腺エコー検査は毎月、多くの希望者で定員が埋まる。わずか6年では原発事故による健康被害について結論を出す事など出来ない。予防原則に立ち、保養など健康被害を無くす取り組みを公的に続ける必要がある。甲状腺ガン以外の調査も当然、行われるべきだ。
 しかし、現実の流れは逆だ。この日の検討委員会で報告された2015年度「妊産婦に関する調査」でも、母子健康手帳を交付された女性のうち、次の妊娠を希望しない理由で「放射線の影響が心配なため」を挙げた人の割合は1.6%だった。2012年度以降14.8%、5.6%、3.9%、1.6%と年々減っている。自由記載欄でも「胎児・子どもへの放射線の影響」に分類される内容を記入した割合は5.2%で、これも2011年度以降29.6%、26.4%、12.9%、9.5%、5.2%と減少しているという。これは一つの指標になるが、福島県立医科大学の安村誠司教授が「調査には限界がある」と指摘するように、「今さら心配してもしょうがない」という空気感が蔓延している中で、果たしてどれだけ本音の部分での「不安」が数字となって表れているかは疑問だ。「もはや被曝リスクへの不安は減っている」という〝結論〟は決して実態を正しく表現していない。
 原発事故直後から言われ続けてきた「風評」は、健康リスクにまで及んでいる。第三者機関が「原発事故による健康被害は無い」と結論付けた時、それは完成するのだろうか。避難指示解除、〝自主避難者〟への住宅無償提供打ち切りと並ぶ甲状腺検査縮小・不要論。原発事故がますます「無かった事」にされていく。



(了)
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鈴木博喜

Author:鈴木博喜
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