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【放射性廃棄物】「燃やすな!」拒む住民。「燃やして減容」企む環境省~二本松市・東和の森に再浮上した仮設焼却炉設置計画

野鳥の鳴き声が響く福島県二本松市・東和の森に、除染で生じた放射性廃棄物を燃やして減容するための仮設焼却炉設置計画が再浮上している。一昨年秋、キャンプ場などとして親しまれてきた「夏無沼自然公園」(同市針道)への設置計画が示され、住民が猛反発。7500筆を超える反対署名が集まり、計画はいったん白紙に。しかし、前回候補地から約1kmしか離れていない場所への設置を、環境省が再び提示してきたのだ。是が非でも燃やしたい環境省。「フレコンバッグが生活圏にあるままで良いのか」と加勢する推進派グループ。しかし「焼却ありき」、「不透明な候補地選定プロセス」に住民らの怒りは収まらない。「東和はゴミ捨て場じゃない」。住民の言葉は重い。


【「とにかく量を減らしたい」】
 住民センターの一室から漏れてくる声や拍手が、住民の怒りの大きさを表していた。
 1日夜に開かれた住民説明会。女性がマイクを握った。
 「山の中だと思って馬鹿にしているのかも知れませんが、私たちは5年間、放射能と闘って来たんですよ。こんなことをして、美しい二本松になるわけがない。燃やしたって放射能は無くならないんです」
 環境省の担当者は「放射性廃棄物の処理が進んでいないことで、ご迷惑をおかけしている」と答えた。低姿勢ではあるが、しかし何を言われても次のような言葉を繰り返すばかりで、決して焼却をやめるわけではない。「(除染で生じた汚染物の入った)フレコンバッグが点在している状況は好ましくない。一日も早く環境を回復したいのです」。
 そして、こうも語った。「我々としてはぜひ、減容化をして中間貯蔵施設などに運び込みたい」。汚染土壌の再利用まで決めた環境省にとって、中間貯蔵施設建設の条件である「30年以外に福島県外への搬出、最終処分」は至上命題。何が何でも中間貯蔵施設に運び込む量を減らしたい。だからこそ、福島県内では8つの仮設焼却炉が毎日、放射性廃棄物を燃やし続けているのだ。
 「あたかも、フレコンバッグが無くなったら環境回復が図られるかのような言い方はしないで欲しい」
 別の男性が言った。誰だってフレコンバッグが生活圏にある事が良いとは思っていない。しかし、焼却ありきの計画には賛同できぬ。環境省は「ご意見は持ち帰る」とは言うものの、住民不在で頭ごなし。候補地の選定プロセスすら質問しても答えない。「開かれた場で、みんなが分かる形で、透明な手続きで進めて欲しい」。住民がそう願うのは当然だ。しかし、環境省は「モニタリングをして不安に応える」などと言うばかりで、具体的な回答は無し。住民の疑問は解消されないまま、3時間にわたる説明会は終わった。
 住民説明会を巡っては、環境省から取材を拒否された。名刺も返された。報道受付には福島県庁内の記者クラブに加盟するメディアのリストがあり、フリーライターなど加盟社以外の取材を拒否することになっているという。担当者は「二本松市との協議でそのように決めました」の一点張り。やましい点が無ければ、堂々と取材に応じればいい。環境省が、いかに〝騒がれずに〟放射性廃棄物を燃やしてしまおうと画策しているかが良く分かる。「開かれた場」とはほど遠い住民説明会だった。


