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【72カ月目の福島はいま】「3.11」過ぎても〝放射線と隣り合わせ〟続く。キャンドルナイトにこめられた汚染解消~シンポジウムでは「帰還強要」に批判も

報道も追悼ムード一色になった「3.11」を過ぎても、原発事故による被曝リスクは残念ながら無くならない。福島市内で催された「キャンドルナイト」では、放射能汚染や被曝リスクに関するメッセージも、ろうそくの炎に浮かび上がった。今月末には帰還困難区域を除く避難指示が解除され、福島県外に移った〝自主避難者〟への住宅無償提供も打ち切られる。首相の式辞からは「原発事故」の文字が消えるなど3年後の東京五輪を見据えて「原発事故の収束アピール」は加速するが、原発事故は現在進行形。12日に開かれたシンポジウムでも、帰還や被曝の強要しているとの声が相次いだ。


【〝本音〟を封印する暮らし】
 復興ムードが高まっているのも事実だろう。福島県中小企業診断協会の渡辺正彦会長によると、2011年以降、福島県内での公共工事請負金額は合計3兆円に迫る勢いだという。「〝復興特需〟を支えている公共工事の中でも、特に多くを占めるのが除染事業だが、徐々に落ちてきている」。公共工事だけを見れば、徐々に減っているとはいえ〝復興〟は進んでいるように見えるのかも知れない。しかし、そればかりではない。福島第一原発が爆発してから6年経っても、残念ながら被曝リスクは消えない。それが「3.11」の追悼イベントにも表れていた。
 「放射せんを気にしないで外でいっぱい遊びたい」、「放射能ととなりあわせの日々、いつまで続くんだろう」、「げんぱつじこが直りますように」、「ほうしゃせんがなくなりますように」、「今は公園であそべないけど、あたりまえの福島になるように」
 冷たい風が吹いた11日夜、福島市内で催された「キャンドルナイト」では様々なメッセージがろうそくの炎で浮かび上がった。前向きなメッセージに埋もれるように、原発事故がもたらした放射能汚染への想いが綴られたキャンドルもあった。故郷・飯舘村を想い、「もしも1つだけ願いが叶うなら、飯舘村を元通りにしたいです」と書いた人もいた。元通りの美しい村に戻るまでに何年かかるだろう。〝前向きさ〟や〝復興〟だけでは語り尽くせない現実が、ここにもあった。
 事故直後のような被曝リスクに対する危機感は、見た目には薄らいだ。福島県庁の職員が言うように「多くの人が普通に暮らしている」ように見える。だが、実際には少なからず存在している危機感が、心の奥底に封じ込まれたにすぎない。
 復興ムードの中で、周囲に被曝リスクへの懸念を口にすれば「まだそんな事を言っているのか」と嘲笑され、福島産の食べ物を避ければ「風評被害を助長する」と責められてしまう。夫婦、親子であっても、放射線に対する考え方が大きく異なり、「不安を口にしてもしょうがない」という雰囲気を醸成した。福島で暮らしていくためには、心配ばかりしてもいられないという想いもある。「少しでも遠くへ逃げた方が良かったのかもしれないが、仕事や家庭の事情で叶わなかった。だから福島で生きて行くしかない」という声は少なくない。ゆらめく炎は、封印された〝本音〟を浮かび上がらせているようだった。






鈴木正晃副知事も参加した「キャンドルナイト」では、「復興」や「忘れない」「がんばろう」のメッセージとともに、原発事故でばら撒かれた放射性物質の存在を懸念するメッセージもあった。6度目の「3.11」を過ぎたからといって被曝リスクが無くなるわけでは無い=福島市・街なか広場

