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【中通りに生きる会・損害賠償請求訴訟】東電が個々に反論。「事故は何も奪っていない」。〝ああ言えばこう言う〟に怒り心頭の原告たち~第8回口頭弁論

「中通りに生きる会」(平井ふみ子代表)の男女52人(福島県福島市や郡山市、田村市などに在住)が原発事故で精神的損害を被ったとして、東電を相手に起こした損害賠償請求訴訟の第8回口頭弁論が20日午後、福島地方裁判所206号法廷(金澤秀樹裁判長)で行われた。東電側は、原告一人一人に対して反論する準備書面を提出。従来の表現を繰り返しながら、原告の主張を改めて全否定した。わずか5分足らずで閉廷した法廷でのやり取りだけでは見えてこない東電側の〝本音〟。被害者を愚弄する言葉が散りばめられた準備書面の一部を紹介しながら、彼らの厚顔無恥ぶりに迫りたい。


【「散策禁じる指示出ていない」】
 これを厚顔無恥と言わずして何と言おうか。
 被告・東電は今月10日付で数百ページに及ぶ準備書面(8)を提出。原告一人一人の主張を全否定した。原発事故後、折に触れて低姿勢を貫いている〝表の顔〟とは異なる東電の〝本音〟が散りばめられた準備書面に、原告たちの怒りは頂点に達した。事故の謝罪をするどころか、まるで放射性物質の拡散による影響を訴える原告がおかしいと言わんばかりの言葉が並ぶ。牙を剥いて威嚇してくる猛獣のような姿勢を、原告たちが受け入れられるはずが無かった。
 「東電の物言いには驚きます。被害者の虚しさを思い知りました。情けないです」
 会の代表を務める平井ふみ子さん(福島市)は、A4判で7ページにわたる自身への反論を読み、身体が震える想いだった。
 「原告の居住地である福島市内の空間放射線量の状況は、事故直後から原告の健康に対する客観的かつ具体的な危険を生じさせるおそれがあるものではない」
 「正しい知識を得ることにより不安が解消されるという性質の不安にとどまる(客観的危険に基礎付けられない心理状態である)」
 「原告は自己の判断によって避難するかどうかを決めたものであって、中通りにとどまり生活せざるを得なかったという事実は認められない」
 洗濯物を市内に干すのも「必要性及び合理性がない」。原因不明の体調不良が、放射線被曝によるものかもしれないと不安を抱くのも「本件事故に起因するものとは認められない」。平井さんがもっとも驚いたのは次のくだりだった。
 「本件事故において、自主的避難等対象区域内において河川内に立ち入ってはならないとか、山林等を散策してはならないとの指示が出された事実があるとは認められず(中略)福島市については『信夫山おもしろハイキング』等の観光情報により自然の美しさが広報されており、中通りの清らかで豊かな自然が奪われたとの原告の主張は当たらない」
 被曝リスクを少しでも低減しようと、平井さんは何十年も大切にしてきた庭の植木を伐採する苦渋の決断をした。植木職人が次々と切り落としていく光景に心が痛んだが、東電は精神的損害を認めるどころか「むしろ、放射性物質の影響が低減することによって不安の解消につながると解される」と返してきた。「東電は全て『関係ない』との一点張りで、怒りが沸騰している。どうやったら分かってもらえるのか…」と話す。






被告・東電の反論を読んでいると、どちらが〝加害者〟か分からなくなって来る。依然として生活圏に保管されている除染土壌の存在に心を痛めても、慰謝料の対象にはならない。「中通りの豊かな自然が奪われた」とする原告の主張も否定。まるで原発事故で精神的損害を被った側が悪いかのようだ

