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【放射性廃棄物】「燃やして減らしましょう、再利用しましょう」。東大の児玉龍彦氏が南相馬で講演。「初めからダメダメ言うな」「日本は環境技術大国だ」

東京大学アイソトープ総合センター長・児玉龍彦氏の講演会「福島における放射性廃棄物のリサイクル化が可能になった!」が9日午後、福島県南相馬市で開かれた。児玉氏は「21世紀の日本は環境技術大国。焼却して減容、100Bq/kg以下にする事は可能」と強調。「あれは駄目、これは駄目と言っていたら永久に解決しない」と懸念を封じ込めた上で「除染廃棄物の無理な膨大保管はやめ、減量・リサイクル・濃縮保管を」「日本経済の新しいエンジン、馬力になるものが福島の環境回復の中にある」と呼びかけた。福島県社会保険労務士会の主催。


【「バグフィルターで取り除ける」】
 穏やかな口調で被曝リスクの存在を否定し続ける山下俊一氏(長崎大学副学長、福島県立医科大学副学長)とは違い、児玉氏は時には語気を強め時には国を痛烈に批判しながら、除染で生じた放射性廃棄物の焼却と再利用の必要性を訴えた。
 児玉氏は、環境省が推進している「8000Bq/kg以下の除染土壌の公共工事での再利用」について「原子炉等規制法で『施設から外に持ち出して良い』と定められているクリアランス基準は『100Bq/kg』だ。だから東京で基準を議論させては駄目なんだ。では、3000Bq/kgの放射性廃棄物を東京に持ってくるかと言えばノーだろう」と批判。再利用の必要性は認めた上で「21世紀の日本は環境技術大国になっている。何も今から新しい技術をつくろうというのでは無い。今の技術で100Bq/kg以下に濃縮出来る事が分かった。科学は目標があると必ず進歩する」と強調した。
 「至る所に山積みになっている膨大な数のフレコンバッグ。このまま放置していたら紫外線で駄目になってしまう」、「可燃物は仮設焼却炉で燃やした方が減容出来るし、野焼きをやるよりもよほど安全だ」と語った児玉氏は、放射性セシウムを大気中に放出させないための「バグフィルター」に関し「大きな誤解がある」と斬ってみせた。環境省は「バグフィルターで99.9%取り除ける」と胸を張るが、一部がすり抜けて「二次拡散」されるのではないかとの懸念もある。実際、岩手県宮古市の岩見億丈医師の調査では、市内の焼却炉周辺の土壌のセシウム濃度が高い事が分かり、2015年9月の「廃棄物資源循環学会」で「数割は漏れ出しており、バグフィルターの除去能力の見直しが必要」などと警鐘を鳴らしている。
 聴衆からもバグフィルターの性能に関して疑問視する質問が出たが「エアフィルターとは違うし、今はバグフィルターを二重にして使っている。ポジティブに考えてやってみる事が大事。フレコンバッグで放置しているよりも、10年経ったら結果に大きな差がつく」と反論した。




(上)除染で生じた放射性廃棄物の焼却と再利用について講演した児玉龍彦氏=南相馬市民文化会館「ゆめはっと」
(下)飯舘村の仮置き場には膨大な数のフレコンバックが積み上げられている。児玉氏は「燃やす事で減容出来るし、今の技術では放射性セシウムは大気中に放出されない」と強調した

