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【自主避難者から住まいを奪うな】「出て行け」の圧力に負けぬ。「避難継続・住み続ける権利ある」。家賃補助支給遅れにも怒り~米沢で「支援する会」発足

原発事故による〝自主避難者〟の「避難の権利」を守り、住まいの確保などを支援しようと「原発事故避難者を支援する会」が3日、山形県米沢市で設立された。設立会見に出席した避難当事者は、明け渡しを再三求められている雇用促進住宅入居者の現状や、福島県からの家賃補助金支払いが遅れている事を報告。雇用促進住宅の入居者は、裁判も視野に入れながら8世帯が継続入居を求めているという。会見後に講演した海渡雄一弁護士は「『子ども被災者支援法』がうたった被害者の自己決定権が踏みにじられている」と住宅の無償提供打ち切りを批判した。


【「生存権認められる社会に」】
 米沢市内で開かれた記者会見で、支援する会代表の小口裕之さん(山形県平和センター議長)は「まだ2000人を超える方々が山形県内に避難している。原発事故を風化させてはいけないと避難者支援を続けてきたが、6年経っても状況は何ら変わっていない。3月に福島を訪れたが、除染廃棄物の入ったフレコンバッグが庭などに置かれている。原発事故そのものも収束していない。それなのに避難指示解除や帰還が進められている」と国や福島県の姿勢を批判。
 今年3月末で〝自主避難者〟向け住宅の無償提供を福島県が打ち切った事に対しては「無償提供の継続を求める意見書の提出を地元議会に働きかけた。しかし福島県の方針を変える事は出来なかった。残念だ」。「どこまで出来るか分からないが、精一杯支援したい。生存権が認められるような、原発事故の責任を国や東電が果たすような社会にしたい」と今後の方針を語った。
 山形県広域支援対策本部の発表によると、今年4月6日現在、福島県から山形県内への避難者は2159人で、震災避難者全体の90%を占める。2012年5月には1万2000人を超えていたので1/6程度に減った事になるが、それでも2000人を上回っている。福島県からの避難者のうち、80%は政府の避難指示が出ていない区域からの〝自主避難者〟で、中でも「母子避難世帯」の割合が28.6%にのぼる。小口代表が「住宅問題は喫緊の課題」としているのはそのためだ。
 「支援する会」のまとめでは、住宅の無償提供が打ち切られた直後の今年4月には428人の〝自主避難者〟が福島に戻った。NPO法人「ビーンズふくしま」(福島市矢剣町)が今年3月に発行した冊子「みんなのひとしずく」の中で、山形県天童市に母子避難した母親は「避難が一番良い事で、出来れば続けたかったが、経済的な理由で続けられなかった」と福島に戻った理由を綴っている。「山形でずっと生活出来るのであればその方が良いと思います。私はそうしたかったな」と複雑な想いを吐露している母親も。住宅を含め、公的な支援制度が確立していれば避難を継続するという選択も出来たのだ。しかし、現実の政策は、政治のあるべき姿と逆行している。


「原発事故避難者を支援する会」代表に就任した小口裕之さん(右)。福島市から米沢市に避難中の武田徹さん(左)も加わり、住宅問題を中心に原発事故避難者を支えていく=米沢市置賜総合文化センター

