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【自主避難者から住まいを奪うな】「被曝をふるさと論にすり替えるな」。今村復興相の「戻って頑張れ」発言に怒りの声。「愛着ある…それでも帰れない」

今村雅弘復興相の発言を巡り、原発事故による〝自主避難者〟から怒りの声が噴出している。今月12日放送のNHK「日曜討論」に出演した今村復興相は「故郷を捨てるというのは簡単」、「(避難元に)戻って頑張れ」などと発言。「原発避難の長期化は現実的に合わない」と帰還を促した。しかし、誰も好き好んで避難しているのでは無い。そもそも故郷を「捨てる」「捨てない」の話では無い。被曝リスクの存在から遠ざかっているのだ。原発事故が無ければ避難する必要など無かった。避難先で何度、故郷を想って涙を流したことか。少し長くなるが、住宅の無償提供が今月末で打ち切られる〝自主避難者〟たちの怒りや哀しみを知って欲しい。


【悩み、苦しんで避難継続】
 「目の前で大臣に反論したいです」
 そう憤るのは、福島県郡山市から大阪府に避難している森松明希子さん。為政者こそ「意図的に現実を無視している」と語る。「『ふるさと論』の話では無いのですよ。被曝を国民に強いるのか否か、なのです。原子力発電を国策として進めてきた国は国民の命と健康を守るためにどう向き合うか、という話。『故郷を捨てるのは簡単』発言からもみられるように『ふるさと論』の話にすり替えられていて、被害の矮小化につながっているんです」。
 今村復興相の発言は、今月末の避難指示解除後も戻らずに避難を継続しようと考えている飯舘村や浪江町など避難区域の住民にも向けられている、と森松さんは考える。
 「区域外避難者(いわゆる自主避難者)の存在には、この6年間向き合ってこなかった。無視してやり過ごそうとして来たんです。そして今また、避難指示解除、帰還政策によって区域外避難者(いわゆる自主避難者)を生み出してしまい、そしてまた無視していこうということなのでしょうか」
 そもそも、なぜ避難しなければならないのか。今村復興相は最も重要な視点が欠けている。原発事故で放射性物質がばら撒かれた。無用な被曝を避けるために線源から遠ざかるのは当然の行動だ。福島県田村市から東京都内に避難中の熊本美彌子さんも「私たちが帰るには低線量被曝の健康被害が無いという立証が必要です。それがなされない以上、危険を避けて避難を続ける事には合理性があると思います。私たちは故郷を自らの意思で捨てたのではなく、原発事故によって故郷を去ることを余儀なくされたのです」と語る。
 「放射線への不安を抱えたまま、故郷を再生するために頑張れって、そんなことを強制されるいわれはありません。この6年間、慣れない土地で何とか暮らしを立てようと苦労してきたのに、また苦労を強いるのでしょうか。浜通りで最も帰還率が高いのは楢葉町ですが、それでも10%です。これが住民の意思です。この住民の意思を政治家は直視すべきです」
 福島県伊達市から北海道に避難した宍戸隆子さんの言葉も重い。
 「最初は衝動的に避難したかもしれない。でも戻ることを考えたとき、本当に安全か分からない所へ子どもを帰して良いのか、皆すごく悩んだと思う。もちろん住んでいた場所への愛着、人間関係、家族への愛着もあります。それでも帰れないと判断をすることが誰にとっても簡単なわけは無いんです」




誰も好き好んで故郷を離れたわけでは無い。全ては原発事故による被曝リスクを避けるため。だから避難を継続しているし、これからも継続するために住宅の無償提供を求めている

【「誰しもが戻りたい」】
 「今村復興相は福島に帰ることを前提としていますが、それは個々の避難者が選択する事だと思っています。『故郷を捨てることは簡単』」というのも、福島の人に対しては酷な発言です。私が住んでいたのは農村部ですが、どこの家も先祖たちが守ってきた土地に対する執着が強い。過疎ではありますが、祭りとソフトボール大会には若者が大勢戻ってくる土地柄です。都会に出ても片足はしっかりと故郷に残っています。じっちゃんばっちゃんは残っているし、誰しもが戻りたいですが、そうもいかない理由もあるわけです」
 そう語るのは、福島県福島市から広島県に避難した長野寛さん。「チェルノブイリ原発事故では、土壌の線量を測定して4段階に分け、残る人は残り、避難する人にはずっと住宅を保障したそうです。日本も、まず政府が原発事故による放射能被害があった事を認めるところから始めないといけません。今からでも県境や福島第一原発からの距離にとらわれずに土壌の放射能測定をして、避難の補償をやり直した方が良いと思っています」。
 福島県南相馬市から兵庫県に避難中の木幡智恵子さんは、復興庁に電話をかけて抗議したという。
 「怒りしかわきませんでした。故郷に帰りたい、戻りたい人の声しか聞いておらず、子どもたちのことも考えてない。東京で『大丈夫ですよ、安全ですよ、復興ですよ』と言うのであれば、大臣が家族を連れて福島に住めると思います。福島で暮らしてる方たちも、口に出さないだけで皆、気をつけて生活していると思いますよ」
 長谷川克己さん(福島県郡山市から静岡県に避難)も「国策で行なってきた原発が爆発して故郷を離れた人たちを、あろうことか加害者が慰め、果ては説教までする…。このような理不尽が許される国を、このまま子どもたちに引き継いでしまう無責任な大人であってはいけないと改めて感じました」と怒りを口にする。「昨年8月の時点で、既に『平成29年3月末で住宅の無償提供は打ち切り』との通知が届いています。その上での戸別訪問開始です。出口のない袋小路に避難者を追い詰めておきながら『単なる移住者になるのか、帰還するのか今すぐ決めろ』と選択を迫ることは、ギャングか追い立て屋かとさえ感じます」。
 福島県いわき市から関東地方に避難中の母親も、怒りがおさまらない。
 「故郷を簡単に捨てられないから皆、罪悪感を抱えながら避難しているのに、寄り添うどころか傷付けていることを大臣は全く意識していないところがまた腹立たしいです。住まいや貯金を奪われて生活してみないと分からないのでしょうか。しかもこれは、人災だということを忘れてはならない。加害者が勝手に決めるなと思います」




