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【総選挙2017】「正々堂々と訴えて欲しかった」。支持者も呆れる安倍晋三首相の〝逃げ〟の第一声。野次に神経尖らせ、福島市の田んぼ前で「動員・演出」

〝逃げの宰相〟に福島県民が呆れた─。第48回衆議院選挙が10日公示され、安倍晋三首相は原発事故から6年7カ月後の福島県福島市で第一声を行った。だが、マイクを握ったのは、多くの人が行き交う福島駅前ではなく車で20分ほど走った場所にある田んぼの真ん中。農家を中心に動員がかけられ、支持者以外を排除して地元米のおにぎりやナシを食べるパフォーマンス。関係者は「党本部は反対派の野次に相当、神経質になっていた」と明かす。箝口令が敷かれ、福島県警による厳戒態勢下での首相第一声に、自民党を支持する福島県民さえも「正々堂々と訴えて欲しかった」と残念がっている。


【「稲刈りするな」指示も】
 これが「この国を守り抜く」と公言するリーダーの真の姿だった。耳触りの悪い〝雑音〟はシャットアウトし、好意的な支持者だけを集めての第一声。しかも駅前を避け、郊外の田んぼの真ん中。言いたい事だけを語って異論は受け付けない。それでは、福島の人々が呆れるのも無理は無かった。
 安倍首相が第一声を行った福島市や伊達市、南相馬市などで構成される「福島第1区」。〝野党統一候補〟の金子恵美氏(52)=無所属、前=との一騎打ちとなる亀岡偉民氏(62)=自民、前=は、必勝祈願に訪れた福島稲荷神社で「福島の米をアピールして欲しいと、こちらから(田んぼの真ん中での第一声を)お願いした。何のために安倍首相が福島に来るかと言えば、原発事故による風評被害でいまだに価格が上がっていない米のため。農家が一生懸命やっているところを見て欲しいんだ」と首相の〝逃げ〟を否定した。しかし、亀岡陣営の関係者は、安倍政権に異論を唱える野次に神経をとがらせていた党本部の様子をこう明かす。
 「地元からの要望?違うよ。かなり野次に神経質になっているようだからね。野次なんか正々堂々と受け止めれば良いんだよ。あんまり批判的な人たちが多く集まったら中止もあり得るとも聞いている。そうならなければ良いが…」
 別の関係者も「田園風景をバックに第一声を行いたいらしいのだが、流動的で何も決まっていない。党本部からは前日にならないと正式な話が下りて来ないし、正直なところ困っている」と語っていたほど、地元は安倍首相や周辺の〝小心〟ぶりに振り回されていた。周囲の水田では既に稲刈りが終わっているが、安倍首相の背後の田んぼだけが黄金色の稲が残されていた。刈り取らないよう、事前に農家に指示が出されていたのだ。第一声を行った安倍首相におにぎりやナシを振る舞った地元の女性たちも「最終的にどうなるか分からないけど体だけは空けておいてくれって数日前に言われたんだよ。誰にも言っちゃいかんって言われてね」とこの数日間のドタバタぶりを明かした。
 動員で集まった〝聴衆〟には「安倍総理ガンバレ」と書かれた紙が配られ、会場入り口では「党員以外はご遠慮ください」と関係者と男性がもみ合う場面もあった。福島駅西口から会場までは幹線道路の至る所に福島県警の警備が敷かれ、会場では聴衆を撮影する警察官の姿も。厳戒態勢での第一声に「本当に被災地の事を考えているのか」との声も聞かれたほどだった。








(1)福島県福島市で第一声を行った安倍晋三首相。刈り取らないよう農家にクギを刺したおかげで、田園風景が演出された=福島県福島市佐原
(2)地元米「吾妻の輝き」で握ったおにぎりやナシを食べるパフォーマンスで「福島の農産品は安全で美味しいんですよ」とアピールする場面も
(3)動員された聴衆には「安倍総理ガンバレ」と書かれた紙が配られた
(4)安倍首相が訪れた福島第1区は「自民vs野党共闘」の激戦区。第一声でも野党批判に力がこめられていた