【「打ち切りには無理があった」】
 会見に同席した武田徹さん(「原発被災者フォーラム山形・福島」代表)は、避難当事者の立場で「支援する会」に副代表として加わった。武田さんは米沢市内の雇用促進住宅で暮らしているが、福島県が〝自主避難者〟向け住宅の無償提供を打ち切った事を受け、管理する「独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構」や「一般財団法人SK総合住宅サービス協会仙台支所」から明け渡しを求める文書が何度も届いている( 2017年1月31日号参照 )。
 そのたびに入居継続と家賃の東電への請求を求める文書を逆に送付していたが、ここに来て海渡雄一、河合弘之、福田健治の各弁護士に代理人を依頼。5月25日付で再び明け渡しを求める「催告書」が届いたため、雇用促進住宅に住み続ける権利がある旨の回答書を今月2日に送った。現在、雇用促進住宅の継続入居を求めているのは、武田さんを含めて8世帯という。催告書には法的手段も辞さない旨の文言もあるという。
 福島県は「新たな支援策」として、住宅無償提供打ち切り後に民間賃貸住宅に入居する〝自主避難者〟に対し、2年間の期限付き家賃補助制度を設けた(1年目月額3万円、2年目月額2万円)が、いまだに補助金が振り込まれていないと武田さんは指摘する。
 「圧倒的多数の避難者が6月に入っても受け取れていないと聞いています。カンカンになって怒っていますよ。それで、福島県に問い合わせると『文書に不備がある』と言う。改めて書類を出し直しても、後から書類を提出した人が先に認定されたりと、おかしなことになっている。福島県は、徹夜してでも自分たちが約束した事を履行すべきだ。そもそも今年3月末での打ち切りに無理があったんです。1年でも延ばせば良かったんですよ。それを無理矢理打ち切って自分たちは履行しない。それは許されない」
 福島県生活拠点課は、避難者への補助金支払いが遅れている事を認めた上で「1件1件ていねいに審査しているので、どうしても時間がかかる。『早くしてくれ』と指摘される事は確かにあるが御理解いただきたい」と釈明する。今年3月末現在、家賃補助金の申請件数は874件。そのうち、審査を通過して交付が決まったのは524件という。350件が交付決定に至っていないが「大半が書類不備による審査途中のもの」(生活拠点課)。既に交付が決まったもののうち、実際に何件の支払いが済んでいるかについては「審査を最優先して進めていてそのような集計はしていないので分からない」という。事務処理を福島市内の人材派遣会社「トーネット」に業務委託しているが「人手が足りないとは聞いていない」(生活拠点課)。


講演した海渡雄一弁護士。「避難するかしないか、避難先から戻るか否かについて『子ども被災者支援法』は被害者自身の自己決定権を認めている。まさに今、その自己決定権が踏みにじられている」と住宅無償提供打ち切りを批判した

【「自己決定権の行使認めよ」】
 会見後に行われた講演会で、海渡雄一弁護士は、自身も成立に奔走した「子ども被災者支援法」(東京電力原子力事故により被災した子どもをはじめとする住民等の生活を守り支えるための被災者の生活支援等に関する施策の推進に関する法律)について「目的や理念に非常に重要な事がうたわれている。第2条第2項(「被災者生活支援等施策は、被災者一人一人が第八条第一項の支援対象地域における居住、他の地域への移動及び移動前の地域への帰還についての選択を自らの意思によって行うことができるよう、被災者がそのいずれを選択した場合であっても適切に支援するものでなければならない」)で、避難するかしないか、避難先から戻るか否かについて被害者自身の自己決定権を認めているが、まさに今、その自己決定権が踏みにじられている」と批判した。
 同法では、第1条の中で「被災者」を「一定の基準以上の放射線量が計測される地域に居住し、又は居住していた者及び政府による避難に係る指示により避難を余儀なくされている者並びにこれらの者に準ずる者」と定義しているが、海渡弁護士は「『一定の基準』は『年1mSv』と書くべきだった」と自己批判も含めて述べたうえで「政権交代で法律の実施がネグられた。国が行うべき措置の内容もあいまいだった。議員立法の限界だという声もあったが、形をつくって魂が入っていないという状態になってしまった」と語った。
 今後の課題としては「避難の継続が、子ども被災者支援法で言うところの『自己決定権』の行使である事を社会的に認めさせる事が第一」とし、放射線による健康被害の実態を顕在化させ、国が設定した「年20mSv基準」の不当性を訴えて行く事が必要だと述べた。「米沢の8世帯の闘いは重要になる。地道に続ける以外に方法は無い。地域の方々も応援して欲しい。なぜ住宅の無償提供が必要なのか多くの人と共有出来るようにして欲しい」と呼びかけた。
 講演会には、都内で「原発避難者住宅裁判を準備する会」の世話人代表をしている熊本美彌子さん(福島県田村市から東京都に避難。都営住宅に継続入居中)も参加。連携を確認した。



(了)
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鈴木博喜

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