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【県民健康調査】調査以外での発症例「把握しないと委員会の議論が空論になる」。診療情報開示との兼ね合い検討へ~「悪性ないし悪性疑い」は191人に

原発事故後、福島県が実施している「県民健康調査」の第27回検討委員会が5日午後、福島市のコラッセふくしまで「甲状腺検査評価部会」と合同開催された。甲状腺超音波検査の二巡目で「悪性または悪性疑い」と診断された子どもは、前回より2人増えて71人。三巡目で新たに4人が診断され、1巡目からの通算では191人に達した(3月31日現在)。委員会では、県民健康調査以外で甲状腺ガンの発症が見つかった4歳男児の症例が報告されていなかった問題も取り上げられ、検討委として把握出来るよう近く診療情報開示との兼ね合いを含めて検討する事が確認された。


【37%が遺伝影響を懸念】
 配布資料によると、一巡目(2011年度~2013年度)で「悪性ないし悪性疑い」と診断された子どもは116人。二巡目(2014年度~2015年度)は、2015年度実施分で2人増えて71人。今回から新たに公表が始まった三巡目(2016年度~2017年度)は4人だった。通算すると191人。
 三巡目は11人が細胞診を受け、男2人、女2人が「悪性ないし悪性疑い」と診断された。「個人が特定される恐れがある」として4人の市町村名は伏せられ、2人が「避難区域等13市町村」、残り2人の住まいは「中通り」である事が示された。2人先行調査では3人が「A2判定」、1人が「B判定」だった。
 「悪性ないし悪性疑い」と診断された子どもの市町村名に関しては、委員からも「個人が特定されてしまう。どれだけ匿名性を保つかが重要だ」、「疫学は個人が特定されるような数字は扱わない」、「いたずらに誤った解釈をされてしまう」などの意見が出されたが、一方で「中通り、浜通りなどでの分類は行政区分であって、放射性物質の広がりとは関係ない。重要な変更で議論するべきだが資料に何ら説明がなく、口頭で説明されたのみ。調査の信頼性を損ねてはいけない」(清水修二委員=福島大学名誉教授)、「市町村別の数字は学術的に必要なデータ。内訳が全くブラックボックスになるのはよろしくない」(梅田珠実委員=環境省環境保健部長)などの意見も出され、結論が出るには至らなかった。星北斗座長(福島県医師会副会長)は「今回は医大から緊急避難的に出されたと思う。これでおしまい、今後ずっとそうするという事ではなく、もう一度我々に投げ掛けていただいて議論するということにさせていただきたい。皆さんが納得できる形で進めて行きたい」と述べた。異論は出なかった。
 2015年度の「こころの健康度・生活習慣に関する調査」では、「現在の放射線被ばくで、後年に生じる健康障害(例えば、がんの発症など)がどのくらい起こると思いますか」の問いには、4段階での回答の中から13.8%が「可能性は非常に高い」と答え、次の程度と合わせると32.8%が晩発性障害への不安を明かした。「現在の放射線被ばくで、次世代以降の人(将来生まれてくる自分の子や孫など)への健康影響がどれくらい起こると思いますか」では、37.6%が被曝の遺伝への影響を不安視していると答えた。2012年度の調査では、それぞれ39.3%、48.1%だった。高村昇委員(長崎大学教授)は「私も新聞で連載を始めたし、県もこの6年間情報を出して来ていると思う。年々減っているものの、それでも4割弱の方が依然として被曝の遺伝を不安視している」と意見を述べた。




(上)県民健康調査検討委員会の星北斗座長。7月9日で任期が満了するため「今生の別れになるかもしれない」と口にして傍聴者の失笑を買った
(下)甲状腺検査評価部会と合同開催された検討委=コラッセふくしま

