FC2ブログ

記事一覧

【81カ月目の福島市はいま】〝原発事故〟語られなかった市長選挙。きょう着任の新市長「もはや被曝リスクない」。前市長も「自主避難者は戻って来て」

「福島市には、もはや被曝リスクは無い」、「もう空間線量も心配ない」─。新旧の福島市長は期せずして似たような言葉を口にした。7日に任期満了を迎えて退任した小林香前市長(58)は除染の成果と汚染の低減を口にして市役所を去り、11月の市長選挙で現職の小林氏を破った新市長の木幡浩氏(57)は8日に着任。〝復興〟にまい進する。11月の市長選挙では、原発事故による汚染や被曝リスクは全くと言って良いほど語られなかった。市民の潜在的な不安は置き去りのまま、東京五輪を起爆剤に〝復興〟しようと「木幡市政」が船出する。 We Love FUKUSHIMA を合言葉に。


【新市長へ「風評払拭に力入れて」】
 7日に人気満了を迎えた小林香氏。大勢の市職員や支持者らに見送られ、抱えきれないほどの花束を手に目に涙を浮かべながら福島市役所を後にした。午前11時半から市役所内で行われた退任会見では、自身が野球・ソフトボールの一部市内開催誘致に関わった東京五輪について「オリンピックは福島市だけではなく福島県全体の風評を払拭するまたとない事業であり、全世界に福島市、福島県の魅力を発信できる素晴らしい機会だ」と語った。「風評払拭」。この言葉は、朝日新聞の記者から「新市長への注文は?」と問われた際、再び口にしている。
 「新市長への注文ですか。うーん………。そうですね。やはり風評被害がまだ根強く残っていますので、この風評被害の払拭ですね。まだまだ粘り強くやる必要があるのかなというふうに思いますので、そうした事にも力を入れてもらえればありがたいなと思いますね」
 2013年11月の市長選挙で、当時の瀬戸孝則市長の汚染・被曝リスク対策への不満の受け皿として当選。開票作業開始直後にNHKが「当確」を打つ〝圧勝〟だった。そして4年経ち、今度は自分が新人に敗れた。一騎打ちから三つ巴に構図が変わった事もあり、得票は7万2441から3万4503に半減した。それでも会見では、毎日新聞記者からの問いに対し、この4年間の自身の汚染・被曝リスク対策に〝合格点〟を与えてみせた。
 「除染はほぼ順調に進めることが出来たんじゃないか。担当職員も精力的に動いてくれまして、他の自治体や政府関係者と話をしましても『福島市はきわめて良くやってもらえた』との評価をいただいている。現時点で100%終わったわけではありません。けれども、住宅除染については計画を前倒して完了することが出来、それによって市民の皆さんは安心感が向上して来たのではないかなと思います。今後は宅地内保管から仮置き場への搬出に移って行く段階ですけれども、こうした作業を順調に進めてもらえればと思っております」
 その上で、福島市からの〝自主避難者〟に向けて、こう語りかけた。
 「福島市からもまだ3000人程度、自主避難されている方がいる状況でございます。私の希望としては、福島市内の空間線量等について、あるいは食品の放射性物質の含有量についても心配の無い状況ですので、戻って来てもらえればありがたいというふうには思っております。けれども、これは最終的には御本人たちが決めるところでもありますので、福島市の現状、あるいはこれからの発展の可能性をぜひ見ていただいて判断してもらえればというふうに思っております」
 「もう大丈夫だから帰っておいで」。これが小林市長の最後の言葉だった。






(上)市長選告示前の11月4日、福島市内で開かれた「こはた浩を支援する女性の会」で、支持者の撮影に妻と応じる木幡新市長。取材に対し「福島市内には健康に影響を及ぼすほどの被曝リスクは無い」と言い切った=ホテル福島グリーンパレス
(中)任期が満了した7日、女性職員から花束を贈られた小林前市長。退任会見では「心配の無い状況ですので、戻って来てもらえればありがたい」と〝自主避難者〟に呼びかけた=福島市役所
(下)市長選挙の選挙公報。もはや誰も原発事故には触れず「復興」の二文字が躍る。小林氏に至っては「NHKの朝ドラ」まで公約に盛り込んだ

