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【自主避難者から住まいを奪うな】川俣町議会が今村復興相の辞任求める文書を送付。「馬鹿大臣を放置出来ぬ」と全会一致。全国初、周辺自治体にも波及か

今村雅弘復興大臣が今月4日の記者会見で、原発事故による被曝リスクから逃れようと避難を継続している〝自主避難者〟について「本人の責任」、「裁判をやれば良い」という趣旨の発言をした事を受け、ついに福島県・川俣町議会が辞任を要求した。全会一致で合意した要求書を、7日に高橋道也議長名で安倍晋三首相と今村大臣に送付。復興庁によると、地方議会による今村大臣への辞任要求は初めてという。市民団体だけでなく、地方議会からも「NO」を突き付けられた今村大臣。他の議会が追随する可能性もあり、心無い発言の〝自己責任〟を取る日が近づきそうだ。


【「自主避難者を侮辱する発言」】
 川俣町議会事務局によると、7日付で送付した文書は「今村雅弘復興大臣の発言に対する抗議及び辞任要求について」。同日開かれた総務産業、厚生文教の両常任委員会に菅野清一町議(無所属)が提案。全町議が賛同した。本会議での審議を経ていないため、地方自治法99条に基づく「意見書」の形式は取らず、「高橋道也議長名での公文書」として送付したという。
 文書は「避難指示区域外から避難している方々の実情を全く知らないが故の発言」、「前橋地方裁判所の判決を念頭においたものであり司法判断を軽視する発言」、「三権分立の理解に欠けている」、「自主避難者が裁判に訴えなければならなかった事情を全く知らないが故の極めて軽率な発言であるとともに、自主避難者を侮辱するもの」などと今村大臣の記者会見での一連の発言を厳しく批判。「これまで三度にわたり自主避難者への住宅支援の継続を求めて来た立場から、本件の復興を担う大臣の発言として、これを看過することはできません」、「町議会として怒りを持って厳重に抗議し復興大臣の速やかな辞任を要求する」と結んでいる。
 復興庁の広報担当者によると、今村大臣の辞任を正式に求めた議会は川俣町議会が初めて。10日夕方時点ではまだ担当者の手元に文書は届いていないが、町議会事務局から大臣の辞任を求める文書を送付する旨の事前連絡はあったという。
 今村大臣に対しては、〝自主避難者〟の支援を続けている市民団体「避難の協同センター」などの呼びかけで、辞任を求めるインターネットでの署名が2万8000筆を突破。〝自主避難者〟自ら発言の撤回と謝罪、大臣の辞任を6日に要請したばかり。
 7日に開かれた記者会見で、今村大臣は「4日のこの記者会見の場で感情的になってしまったことにつきまして、改めまして、深くおわびを申し上げます。今後は冷静・適切に対応してまいります」、「誤解を与えてしまったということで、これについては反省をしているということです」、「裁判云々の話は、一般論として、物事の折り合いがつかない時にやるんでしょうということもありますねと、そして、現に前橋地裁のこともあって、そういうことを淡々と述べただけだ」、「撤回するということで御理解してもらって結構です」などと回答。一方で「引き続き誠心誠意、職務に当たり、被災者に寄り添い、復興に全力を尽くしてまいります」、「私はやっぱりしっかり仕事をして、是非一日も早い復旧・復興・再生に全力を尽くしていきたいというふうに思います」と辞任要求は〝拒否〟している。


今月8日、安倍晋三首相と共に福島県浪江町の「まち・なみ・まるしぇ」を訪れた今村雅弘復興大臣(左端)。とうとう福島県内の議会から辞任要求を突き付けられる事態に陥った

