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【山林火災と放射性物質】十万山から14km、田村市都路でセシウム濃度4倍に。「ちくりん舎」が測定。林野庁は現地調査するも大気中への二次拡散は調べず

福島県浪江町の帰還困難区域で4月29日に発生した「十万山」の山林火災で、NPO法人市民放射能監視センター「ちくりん舎」(東京都西多摩郡)が放射性物質の二次拡散について測定・分析を進めている。14km離れた田村市都路で、大気中の放射性セシウム濃度が火災前と比べて約4倍になった事が既に分かっており、出火直後に複数設置したリネン(麻の布)の分析を急ぐ。林野庁は今月17、18の両日に現地調査を実施したが、土壌流出の調査が中心。福島県の緊急モニタリングも終了しており、「ちくりん舎」による調査は、山林火災による放射性物質の二次拡散を知る上で重要なデータとなりそうだ。


【「飛散の可能性は十分ある」】
 「ちくりん舎」副理事長の青木一政さんによると、火災の起きた「十万山」から直線距離で約14km離れた田村市都路古道に、福島県放射線監視室が測定に使ったのと同じ「ハイボリュームエアダストサンプラー」を設置。発生から4日経った今月3日19時から、鎮火翌日の11日5時にかけて178時間にわたって大気中に浮遊する粉じんを採取。その結果、1立方メートルあたりの放射性セシウム濃度(134、137の合計)は0.025ミリベクレル(mBq/㎥)だった。
 同じ地点で2016年12月27日から今年1月3日にかけて163.5時間にわたり測定をした際の結果は0.006mBq/㎥だったため、山林火災後の測定値が4倍以上、上昇していることになる。青木さんは「このデータだけでは山林火災の影響と断定する事は出来ないが、火災の影響で飛散した可能性も十分に考えられる」と分析している。
 実際、福島県が実施した緊急モニタリングでも、浪江町の「やすらぎ荘」(山頂からの距離は約2.5km)で3.59mBq/㎥(8日10時17分~13時)、双葉町の「石熊公民館」(山頂からの距離は約3.5km)では29.06mBq/㎥(12日10時57分~14時29分)の放射性セシウム濃度が測定されている。消火活動中は浪江町でほとんど雨が降らず、1日に0.5ミリの降雨が観測されたのみ。乾燥に加えて風も強く、8日に最大瞬間風速20.3メートルの強風が吹いたのをはじめ、連日のように最大瞬間風速10メートルを超える風が吹き荒れていた。
 青木さんらは、田村市都路での大気浮遊じん測定を再開。その結果もふまえて改めて放射性物資の二次拡散について検討するという。さらに、南相馬市の市民団体「ふくいち周辺環境放射線モニタリングプロジェクト」の小澤洋一さんたちの協力を得て、火災発生直後に浪江町内の複数地点にリネン(麻の布)を設置。既に回収を終えており、どの程度、放射性物質が吸着しているか分析を進めている。




NPO法人市民放射能監視センター「ちくりん舎」の測定では、十万山から約14km離れた田村市都路で大気中の放射性セシウム濃度が山林火災前と約4倍に上昇していた。現在、リネンに吸着した放射性物質の分析を進めている。