【「五輪で We Love FUKUSHIMA 言おう」】
 「被曝リスクですか?もはや福島市内には健康に影響を及ぼすほどの被曝リスクは無いと私は思う」
 市長選挙で小林氏に1万票以上の差で当選した木幡浩新市長は、告示前の11月4日、福島市内のホテルで開かれた「こはた浩を支援する女性の会」で取材に応じ、被曝リスクを明確に否定した。今夏まで復興庁の福島復興局長として故郷・飯舘村の避難指示解除(帰還困難区域を除く)などに関わってきた元官僚。集会では、座りきれないほどに集まった女性支持者を前に、こんな言葉を口にしていた。
 「震災から10年経ちますと、政府の復興特別期間が終了してしまう。私は復興局長でしたから、福島の復興に関しては10年ではとても収まらない、だから国に『10年後も福島の復興に対する特別な対策をしてください。組織も特別な組織をつくってください』と復興庁にお願いしてきました。おそらくそれは残ると思います。しかし、中通りや会津地方がこれまでと同じかというと、それは変わって来ると思います。われわれも、いつまでも〝復興〟という傘の中にいてはいけません。やっぱり復興の先まで見据えた段階にこれからは突き進んでいく時期なんだろうと思います」
 「いつまでも」は、東京五輪を機に増えるであろう外国人観光客にも向けられた。
 「ニューヨークだと I Love N.Y と書かれたTシャツがシンボルですね。私は東京五輪でぜひ We Love FUKUSHIMA と言いたい。いろんな人が福島市に来ても、皆さんはいろんな想いを福島に対して持って来られます。福島はあれだけの被害があってさぞ、住民の皆さんも苦しんでる。自分たちの街が嫌になってるんじゃ無いのかなと思って来る方が多いと思う。それに対してわれわれは自信を持って言おうじゃありませんか。 We Love FUKUSHIMA と」
 原発事故からまだ81カ月という事実、被曝リスクへの懸念と自分の住む街が好きか否かは別問題のはず。しかし、木幡氏は次のような言葉で支持者らに〝決意表明〟してみせた。
 「福島駅前は暗いですね、元気ないですねと言われるのがほとんど。これだと福島は大変だろうと思って来る方の思うつぼなんです。見返してやろうじゃありませんか。福島はこんなに明るいんだ、元気なんだ。この姿を駅前からやっていかないと戦略的にはうまくいかないと思っています。市長に就任したならば、大々的に変えていきます」
 前復興局長が今日から市長を務める。ある市民は「当然、公共事業が増えるだろう。ゼネコンが勝たせたようなものだから」と苦笑した。






(上)もはや除染で生じた廃棄物の体の良い〝重石〟か。選挙期間中、小林氏ののぼりがくくりつけられ、市民からは驚きの声もあがった
(中)木幡氏のキャッチフレーズは「ふくしまを元気に! 新ステージへ」。告示前の集会では、支持者に「われわれも、いつまでも〝復興〟という傘の中にいてはいけません」と呼びかけた
(下)退任した小林氏が「風評払拭の好機」と語る東京五輪。木幡氏も負のイメージを払拭する起爆剤としたい考えだ=福島市役所

【「被曝リスクの懸念=復興否定では無い」】
 もちろん、小林氏が「4年前、就任した時に比べると、(市民の抱く)危機感というのは全体としてかなり薄らいだように感じる」と指摘するように、表に出て来る〝危機感〟は大きく変化したのは事実だろう。しかし、原発事故直後から国や行政が〝安全アピール〟を垂れ流す中で、子育て世代が堂々と被曝リスクへの懸念を口に出来ない空気感が醸成されていったのもまた、事実だ。
 福島県外に避難すると言えば「避難指示も出ていないのに怖がり過ぎ」と非難され、「ママ友の前では放射能の話はしない」と口にする母親が増えて行った。内部被曝を避けようと、隠れるように福島県外の食材を買い求める人も少なくなかった。「避難も出来ず、ここで暮らす以上は。不安は封印するしかない」との声も何度も耳にした。公園でわが子を遊ばせる母親に声をかければ、今や多くが「今となっては全く心配しなくなりました」と話す。しかし、潜在的な不安が今なお薄らいではいない事を、木幡氏の集会に参加した40代母親が語ってくれた。
 「放射線の事を気にしなくなったわけではありませんよ。甲状腺ガンも増えていますしね。夫の仕事などの関係で避難したくても出来ない。その中で、少しでもわが子を被曝リスクから遠ざけたいと考えています。今回は待機児童問題を解消して欲しくて木幡さんに投票しますが、汚染や被曝リスクが全然語られない選挙というのもおかしいですよね」
 別の市民は「復興、復興ばかり。もちろん復興は大切です。でも、間違えないで欲しいのは、汚染や被曝リスクへの懸念を口にする事は、決して復興を否定する事では無いのです。私は被曝リスクがまだ心配だけれど、だからといってこの街が嫌いなわけでもありません」と話した。
 今日、市長として着任する木幡氏の市長選挙でのキャッチフレーズは「ふくしまを元気に! 新ステージへ」だった。被曝リスクへの不安、わが子を被曝させまいと考えている親たちの想いは置き去りにされたまま、新たなステージに上がって行くのだろうか。



(了)
スポンサーサイト

プロフィール

鈴木博喜

Author:鈴木博喜
(メールは hirokix39@gmail.com まで)
https://www.facebook.com/taminokoe/


福島取材への御支援をお願い致します。

・じぶん銀行 あいいろ支店 普通2460943 鈴木博喜
 (銀行コード0039 支店番号106)

・ゆうちょ銀行 普通 店番098 口座番号0537346

最新記事

最新コメント

アクセスランキング

[ジャンルランキング]
ニュース
36位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
時事
14位
アクセスランキングを見る>>

アクセスランキング

[ジャンルランキング]
ニュース
36位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
時事
14位
アクセスランキングを見る>>