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【福島原発かながわ訴訟】原告へ本人尋問始まる。被害者の怒りも涙もお構いなし。陳述書の粗探しに終始した被告側代理人弁護士。来年2月に現地検証実施へ

原発事故の原因と責任の所在を明らかにし、完全賠償を求めて神奈川県内に避難した人々が国と東電を相手取って起こしている「福島原発かながわ訴訟」の第24回口頭弁論が17日、横浜地裁101号法廷(中平健裁判長)で開かれ、10時から17時まで、昼休みをはさんで終日、7人の原告に対する本人尋問が行われた。淡々と陳述書の粗探しをし、プライバシーや哀しみを土足で踏みにじるような尋問の連続に、原告や傍聴者から怒りの声があがった。次回1月と次々回3月の期日でも各8人の原告に対する本人尋問を実施。2月8日には裁判官による浜通りの現地検証が行われる事も決まった。


【原告の答え遮った女性弁護士】
 法廷の両脇に設置されたモニターに、なつかしい写真が次々と映し出された。わが子のお宮参り、七五三。孫と一緒にジャガイモの収穫。かつての仕事仲間たちと畑の真ん中で花見もした。孫の誕生を喜び、「いつか一緒にビールを呑みたい」とかわいがったじぃじ。田舎暮らしにあこがれ、終の棲家として選んだ都路村の田園風景。どれだけ福島での暮らしが大切だったか。それを奪った原発事故の罪がいかに大きいか。色あせた写真を見るだけで一目瞭然だ。
 しかし、被告・東電や国の代理人弁護士は、まるで魂の無いロボットのように淡々と原告たちを攻める。決して声を荒らげる事無く淡々と。かといって低姿勢でもなく時には時には小ばかにするかのような笑みを浮かべながら。依頼主の期待に応えるのが彼らの仕事。原告の心情など関係ない。「なぜ避難をしたのか」、「周囲の人々は避難したのか」、「なぜ帰らないのか」、「帰って来いと言われないのか」、「空間線量がどのくらいの数値になったら帰れると判断できるのか」…。一方で「川内村」を「かわちまち」、「浪江町」を「なみえし」と発言する場面もあった。結局、その程度の認識なのだ。
 国の代理人を務める女性弁護士に至っては、原告がどれだけていねいに答えても、口を尖らせ「フーン」と返す始末。40代の男性原告は、親の離婚により19歳年齢が離れた弟と一緒に遊ぶ事はあったか、どのように遊んだかを執拗に尋ねられた。「思いつく限り、何歳の頃にどういう所で遊んでいたか答えてください」と迫られ、親の事情も挙げながら何とか言葉を紡いでいると「あーちょっと良いですか。ここでいったん切ってください、すいません」と一方的に遮られた。傍聴席はどよめき、男性も「聞いたのはあなたじゃないんですか」と返したが、やり取りはここで打ち切られた。
 実は本人尋問にあたり、中平裁判長は傍聴席に向けてこんな言葉を投げかけていた。
 「原告の話が信用できるかどうかを判断するにあたって、自分に有利な事を聞かれた時だけでは無くて、不利に思われるような被告側からの質問に対してもきちんと答えているかどうかという事が重要になります。尋問は録音しているので、明確に記録に残るように不利と思われるような質問に対して不規則発言をしないようお願いしたい」
 真摯な発言を遮ったのは傍聴者では無く、被告側の代理人弁護士だった。閉廷後、女性弁護士に取材を申し込んだが拒否された。




(上)原告団長の村田弘さんは、トップバッターとして本人尋問に臨んだ。「自宅敷地内には依然として5μSv/hを超える個所がある」「避難指示が解除されたとはいえ、13世帯ある隣組のうち戻ったのは3世帯だけ」などと訴えた。一方、被告側の代理人弁護士は「飲食店や小売店などインフラが整備されてきている事は知らないのか」「どのくらいの空間線量率になったら戻れると考えているのか」「戻った人々から『早く帰って来て』とは言われないか」などと質した
(下)「子どもを守りたい」と九州に移住した男性のふるさとは浪江町。秋の十日市や河原での芋煮会、丈六公園でのピクニックなど楽しかった思い出は全て原発事故による汚染によって封印されてしまった。法廷では、被告側代理人弁護士から年収や親の離婚などプライバシーにかかわる質問を次々と浴びた。怒りをこらえながらていねいに答えていると弁護士から「時間が無い」と遮られ、「聞いたのはあなたじゃないですか」と反論する場面も

