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【自主避難者から住まいを奪うな】打ち切り迫り「避難者を孤立させまい」。民間賃貸住宅の契約で差別される事例も~「避難の協同センター」が緊急会見

原発事故避難者を支援しようと昨年7月に設立された「避難の協同センター」が21日午後、東京・永田町の参議院会館で緊急会見を開き、3月31日の〝自主避難者〟向け住宅無償提供打ち切りを前に、避難者の窮状と抜け穴だらけの「新たな支援策」の問題点について語った。住まい確保に奔走する避難者に立ちはだかる壁は制度の不備であり、社会の不寛容や誤解や偏見。打ち切り強行まで40日を切った。避難者の孤立だけは避けようと、センターが設置した相談ダイヤルへの連絡を呼びかけている。


【「下見すら断られる」】
 福島からの避難者というだけでアパートの契約を断られる。こんな事がまかり通って良いはずが無い。村田弘さん(福島県南相馬市から神奈川県横浜市に避難中)が、悔しさを顔いっぱいに浮かべながら語った。
 「神奈川への避難者は8割が民間から借り上げたアパートを〝仮設住宅〟とみなして暮らしています。神奈川県がいったん家賃(上限6万円)を支払い、福島県に請求して、最終的には国が支払う仕組みです。しかし、神奈川県は打ち切りの通知をするだけで避難者は放り出されてしまいます。だから皆、走り回っている。そこで、家主から『福島からの避難者はねえ』と入居継続を渋られるケースが増えているのです」
 母子避難をしている母親は、この春から子どもが高校3年生になり大学受験の準備が本格化する。環境を変えない方が良いだろうと考え管理会社に打診していたが、先週末になって「更新できない」と連絡が入り途方に暮れているという。
 昨年から学校での〝避難者いじめ〟が取り沙汰されているが、この母親も差別と闘い続けている。周囲の部屋の住人が夜中に騒ぐなどしてうるさいため、管理会社に相談すると「あなた、自分で家賃を払ってないでしょ」と対応してさえもらえなかった。4月以降の家賃は9万円を提示されたが、後になって他の部屋より高い事も分かった。礼金も必要だと言われた。やむなく他のアパートを探している中で下見を願い出たら「福島からの避難者」、「母子家庭」を理由に断られたという。
 「物件の下見すらさせてもらえないんですからね…。もっといろんな可能性を探りたいけれど、平日の昼間に働いていると、とてもそんな余裕はありません。避難者である事を伏せたいが、身分証を提示すれば分かってしまう」
 この管理会社は、明るいイメージを売りにした誰もが知る大手だ。神奈川県は、村田さんたちの粘り強い交渉の結果、福島県の家賃補助(2年間のみ。1年目3万円、2年目2万円、いずれも月額)に、さらに独自に1万円を上積みする施策を新年度予算案に盛り込んだ。県内17の議会から無償提供継続を求める意見書が提出された事も大きな力となったが、契約相手の管理会社がこれでは、結局、319世帯の神奈川への避難者は路頭に迷ってしまう。






(上)福島県郡山市から神奈川県川崎市に避難した松本徳子さん。「『避難の協同センター』の存在を知って欲しい。1人で悩んでいないで電話を」と呼びかけた
(中)熊本美彌子さんは福島県田村市から東京都内に避難中。「国や福島県は避難者の82.5%で住まいが確定したと公表しているが、70%以上の避難者の住まいが決まっていないのが実情だ」と訴える
(下)福島県南相馬市から神奈川県横浜市に避難している村田弘さん。「苦しい方々の声がなかなか表面化しない。相談会を開いているが、なかなか出て来られない」と苦悩も口にした=東京・永田町の参議院会館

