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【自主避難者から住まいを奪うな】寄り添うふりして避難者切り捨て~空虚な「きめ細かく支援する」

「馬鹿の一つ覚え」と言っては言い過ぎか。都合の良い時だけ強権を発動する国は、今回に限っては「福島県が決めたこと」と繰り返す。9日午後、参議院会館で行われた自主避難者と若手官僚との交渉は、わずかな接点も見い出せないまま、平行線に終わった。「原発事故は人災か」などの質問に明確な回答は無し。もちろん、住宅の無償提供打ち切り撤回を求めても、前向きな答えは出ない。避難者数を減らし、4年後の東京五輪で復興を全世界にアピールするシナリオが着々と進んでいる。打ち切りまであと1年。避難者の悲痛な訴えも、エリート官僚の胸には届かない。


【定義ない「原発事故避難」】
 「帰還か定住かを選んでいただきたい」
 原発事故による「自主避難者」(政府の避難指示はないが、被曝のリスクを避けるために福島県外に避難した人々)はこれまで、何度となく福島県の意向調査に回答し、その度に、今後の住まいに関する希望は「住宅の無償提供継続」が最も多かった。署名も提出した。それでも、福島県は2017年3月末での無償提供打ち切り方針を撤回しようとしない。避難者たちは、打ち切りをやめるよう、国から福島県へ指導するよう求めている。だが、こうやって避難者に直接頭を下げられ、怒鳴られ、泣かれても、若手官僚の言葉は一貫して変わらない。
 「災害救助法の実施主体は地方値自体の首長なんです。だから、国がどうこう言える仕組みになっていないんです」
 内閣府・被災者行政担当の小川保彦氏は言う。復興庁の清水久子企画官も、あくまで無償提供打ち切りを前提として語った。「福島県と連携して、住宅だけでなくさまざまな支援をしていきたい。住民のニーズに詳しいのは地元自治体だ」。清水企画官は3時間近くの交渉で、「さまざまな機会を通じて」、「しっかりとご意見を伺う」、「いろんな場面で」、「福島県と連携して」という表現を何度口にしただろう。挙げ句には「避難の定義は明確にはしていない。各都道府県からあがってきた数字をもって避難者数としている。何をもって避難とするかは個々人の意識の問題になるので、正確に把握するのは難しい」と述べた。
 これには、穏やかな口調だった中手聖一さん(北海道)も、思わず「原発事故避難の定義も出来ていないで、どうやって避難者支援をするのか」と声を荒げた。交渉に同席し、この日の参院予算委員会で質問に立った福島瑞穂参院議員は「国は避難者の意向を把握してもいないのに住宅支援打ち切りを決定している。順番が逆だ」と非難した。


国による詳細な土壌測定を求めた宍戸俊則さん


【「人災かどうか、答える立場にない」】
 政府交渉に臨んだのは、2015年10月に発足した「『避難の権利』を求める全国避難者の会」(中手聖一、宇野朗子共同代表)。避難先は北海道や静岡、京都などバラバラ。それぞれの生活がある中、夜中までインターネットを使って会議をするなどして、ようやく交渉にこぎつけた。
 交渉では、中手さんが①住宅支援打ち切り方針を撤回するよう、国として福島県に働きかけること②避難者住宅保障策を、原発事故子ども・被災者支援法等に基づき国の責任で実施すること③年1mSv以上の被曝の可能性のある地域の住民には避難を権利として認め、医療・保養などの必要な具体的保障施策を行うこと─を安倍晋三首相や高木毅復興大臣らに宛てた要望書として提出。事前に送付していた6項目の質問事項に沿って進められた。
 しかし、まともな答えは何一つなかった。「ゼロ回答」だった。
 例えば「原発事故が人災であったとの認識を持っているか」との問い。
「判断する立場にない」
「答える立場にない」
 言質をとられたくないのだろう。経済産業省も原子力規制庁も、異口同音に明言を避けた。司会の長谷川克己さん(静岡県)は「一切、誠意が感じられない。いつも、こうやってのらりくらりだ」と怒りを露わにした。国は「事故を教訓として」、「反省をふまえて」とは答えるが、肝心なところははぐらかす。
 詳細な土壌測定を求めたのは宍戸俊則さん(北海道)。「測り方がおかしいと、国が福島県に指導するべきだった。2メートルメッシュで良いから、土壌を測って欲しい。砂ぼこりが舞うんだ。そもそも国が現状を把握してなくて、どうやって帰還しろと言うのだ」。
 同席した「福島の子どもたちを守る法律家ネットワーク」(SAFLAN)副代表の福田健治弁護士は「(住宅支援打ち切りは)本当に福島県が決めたことなのか。国が誘導したのではないか」と迫った。だが、復興庁の男性官僚は「国が打ち切りを指示したという事実はございません」、「国から誘導したことはございません」と否定した。
 また「福島県の支援策と避難者のニーズとの齟齬について、国としてどのように確認するのか」とも尋ねたが、清水企画官は「福島県のマッチングを注視していきたい」と述べるにとどまった。原発政策を推進してきた国が、ひとたび事故が起きると「注視する」側に回る。しかも、ミスマッチに対する具体的な対応策も持ち合わせていない。これには福田弁護士も苦笑するしかなかった。


抽象的な答えに終始した復興庁の清水久子企画官=参議院会館


【追い詰められる避難者たち】
 そもそも、原発事故がなければ必要のなかった避難。国が被曝のリスクを認めないから、原発からの距離に関係なく避難の権利を認めないから、避難者は今も有形無形の〝敵〟と闘い続ける。
 来月で小学5年生になる長谷川さんの息子は、クラスメートから「お前なんか福島に帰れ」、「原発が無くなったら電力が足りなくなって困るんだよ」などといじめられているという。小学校に行きたがらない息子は最近、妻に「僕だって、来たくて静岡に来たわけじゃない…」と明かした。だからこそ、国は人災であることを認め、避難の権利も含めた十分な支援をするべきだと考える。「これまでの国の支援策がきめ細かくなかったと持ち帰っていただけませんか」。しかし、官僚はここでもはぐらかした。「イエスノーで答えないから、みんなストレスたまってるんだよ!」。
 「どんな選択をした場合でも支援する」、「国は帰還を強制しない」と言いながら、国は福島県の住宅支援打ち切りを追認している。避難という選択を尊重するのならなぜ、帰還者だけに転居費用を補助する福島県の偏った施策を容認するのか。中手さんは「(来年の打ち切りに向けて)みんな必死に準備をしている。うちのカミさんも慣れない夜勤をして引っ越した。でも、準備したくても出来ない仲間がたくさんいる」と訴えた。
 「幼い子どものいる母子家庭では、保育園に預けて、ようやく週に1日働ける状態。それすらできない人もいる。国は被曝か貧困かの選択を迫っているんだ。今こそ国が前面に立たないと悲劇を生む」。
 宍戸さんの周囲にも母子家庭が多い。「昨晩も、泣きながら妻に電話をしてきた人がいた。避難していなければ、相談する人が周囲にいたんだ。それが避難者。実態も把握せずに政策を進めるな」。そして、こう懇願した。「今からでも遅くない。避難者が何を考えているのか、何に困っているのか聴いてください。避難者だって国民です」。
 「今日は第1回。今後も交渉を続けていく」と中手さん。避難者はもはや、うわべだけの抽象的な言葉など聞きたくない。



(了)
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鈴木博喜

Author:鈴木博喜
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