【「年20mSvで避難者帰すな」】
 復興ムードの前には、予防原則も吹き飛ぶ。
 「被曝は出来るだけ少ない方が良い」という考え方は専門家の共通認識だが、福島では経済優先と人口流出阻止のために年20mSvまでは〝安全〟とされている。避難指示が出されている飯舘村や浪江町では今月末に帰還困難区域を除いて避難指示が解除され「もはや生活環境は概ね整った」と国はアピールする。3年後の東京五輪では、国道6号での聖火リレーも含めて「原発事故から立ち直った福島」が世界に発信される。国の避難指示が出されていない区域からの〝自主避難者〟に対する住宅無償提供も、今月末で打ち切られる。こうして、原発の爆発事故は「終わった事」にされていく。
 実際、「東日本大震災六周年追悼式」での安倍晋三首相の式辞から「原発事故」の文字が消えた。昨年は「原発事故のために、住み慣れた土地に戻れない方々も数多くおられます」、一昨年も「今なお、原発事故のために住み慣れた土地に戻れない方々をはじめ、23万人の方が厳しい、不自由な生活を送られています」と述べていたが、もはや触れる必要も無いという事か。12日に福島市内で開かれたシンポジウムでは、医師らからこれらの動きに警鐘を鳴らす発言が相次いだ。
 独自に甲状腺エコー検査を行っている「ふくしま共同診療所」の布施幸彦院長は、福島県が実施している「県民健康調査」の甲状腺エコー検査について「受診のリスク、受診しない権利を主張し、検査を縮小しようとしている」と語り、県民健康調査検討委員会の星北斗座長が提案した「第三者機関」の設置も含めて批判した。
 布施院長は、福島県の内堀雅雄知事が強行しようとしている〝自主避難者〟への住宅無償提供打ち切りについても『帰還して被曝するか、避難を継続して貧困に陥るか』を選択させる非人道的な政策だ」と述べた。「子どもたちを守る全国小児科ネットワーク」代表で医師の山田眞氏(八王子中央診療所)も「住宅無償提供も保養も、本来であれば国や東電がやるべき事。やらないので、仕方なく転居費用の助成を始めた。大人たちが〝自主避難〟を理解しておらず『勝手に逃げている人』と考えている事が、子どものいじめにつながっている」と語った。
 山田医師は、環境省が2012年度に青森県弘前市、山梨県甲府市、長崎県長崎市で実施した18歳以下の甲状腺エコー検査で「福島より多い56.5%の割合でA2判定の者が認めらた」と結論付けている事についても「のう胞で有意差が無いからといって、福島で健康被害が無いと言う事にはならない。そもそも4000人程度では少なすぎる」と述べた上で、こう締めくくった。
 「安全と言えるのはゼロしか無い。年1mSvでも駄目なんだ」






12日に福島市内で開かれたシンポジウム。パネリストの1人、ふくしま共同診療所の布施幸彦院長は、年20mSvでの避難指示解除や〝自主避難者〟向け住宅の無償提供打ち切りを「帰還・被曝の強制だ」と批判した=ホテル福島グリーンパレス

【「無用な被曝避けよう」】
 韓国反核医師会の運営委員長で東国大医学部教授の金益重(キム・イクチュン)医師も登壇。韓国での原発周辺における健康被害について報告した。韓国では1988年から89年にかけて、霊光原発(現・ハンビッ原発)周辺の人や牛で無脳や奇形などの異常分娩が確認されたという。政府は疫学調査を実施したが「秘密会を開くなど透明性が確保されないまま、ガン発症に関して他の地域と有意な差は無いとする報告書が発表された」。しかし、金医師が野党議員を通じて入手した調査結果を再分析したところ、女性の甲状腺ガンについては他の地域と比べ2.5倍多かったという。
 金医師は「事故が無くても原発からは毎日、放射性物質が排出されている」、「被曝量とガンの発病は正比例する」などと語り、無用な被曝はしないよう呼びかけた。
 シンポジウムには、JR東日本水戸支社の労組「動労水戸」の関係者も参加。「JR常磐線の全線開通は、われわれ乗務員に被曝を強要する」とマイクを握った。浪江町では、今月末の避難指示解除を控えて試運転が始まった。常磐線の運転士という男性は「自分は運転したくないが、社内では異を唱えられない雰囲気がある」と語る。
 左翼系団体によるアジテーションの色合いも濃かったシンポジウムだが、長野県松本市の菅谷昭市長も言うように放射線防護には「右」も「左」も関係無い。自民党支持者も共産党支持者も等しく放射線を浴びる。主義主張にかかわらず、誰もが堂々と放射線を避け、避難を出来る社会の構築が必要だ。被曝による健康被害を心配する事は「心の病」などでは無い。無用な被曝を避ける。そんな当たり前の事が周囲の視線を気にすることなく出来る事が、真の復興につながる。



(了)
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プロフィール

鈴木博喜

Author:鈴木博喜
(メールは hirokix39@gmail.com まで)

大手メディアが無視する「汚染」、「被曝」、「避難」を追い続けています。

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