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被曝リスクに鈍感な横須賀市教委。埋設した市立養護学校の除染土、今なお1万Bq/kg超。市議の追及に教育長「当時の空間線量低かった」「畑の作物検査せず」

被曝リスクから子どもたちを守ろうとしないのは、福島の自治体ばかりでは無かった。神奈川県横須賀市が2011年の学校除染で生じた埋設除染土を改めて測定したところ、1校の除染土が今なお1万Bq/kgを超えている事が分かった。市議会で「当時の在校生が被曝した可能性がある」と指摘を受けても、市教委は「空間線量は低かった」などとして静観する構え。今や空間線量だけで被曝リスクを語れないのは〝常識〟だが、市教委に土壌調査を行う意向は無く、学校敷地内で採れた作物を子どもたちが食べたか否かも分からないまま。被曝リスクに対してあまりに鈍感な市教委。これで本当に子どもたちは守られるのか。


【「当時の追加被曝無い」】
 問題となっているのは、横須賀市立養護学校(同市岩戸)。福島第一原発の爆発事故に伴う放射性物質の拡散を受け、横須賀市教委は2011年11月に市立学校敷地内の除染を実施。発生した土などを各学校敷地内に埋設していた。それらを下水処理場「下町浄化センター」(同市三春町)に移設する事を前提に、今年に入ってセンター周辺住民の同意を得るために各学校に埋設した除染土の放射性濃度を初めてサンプル測定。その結果、埋設した43校のうち養護学校の2つの検体で1万6200Bq/kg、1万2700Bq/kgの放射性セシウム(134、137合計)が検出された。養護学校では除染土が3つの土のう袋に入れて埋設されているが、そのうちの1つを掘り返して中身を測ったという。測定は外部の調査会社に委託された。
 藤野英明市議(無会派)は「6年経ってもこれだけ高濃度なら、半減期から推計すると2011年当時は3万Bq/kgあったはずだ」と問題視。自身が所属する「教育福祉常任委員会」の開催を急きょ要請し、5月22日に教育長、学校管理課長が出席して開かれた。議会事務局によると、今年5月から通年議会が導入された事でこのような常任委の開催が可能になったという。
 しかし、青木克明教育長は「空間線量を測っていたが健康被害を及ぼすような値では無かった」との答弁に終始。しかし、2011年11月21日の測定では、校舎屋上で1.12μSv/h、0.63μSv/h、0.42μSv/hを計測。校門側溝でも0.52μSv/hあった。最も低かったのは「いも畑」で0.06μSv/hだった(いずれも地表1センチ)。菅野智学校管理課長も「最も高かった校舎屋上にしても雨水などで集約された結果だし、子どもたちが屋上に行く事も無い。肢体不自由の子どもたちが多く1日の屋外活動時間も多くて1時間程度。通学もスクールバスによる送迎が多い。児童・生徒や教職員などの追加被曝は考えにくい」との見方を示した。




学校敷地内の一角に埋設された除染土が1万Bq/kgを超えていた横須賀市立養護学校。6年前は3万Bq/kgを超えていたとみられるが、市教委は「当時から空間線量が低かったので児童・生徒などに追加被曝は無かった」との見方を曲げていない