【自民からも辞任求める声】
 「幼稚園の入園式などで他の町議と顔を合わせた際に言われたんですよ。『あのままにしておく訳にはいかないべ、あの馬鹿大臣』って。自民党系の町議からも『辞任を求めるべきだ』という声があがったんです」
 文書取りまとめの中心となった菅野清一町議(66)=映像制作業=は、避難先の福島市内で語る。
 辞任要求でも示されているように、川俣町議会はこれまで2度にわたって〝自主避難者〟に対する住宅の無償提供継続を求める意見書を国に提出してきた。打ち切り直前の3月27日にも「川俣町でも打ち切り対象世帯は86世帯を数えている」、「自助努力で避難生活をつないでいる一人親避難者にとっては、(住宅の無償提供が)唯一の命綱」、「避難者への住宅支援は本来、『原発事故子ども・被災者生活支援法』に基づく制度の確立によってなされるべき」などとして、住宅無償提供打ち切りの撤回・凍結を求める3度目の意見書を提出したばかり。その矢先の大臣発言だった。
 「何で被曝リスクから逃れる事が自己責任なんだ。しかも本来、一般公衆の被曝線量は年1mSvなのに勝手に年20mSvに引き上げて安全だと言っている。そもそも行政区分で(避難指示区域を)区切る事自体がおかしいんだ。日本人は農耕民族だから土地への愛着が強く、移住はなじまない。国はそこを巧みに利用した」
 町議の中には本会議を開くべきだとする意見もあったが、それには早くても一週間は要する。「安倍首相の事だから、早く辞めさせると思った。復興大臣なんてどうでも良いポストなんだろうし」と菅野さん。すぐに複数の文案を作り、全町議の合意を取り付けた。
 浪江町に接する山木屋地区に生まれ育った。同地区も3月31日で避難指示が解除されたが「戻るのは2割程度ではないか」。解除を祝うような雰囲気では無く、行政区長会でも「式典などやる必要は無い」との結論に達したという。避難指示の有無にかかわらず土壌汚染は残ったまま。自身も福島市内に新たな住まいを確保した。
 「司法の場(前橋地裁)であれだけの判決が出ているのに…」と怒りを口にした菅野町議。「うちが一番、議会らしいんじゃないか」と少しだけ表情を緩ませた。


福島県・川俣町議会が今村雅弘復興大臣に突き付けた「辞任要求」。「自主避難者が裁判に訴えなければならなかった事情を全く知らないが故の極めて軽率な発言であるとともに、自主避難者を侮辱するもの」などと厳しく批判している

【実態と異なる「ていねいな対応」】
 とうとう〝身内〟の地方議員からも見離された今村大臣。4日の会見で、唇をわなわなと震わせてフリー記者・西中誠一郎氏(52)を怒鳴り付けた勢いはすっかり影を潜めた。国会での答弁もしどろもどろ。10日午前に開かれた衆議院・決算行政監視委員会第一分科会でも、池内さおり議員(共産党)の厳しい質問に、官僚の作った文書を力なく読み上げるばかり。時折、言葉に詰まりながら「除染などをやってきたり、いろんなインフラの整備、生活環境の整備等をやってきて、一日も早く福島に戻って生活が出来る仕組みを一生懸命やってきた」、「一律にこうしなさい、と言う事は出来ないと承知している」、「出来るだけそれぞれの皆さんに寄り添って、ていねいな対応をしていきたい」などと答弁した。
 一方で「2年ぐらい前から、どういった対応にするかという方針を福島県を中心に内閣府とも協議しながら決めて来て、無償供与をやめるという事になった」、「97、98%の方が住まいを確保している」、「線量も低下した、生活環境の整備も出来てきた。そういった事をていねいに説明してるんです。福島県も一生懸命なんです」などと従来の説明を繰り返すばかりで、住宅の無償提供延長も〝拒否〟した。「戻っていただくための環境整備等々も進んできた、諸般の状況を福島県と国が一緒になって『これでいける』と判断をした、という事であります」。
 しかし、相変わらず今村大臣の発言には「原発事故による放射性物質の拡散が無ければ避難する必要など無かった」という視点が欠けている。また池内議員も指摘しているように、今村大臣の言う「ていねいな対応」が実は高圧的・脅迫的な〝追い出し〟だった事はこれまで本紙も報じてきた。国も福島県も「97%が新たな住まいを確保出来ている」と胸を張るが、現場で〝自主避難者〟とに本当の意味で寄り添っている支援者たちは「やむなく退去したり新たな住まいを契約したりしたものの、家賃を支払えるめどが立っていない避難者もいる」と怒っている。勝手に期限を決めて無償提供を打ち切り、強引に現在の住まいから追い出しておいて、都合が悪くなると「避難者が自らの主体的な判断で対応される」と〝自己責任論〟に収れんされては、当事者の怒りが収まらないのも当然なのだ。



(了)
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鈴木博喜

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