【「原発事故ですべてを失った」】
 「原発事故で失ったもの?すべてです」
 小学生の息子とともに福島市から神奈川県内に避難した女性の言葉は重い。原発事故後、避難を逡巡していた女性の元に、東京で医師をしている弟から電話が入った。「どんな手段を使ってでも、一刻も早く福島を離れろ」。滅多に電話など寄越さない弟からの言葉が背中を押した。父と3人で暮らしていた実家は後に処分した。帰る場所は無い。息子はかわいがってくれた医師のじぃじと同じように福島高校から福島県立医大への進学を夢見ていたが、汚染を理由にあきらめた。進学した避難先の中学校では、「福島県民は馬鹿だ」、「近づくな」などとクラスメートからなじられ、暴力も振るわれた。ただでさえ苦しい家計を、今春の住宅無償提供打ち切りが追い打ちをかける。しかし、被告側の代理人弁護士は「進学などの節目で戻ろうと考えなかったのか」、「マンションを売却した代金があるはずなのに生活が苦しいのか」、「行政も自主避難を促さなかったのに避難したのか」と問い詰める。まるで加害者と被害者が逆転したかのようだ。
 富岡町から避難した50代女性も「人生、まったく狂いました。原発事故によって失ったもの?すべてです」と語った。
 除染をしても汚染が解消されない自宅。除染作業員の言葉が忘れられない。「ここは裏山が無いからまだ良いよ。山を抱えていたらこの程度では済まないよ」。結局、住み慣れたわが家は今年、解体した。解体にあたり昨年、〝汚染物〟となってしまった家財道具を〝処分〟するために東電社員が手伝いに訪れたが、第一声が「スリッパありますか?」だった。彼らが土足でわが家に入って行く姿を「情けない」と振り返った。〝処分〟するものには娘の下着も含まれるため女性社員も加えるよう依頼した。「こちらから言わなければ男性のみ。スリッパも用意しない」と憤る。
 解体後、更地になったわが家を見て、もはや涙も出なかった。「すべて無くなっちゃった。好きで壊したわけでは無いのに…」。しかし、ここでも被告側の代理人弁護士には原告の心情などお構いなし。戻らない方がおかしいと言わんばかりの尋問を淡々と続けた。
 「娘さんは県民健康調査でA1判定だったんですよね。ホールボディーカウンターでの内部被曝検査でも問題は見つからなかったんですよね」




(上)富岡町からの避難を強いられた男性は妻とともに本人尋問に臨んだ。住み慣れたわが家は解体。しかし、被告側代理人弁護士は「富岡駅の再開やヨークベニマルの営業開始などを知っているか」などと町の〝復興〟を強調する質問ばかり。閉廷後、男性は「まずは謝罪だろう。謝ったうえで被害当事者の気持ちになって質問して欲しい。陳述書の粗探しをするようなくだらない質問をしないで」と怒りをこめて話した
(下)応援に駆け付けた京都訴訟原告団長の福島敦子さん。既に52世帯の原告本人尋問を終えた経験から「被告側の代理人弁護士が言葉を遮るのは証拠として記録に残したくないから。打ち切られたとしても話し続けて記録に残す事が大事」などとエールを送った

【「加害者はまず謝罪を」】
 田舎暮らしに憧れて都路村(現在は田村市と合併し、田村市都路町)に移住した男性原告は、「空間線量がどのような数値になれば帰れるのか」と尋ねる被告・東電の代理人弁護士に「空間線量だけ測っても目安にすぎない。土壌も測らないと汚染が解消されたか判断できない」ときっぱりと答えた。子ども同然にかわいがっていた愛犬は亡くなり、妻は避難生活で「不安神経症」を患った。それでも国の代理人弁護士は問い詰める。「奥さんと戻ろうか話し合わないんですか」。そんな話題を出来る状況にあるはずがない。
 大熊町から避難中の女性は、避難生活で人工透析をまともに受けられず一昨年に無くなった夫を「もっともっと元気でいて欲しかった」と語った。生前、大熊町内に墓地を購入していたが、埋葬される事は無かった。自宅は除染で生じた廃棄物を保管するための「中間貯蔵施設」となるため、国に買い上げられた。もはや帰る場所は、無い。「夫と出会った時の想いでの地もなくなってしまった。何を希望として生きれば良いのか」。
 今年結婚式を挙げた息子は事故直後、町民の避難誘導に従事していた。被曝による健康被害が心配だが、「いずれ生まれて来るであろう子どもに何か影響が出ないか。健康な子供が生まれてくれたら…」と話す女性。「ひとりぼっち」とつぶやく女性に、東電の代理人弁護士は言う。「ひとりぼっちと言うが、茨城に住む長女と同居しないのか」。
 原告団長を務める村田弘さんの避難元は南相馬市小高区。「帰りたいですよ。でも、放射線があるから無理だ。13世帯ある隣組でもわずか3世帯しか戻っていない」と話した。避難生活と裁判闘争での疲労が蓄積し、軽い脳梗塞を患った。年内には白内障の手術を受ける予定になっている。「年寄は良いだろう、みたいな話では無いと僕は思う。年寄りだって人間です。7年間も宙ぶらりんにした原発事故の罪は重い」と語った。
 次回期日は年が明けて1月19日午前10時。8人の原告に対する本人尋問が予定されている。そして2月8日には、いよいよ裁判官が浜通りを現地検証する。村田さんの自宅や浪江町、富岡町などを1日かけて見て回る予定だ。「被害の重大性をどれだけ裁判官に分からせる事が出来るか」と村田さんは話す。
 閉廷後の集会で、原告の1人は怒りをこめてこう話した。
 「被害に遭った当事者に気持ちになって質問して欲しい。まずは謝罪だろう。謝罪してくれれば、賠償金なんて要らないくらいの気持ちなんだ。どのくらいのい線量になったか尋ねていたが、事故前の状態に戻すのが当たり前。そんなに聞くなら、どこまで下がったら健康に影響が出ないのか具体的な数値を示すべきだ。そういう事もしないで、ただこちらの陳述書を読んでくだらない指摘ばかりしている」



(了)
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鈴木博喜

Author:鈴木博喜
(メールは hirokix39@gmail.com まで)
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