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【福島原発かながわ訴訟】ビキニ水爆の被害者に寄り添う静岡の聞間医師。証人尋問で「低線量であっても被曝のリスクは消えない」。被告側の反対尋問は9月

原発事故の原因と責任の所在を明らかにし、完全賠償を求めて神奈川県内に避難した人々が国と東電を相手取って起こしている「福島原発かながわ訴訟」の第22回口頭弁論が12日午前、横浜地裁101号法廷(中平健裁判長)で開かれ、低線量被ばくの専門家として、内科医で生協きたはま診療所長の聞間元(ききま・はじめ)さん(ビキニ水爆被災事件静岡県調査研究会代表)に対する主尋問が行われた。聞間医師は「低線量であっても被曝リスクは決して消えない」と強調。「被曝リスクを避けるには放射線から遠ざかるしか無い」と述べた。次回期日は9月7日10時。被告側代理人弁護士による反対尋問が行われる。


【「遠ざかるしか無い」】
 大学の講義のような難しい内容に終始した主尋問は、この日一番分かりやすいやり取りで締めくくられた。
 原告代理人弁護士「避難の基準に年20mSvが採用されて線引きされ、それを下回れば人体への影響は無視出来るかのような政策がとられている。この線引きについて、どのように考えるか」
 聞間証人「年20mSvを下回る低線量であっても、放射線のリスクは決して消えないという事を強調したい」
 原告代理人弁護士「被曝リスクを避けようとするにはどうすれば良いのか」
 聞間証人「放射線から遠ざかるしか無い」
 原告代理人弁護士「終わります」
 国が否定する「避難指示区域外からの避難の合理性」を認めるべきだ、というのが聞間医師の主張だ。90分間にわたった主尋問は、図やグラフなどを法廷内のスクリーンに映し出しながら、外部被曝と内部被曝の違い、晩発障害や確率的影響の意味などから始まり、広島や長崎での原爆被爆者に関する疫学調査や福島第一原発の事故後の2011年12月に国がまとめた「低線量被ばくのリスク管理に関するワーキンググループ報告書」の問題点などについて、聞間医師が意見を述べた。
 原爆被爆者については、原爆投下時は爆心地から離れた場所に居たものの、救護活動や肉親捜しなどで後に爆心地に近づいた「入市被爆」についても、「原爆投下より約100時間以内に爆心地から約2km以内に入市した者」、「原爆投下より約100時間経過後から、原爆投下より約2週間以内の期間に、爆心地から約2km以内の地点に1週間程度以上滞在した者」が固形ガンや白血病を発症した場合については、「格段に反対すべき事由がない限り、当該申請疾病と被曝した放射線との関係を原則的に認定する」と国が原爆症認定に関する審査の方針を改めた。
 「残留放射線や放射性降下物による健康影響を正面から認めた」と聞間医師。今回の原発事故に関しても「呼吸、食べ物や水の摂取による内部被曝も考慮すべきだ。低線量被曝による確率的影響は数十年後に発症する事もあるので、長期間にわたって追跡しないと分からない」との考えだ。




(上)主尋問で「年20mSvを下回る低線量であっても、放射線のリスクは決して消えないという事を強調したい」と述べた聞間医師
(下)かながわ訴訟で低線量被曝の問題を担当し続けている小賀坂徹弁護士は「特に国の代理人弁護士は、聞間医師を証人として採用する事を最後まで反対した。しかも、反対尋問は通常は同じ日に行われるが、『十分に検討する時間が要る』などとして2カ月後になった。しかも180分間の反対尋問を求めている。国というのはどれだけ過保護なのか」と国側の姿勢を批判した

