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【78カ月目の飯舘村はいま】14億円の「道の駅」、3000万円の「彫刻」。これが〝までい〟な金遣い?~避難指示解除から間もなく半年。「帰村」は500人弱

帰還困難区域を除いた避難指示解除から間もなく半年。福島県相馬郡飯舘村には用地買収費や建設費だけで14億円近い道の駅「までい館」が華々しくオープンし、52人が就学予定の学校は、40億円もかけて改修工事が進んでいる。道の駅に設置された彫刻は2体で3000万円。菅野典雄村長は常日頃「までい」(心をこめて、ていねいにの意味)を口にするが、果たして原発事故後の村政は「までい」な村政だったか。予算の使い道は「までい」だろうか。14日に告示される村議会議員選挙(24日投開票、定数10)に向けて、村民の小さな声に耳を傾けようと若手が準備を進めている。


【「3000万円で保養出来る」】
 13億7454万円。
 8月12日に華々しくオープンした道の駅「までい館」には、建設工事費や造成工事費、用地取得費などだけでそれだけの金が投じられた。村役場総務課によると、そのうち9億2400万円を国からの交付金でまかなったという。
 だが、実際の費用はそれだけにとどまらない。建物内のトイレ前や物販コーナーの壁には村民の笑顔をアップで写した大きな写真が掲げられているが、撮影料は先ほどの中には含まれていない。オープン当初は、それらの写真を大きく印刷して建物外だけでなく隣接する貯水池のフェンスにまで貼り出す〝演出〟をしていたが、訪れた9月2日の時点でそれらは外されていた。
 それだけではない。駐車場の一角には「までい賛歌」、「までいと共に」と名付けられたブロンズ製のモニュメントが2体、設置されている。足元にはLEDライトが備えられ、夜になるとライトアップされる仕組み。彫刻家・重岡建治さん(静岡県伊東市)が道の駅のために制作した。重岡さんは菅野典雄村長の〝お気に入り〟で、昨年8月にオープンした交流センター「ふれ愛館」にも作品が展示されている。村職員も「菅野村長が視察などで訪れた公園で撮影した写真に、重岡さんの彫刻が写っていたようです。気に入って調べたら重岡さんの作品だったと。それで交流センター建設を機に購入することになりました」と語っているほどだ(本紙2016年09月01日号)。村役場によると、今回の作品の購入費は、輸送費や設置工事費も含めて2体で3000万円だという。
 県外で福島の子どもたちを受け入れている保養団体の代表者は「3000万円もあれば、どれだけ保養プログラムが出来るか…。それどころか基金を設立出来ますね」と語る。それだけの金額が2体のブロンズ像に投じられたのだ。村外で子育て中の村民も「特にブロンズ像は税金の無駄遣いです。そのお金があったら、飯舘村の未来をもっと良い方向に向かう事に使えます。村長の自己満足以外の何物でも無いですよ」と厳しい。










(1)華々しい県道沿いとは異なり、広い村内には依然として汚染が残る=飯舘村小宮
(2)村役場の発表によると、9月1日現在の「村内居住者」は488人。〝帰村率〟は約8%にとどまる
(3)交流センター「ふれ愛館」横に置かれていた除染廃棄物は多くが搬出された。残されたフレコンバッグからは雑草が伸びている=飯舘村草野
(4)人手不足が解消されない道の駅。レジには「お詫び」が掲示されている。駐車場にも「スタッフ募集」の大きな看板がある=飯舘村深谷
(5)今月14日告示、24日に投開票される村議選。チェック機能を失った〝オール与党村議会〟を立て直そうと、複数の若手新人候補が名乗りをあげている

