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【自主避難者から住まいを奪うな】無償提供きょう打ち切り。避難者の叫び「住み続ける権利ある。訴訟も辞さない」。支援者の怒り「生きるか死ぬかだ」

原発事故で、政府の避難指示が出ていない区域からの〝自主避難者〟に対する住宅の無償提供がきょう31日で打ち切られる。福島県の内堀雅雄知事は再三の求めにもかかわらず避難者との面会を拒否。当事者の声に耳を傾けず、全国の地方議会から提出された無償提供延長を求める意見書も無視して打ち切りを強行する。30日午後に参議院会館で開かれた集会では、訴訟も視野に入れながら「住み続ける権利」を主張して行く事が改めて確認されたほか、当事者が直面している窮状が報告された。把握できているだけでも3万人を超える〝自主避難者〟が、ついに住まいを奪われる。


【「〝わがまま〟では無い」】
 集会を主催した「原発避難者住宅裁判を準備する会」の世話人代表、熊本美彌子さん(福島県田村市から東京都に避難中)の怒りはもっともだった。
 「私たちはずっと苦しみの中にあります。なぜ被害者なのに苦しまなければならないのか。苦しむべきは国や東電であり、全く逆です。私たちには現在の住まいに住み続ける権利があるという事をアピールするために、この日を選びました」
 まるで督促状のような黄色い「意向調査票」を玄関に挟まれるなど、嫌がらせとも言える〝追い出し〟がずっと続いているという。打ち切り後はさらに〝わがままな避難者〟というレッテル貼りが強化されると予想される。
 誰も好き好んで福島を離れたわけでは無い。そもそも原因は原発事故だ。放射性物質がばら撒かれ、被曝リスクが生じなければ避難の必要も無かった。挙げ句、一方的に〝自主避難者〟と呼ばれた。国や福島県との交渉では先頭に立ち、メディアの取材にもたくさん応じてきた松本徳子さん(福島県郡山市から神奈川県川崎市に避難中)も怒りを口にした。
 「私たちはわがままを言っているのではありません。危険を感じたから動いた、娘を守るために避難を続けているのです。原発事故が無ければ、こうやってマイクを握って人前で話す事もありませんでした。私たちには選択の自由も生存権もあります。加害者に線引きされる事ではありません。原因を作った側があぐらをかき、被害者が切り捨てられていくのはおかしいです」
 今日の午前零時で帰還困難区域以外の避難指示が解除された飯舘村や浪江町、川俣町山木屋地区の住民にとっても他人事では無い。避難指示が解除されても戻らない住民は、そのまま〝自主避難者〟となるからだ。浪江町から福島市に避難している今野寿美雄さんもマイクを握った。「私も晴れて〝自主避難者〟になります。でも、何か悪い事をしてここにいるのではありません。私は子どもを守りたい。悪いのは国と東電です。今後『いつまで避難を続けているんだ』というバッシングも出て来るでしょう。私たち大人が責任をもって頑張りましょう」。
 福島県南相馬市から神奈川県横浜市に避難している村田弘さんも「自分たちの施策に従わない者は勝手にしろ、という事か。避難者は独りではありません。手をつないで行きましょう」と呼びかけた。




(上)「原発避難者住宅裁判を準備する会」世話人代表の熊本美彌子さん。「私たちには現在の住まいに住み続ける権利がある」と訴えた
(下)「私たちはわがままを言っているのではありません」と話した松本徳子さん。「私たちには選択の自由も生存権もあります。加害者に線引きされる事ではありません」=東京・永田町の参議院会館