【「いかに濃縮して取り除くか」】
 児玉氏はさらに「もう一つの誤解」についても言及。「一般に口にされる懸念とは逆で、我々から見たら小さくて濃度が濃くなった放射性物質ほどコントロールしやすい。薄いものが広く存在するから問題だ。濃縮する方が管理がしやすい。いかに濃縮して取り除くか、だ」と語った。その上で「除染で生じた放射性廃棄物の入ったフレコンバッグをそのまま中間貯蔵施設に運び込むのではなく、焼却で生じた高濃度の焼却灰をコンテナに入れて持って行くのが良い。燃やせば量は20分の1に減らせる。それらは地中に埋設して保管するのではなく、地上に施設をつくって見える形で管理する方が良い。減らせるだけ減らせば次の技術が出てくる。そうして一歩ずつ日本は進んできた」などと持論を展開した。
 「最初から問題点ばかり指摘しても何も生み出さない」、「穴があると言うのは良いが、今ある技術でやってみないと解決しない」、「あれは駄目です、これは駄目ですと言っていたら永久に解決しない」と、終始〝前向きの解決策〟を考えるよう求めた児玉氏。南相馬市の除染推進委員長、楢葉町の除染検証委員長、浪江町の避難指示解除に関する有識者検証委員として避難指示解除と住民帰還の旗振り役となってきた。除染で生じた放射性廃棄物の再利用に関しては、除染推進委員会として2016年12月に南相馬市に提言書を提出(http://www.city.minamisoma.lg.jp/index.cfm/10,23071,c,html/23071/20170112-152219.pdf)。提言では「比較的濃度の低い除去土壌については、これまでの福島県における土壌中の放射性セシウムの挙動をみれば、細粒分への吸着により地下水に流出することや大気に放出される可能性は低く、長期にわたる管理が可能な区域において、常磐自動車道や海岸防災林事業等の公共工事での盛土材等の資材として、再生利用が可能と考えられる。なお、再生利用を進めるにあたっては、大型土のう袋の内容物の適切な分別処理が必須である」などと取り組みを求めている。
 再利用にあたっては、セシウム回収型焼却炉で1500℃で気化し冷却する事で濃縮させた放射性セシウムを取り除くという。郡山市内の焼却炉で行われた試験では、5万6000Bq/kgに汚染された土壌が、45Bq/kgに〝浄化〟する事が出来たとするデータを提示。飯舘村蕨平地区に設置された仮設資源化施設でも、5200~8万7000Bq/kgの放射性廃棄物を76~86Bq/kgに出来ているという。重量は17トンから2トンに減容。〝副産物〟と呼ばれる26万~55万Bq/kgもの焼却灰が生じるが、重量としては約1トンであるため、児玉氏の理論では減容が実現出来ているという事になる。100Bq/kgを下回った廃棄物は、被曝線量を年1mSv以下に抑えるようにした上で高速道路建設などで埋め込むという。




会場で配られた児玉氏の講演資料の一部。「焼却」「リサイクル」の文字が随所に出ている

【「日本経済の新しいエンジン」】
 児玉理論でいけば、プルサーマルにも似た〝夢のような放射性廃棄物リサイクル〟が実現するようだ。デメリットを口にするのは「後ろ向きな考え」と切り捨てて前進するのが科学なのだろうか。児玉氏は森林の汚染にも触れ「バイオマス発電が長期的には一番可能性がある」、「木を伐ったら膨大なごみになる。単なるごみとせず、燃やして燃料源とする事で環境への負荷も抑えられる」などと語った。
 「『そんな事出来るわけが無い』と口にする〝おねだり学者〟は必ずいる。彼らの言うことは全部ウソです。米の全袋検査でもそうだった。東大では学食で浪江町の米を提供するなど生産地と消費地をつなごうとしている。大学にはそうやって一生懸命やっている者もいる。ぜひ信頼してください」
 自身は決して〝おねだり学者〟では無く、「原発事故前の美しい福島の環境を取り戻すため」に努力していると強調した児玉氏は、2015年3月に取りまとめた「楢葉町除染検証委員会第二次報告書」の中で「住民が帰還して町を復興していくためには、妊婦やこどもも含めて住民が胸を張れる環境を回復することが必須」、「こどもが胸を張れる地産地消の楢葉町を目指す」と述べている。しかし、国の設定した避難指示解除の基準「年20mSv」を否定せず、浪江町が「除染で生活環境は概ね整った」とした結論の一翼を担った。住民帰還に軸足を置いた〝復興〟は避難の権利を否定する。
 児玉氏は「日本経済の新しいエンジン、馬力になるものが福島の環境回復の中にあると思う」とも語ったが、果たして〝おねだり学者〟では無い児玉氏が本当に主眼を置いているのは環境回復なのか日本経済なのか。別子銅山(愛媛県)で起きた公害事件(精錬所から排出された亜硫酸ガスによる農作物被害)を例に挙げ、「対策に取り組んだ住友は立派な企業になった。一方、対策を怠った足尾(栃木県)は日本最大のハゲ山地帯となった」とも話した。「日本の自動車産業が大きくなったのは公害問題があったから。その後、日本の環境技術が世界を席巻した」とも。
 2011年7月27日の衆議院・厚生労働委員会に参考人招致され、「実際に何十兆円という国費がかかるのを、今だと利権絡みの公共事業になりかねない危惧を私はすごく持っております。国の財政事情を考えたら、そんな余裕は一瞬もありません」、「七万人の人が自宅を離れてさまよっているときに、国会は一体何をやっているのですか」などと語気を強めて一躍、時の人となった児玉氏。6年の時を経て、主張は除染廃棄物の焼却・再利用に移ってきた。除染廃棄物の焼却は本当に二次汚染につながらないのか。注視していく必要がある。



(了)
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プロフィール

鈴木博喜

Author:鈴木博喜
大手メディアが無視する「汚染」、「被曝」、「避難」を追い続けています。

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