【測らずに「8000Bq/kg超えぬ」】
 実は青木教育長は昨年9月23日の市議会本会議で「本市は放射性物質汚染対処特措法に基づく『汚染状況重点調査地域』の指定を受けていないため、埋設されている除染土は通常の廃棄物として取り扱える」と答弁していた。測りもせず想像だけで答弁し、測ってみたら指定廃棄物の基準となる8000Bq/kgどころか1万Bq/kgを超えていた。
 常任委で藤野委員から「虚偽答弁だったのではないか」と問われると、青木教育長は43分の1校で認識が誤っていたという事は認めるが、私の中では精一杯、誠実に答弁した。虚偽の答弁をしたという発言は大変心外だ」と〝逆ギレ〟。藤野議員は5月31日午前の市議会本会議でもこの問題を取り上げたが、青木教育長は「全ての学校敷地が高濃度に汚染されていたわけでは無い」、「空間線量の低い地点の真下の土壌は汚染が低い」など、従来の見解を繰り返した。本会議では、小室卓重議員(無会派)も教育長の見解を質したが「原発事故直後は一時的にモニタリングポストの数値が上がったが、その後下がり、人体に影響無い状態が続いている。当時にさかのぼって検証する必要は無い」との答弁に終始した。
 しかし、空間線量だけで被曝リスクを語れないという考え方は今や〝常識〟だ。
 「子ども脱被ばく裁判」の第10回口頭弁論(今年5月24日、福島地裁)では、原告側代理人の井戸謙一弁護士が「土壌に含まれる放射性微粒子が風で再浮遊し、それを空気と一緒に体内に取り込んでしまう」、「空間線量だけで被曝リスクを考えるのは間違いで、土壌汚染のリスクを重視するべきだ」などと陳述。福島県南相馬市の住民が起こしている行政訴訟でも、南相馬市鹿島区と原町区での独自の土壌調査で、全196地点のうち、放射線管理区域の基準となる1平方メートルあたり4万ベクレルを下回ったのはわずか2地点のみだった事が第6回口頭弁論で明らかにされている(今年1月19日、東京地裁)。
 教育長は「汚染状況重点調査地域」の指定を受けていない事を盛んに根拠として挙げるが、環境省水・大気環境局の「除染チーム」担当者は電話取材に対してこう語った。
 「指定は特措法に基づく除染になるかどうかという事であって、指定されなかったからといって、子どもたちの無用な被曝を避けて保護者に安心してもらう取り組みを否定するものでは無い」




(上)空間線量が低かった事を理由に「原発事故後の市教委の対応に問題無かった」「子どもたちの被曝は無かった」との見方を示した青木克明教育長
(下)5月22日の教育福祉常任委員会で「6年経っても高濃度なら、当時の在校生に無用な被曝をさせてしまったのではないか」と市教委の姿勢を質した藤野英明市議=いずれもyoutubeより。議場での撮影を拒まれたため

【「文書廃棄で畑の野菜食べたか不明」】
 養護学校では敷地内の畑で栽培した野菜を調理実習などに利用しているが、2011年は食用に使わなかったものの、2012年と2013年に調理実習などで子どもたちが食べたかどうか分からないという。「調理実習の記録文書が3年で廃棄されるため分からない」(吉田雄人市長)。青木教育長も「当時の教職員に確認したが記憶があいまいで確認出来なかった」と答弁。しかも、「横須賀で生産された野菜などが放射能汚染を理由に出荷制限されていなかった」などを理由に、当時は畑で採れた作物の検査を実施していなかった事も本会議で明らかになった。吉田雄人市長も「畑の作物について当時、議論した記憶は無い」と答弁。市長、教育長ともにあまりにも被曝リスクに対して鈍感と言わざるを得ない。予防原則に立つ事も忘れている。「子どもの口に入る物について学校現場が把握していないのは問題だ」(藤野議員)。
 藤野議員は31日の本会議で「後に大げさだったと笑われても構わない。放射能対策はそのくらいでちょうどいい」と市教委に慎重な対応を求めたが、市教委は当時の在校生の保護者や教職員たちに今回の測定結果を連絡する事に消極的だ。市教委が除染したのが原発事故から8カ月後。福島と違って横須賀では学校ごとにモニタリングポストが設置されているわけでは無い。「除染作業をした当時のデータしか持っていない。それ以前に児童生徒がどれだけ被曝をしているのか。健康被害がどうかと問われても、答えようが無い」(菅野学校管理課長)。であればなおさら、被曝させたかも知れないという前提に立ってあらゆる手段を講じるのが行政の役目では無いのか。
 青木教育長は本会議で「子どもの安全を第一義的に考えなければならない」と語った。しかし、実際には安全だという前提で無作為が続き、後から後から当時の被曝リスクが表面化している。市教委は養護学校の除染土を下町浄化センターに移設したい考えだが、「指定されても現状の保管方法に変わりは無く、逆に搬出に制限が生じるなどのデメリットがある」として国への指定廃棄物の申請はしない方針。



(了)
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プロフィール

鈴木博喜

Author:鈴木博喜
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