【負担重い国家公務員宿舎】
 東京都内では717世帯が住宅無償提供打ち切りの対象だ。自身も福島県田村市からの避難者で、国や福島県との交渉に何度も出席した熊本美彌子さんは「支援の体制が無く困っている避難者は依然として多いです。当事者が声をあげる場が少ないのです」と訴えた。
 前日に開かれた内閣府や復興庁など国の役人たちの交渉の場で、復興庁が提示してきた数字に驚かされたという。「今年1月27日現在で住宅が確定していない世帯は17.5%しかいないと言うのですが、私自身が協同センターの方々と一緒に避難者たちを訪問して廻った体感では、70%以上が住まいが決まっていません。実感と公表される数字がかけ離れています。恣意的な情報が福島県によって独り歩きさせられているのです」と語る。福島県は、調査結果の項目に「(新たな住まいが)ある程度確定」を設けているが、これは「今の住まいを退去して新たな住まいを探して転居する気持ちは固まった」という事に過ぎず、決して「新たな住まいが決まって不安が無くなった」という事では無いからだ。
 都内避難者のうち、30%を超える241世帯が国家公務員宿舎に入居しているが、有償での継続入居は認められる事になった。しかし、管理者である財務省に福島県側が「2年間」と期限を申し出てしまった上に、家賃補助の対象外。避難する段階で避難者にどこに入るか選択の余地は無く、たまたま国家公務員宿舎に入居した人々は、4月から補助も受けられずに家賃負担が発生する事になる。
 「継続入居を希望する人はかなりいるが、駐車場や管理費を含めると、人によっては毎月の負担が8万円を超えてしまいます。避難者はわが子を守ろうと必死に避難して生活して来て、国家公務員並みの収入などありません。住まいは確保出来ても、大変な負担になっていくだろうと思われます」
 避難者を受け入れている自治体は、福島県からの要請に応える形で公営住宅の優先枠を設けているが「みかけの器はあるが、遠隔地だったり昭和40年代に建設された古い住宅だったりして、なかなか入居が難しいのが実情」(村田さん)。
 千葉の事例を報告した阪上武さん(「避難の協同センター」事務局、「福島老朽原発を考える会」代表)も「風呂釜を自分で用意しなければいけない公営住宅が多い」と指摘する。千葉県はここに来てようやく、県営住宅に収入要件以外の条件は設定せずに優先入居枠を設ける事を検討し始めたという。今の住まいから遠く離れた地域に転居すると子どもの学区も変わるため、転校が伴う事も住まい確保の大きな壁となっている。






(上)「避難者は地震・津波・原発事故の三重苦に加え、原発事故の被害を消そうとする国、社会による忘却・無関心という五重苦に見舞われている。孤立させてはならない」と訴えた加山久夫さん
(中)センター世話人として連日、避難者救済に奔走している瀬戸大作さんは「抜け穴だらけの支援策で、受け入れ自治体による支援の格差が生じているのも問題だ」と強調した
(下)「避難の協同センター」が間に入る事で、実際に救済されている避難者が増えているという。「どんな小さな事でも電話で相談して欲しい」と呼びかけている

【「問題を一緒に解決します」】
 代表世話人の加山久夫さん(公益財団法人賀川事業団雲柱社理事長、明治学院大学名誉教授)は「避難者は孤立しないように、ぜひ私たちにコンタクトをとって欲しい。出来る事は全てしたい」と語った。「地震・津波・原発事故という三重苦の中で、避難者は必死に生きてきた。ここに来て、国は原発事故による被害を消そうとしている。これで四重苦。一方、社会は原発事故をどんどん忘れている。忘却・無関心もまた、避難者を苦しめている。これで五重苦だ」。
 世話人として連日、避難者救済に奔走している瀬戸大作さんも「1人で悩んでいるとどうしたら良いか分からなくなってしまう」と孤立を恐れている。福島県の家賃補助には収入要件があり、月収が21万4000円を下回る事が条件。貯金を取り崩して介護職などの学校に通い、働き始めた事で収入要件を上回って補助を受けられないケースや、生活保護で支給された金が「収入」と認定され、生活保護をやめるか家賃補助をあきらめるか苦渋の選択を迫られている避難者など、瀬戸さんは数多くの困窮世帯を目の当たりにしてきた。「必要な場合には役所などに同行して一緒に解決します」と呼びかける。
 民間アパートへの入居を希望する避難者が、管理会社から「福島県による家賃補助支給が確定している事を証明する書類を提出しろ」と求められるケースもあるという。しかし、実際には新たな住まいの契約書類が無いと家賃補助の申請が出来ない。こんな無理難題を突き付けられているのが実情なのだ。「賃貸契約を結ぶ際の保証人も代行出来ます。フードバンクと連携してお米の提供も出来る。相談ダイヤルにぜひ、電話をして欲しい」(瀬戸さん)。
 住宅の無償提供打ち切りまで40日を切った。「避難者一人一人に寄り添う」という空虚な言葉を漂わせながら、福島県の内堀雅雄知事は打ち切りを強行する構え。「1人も路頭に迷わせない」を合言葉に、避難者救済の取り組みが続く。
 相談ダイヤルは070(3185)0311(月曜から金曜、10時から17時)。



(了)
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プロフィール

鈴木博喜

Author:鈴木博喜
(メールは hirokix39@gmail.com まで)

大手メディアが無視する「汚染」、「被曝」、「避難」を追い続けています。

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