【「生活習慣との比較は疑問」】
 国の「低線量被ばくのリスク管理に関するワーキンググループ報告書」(WG報告書)では、放射線被曝のリスクの許容性に関して「放射線と他の発がん要因等のリスクとを比較すると、例えば、喫煙は1,000~2,000ミリシーベルト、肥満は200~500 ミリシーベルト、野菜不足や受動喫煙は100~200 ミリシーベルトのリスクと同等とされる」、「年間20 ミリシーベルト被ばくすると仮定した場合の健康リスクは、例えば他の発がん要因(喫煙、肥満、野菜不足等)によるリスクと比べても低いこと、放射線防護措置に伴うリスク(避難によるストレス、屋外活動を避けることによる運動不足等)と比べられる程度であると考えられる」と論じているが、聞間医師は、これについても疑問を投げかけた。
 「生活習慣は個人で変えられる。喫煙だってやめる事が出来る。それに対して、原爆投下や原発事故による放射線被曝というのは、全く不本意な被曝だ。意思に反して強いられる。そういうものと生活習慣を比べる事はおかしい。特に子どもにとっては生活習慣以前の問題だ。比較する事に大いに疑問がある」
 WG報告書が発表された翌年の「原爆被爆者の死亡率に関する研究、第14報、1950-2003、がんおよび非がん疾患の概要」(LSS14報)では、「リスクが有意となる線量域は0.20Gy以上であった」、「30歳で1Gy被曝して 70歳になった時の総固形がん死亡リスクは、被曝していない場合に比べて42%増加し、また、被爆時年齢が10歳若くなると29%増加した」などと結論づけているが、これらはWG報告書には反映されていない(注:一般的に1グレイは1シーベルトとされている)。
 これについて、聞間医師は「放射線被曝の影響は一定の年数が経てば消えて無くなるものではないし、生涯にわたって続く。しかも、年齢が若い時点で被曝するほど、健康リスクが上がる事が分かった。0.2グレイという数値に関しても、『統計学的に有意差が確認出来なかった』のであって『健康影響が無かった』とは述べていない。低線量であっても健康影響がある事を示唆したものだ」と評価した。




「低線量被曝による健康リスクの有無は、長期間にわたって追跡しないと分からない」と聞間医師は言う。尋問に先立って提出された意見書でも、生活習慣と被曝リスクとを比較する国の手法を「驚くほかはない」「何の利益ももたらさない」と厳しく批判する

【証人採用反対し続けた国】
 この日は反対尋問は行われず、主尋問のみで正午過ぎに閉廷した。被告側代理人弁護士による反対尋問は次回9月7日の口頭弁論期日で行われる。次々回11月の期日では、原告に対する本人尋問が行われる予定だ。
 閉廷後に開かれた集会で、聞間医師は「解剖しても、発症したガンが被曝が原因か否かは分からない。疫学調査を積み上げて行くしか無い」とていねいな健康調査の必要性を語った。多くの原爆症認定訴訟で証人として法廷に立ってきた経験もあり、「反対尋問では何を言われるかだいたい想像がつく」とも。
 聞間医師は静岡県熱海市出身。信州大学医学部卒業。全日本民医連(全日本民主医療機関連合会)の代表として、旧ソ連セミパラチンスク核実験場や、南太平洋マーシャル諸島などでの核実験被害調査に参加。第五福竜丸元乗組員のC型肝炎の療養補償の実現のためにも奔走してきた。代表を務める「ビキニ水爆被災事件静岡県調査研究会」は2012年に焼津平和賞を受賞している。「さまざまな選択がある中で、結果として福島に住んでいる人々のケアも必要だ」とも語った。
 主尋問を担当した小賀坂徹弁護士は「特に国の代理人弁護士は、聞間医師を証人として採用する事を最後まで反対した。しかも、反対尋問は通常は同じ日に行われるが、『十分に検討する時間が要る』などとして2カ月後になった。しかも180分間の反対尋問を求めている。国というのはどれだけ過保護なのか」と明かした。
 改めて聞間医師は言う。「原発事故による健康影響の有無は、6年余では分からない」



(了)
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鈴木博喜

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