【村内学校「就学させない」78%】
 8月12日のオープン日には約7500人が訪れ、2週間で来場者が5万人を突破したと言われる道の駅。「広報いいたて」は8、9月号で大きく特集を組み、地元紙も「笑顔の拠点」、「復興へと歩む村の姿を象徴」、「原発事故からの復興を後押しする施設の誕生」と持ち上げてみせた。
 続々と完成するハコもの。村役場が発行した「までいな〝みんなの〟予算書」によると、今年度の一般会計当初予算額は212億3500万円で「過去最大」となった。昨年度と比べて約2・3倍。原発事故が起きた2011年度が約41億円だから、実に5倍超。特に来春の〝開校〟を目指している旧飯舘中学校(新しい学校は、敷地内に幼稚園・保育所の機能を併せ持つ認定こども園、一貫教育を行う小・中学校、給食センターなどが集約される)の整備費は40億円を上回る。近隣に整備中のスポーツ公園の整備費は23億円超だ。
 村の財政は、65%を国庫支出金や地方交付税などに依存している。自主財源は35%。「までいな〝みんなの〟予算書」では、ゆるキャラの「イイタネちゃん」が「飯舘村は、自主財源だけでは行政サービスができないタネ!国や県からもらうお金などを活用して行政サービスを行っているタネ!」と解説するが、「復興予算が潤沢なうちにハコものを建設してしまえということだろう」と指摘する村民もいる。
 来春から授業が始まる学校は、ファッションデザイナー・コシノヒロコさんがデザインした制服や運動着も無料。給食費も無料。教材費やPTA会費も無料。村教育委員会は、パンフレット「子どもを育てるなら飯舘村」で「子育てと教育を村が全力でサポートします」とアピールしている。だが、村教委が入園・入学対象となる0歳から14歳までの子を持つ保護者736人に実施した意向調査では、回答した408人(回答率55・4%)のうち「就学させる」と答えたのは12・7%の52人にとどまった。「迷っている」は9・3%の38人。「就学させない」が最も多く、77・9%にあたる318人だった。「就学させる」と答えた52人の内訳は、認定こども園(0歳~5歳)が8人、小学校が15人、中学校は29人だった。
 村教委によると、制服の縫製にはある程度まとまったロット数が必要なため、性別、サイズ別に4、5年分まとめて発注し、村で保管することになるという。










(1)2体で3000万円のブロンズ像。制作した彫刻家・重岡建治さんはオープン前日の除幕式に出席。伊豆新聞の取材に「村の人たちを元気づけることができればうれしい」と語った
(2)物販コーナーに掲示されている村民の顔写真。地元紙は「笑顔の拠点」と称賛した
(3)電通が提示した5つの候補の中から、子どもたちの意見も参考にして選ばれた飯舘村のゆるキャラ「イイタネちゃん」。道の駅ではグッズも販売されている
(4)来年4月の〝開校〟に向けて工事が進む旧飯舘中学校。村が実施した意向調査では、現時点で子どもを通わせると答えた保護者は52人にとどまっている
(5)道の駅がある県道12号には、新たにローソンもオープンした。店内にはコンセントを備えたイートインコーナーもある

【風穴開けるか村議選】
 村役場によると、今月1日現在の「村内居住者」は488人。単純計算で、帰村率は8%にとどまる。もちろん、少ないからと言って村に戻って生活している人々を無視する事は出来ず、暮らしを支える施策は必要だ。今月14日に告示される村議会議員選挙(24日投開票)に立候補を予定している新人の1人は「困っている帰村者のために尽力したい」と話す。「村での足の確保とか介護のことです。帰って困ってる人、帰りたいがそういったことで困ってる人から助けてあげたい」。
 しかし実際には、村民の想いとはかけ離れた所で〝復興アピール〟のためのハコものづくりが決められて建てられていく。村での営業を再開させ、7月には安倍晋三首相も訪れたうどん店の女将は「もちろん復興は大事。早く以前の村のようになって欲しい。でも、それと〝復興〟は別。私たちは何も〝復興〟のために再開させたんじゃ無いもの。地域のサロンのような存在になりたいだけなの」と話す。長年、村内で営業していたラーメン店は仮設住宅で営業を続けていたが、道の駅への出店が叶わなかった。それだけをとっても、果たして村民のための道の駅なのか。大いに疑問だ。
 菅野典雄村長は、2011年8月に上梓した著書「美しい村に放射能が降った 飯舘村長・決断と覚悟の120日」の中で、村長に初当選した直後の村役場職員に向けた挨拶を紹介している。「開かれた村政にしたい」、「遠慮なく村長室に来て欲しい」、「私が間違っているということであれば、それを変える勇気を持ち合わせているつもりだ」などと語っていたが、果たして原発事故以降の村政は「開かれた村政」だったろうか。
 ほぼ全員が村長の「イエスマン」で、村政へのチェック機能を失った村議会にも責任がある。村議選では新しい風がどれだけ風穴を開けられるか。菅野典雄村長は自身の息のかかった候補者の擁立に躍起になっていると聞く。華やかなメインストリートからは見えない汚染も依然として続いている。村民の〝までい〟が試される。



(了)
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プロフィール

鈴木博喜

Author:鈴木博喜
(メールは hirokix39@gmail.com まで)
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