【住まい決まらぬまま退去】
 「本当に大変な事になっている」
 住まいの問題を軸に避難者支援に奔走している「避難の協同センター」世話人・瀬戸大作さんの手は怒りで震えていた。福島県の内堀雅雄知事は、原発事故被害者団体連絡会(ひだんれん)などが提出した公開質問状に対する回答の中でも「これまでの意向調査や3回の戸別訪問等の結果により、避難指示区域外からの避難者の約97%については、4月以降の住まいの確定が見込まれています」と繰り返すが、瀬戸さんが日夜目の当たりにしている避難者の姿は、そんな甘いものでは無いからだ。
 「福島県の発表する数字は本当なのだろうか。疑問です。4月1日以降の住まいが本当に決まっているのか。仮に決まっていても家賃を支払えない人もいます。そういう人々を福島県の責任できちんと把握するべきです」
 先日も、福島県郡山市から神奈川県に避難している男性(46)からの〝SOS〟が「避難の協同センター」のホームページに寄せられた。雇用促進住宅で暮らしていたが、入居を継続するには家賃の3倍以上の月収を得ている事が条件となる。男性は1年半前に体調を崩し、働き口を失っていた。貯金も底をついた。福島県職員にも相談したが、新たな住まいを確保出来ないまま今月27日に退去。瀬戸さんが電話で話した際には「横浜市内の格安ホテルに泊まっている。1000円しか残っていない」と話していたという。
 「こういう避難者は『退去済み』としてカウントされていて、次の住まいが無い事にはなっていないはず。本当に生きるか死ぬかという人がいるんです。今からでも遅くない。国会議員は動いて欲しい」と瀬戸さん。公的支援が受けられるべく神奈川県内の支援団体と協力して動き始めた矢先、男性の携帯電話は電源が切れてしまったという。「自分で住み込みの仕事を探します」が最後のやり取りだったという。「電話がつながらなくなってしまった。とにかく連絡が欲しい。死んでしまう」。
 内堀知事の常套句は「避難者一人一人にていねいに対応する」だ。この男性は「ていねいに」対応してもらえたのだろうか。




(上)日夜、避難者支援の奔走している瀬戸大作さんの表情に〝自主避難者〟の置かれた窮状が表れていた。「本当に生きるか死ぬかという人がいるんです」
(下)参議院会館で開かれた集会。大口昭彦弁護士は「打ち切りは、泣かされている人がもう存在しないという『偽装』の最たるものだ」と国や福島県の姿勢を批判した

【「住宅の確保は命の確保」】
 集会に参加した50代女性は、福島県南相馬市から都内に避難し、国家公務員宿舎で暮らしている。「都営住宅も考えたが、成人した息子と二人暮らしのため応募資格を得られませんでした。今の住まいに2年間だけ有償で住み続けられるという事でいったんは喜びましたが、家賃は駐車場代も含めると8万円を超えてしまいます。しかも福島県の家賃補助の対象外です。私たちには戻る所も転居する所もありません。住宅の確保は命の確保だと思います。安心して生活出来る基盤が欲しいです」と訴えた。
 福島県いわき市から都内に避難中の40代女性は、小学生の2人の子どもと母子避難。ようやく雇用促進住宅に落ち着いた。子どもたちは学校にも慣れ、友達も出来た。都側の意向で雇用促進住宅の入居者は都営住宅には応募出来なかった。転校を強いたくないと近隣の民間賃貸住宅を捜したが、どこも家賃が高い。自力で現在の住まいで暮らし続けるには、24万円の月収が無いと要件を満たさない。「子どもを2人抱えて、これからどうしたら良いんだろう」と涙を流した。「子どもを守るために避難したのです。国も福島県もしっかりやっていただきたい」。
 福島瑞穂参院議員は「住宅無償提供打ち切りを覆せなかった点は、本当に申し訳ありません」と頭を下げた。しかし、避難者は途方に暮れてばかりもいられない。訴訟も視野に入れて動き出している。31日までに、都内の国家公務員宿舎、都営住宅、雇用促進住宅に入居している10世帯が「一時使用許可申請書」を都に提出。不許可処分が出された時点で異議申し立てや訴訟を起こす事を想定している。集会には「決して楽観できる闘いではありませんが、『生存権』を保障し、『個人の尊重』を宣言した日本国憲法に依拠し、歩んでいきましょう」との井戸謙一弁護士のメッセージも寄せられた。「原発避難者住宅裁判を準備する会」を支えている大口昭彦弁護士も「従前通りに住み続けるのは権利なんだ」と語った。
 熊本さんは、「声明」の中でこう訴えた。
 「私たちは平穏に生活する権利がある」
 「今回の原発事故は東電と国に責任がある」
 「私たち被害者には何らの責任もありません」
 〝被曝を勝手に恐れて、わがままを言っている〟という偏見や圧力をはねのけるべく、明日から新たな闘いが始まる。なぜ被害者がここまでしなければならないのか。日付や年度が変わっても、被曝リスクは無くならない。


※「避難の協同センター」への相談は070(3185)0311
「原発避難者住宅裁判を準備する会」は070(4388)2608


(了)
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プロフィール

鈴木博喜

Author:鈴木博喜
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