【「昨年調査の域出ない」】
 市民団体が精力的に調査を進める中、福島県放射線監視室は鎮火から一週間後の17日で緊急モニタリングを終了。舞い上がりによる大気への二次拡散に関する調査をいったん打ち切った。「1つ言っておきますが、あれだけ空間線量の高い所に365日滞在して吸い込んでも、公表した程度の数値です。原発でのマスク着用基準の1万分の1程度ですから御心配には及びません」(放射線監視室)。
 打ち切り後の対応について、放射線監視室の担当者は「16日にわれわれとJAEA(国立研究開発法人日本原子力研究開発機構)、国立研究開発法人国立環境研究所福島支部(三春町)の三者で協議。火災によってどの程度、周辺環境に影響があるのか、放射性物質は火災によっても固定されていると言って良いのか、沢水と一緒に流出しないのか、などを調べて行こうという申し合わせは出来た。放射性物質の組成成分を測る事で、火災由来なのか元々周辺土壌に存在していたものなのかも調べて行く。数値の公表などをしていないだけで何もしなくなったわけではない。いつまで、という具体的なめどは立っていないが、われわれはエビデンスに基づいて語るしかないので、調査は続けて行く」と話す。内堀雅雄知事が今月8日の定例会見で口にした「有識者による評価」がこれだった。
 一方、林野庁は17、18の二日間にわたって現場に立ち入り調査。ホームページでは、調査の目的を「火災の跡地における森林内の空間線量率や放射性物質の濃度等の現況を把握するため」と説明し、「樹皮(立木)の放射性物質濃度」、「落葉層の放射性物質濃度の調査及び蓄積量」など5項目を挙げている。林野庁国有林野部の担当者は「放射性セシウムは土壌に多く蓄積されているので、雨などによる流出の兆候が無いかを調べ、1カ月後くらいには結果を公表出来るのではないか」と語るが、実際には現場が国有林のため、火災による木々の消失面積など「被害確認が中心」(林野庁国有林野部)。放射性物質に関しても、昨年3月と4月に福島県内2カ所の山林火災(伊達市霊山町、南相馬市原町区)後に実施した調査( 本紙5月12日号参照 )と同じ項目にとどまり、大気中への二次拡散という観点では調べないという。
 結局、国の「調査」でも、特に延焼中を中心に放射性物質の二次拡散があるのかどうか、吸入などによる内部被曝の危険性については解明されないままなのだ。




(上)汚染の度合いは浪江町とは異なるが、福島市の「小鳥の森」も残念ながら汚染されてしまった森。山林火災による放射性物質二次拡散の懸念は、何も帰還困難区域に限った話では無い
(下)汚染地での山林火災は、大気中への二次拡散に加えて土砂流出による二次拡散の恐れも抱える=福島市伊達市霊山町の山林火災現場で今月10日に撮影。手元の線量計は0.5μSv/h超

【汚染土砂流出の懸念も】
 「震災や原発事故の有無にかかわらず、森の中では火の取り扱いは厳重に注意しています」。福島市の「小鳥の森」(52ヘクタール)で森林や野生動物の保護に従事しているレンジャーは語る。浪江町の帰還困難区域とは汚染の度合いが異なり同列には語れないが「とにかく森を燃やさないようには気をつけています。以前から炭焼きも行っているのですが、原発事故後は山形県や会津地方などから取り寄せた木材を使うようにしています」という。
 林野庁は「実証実験により、薪1kgを燃焼させると灰5g、木炭1kgを燃焼させると灰30gが残り、薪及び木炭に含まれていた放射性セシウムの約9割がその灰に残るとのデータが得られました。 これは、灰1kg当たりの放射性セシウムの濃度が薪1kgと比べて182倍、木炭1kgと比べて28倍となることを意味します」として「調理加熱用の薪として利用できる放射性セシウム濃度を40Bq/kg以下、木炭として利用できる放射性セシウム濃度を280Bq/kg以下」との基準を設けた。
 避難指示解除区域での野焼きに関しては、内閣府が「周辺への放射性物質の飛散程度、植物への付着・移行が明確でない」として、実証実験が終わるまで自粛するよう求めている。2012年には、農水省や林野庁、水産庁が連名で「薪、木炭等の燃焼により生じる灰の食品の加工及び調理への利用自粛について」という通知を食品団体や都道府県などに出している。燃焼による放射性物質の二次拡散は、依然として解明途上にあると言って良い。しかし、行政がデータの蓄積を放棄し、市民団体が代わって役割を担っているのが実情だ。
 「小鳥の森」のレンジャーは、放射性物質を含んだ土砂の流出を懸念する。
 「これから湿度が上がるし、風で舞い上がる心配はそれほど無いのではないか。むしろ焼失によって土砂流出の危険が高まった事が心配です。森林が健全に維持されていれば放射性物質は森林内にとどまるが、大規模火災で状況が変わっているので大雨などで汚染された土砂が生活圏に流れ出る可能性はあると思います」
 実際、浪江町では13、14の2日間で計99ミリの大雨が降った。大気飛散と土砂流出。「生活環境は概ね整った」として避難指示が部分解除された浪江町は、新たなリスクを抱える事になった。



(了)
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鈴木博喜

Author:鈴木博喜
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