【「4歳児の発症、報道で知った」】
 福島県の甲状腺検査を巡っては、県民健康調査以外で甲状腺ガンと診断されたケースが検討委員会に報告されていない問題が取り沙汰されている。
 NPO法人「3・11甲状腺がん子ども基金」の「手のひらサポート事業」に原発事故当時4歳だった男の子が甲状腺ガンの手術を受け支給申請があったことから判明したが、この日の検討委では、「県民健康調査甲状腺検査二次検査受診後、別疾患もしくは経過観察のため保険診療に移行した後に診断された場合」、「県民健康調査甲状腺検査以外の検査により診断された場合(一次検査でB・C判定となったが二次検査を受診しなかった場合も含む)」については個人情報保護の観点から追跡が難しい旨が、福島県の鈴木陽一県民健康調査課長から説明された。
 これに対し、清水一雄委員(日本医科大学名誉教授)は「福島県外に転出する人はたくさんいるわけで、これからこういうケースはもっと増えると思う。甲状腺ガンの患者さんを把握できなかった場合に、発症した患者さんの数を議論していても空論というか、ちゃんとした根拠を基に議論が出来なくなってしまう。もちろん個人情報保護は大切だが、把握するよう出来るだけ努力していただきたい。事実を知らないと、何のために委員会をやっているのか分からない。福島県外で見つかった甲状腺ガンが福島県に報告される体制づくりが必要だ」と意見を述べた。
 梅田委員も「保険診療に移行してしまうと甲状腺ガンを発症しても全く把握されない事が当然のように思われるのはゆゆしき問題」と発言。委員会を欠席した春日文子委員(国立環境研究所特任フェロー)や前原和平委員(福島県病院協会副会長)からも「何らかの形で把握されるべきだ」とする文書が寄せられた。星座長は「強制力をもってというのは難しいが、何らかの工夫をして仕組みを構築しないと漏れてしまう可能性はある。議論を継続し、出来るだけ早い時期に結論、方法論を出したい。非常に難しい問題だ。全国に散らばる人を追いかけられるのか。本人の意向も反映させなければいけない。この問題はあずからせていただきたい」と〝先送り〟にした。
 委員会後の会見で、月刊誌「DAYS JAPAN」の和田真記者が「4歳児の甲状腺ガン発症について、福島県はいつ把握したのか。県立医大が県に報告しなかった事は問題視しないのか」と質すと、鈴木課長は「4歳児の症例は『診療情報』にあたるので県としては把握していない。報道を見たということ」と回答。星座長は「私も報道で知った。診療情報の開示の問題と報告の問題についてまさにこれからどうするのか、出来るだけ把握していく端緒になったと思う。今後の議論をお約束する」と述べた。清水一雄委員も「私も報道で知りました」と答えた。既に手術を受けた甲状腺ガン患者のその後の経過についても、県立医大は把握しているが検討委には報告されていない。




(上)福島県県民健康調査課が作成した配布資料。清水一雄委員は「県民健康調査以外で見つかった甲状腺ガンも把握しないと、空論というか、委員会でちゃんとした根拠を基に議論が出来なくなってしまう」と体制づくりを求めた
(下)「こころの健康度・生活習慣に関する調査」では、依然として3割を超える人が被曝による晩発性障害や遺伝への影響を懸念している事が分かった

【国際がん研究機関の動向注視】
 「3・11甲状腺がん子ども基金」はこれまでに88人に対して療養費を給付決定したが、福島県の支給対象者63人のうち、5人が県民健康調査以外で甲状腺ガンが見つかった事例だという。同基金は「県民健康調査以外で発見された症例も隈なく検討委に報告されるよう、注意深く見守っていきたい」としている。副代表理事の海渡雄一弁護士は、3日に山形県米沢市内で行われた講演会で「我々の基金が無ければ分からなかった事。政府は今まで、『4歳以下の子どもで発症していない』を根拠の一つとして、子どもたちの甲状腺ガンは原発事故とは関係ないんだと言っていた。ところが、基金に申し込んで来た方の中に4歳児がいた。いったい、原発事故に起因した小児甲状腺ガン患者が福島県内に何人いるのか」と疑問を投げかけた。
 なお、星座長から呈されていた「科学的、国際的知見から検証する第三者機関」については、福島県から「国とも相談した結果、世界保健機関(WHO)の外部組織の国際がん研究機関 (IARC)が福島への訪問を予定しているという話があった。改めて協議の場を設定するというよりも、同機関の結果を注視し、参考とさせていただくのが良いのではないかと考えた」と報告された。星座長は「そう遠くない時期に福島に来るとイメージしている。理解されなくて独りで凹んでいたのだが、要は①甲状腺検査の結果の評価をお願いするものでは無い②我々の試みは背景が複雑で初めての事なので、これから将来起こるかもしれない事として国際機関が周辺情報を集めて整理をしてくれると役立つ─という事だ。この検討委とは全く別だてだ。甲状腺検査の結果がどうかという事については、あくまでも評価部会で議論していただく」と述べた。



(了)
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