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【自主避難者から住まいを奪うな】「性急に訴えるなと言ったが…」。監督責任放棄した厚労省。訴え取り下げにも尽力せず~〝米沢追い出し訴訟〟で政府交渉

山形県米沢市への〝自主避難者〟が被告となった異例の〝追い出し訴訟〟(2017年11月22日号参照)を受けて1日午後、東京・永田町の衆議院第一議員会館国際会議室で開かれた政府交渉(主催:原発事故被害者の救済を求める全国運動)では、厚生労働省や復興庁の官僚たちは「ていねいに対応してきた」と繰り返し、挙げ句には「性急な提訴をしないよう求めて来たが、機構の判断で訴訟を起こされてしまった」と言い放つ始末。訴え取り下げに取り組む姿勢も見せない。東電と共に原発事故の責任を負っているはずの国。しかし、相も変わらず避難者保護に消極的な姿勢が改めて浮き彫りになった。


【「提訴は機構が判断したこと」】
 口を開けば「戸別訪問」。そして「ていねいに対応している」。
 原発事故による〝自主避難者〟が「追い出し訴訟」の被告になるという異常事態。福島県から山形県米沢市に避難し、雇用促進住宅に入居した8世帯が退去と今年4月以降の家賃支払いを求めて訴訟を起こされている。しかし、訴訟への認識を問われた官僚の回答は従来からの発言の域を出ず、空疎な言葉を口にするばかりだった。
 厚生労働省「(今回、被告となった)8世帯に対しても、それ以外の避難者に対しても機構(独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構、千葉県千葉市)は(雇用促進住宅の)入居者に対する戸別訪問などを実施しておりまして、今年4月からは有償での入居を認めて、手続きを踏んでいただければ続けて住む事が出来るというところでやっておりまして、ていねいに対応してきたという風には聞いておるところでございます。ただ、この件につきましては現在、係争中というものでございますので、コメントについては控えさせていただきたい」(雇用開発企画課の男性担当者)
 復興庁「今回の雇用促進住宅の訴訟に関しましては、管理者の方及び関係自治体の方々が連携して入居者に対して戸別訪問などを実施されてご対応されてきたと伺って来ているところでございます。訴訟の案件という事もございまして、これ以上、訴訟についてはコメントを控えさせていただきたい」(被災者支援班の女性担当者)
 そして、訴訟を避けるためにどんな努力をしてきたのかを問われると、次のように答えた。
 「被災県と連携を図りつつ入居者への丁重な説明を行って、希望される方には円滑に有償契約に移行できるように最大限の配慮を(機構に対して)お願いしてきたところでございます。提訴につきましては、性急に行わないように機構に対して話はしてきたところでもございます。訴えを起こしたのは機構の判断だと認識しております」(厚労省)
 復興庁も「福島県と連携して対応してきた」と繰り返した。国としてもやれる事はやった。機構にも釘を刺した。しかし機構が〝暴走〟した─。官僚の言い分を要約するとそうなろう。明らかな違法行為でも無い限り、国が独立行政法人に〝干渉〟する事は出来ないという。そんな相も変らぬ省庁の主体性の無さに怒りをあらわにしたのが、原発事故当時に首相を務めていた菅直人衆議院議員(立憲民主党)だった。






(上)米沢の避難者たちの元には、まるで戦時下の赤紙のような赤い色の意向確認書が届いていた。熊本さんは「職場にまで退去を迫る電話がかかって来たと聞いた」と明かした
(中)(下)厚生労働省や復興庁の官僚たちは「ていねいに対応してきた」と繰り返した上で、今回の訴訟についてはノーコメントを貫いた

