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【子ども脱被ばく裁判】「情報隠蔽で不必要な被曝を強いられた」。福島大の荒木田准教授が意見陳述。「法や手続きに従った行政の回復を」~第12回口頭弁論

福島県内の子どもたちが安全な地域で教育を受ける権利の確認を求め、原発の爆発事故後、国や福島県などの無策によって無用な被曝を強いられたことへの損害賠償を求める「子ども脱被ばく裁判」の第12回口頭弁論が18日午後、福島県福島市の福島地裁203号法廷(金澤秀樹裁判長)で開かれた。原告の1人で福島大学准教授の荒木田岳(たける)さん(47)が意見陳述。国や福島県の無作為で子どもたちが避けられたはずの無用な被曝を強いられた、と「被曝の予見・回避可能性」について述べた。次回期日は2018年1月22日14時半。


【伏せられた「テルル132」検出】
 「政府や福島県が(原発)事故前に定められていた原発事故対応の手続きを守らなかったゆえに、避ける事が出来たはずの被曝を住民、とりわけ子どもたちに強要した。その責任は重大だ」
 原発事故後、妻子を新潟市内に避難させている荒木田さん。陳述では自身の話は封印し、国や行政の不作為について厳しい言葉で述べた。既に地裁判決が出された群馬訴訟、千葉訴訟、生業訴訟では、「大津波の予見可能性」や「原発事故の回避可能性」(原発事故を発生させてしまった責任)について語られる事が多い。しかし、荒木田さんは「被曝を住民に避けさせなかった責任」を重視。静まり返った法廷の真ん中で、「住民をいかに被曝から守るか、という原子力防災の目的はないがしろにされ、住民は情報の隠蔽ゆえに被曝を避ける事が出来なかったのです」と訴えた。
 原発事故後の放射線モニタリング一つとっても、実測と予測の二方向で放射線の拡散を調べるよう事細かく決められていたはずだった。「『緊急時環境放射線モニタリング指針』(以下、指針)では、計測する場所も使用する機器も、計測方法も細かく決められていた。それは乾電池一個、鉛筆一本にまで及んでいた」。そうして得られたデータに従えば、福島県民にばかりでなく、さらに広い範囲の住民に対して避難が呼びかけられたはずだと指摘する。とりわけ、荒木田さんが重視しているのが、ウランが核分裂する際に発生する「テルル132」だ。
 「福島県原子力センターは2011年3月12日の朝には大熊町や浪江町で、昼過ぎには南相馬市で自然界に存在しないテルル132を検出していた。それが意味するのはメルトダウンの蓋然性であり、住民被曝の可能性。しかし福島県はこのデータを隠蔽し、住民の避難に活かさなかった」




(上)法廷で意見陳述した荒木田岳さん。「国や福島県の不作為によって、本来避けられたはずの無用な被曝を住民は強いられた」と厳しい口調で訴えた
(下)弁護団を代表し、これまでの裁判の経過と今後の方針について解説した井戸謙一弁護士。今なお深刻な土壌汚染、放射性微粒子の吸入による内部被曝の危険性についても立証していく方針だ

