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【ふるさとを返せ 津島原発訴訟】「福島に帰れ」「あだ名に『税金泥棒』」。群馬訴訟の丹治杉江さんが津島原告団総会で語った〝自主避難者〟の現実。

原発事故で帰還困難区域に指定された福島県浪江町津島地区の住民たちが国や東電に原状回復と完全賠償を求めて起こした「ふるさとを返せ 津島原発訴訟」の原告団総会が27日午後、福島県二本松市で開かれた。今野秀則さんが原告団長に再任されたほか、来春の現地検証を裁判所に求めるなどの弁護団方針が改めて説明された。3月17日に前橋地裁で判決が下された「群馬訴訟」原告の丹治杉江さん(福島県いわき市から避難)が講演。福島県から群馬県に〝自主避難〟した人々の受けた差別や誤解、偏見、住宅無償提供打ち切りに伴う苦労などを語った。津島訴訟の次回口頭弁論期日は7月14日14時。


【住宅打ち切りで「もう帰れ」】
 避難指示区域の内と外。政府による一方的な線引きで立場は異なってしまったが、避難先での理不尽な扱い、裁判の原告としての苦労は同じだ。「前橋に避難して、たくさんの仲間が出来て本当に良かったと思う。でも一方で、本当に福島の皆さんに申し訳ない。後ろめたい気持ちでいっぱいです。〝自主避難者〟の苦しみを今日は少しだけ、皆さんとは少し立場が違うけれども、同じ苦しみを持っているんだ、逃げた者もつらいんだということをお話しさせていただきたい」。丹治さんは津島訴訟の原告たちに語り始めた。
 裁判を通して、国や東電は一貫して低線量被曝のリスクを真っ向から否定した。「皆さんも御承知の通り放射線量の話になると、肥満や野菜不足の方がずっと身体に悪い、たばこを吸ってたらもっと悪い、低線量長期被曝なんかどうってことないですと堂々と言いますからね。本当に腹が立ちます」。
 群馬訴訟では、他の原発避難者集団訴訟と異なり原告団を結成する事が出来なかった。「差別、区別、いじめがあって自分が福島から逃げてきたという事をどうしても言えない。そういう原告ばっかりなんです」。メディアに登場するのは丹治さんばかり。顔や名前をさらせば叩かれる。丹治さん自身も「(いわきから前橋に)引っ越して来るにあたって、いくらもらってきたんだい」、「ずいぶん賠償金もらってきたんだろうねえ」と好奇の目で訪ねられるのは日常茶飯事。車を買い替えれば「裁判やってずいぶん金が出たんかい」と言われた。「自主避難者も区域内避難者もみんな苦しい。お金もらってある意味当たり前です。避難先の人々は『もっともらいなさい』って応援するべきなのに、ほんのわずかなお金をもらったことにやっかみがある」。悔しさが募る。
 大人の偏見は子どもにも広がる。「税金泥棒」と酷いあだ名を付けられた子ども。「近づくな」などと言われているのを黙認する教師。「横浜での〝避難者いじめ〟が報道された時に皆さんも思ったと思いますけれども、群馬でも『何を今さら』という声もありました」。そこに追い打ちをかけるように今年3月末で住宅の無償提供が打ち切られた。「もう帰って良い地域なんだから帰りなよ」、「いつまで家賃タダで住んでるんだ」という言葉を浴びた。「お前たちは風評被害を広げている張本人だ。もう出て行け」、「福島を想うんだったら帰るのが福島県民の義務だ」などと玄関ドアに貼られた人もいた。


いわき市から群馬県前橋市に〝自主避難〟した丹治杉江さん。被曝リスクや避難の合理性を認めない国の施策によって避難者がどれだけ偏見や差別を受けているかを語った=二本松市の福島県男女共生センター