環境省の焼却方針に反対する住民らは、計画の存在を知らない住民に呼びかける意味も込めて複数の看板を設置している

【用地は賛成派住民が提供】
 環境省廃棄物・リサイクル対策部が6月28日から7月1日にかけて東和地区内の4カ所で開いた住民説明会の資料などによると、仮設焼却炉の設置予定地として環境省が提示しているのは、川俣町山木屋にほど近い二本松市戸沢熊ノ久保の土地。「県道62号線沿いのなだらかな傾斜地である」、「4ヘクタールの用地が確保出来る」、「近くに沢があり冷却用の水を確保出来る」ことが選定の決め手になったという。東京ドームの広さが約4・7ヘクタールだから、規模の大きさが分かろう。環境省は「当該土地以外は適地とは判断できない」と言い切るが、実際に候補地を訪れてみると、この場所以外に適地が無いとはとても思えない。むしろ、仮設焼却炉を設置することで豊かな森が破壊される。
 用地は、仮置き場に保管されているフレコンバッグの早期撤去を求めている「二本松市放射能対策推進会議」から提供の申し出があった。住民説明会でも、同会議のメンバーが「一日も早く焼却を進めて欲しい。『フレコンバッグがあると精神的に良くない』と言う人もいる。仮設焼却炉を建設出来なければ、いつまでもフレコンバッグが生活圏に放置されることになる。それで良いのですか?」と語気を強める場面があった。
 仮設焼却炉の具体的な規模は示されていないが、環境省の想定する処理能力は1日120トン。運転期間は「3年程度」。伊達市霊山町石田で稼働中の仮設焼却炉が1日130トンなので、それと同規模と思われる。ごみ・し尿処理などのため二本松市や本宮市、大玉村で構成する「安達地方広域行政組合」管内では現在、約10万8000トンの放射性廃棄物が仮置きされている。8万3920トンが住宅除染などで生じた除染廃棄物。2万4090トンが、稲わらや牧草などの農林業系廃棄物。それらを燃やす計画だ。
 放射性廃棄物は「850℃以上で完全燃焼」され、排ガスを「200℃以下に急冷して高性能の集じん装置(バグフィルター)で処理する」など、資料では「安全対策」が強調されている。バグフィルターに関しては「放射性セシウムが99・9%除去される」と環境省は常に説明する。しかし岩見億丈医師(岩手県宮古市)は、バグフィルターを経ても数割の放射性セシウムが排煙とともに漏れ出しているとの調査結果を、2015年の「廃棄物資源循環学会」で発表している。


環境省が「ここ以外に適地無し」と言う仮設焼却炉設置予定地。小川が流れ、野鳥がさえずる。計画が強行されれば、放射性物質の再拡散が懸念される=二本松市戸沢熊ノ久保

【「東和はゴミ捨て場じゃない」】
 実は東和地区での仮設焼却炉設置計画は、これが初めてではない。2014年秋、景勝地として長年、親しまれてきた「夏無沼自然公園」内の市有地が候補地として急浮上。同年12月に住民説明会が開かれた。これを受けて、住民有志が1カ月ほどで集めた反対署名は7541筆に上り、二本松市の新野洋市長や環境省に提出。2015年5月、新野市長が住民説明会の席上で「候補地を再選定する」と表明した経緯がある。
 2013年9月には、地元選出の佐藤源市市議が市議会一般質問の中で「まあ私は東和ですから、東和で何とかしてくれと言えば私もその意向はございますから、これは遠慮しないで申し出ていただければいいと思います」と市当局に投げかけている。これが、東和地区が候補地として選ばれた布石になったとの見方をする住民もいる。
 前回の候補地から、直線距離でわずか1・2kmほどの場所に再び浮上した仮設焼却炉設置計画。「なぜ環境省は燃やすことにこだわるのか。これだけ土地があるのだから、1カ所に集中管理する方法だってある。その方が、コストも大幅に減らせるでしょう。燃やせば放射性物質が周辺に拡散されてしまうし、高濃度の焼却灰も生じます」。そう話すのは、住民グループ「夏無沼と東和の環境を考える会」事務局の服部浩幸さん(47)。「初めから焼却ありきではなく、皆が分かる形で議論をすれば良い。それで焼却が大勢を占めるのであれば納得しますが…」。
 開かれた議論どころか、環境省は意図的に焼却炉問題を覆い隠そうとさえ思える手法を取り続ける。住民説明会での配布資料は「可燃性廃棄物の減容化事業について」とのタイトルで、どこにも「放射性廃棄物」との記述は無い。説明会の告知も、一週間ほどの前に行政区長がチラシを配って歩いただけ。小中学校の保護者を対象にした説明会を別に開くよう求めても拒否。新野市長も出てこない。
 有機農業に取り組んでいる農家の男性は「桑やブドウ、米、野菜が焼却炉による汚染で出荷できなくなった場合、補償出来るのか?子どもたちの健康を守れるのか?」と懸念を口にするが、環境省は福島県内で稼働中の仮設焼却炉の排ガスに関して、放射性セシウムは「不検出」(検出下限値は2Bq/㎥)だと説明するばかり。観光果樹園を営む農家も「ようやくお客さんが戻ってきたところなのに、焼却炉なんてとんでもない」と憤る。
 「考える会」は今後、新野市長への申し入れや集会などで世論を喚起していく方針。前回の候補地に関しては「住民の合意が無ければ強引には進めない」と誓った新野市長だが、今回も住民の想いに耳を傾けるのか。「住民が賛成派、反対派に分断させられてしまうのも本意ではないんです」と服部さん。住民説明会で男性が口にした言葉が、地域の人々の想いを代弁していた。
 「東和はゴミ捨て場じゃない」



(了)
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プロフィール

鈴木博喜

Author:鈴木博喜
大手メディアが無視する「汚染」、「被曝」、「避難」を追い続けています。

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