【「間違いなく復興してる」】
 周囲の忖度が功を奏し、無風状態で気分良く第一声を行った安倍晋三首相。「福島の復興は間違いなく進んでいる」と言いたい事を次々と口にした。
 「今回の選挙は福島からスタートする。2012年の政権奪還の選挙もそうだったし、翌年の参院選、その次の衆院選、昨年の参院選、みんなそうだった」
 「民主党政権では復興が進まなかった。誰が福島の復興をさらに進める事が出来るのか。誰に託す事が出来るのか。誰がやって来たのか。どうかこの事を考えていただきたい」
 「この近くの県営あづま球場には、2020年の東京五輪で世界中から(野球やソフトボールの)一流選手がやって来ますよ」
 「海外からやって来る観光客。福島も2倍に増えた。彼らにもっともっとお金を使ってもらおうじゃありませんか。土湯温泉、あづま温泉もありますね。こういう温泉に入ってゆっくりしてもらって、お腹が減ったら円盤餃子。帰りにはこけしでも買って帰ってもらったら良いのかなあと思う」
 「残念ながら発災後、福島県産品を輸出しようと思ったって、45の国々が輸入規制をしていた。いわれなき規制と言っても良い。海外出張をし、首脳会談を行うたびに、福島の農産品は安全ですよという話をした。海外からやって来る首脳と晩餐会をする際、今あなたが食べている桃は福島県の桃ですよ、安心ですよという事を言いながら頑張って来た。その努力があって、33の国で輸入規制が緩和された」
 北朝鮮問題では「私は決して紛争は望んでいない。これまでの対話を繰り返してきたが、ことごとく約束を破られてきた。これ以上、私たちは北朝鮮にだまされるわけにはいかない」と圧力強化の必要性を主張。「北朝鮮の側から話し合いしましょうと言ってくる状況をつくらなければならない」。少子化対策では「子どもたちの世代に思い切って投資をする決断をした」として「幼児教育を一気に無償化します」とアピール。その財源として消費税を充てると語った。
 恒例となった聴衆とのハイタッチをして会場を後にした安倍首相を見送り、地元の女性は言った。
 「いやー、慌ただしい数日間だったわ」






公示日と判決日が重なった「生業訴訟」。金澤秀樹裁判長は国や東電の過失責任を認める判決を言い渡した。判決日と重なった事も、第一声の場所として福島駅前を避けた一因になったと言われている=福島県福島市の福島地方裁判所

【「原発事故」使わず「発災」】
 「この選挙では、愚直に政策を訴えていきたい」とも語った安倍首相。しかし、ひと気の少ない場所を選んでの第一声は、その言葉とは真逆だったと言って良い。
 支持者以外を排除し、安倍首相が第一声を平穏無事に終えた後、福島地方裁判所では「生業訴訟」の判決が言い渡された。低線量被曝のリスクに関する主張や原状回復請求を退けるなど判決には不満も多々あるものの、弁護団は「前橋地裁判決に続き、国の法的責任と東京電力の過失を認め、断罪した」と裁判所前で「勝訴」と書かれた「ハタ」を掲げた。原告や全国から集まった支援者の多くが涙を流し、喜んだ。判決前には集会会場から裁判所までをデモ行進した。これが、福島駅前での第一声を見送った一因になったとの見方もあるのだ。
 この判決を見守った人の多くが、やはり安倍晋三首相の逃げの姿勢に疑問を投げかけた。
 ある原告は「本当に信念があって、福島の事を真剣に考えているのであれば、罵声を浴びたとしても多くの人が集まる駅前で第一声を行うべきだった」と語った。別の原告は「やっぱり、やましい所があるのだろう」と首をひねった。安倍首相は第一声の最中、「原発事故」という表現を避け、「発災」という言葉を使った。原発事故の加害者である国や東電と今なお裁判で闘っている人々には目もくれず「復興」だけを連呼する為政者に、復興の裏側にある「もう一つの被災地」の実像は見えまい。
 線源から遠ざかろうと、全国に避難している人がいる。避難はしていないが、わが子の被曝リスクを少しでも減らそうと腐心している福島の人々がいる。そこから目を逸らし、農産品の安全性や観光客誘致だけを語るのが「復興」か。温泉街の法被を着たおかみさんたちを喜ばせるのが「復興」か。投開票は22日。



(了)
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プロフィール

鈴木博喜

Author:鈴木博喜
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