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【原発事故と甲状腺ガン】「甲状腺検査、縮小するな」~木村真三、崎山比早子両氏が永田町で講演。「隣接県でも急ぎ検査を」「4歳児の報告漏れ、信用失う」

超党派の国会議員による「原発ゼロの会」が主催する「第65回国会エネルギー調査会」が15日午後、東京・永田町の衆議院第一議員会館で開かれ、木村真三氏(独協医科大学准教授、国際疫学研究室福島分室室長)と崎山比早子氏(NPO法人3・11甲状腺がん子ども基金代表理事)が講演。甲状腺検査の継続や他の疾病に関する調査の必要性、福島県だけでなく隣接する地域への健康調査拡大が急務だと訴えた。会合には環境省の参事官も出席したが、隣接県への検査拡大には「有識者会議で慎重な意見が相次いだ」として否定的な見方を示した。


【「甲状腺ガン以外も調査を」】
 木村氏は、チェルノブイリ原発事故後のベラルーシ共和国での調査結果を示しながら講演。原発から250~500km離れたブレスト州は「非汚染地域」に含まれていたが、2013年の甲状腺ガンの10万人あたりの罹患率は14.09。ミンスク市の13.03を上回る高さだった(ベラルーシ全体では9.71)。
 ブレスト州ではチェルノブイリ原発事故から2年後の1988年から14歳以下の「子ども」の甲状腺ガンが確認され始め、1990年から明らかに増えたという。「昨年は原発事故から30年目だったが、ベラルーシ全体で263人の甲状腺ガンが見つかったと報告されている。まだまだ頭打ちしていない」。
 ベラルーシ共和国では、チェルノブイリ原発事故後に2万人の甲状腺ガンが見つかっているが、死亡したのは8人という。「予後が良い、進行が遅いと俗に言われるが、そうではない」と木村氏。「ベラルーシでは慢性的にヨウ素が欠乏していたため、原発事故前から新生児検診の項目に触診による甲状腺検査が含まれていた。原発事故後は毎年の検診が義務付けられ、今でも受診率は98%に上る。ここがポイントだ。毎年、検診を受けているから死亡率が低い。亡くなった8人は何らかの理由で検診を受けなかったとされている」と甲状腺検査の重要性を訴えた。
 木村氏は「福島で『悪性ないし悪性疑い』が191人に上ったというのは非常に大きな問題だと思っている」としたうえで「徐々にA2判定が増えている。進行を示しているデータであるように感じる。二巡目で『悪性ないし悪性疑い』と診断された71人のうち、一巡目でA判定だったのは65人。わずか2年で甲状腺ガンに移行している。『サイレントなガン』というのは全くもってナンセンスだ。甲状腺ガンは本当に進行が遅いのか、疑問が残る。今後、科学的な検証を続けて行かねばならない」と指摘した。
 さらに、福島市内で2011年3月15日夜に10万Bq/kgを超える放射性ヨウ素が測定されていた事を挙げ「水道ではろ過出来ない。放射性ヨウ素は半減期が短いが、飲料水や食べ物に直接、入ってきた可能性がある。初期被曝の状況をきちんと見極めていないという事が一番の問題。ナンセンスな議論を続けている。低線量被ばくは直ちに影響は出ないが、長期的な影響は考慮しなければならない。チェルノブイリでは白血病や白内障が報告されている。原爆の被爆者の中から、第二の白血病と言われる骨髄異形成症候群が確認されるようになった。原爆の被爆と腎障害や糖尿病、高脂血症などとの関連を指摘する論文もある」として甲状腺ガン以外の健康調査の必要性を訴えた。




(上)講演で、甲状腺検査を含めた健康調査の継続・拡充、甲状腺ガン患者への国の支援を訴えた木村氏(右)と崎山氏(左)
(下)環境省の前田参事官(後ろ姿)は「有識者会議では否定的な意見が多かった」などとして、福島県以外の自治体での本格的な健康調査実施に否定的な見方を示した=衆議院第一議員会館・国際会議室