(上)自身の発言で〝自主避難者〟からの反発を招いた今村雅弘復興大臣。昨年9月には、帰還困難区域の除染について「出来る出来ないじゃないんです。とにかくやるんだ、ということです」と語っていた
(下)昨年8月には、山形県の吉村美栄子知事(右)が自ら「住宅無償提供の延長」を求めたが、福島県の内堀雅雄知事の強い意思は変わらなかった

【〝人でなし〟の安倍政権】
 怒りに震えているのは支援者も同じだ。
 〝自主避難者〟支援に奔走している「避難の協同センター」(東京都新宿区)世話人の瀬戸大作さんは「こんな冷酷な人間がトップの復興庁と、これまで政府交渉を重ねてきた。本当に虚しく、心が凍りつく」と語る。
 「生活困窮に陥り『自ら食事を1日1食に我慢し、子どもたちだけはしっかり食べさせていきたい。でも4月から家賃が払えない』。そんな〝自主避難者〟の悲痛な声が届かないのでは無い。悲痛な声に何も感じない〝人でなし〟の現政権に被害者が棄民化され、殺されていくんだ。国民は逆らわずに国の決めた事に従えって、そんな心の声が聞こえて来るようです」
 「避難の長期化は現実的でない」と住まいを奪われ、切り捨てられる〝自主避難者〟たち。福島県中通りから京都に避難した女性は「ふるさとも家も根付いたものがあった人達は、避難するのがとても大変だったということをそもそも分かっていない。放射線量が高くて廃棄物だらけの場所には『帰りたいけど帰れない』の。何も無かったら避難もしていないんだよ」と反論する。「避難先が生活の場になれば今度はそこが故郷のようになるんだよ、根付いてくるんだよ。コミュニティーが生まれ、学校も慣れ、戻ることができない理由が増えるんだよ」。
 やはり中通りから子どもを福島県外に〝自主避難〟させている母親も「故郷を捨ててまでも、避難してまでも、守らなければならないものがある事を私たちが気付いたのだということを、今村大臣たちも知らなければいけないと思う」と語る。長野県内に〝自主避難〟した父親は「この人はそもそも自主避難者の方々の話を聴いた事があるのか、どんな想いで避難生活を送っているのか直接聞いた事はあるのか。自主避難者が故郷を想わない日なんて無い。皆、故郷を愛しているに決まってる」と怒りをあらわにする。
 福島県郡山市から神奈川県に避難中の松本徳子さんは「本当の意味での私達の思いを理解は出来ないのだと思います。あの時起こした行動は間違ってはいなかったと思っていますが、家族バラバラ。知らない土地での生活がどういう事か。大人の私でも大変だったのに娘はもっと大変だったと思うと、私が起こした行動は最後まで責任を果たさなければいけない。娘のこの6年間の苦労を無駄な事としたくない。その一心で今、動いているように思います」と打ち明ける。
 被曝リスクの存在も避難の権利も認めないこの国のありようを象徴している今村発言。「福島原発かながわ訴訟」で原告団長を務める村田弘さん(福島県南相馬市から神奈川県)は、厳しい言葉で糾弾する。
 「こんな復興庁や復興大臣なら税金の無駄だ。2021年度と言わずに即刻廃止した方が良い」



※今村復興相のNHK「日曜討論」での主な発言
 「故郷を捨てるというのは簡単ですよ。だけど、そうじゃなくて戻ってね、頑張っていくんだという気持ちをしっかり持ってもらいたいし、そのためのいろんな施策は、新しい産業を持ってくるとかイノベーション・コースト等々、我々もやっていますから。出来る限りの生活インフラの整備もしますから是非、故郷をもう一回、取り戻してもらいたいなと、そういう気持ちをしっかり持ってもらいたいなと」

 「あの、これはねえ、時間との勝負ということもあるんですよね。早く解除したところはたくさん戻りましたね。しかし、いつになるかわからないというところでは、他のところで生活が出来ていますから家を建てた人もいます。子どもの学校の事もあります。だから、長期にわたって解決すれば良いじゃないかちゅう話は、これは現実的には私は合いません。おそらくもう、どんどん廃れていくと思います」


(了)
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鈴木博喜

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