【「放射能に色があれば…」】
 丹治さんは言う。「もし放射能に色や匂いがあったらこんな苦しみは無いと思うんですけれども、放射能は見えない匂わない。そして、国は20mSvまでは安全などと言って私たちの気持ちを逆なでする。避難した人たちは日々小さくなって、福島から来たという事を隠し続けて暮らしています」。福島から来た、という事を〝消す〟ために4回も転居を繰り返した人もいる。「ふるさとを返せ、ふるさと喪失がつらいと片方で言いながら、片方では自分が福島県民である事を隠さなければ暮らせない」。哀しいがこれが現実だ。
 前橋地裁の判決は国や東電の過失責任を認めたものの、損害賠償の点では不十分だった。45世帯137人の原告が認められた賠償は、合計でわずか3800万円。少ない原告は7万円しか認められなかった。それでも世間は誤解する。「地域の町内会長が飛んで来て「3800万もらったんだってねえ」って私に言うんです。テレビの報道をちゃんと聞かないと、3800万を私1人がもらったと誤解してしまう人がいるんです。ふるさとを追われた私たちは賠償金をもらって当たり前なのに、ほんのわずかな金に対してもカネ、カネと言われる」。
 住宅の無償提供打ち切りで市営住宅への入居を希望する避難者の前に、大きな壁が立ちはだかった。「市営住宅に入る要件に「地元の2人以上の保証人」というのがあるんです。避難して来て誰も知り合いなどいないのに、保証人を2人も見つけなきゃいけないなんて、これは大変な事です」。理解ある地元県議の協力も得て行政と何度も交渉した。ほとんどの避難者が新たな住まいを確保する事は出来た。「一応、出来ました。でも好き好んで避難したわけでは無いのに、何でこんな仕打ちを受けないければいけないのか。許せません」。前復興大臣の発言など論外だ。
 群馬訴訟の原告たちは控訴。東京高裁に場を移して裁判は続く。周囲の偏見や差別はもうこりごりだ、と原告は大幅に減って70人になる。「皆さんより半歩早く高裁で闘う事になりました。本当に頭に来ちゃうことばっかり。私たちの訴えがまっとうに通る社会をつくるのは至難の業だと思うが、未来の子どもたちのために力を尽くさなければいけない。御一緒に頑張っていきましょう」と丹治さんは締めくくった。
 

「裁判官による現地検証が必要。来春を目標に弁護団で特別チームをつくって準備を進めている」と語った白井劍弁護士

【「来春にも現地検証を」】
 原告団総会では、今野秀則さんが原告団長に再任された。「ふるさとは荒廃が進んでいる。国は、帰還困難区域の一部だけを除染して済まそうとしている節がある」と、原状回復を改めて求めて行く決意を語った。浪江町議でもある馬場績さんは「前回期日での更新弁論で、東電は『もう賠償金は支払った。1人1450万円も払ったから十分だ』と主張した。国も『過失責任は無い。津波予見も原発事故を防ぐ事も出来なかった』と開き直っている。許せない」と怒りを口にした。
 弁護団の白井劍弁護士は「地道に働きかけて世論を喚起するする事が必要だ」と法廷外での活動の重要性を説明。来年3月までの口頭弁論期日が決まっているが、「早い段階で裁判官に実際に津島に足を運んでもらいたいと考えている。原告本人尋問の前に実施すれば、裁判官の理解が深まるはずだ。来春の現地検証を目標に弁護団で特別チームをつくって準備を進めている」と話した。既に進行協議でも提案したという。
 「津島訴訟」は全国の原発訴訟の中では後発で、原告団が結成されたのが2015年5月。これまでに7回の口頭弁論が開かれたが「6次提訴合計で原告数は669人に達した。津島地区の住民の半数が原告になっている。これは重い」と白井弁護士。法廷では原告本人の意見陳述だけでなく、かつての津島地区の映像をまとめたDVDも使いながら、原発事故によって奪われたものの大きさを訴えてきた。
 白井弁護士は「国や東電の狙いはあきらめさせる事。いつかは帰還困難区域も除染すると言いながら、住民があきらめるのを待っている。決してあきらめない」と呼びかける。口頭弁論期日のたびに郡山駅前でマイクを握り、福島地裁郡山支部の周辺をデモ行進し、法廷では意見陳述を行う。原告たちの負担は軽くないが決意を新たに闘って行く。
 次回期日は7月14日14時。以降、年内の口頭弁論は9月22日、11月17日に開かれる予定だ。
 


(了)
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プロフィール

鈴木博喜

Author:鈴木博喜
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大手メディアが無視する「汚染」、「被曝」、「避難」を追い続けています。

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