【「他にも『未報告』発ガンあり得る」】
 「3・11甲状腺がん子ども基金」が実施している「手のひらサポート事業」の給付状況を示しながら講演した崎山氏は「甲状腺ガンが多発しているにもかかわらず、甲状腺ガンになった人というのは、原発事故の影響は考えにくいとする社会的な空気、雰囲気の中で差別を恐れて周囲に隠さなければならない。社会的なプレッシャーを感じて孤立している。本当ならば『子ども被災者支援法』で国が責任を持って補償すべきだが、十分になされていない」と基金設立の経緯を説明。
 「プルームは福島以外にも飛んだので、給付対象地域を1都15県に広げている。特徴的なのは、原発事故当時、福島県外の給付対象地域に住んでいた人の進行例が多い事。早い時期に検診や治療を受けていれば、アイソトープ治療にまで進まなかったかもしれない」と。木村氏同様、検診の重要性を訴えた。
 「申請者の中に、原発事故当時4歳だった男の子がいた。福島県県民健康調査の検討委員会には報告されていない症例で驚いた」と崎山氏。「2016年の前半には福島県立医大で手術を受けているのにもかかわらず、報告されなかった。二次検査で『経過観察』に入ってしまうと、発ガンしても把握されない。現在、『経過観察』の人は2719人いる。既に発ガンした方もいるかもしれない。それが検討委員会の数の中に入って来ないとなると、この報告に基づいて論文を書くわけだから、日本から世界に出て行く論文の信用性が落ちると思う」と県民健康調査の問題点を指摘した。「どういう場合に『経過観察』になるかの基準もはっきりしていない」とも。
 県民健康調査検討委員会甲状腺検査評価部会の「中間取りまとめ」が「放射線の影響とは考えにくい」と結論づけているが、崎山氏は「甲状腺学会のガイドラインを見ると、放射線被曝というのが『質の高いエビデンスがある』としてリスクファクターに挙げられている。(検討委は)存在しないリスクファクターを探しているのか。米国癌学会や米国甲状腺学会でも、必ずリスクファクターとして『放射線被曝』が入っている。これを否定するのはどうなのか」と批判した。
 基金が実際に給付した家族を対象に行ったアンケート調査では、結婚差別や経済的困難などのほかに「検診を続けて欲しい、国が責任を持って経済的支援をして欲しいという声が多かったという。崎山氏は「民間の基金では支えきれないところがあるだろう。『子ども被災者支援法』に書いてあるわけだから、国も行政も患者をサポートするシステムを作って欲しい」と訴えて、講演をこう締めくくった。
 「放射線の影響は否定できません」




(上)木村氏の資料。継続的な健康調査の重要性を訴え、甲状腺ガン以外の健康被害に関する調査を求めている
(下)崎山氏は基金のアンケート結果を挙げて甲状腺検査の継続や患者への公的サポートの必要性を訴えた

【環境省「近隣県の検査不要」】
 「調査会」には、環境省環境保健部の前田光哉参事官(放射線健康管理担当)も出席。
 木村氏は「甲状腺検査は果たして福島県だけで良いのか。関東圏を含めて汚染が起きている。茨城県北茨城市で3人、宮城県丸森町では2人の甲状腺ガンが確認されている。原発事故と因果関係があるのか調べなければならない。しかし、福島以外の甲状腺ガン患者は突発性という形で切られてしまう。栃木県も含めて福島近隣県への検査対象拡大が急務だ」と求めたが、前田参事官は「県民健康調査に類似した健康調査を近隣県でも行うべきだという意見は以前からいただいている。原発事故が起こった年に近隣県で有識者会議が開かれて、福島県と同様の甲状腺検査が必要かどうか議論された経緯があるが、必要とされた有識者会議は無かった。環境省も2013年11月から2014年12月にかけて専門家会議を14回にわたって開いたが、福島県以外の県で一律に甲状腺検査を実施する事には慎重であるべきという風な判断が出されている」として、否定的な見方を示した。
 これには、木村氏は「そもそも、原発事故や放射線に関する研究者がどれだけいたか。原発事故後、雨後のタケノコのように〝にわか〟の方々がたくさん出て来たのは事実。専門家の間で議論されたと言うが、果たして本当の専門家は何人いたのか。私は呼ばれていない。私が聞かれたら、もちろん(甲状腺検査を)やります。やらねばならない。ブレスト州を見ても、事故の規模が違うとは言っても原発から500km離れた場所でいまだに甲状腺ガンの上昇が続いている。例えば栃木県の那須塩原市は(汚染の)非常に高い所だが、県のアドバイザーの先生がやる必要無しと言っている。その根拠は何なのか見えない。誰が『必要無し』と決めるのか疑問だ。後から被害が出て来てごめんなさい、では済まされない。環境省はきちんと考えて欲しい。初期の内部被曝の議論もなされていない」と反論した。 
 崎山氏は、「甲状腺検査を縮小するという空気が強い。原発事故を起こした日本として、データを残すくらいの責任を世界に果たすべきだ」と述べた上で「4歳児は、福島県立医大で『経過観察』とされて受けて医大で手術を受けた。それですら報告に入っていない。もしかしたら、既にガンになった人がいるかもしれない。さかのぼって報告するように環境省から指導出来ないのか」と重ねて求めたが、前田参事官は「今月5日の県民健康調査検討委員会でも、把握体制を今後、整えて行こうと議論された。今後も検討委の議論を注視していきたい」と答えるにとどまった。



(了)
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鈴木博喜

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