【「家賃払えば10年間は住める」】
 原発事故以降、官僚たちは被曝リスクの過小評価に躍起になるのとは対照的に、原発事故被害者、とりわけ政府の避難指示の出されていない区域(福島市、郡山市、いわき市など)からの〝自主避難者〟の保護に関して主体的・積極的に取り組もうとして来なかった。しかも、今年4月14日の参議院・東日本大震災復興特別委員会では、今村雅弘復興大臣(当時)が山本太郎参院議員の「意に反する追い出しはさせないということだけをいただけませんか」という問いかけに対して、こう答えている。「そういうことはできないし、またさせないというふうに私は考えております」(山本議員オフィシャルサイト参照)。しかし追い出しは強行された。それだけに、監督責任を放棄して「機構の判断」に逃げる厚労省の姿勢を菅議員は厳しく批判した。
 「この機構は国が全額出資している。厚労省は機構に対して監督責任があるではないか。福島第一原発事故は国と東電の責任なんだから、避難をした人たちに対しては何とかフォローしようというのが『子ども被災者支援法』の精神でもある。当事者が納得しないまま民間会社に売却する事を厚労大臣も認めているのか。避難者を追い出しても良いと厚労大臣も総理大臣も了承しているのか」
 厚労省の担当者は、国の監督責任には正面から答えず、2021年度までに譲渡・廃止するとした閣議決定を挙げて、民間会社への売却には問題無い事を重ねて主張する。「入居者が困らないよう、少なくとも10年間は住み続ける事が出来るようにもしている」。これを〝自主避難者〟にも適用し、「有償での賃貸契約さえ結べば現在の避難先に10年間は住み続けられるのに、避難者がそれを拒んでいる」というのが厚労相の考え方だ。閉会後、取材に応じたこの担当者は「米沢の場合は、避難者が話し合いに応じてくれなかった、交渉をシャットアウトされてしまったと聞いている」とも話した。この件に関しては福島県庁の担当者も同様の趣旨の発言をしているが、避難者らは否定している。
 「米沢で退去を迫られている8世帯の世帯構成や母子避難世帯の数などを把握しているか」との質問に、厚労省や復興庁の担当者は答えられなかった。貧困問題の観点から首都圏の避難者支援を続けている「避難の協同センター」瀬戸大作事務局長は、住宅の無償提供打ち切りを受けて路上生活を余儀なくされた川崎市内の避難者の実例を挙げて「どこがていねいな対応か」、「そういうケースがある事を認識しているか」と詰め寄った。これに対しても、厚労省の担当者は「認識しておりません」と答えるばかりだった。
 菅議員は取材に対し「厚労省は『あれは機構が勝手にやったんだ』と逃げている。今後も厚労省の担当者を呼んで監督責任を問うていく」と話した。






(上)眼光鋭く厚労省の監督責任を質した菅直人元首相。「原発事故は国と東電の責任だ。機構の判断に収れんさせてはならない」と話す
(中)立命館大学特別招聘教授の塩崎賢明さんは講演で「〝自主避難者〟の追い出し訴訟には本当にびっくりしている。こんな事が許されて良いのかと強く思う。『子ども被災者支援法』に真っ向から反対するとんでもない事だ。憲法の前文にも『われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する』と明記されている」と批判した
(下)90分間にわたって行われた政府交渉だったが、今回も平行線のまま終わった=衆議院第一議員会館国際会議室

【「実態把握せずどう助けるのか」】
 交渉には避難当事者も参加した。都内で「原発避難者住宅裁判を準備する会」の世話人代表をしている熊本美彌子さん(福島県田村市から東京都に避難。都営住宅に継続入居中)は、「機構や福島県がていねいに対応してきたと言っているが、米沢の方々から直接、聴いた話とはずいぶん異なる。職場にも退去しろという電話を何回も掛けて寄越す、無償提供打ち切り直前の2月には赤い紙で意向確認書が送られてきた。こういう事がなされているという事を国は認識しているのか。まずは当事者の話を聴いてから施策をつくるべきだ」と訴えた。
 戸別訪問で実際に避難者と面会できた割合を尋ねても、避難者の収入における家賃支出の割合を問うても官僚は答えられない。それでも「繰り返しになりますが、福島県と連携して今後もていねいに…」と答える。今年5月、衆議院の「東日本大震災復興特別委員会」に参考人として招致され「口を揃えて『避難者に寄り添って』など、全て嘘でした」と発言した松本徳子さん(福島県郡山市から神奈川県に母子避難中)。この日も「具体的な事が何も分からないのに、避難者の実態を何も把握していないのに、どのように支援してくださるのでしょうか。どうやって助けてくださるんでしょうか。具体的に教えていただきたい」とマイクを握った。
 復興庁の担当者は「相談拠点に寄せられた相談内容は福島県から聞いて把握している。今後も引き続き、出来る限り実態を把握していきたい」と答えたが、相談拠点に寄せられる内容からは浮かび上がらない〝自主避難者〟の実像になぜ目を向けようとしないのか。瀬戸さんが業を煮やして言った。「住宅の無償提供が打ち切られてからの生活保護申請数や却下理由など、実態を把握して数字を出して欲しい。そういうものを積み重ねていけば、相談拠点だけでは対応出来ていない事が分かるはずだ」。
 立命館大学特別招聘教授で「復興〈災害〉~阪神・淡路大震災と東日本大震災」(岩波新書)などの著書がある塩崎賢明(よしみつ)さんは、交渉に先立って行われた講演で「〝自主避難者〟の追い出し訴訟には本当にびっくりしている。こんな事が許されて良いのかと強く思う。『子ども被災者支援法』に真っ向から反対するとんでもない事だ。憲法の前文には『われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する』と書いてある。これを根拠にすれば理解はたやすい事だが、なかなかそうなっていない」と語った。
 放射性物質の拡散で安全な生活を奪われた上に、避難先までも追われようとしている〝自主避難者〟たち。訴えの取り下げを求める輪が少しずつ広がっている。



(了)
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鈴木博喜

Author:鈴木博喜
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