【「危険知らされず並んだ給水の列」】
 SPEEDI(緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム)についても、荒木田さんは「データを住民に公表せず、避難に活かされなかった」と指摘する。
 「指針では、放出源情報が無い場合も想定されている。福島県は電子メールで届けられたSPEEDIのデータを『気づかず消去した』と説明しているが、メールによる情報提供を要求したのは福島県原子力センター自身であり、意図的な証拠隠滅としか考えられない」
 一方で、福島県は〝身内〟である福島県立医大の40歳未満の職員に「安定ヨウ素剤を服用させていた」と荒木田さん。「自主的に安定ヨウ素剤を配った三春町に回収を指示するなど住民には被曝を強要しておいて、身内には安定ヨウ素剤を服用させるというダブルスタンダードが許されて良いはずが無い」。
 当時、大地震による断水を受け、福島市内でも給水の列に多くの親子連れが並んだ。「住民は、情報の隠蔽ゆえに被曝を避ける事が出来なかった。放射性物質の降り注ぐ中、一人10リットルの水を求めて、多くの住民が赤ん坊まで連れて屋外で長い列を作っていた。危険を知らされていれば、こういう事態は避けられたのではないか。そうすれば将来への懸念も減らす事が出来た」。荒木田さんは、昨年5月に都内で開かれた講演会でも同様の指摘をしている。
 「住民に不必要な放射線被曝を強いたという論点について、総じて被曝の予見可能性はあった」。荒木田さんは法廷で、一貫して国や行政の不作為を厳しく批判した。「政府や福島県は事前に定められた手続きに従わず、実測データ・予測データの双方を隠蔽した上に住民を積極的に現地に引き留めるなど、『故意』に原子力防災の目的とは正反対の行動をとった。その結果、子どもたちに余計な被曝をさせ、将来の健康不安につながっている」。そして、こう言って意見陳述を締めくくった。
 「こうした事が原発事故後6年半にわたって続けられてきたし、現在も続いているのは異常だと言わざるを得ない。この連鎖を断ち切り、法や手続きに従った行政が回復される事を願ってやまない」




この日も全国から支援者が集まり、口頭弁論を見守った=福島県福島市霞町の市民会館

【「放射性微粒子のリスク解明したい」】
 「子ども脱被ばく裁判」は、福島の小中学生が自治体に対し安全な環境下での教育を求める行政訴訟(子ども人権裁判)と、原発事故当時、国と福島県が適切な被曝防護策を行使しなかったために無用な被曝を強いられた事への国家賠償請求訴訟(親子裁判)の2つの訴訟が同時並行で展開されている。
 口頭弁論に先立って開かれた学習会では、弁護団を代表して井戸謙一弁護士が改めて本訴訟のこれまでの経緯と今後の方針を解説。「子ども人権裁判」に関して、井戸弁護士は「①年1mSv以上の空間線量②1平方メートルあたり4万Bq以上の土壌汚染③1万Bq/kg以上の汚染土壌─の3つの観点から、現在の福島の環境が子どもの健康にとってリスクがあると主張している。いずれも法律に明記されており、放射線管理区域の中で扱わなければならない物ばかり。人の居住環境にあってはならない。今の福島には法律違反の状況がたくさんある」と語った。「被告の市町村は〝のれんに腕押し〟で、のらりくらりと逃げている」。
 「親子裁判」の主な論点は、原発事故当時の放射線防護策の不十分さ。「具体的には①SPEEDIや米軍の航空機モニタリングなどの情報を隠蔽した②県民に安定ヨウ素剤を服用させなかった義務違反③「年20mSv通知」の非合理性④集団避難させなかった事への責任⑤山下俊一氏を起用した福島県の安全宣伝─の5つ。こちらの主張はほぼ出尽くしたが、国がまだ低線量被曝に関して反論をしてきていない」と井戸弁護士。この日の口頭弁論でも、これらについて弁護士たちが改めて主張を展開した。
 弁護団が重視しているのが、放射性微粒子を吸い込む事による内部被曝の危険性だ。井戸弁護士は「医師や専門家が最も懸念しているのが放射性微粒子による内部被曝だ。セシウムなどが他の金属とくっついて出来る放射性微粒子(セシウムボール)は水に溶けにくく、体外への排出が非常に困難。肺などに入ってしまうと長期間居座るってベータ線を出し続けるのでリスクが高い。しかし、ICRPなども内部被曝の危険性についてまともに議論していない」と述べたうえで「放射性微粒子が今も福島県内の土壌にたくさん残っている。それが風の強い日に舞い上がって子どもたちが吸い込んでしまう。その事による健康上のリスクを主張しようと考えている」と語った。
 専門家による意見書や証言によって立証していくほか、果たして現在、福島の土壌の中にどのくらいの放射性微粒子が存在するのかを何とか解明できないかと模索しているという。「出来るかどうか分からないが、そこが解明できれば子どもたちが福島で生活する事での現実的な危険を数字で表す事が出来る」と井戸弁護士は語る。



(了)
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鈴木博喜

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