【被曝への不安は「独自の見解」】
 閉廷後の学習会で涙を流し、机を叩きながらやり場のない怒りを爆発させたのは、やはり福島市に住む大貫友夫さん。
 原発事故後、数値を記録し、積み上げる事に取り組んできた。〝自主除染〟にも取り組んだ。行政の除染も受けた。しかし、大貫さんの自宅は最新の測定でも「車庫の雨どい下は0.56μSv/hと断トツに高い」と陳述書に記した。ベランダの雨どい下の土壌汚染は、依然として放射性セシウムが4767Bq/kgに達する。今月に入って福島市役所に問い合わせたが「一度、公的除染をした箇所は、ホットスポットが見つかっても市では再除染は出来ない」との回答だった。「家の掃除と同じで、私は放射能除染は繰り返しが肝要だ」と大貫さんは陳述書に綴る。
 家族会議を経て、最終的に福島県外への避難をしない事を決めたが「避難していれば初期被曝を避けられた」と後悔もある。だが、東電は「原告が自主的避難を巡って逡巡したとしても、そのこと自体によって、原告の具体的な法的権利・利益の侵害に当たると解することはできない」と一蹴した。
 せめてもの被曝回避にと、保養も兼ねて山形県に57回にわたって一時避難した。これも東電は「福島県知事も冷静な対応を呼びかけるという状況の中で原告各人の判断に基づくもの」と慰謝料請求権を否定する。「実際に自主的避難等対象区域の18歳未満人口の大多数は自主的避難を選択しておらず、小中高等学校においても授業や屋外での部活動等の諸活動を行っている実情にある」と東電。「原告の主張する不安は、客観的根拠に基づかない漠然とした不安感をいうものにすぎない」。
 まさに「暖簾に腕押し」。〝ああ言えばこう言う〟の東電。大貫さんは原発事故後、被曝への不安から不眠などで体調を崩したが、東電は「本件事故による低線量被ばくによって招来されたものとは認められない」と繰り返す。家庭菜園を断念したのも、大貫さんの「任意」であって「土を購入して家庭菜園をすることに支障はない」。福島市は「通常の生活が可能である」から「それまでの生活基盤や人間関係が奪われるという状況にはなく、それまでの人生の基盤が破壊されたという状況にはない」と東電は言う。
 大貫さんの被曝への不安やこれまでの取り組みは「独自の見解」という、たった五文字に押し込められた。原発事故後、長女家族は新潟県に避難し、孫と頻繁に会えなくなってしまった。別の娘は関西に移住する事になった。どれだけ具体的な数字を東電に突き付けても、東電は放射線によって家族を分断された怒りや哀しみに寄り添おうとしない。


痛みに寄り添おうとしない東電の姿勢に、原告たちからは怒りや悔しさが次々と噴出した。代理人を務める野村弁護士は「抽象論では無く、原発事故によって突然突き付けられた『どう生きるのか』という根本問題について、各々の具体的な事例を積み上げて欲しい」と呼びかけた=福島県福島市の市民会館

【「事故は『どう生きるか』突きつけた」】
 閉廷後に開かれた学習会で、原告の代理人を務める野村吉太郎弁護士は「東電の反論は他の訴訟で主張した内容をコピーして貼り付けているだけだから、そんなに心配する事は無い」と呼びかけた。
 「いきなり、何の前触れも無く『あなたはどう生きるんですか』と家族一人一人に突きつけてしまったのが原発事故。生きる、ということに対して自分はどう問われたのか。自分の家族はどうなってしまったのか。改めて振り返った時に『心の損害』が見えて来るのではないか。小さな事なんだけど自分が大切にしてきたものが奪われた。そういうものを陳述書に盛り込んで欲しい」
 次回期日は2018年2月7日10時45分。平井さんら7人の原告に対する本人尋問が始まる。女性原告の1人は「東電は本当に私の陳述書を読んだのか。上っ面だけで反論している。東京の人はスーパーでしか物を買ったことが無いから、私たちの食文化も全く理解していない。ただ一般的な答えを出して、私たちの頭をぎゅっと押さえつけて反論できないようにしている」と怒りを口にした。
 裁判など未経験の原告たちは、本人尋問でどれだけ自分の想いを伝えられるか不安が募る。原発事故で被った被害を文章にすると言っても難しい。全否定の準備書面を読めば読むほど虚しさばかりが湧き上がって来る。そもそもなぜ、被害者がここまで闘わなければならないのか。なぜ加害者に上から目線で物を言われなければならないのか。原発の爆発事故から80カ月が過ぎた福島県中通りには、こうして今も闘っている人々がいる。
 「復興」の大合唱に埋もれてしまいがちな原告たちの訴えは、今の中通りを象徴するべき姿でもある。巨大な敵との闘いは年を越えてもまだまだ続く。



(了)
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鈴木博喜

Author:鈴木博喜
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