FC2ブログ

記事一覧

【自主避難者から住まいを奪うな】「機構は訴訟を取り下げよ」。〝米沢追い出し訴訟〟で厚労省・復興庁に1万筆超の署名提出。菅元首相は厚労省の責任追及

福島県から山形県米沢市への〝自主避難者〟が被告となった異例の〝追い出し訴訟〟(2017年11月22日号参照)を受けて、訴訟の取り下げと話し合いによる解決を求める署名が21日午後、厚労省と復興庁に提出された。被告の1人である武田徹さんは「巨象がアリを踏みつぶす行為だ」と強く抗議。同席した菅直人元首相も厚労省の監督責任を厳しく追及する構え。地元・福島選出の吉野正芳復興大臣も避難者に「自立して然るべき」と語ったといい、年の瀬に「わがままな避難者一掃」という誤った動きを加速させる安倍政権。「ていねい」とは真逆、「弱者切り捨て」の姿勢が見て取れる。


【「巨象に踏みつぶされるアリだ」】
 山形県から駆け付けた武田さんは口を真一文字に閉じていた。
 1万筆を超える署名の束がずしりと重い。全国の支援者や同じように〝自主避難〟している人々の想いが詰まっている。今回、意に反して被告とさせられてしまった米沢への避難者も、自ら用紙をコピーして勤務先などで署名を集めた。そもそもなぜ、原発事故が無ければ必要の無かった避難であるにもかかわらず、「わがままな不法占拠者」として訴えられなければならないのか。なぜ、本当の意味での「ていねいな対応」を尽くして話し合いによる解決を目指さないのか。「同じ日本人ですから。われわれの気持ちを受け止めて欲しい」。被告の1人である武田さんは、そう添えて署名の束を官僚に手渡した。
 署名は、「原発事故避難者の住宅の強制立ち退きに反対する署名の会」が11月16日から今月19日にかけて、インターネット上と署名用紙とで集めた。求めているのは①独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(以下、機構)は訴訟を取り下げ、話し合いによる解決に努めること②国は機構と協議し、裁判によらない解決を促すこと③国と福島県は、避難者が路頭に迷わないよう公的住宅を確保すること─の3点。宛先には福島県の内堀雅雄知事も含まれている。
 署名提出後の会見で、武田さんは「国家がわずか8世帯を訴える。こんな事はあってはならないし、ありえない。国は巨象で、われわれはアリである。巨象がアリを踏みつぶすような、そういう行為だ。到底容認出来ない」と改めて強く抗議した。「機構にはもはや所有権は無いのだから、まずは訴訟を取り下げるべきだ」。
 都内で「原発避難者住宅裁判を準備する会」の世話人代表をしている熊本美彌子さん(福島県田村市から東京都に避難。都営住宅に継続入居中)は、「避難先での住まいの確保は『子ども被災者支援法』で国の責務であるとうたわれている。しかし、国は何ら施策を用意しなかった。福島県は災害救助法に基づいて住宅の無償提供を打ち切ったが、ほとんど補償を受けていない区域外避難者の困難をさらに深めた。今回の訴訟を機に、避難者が被告となる裁判が起こされていくのではないか。原発事故を起こしたのは誰か。国も東電の被害者に謝罪したか」と語った。
 「避難の協同センター」代表世話人の松本徳子さん(福島県郡山市から神奈川県に避難)も「原発事故はまだ終わっていないのに私たちの自己責任にしている。私たちのわがままでは決して無い。あの時、苦渋の選択をした避難者が住宅を打ち切られ、追い出し訴訟をされている。この国はここまで腐っている。この理不尽さを可視化して訴えていきたい」と強い口調で訴えた。






(上)口をぐっと真一文字にして署名の束を手渡す武田徹さん。避難先の山形県米沢市から駆け付けた
(中)訴訟取り下げと話し合いによる解決を求める署名は、1万筆を超えた
(下)会見で武田さんは「訴訟は巨象がアリを踏みつぶすような行為だ」と強く抗議した=東京・永田町の参議院会館

【「国は指導する立場に無い」】
 署名提出には、今月6日付で安倍内閣に対して質問主意書を提出するなど、この問題での国の責任を追及している菅直人衆院議員(立憲民主党)も同席。署名を受け取った厚労省雇用開発企画課の官僚と〝対峙〟する場面もあった。
 菅「はっきりしないのは(既に雇用促進住宅が民間会社に売却されているのに)機構に訴訟を起こす権限があるのかどうか」
 厚「訴訟を提起した段階では機構の所有物となっていたので、その時点で訴訟をする権利はあったと認識している」
 菅「訴訟を起こした時点では無く、現時点ではどうなのか」
 厚「現在、係争中の案件になるので詳しく述べる事は控えさせていただくが、裁判所に対して所要の手続きを行っている段階と聞いている」
 菅「あなた方は事実上の当事者だ。『詳しい事は言えない』じゃなくてあなた方がどうするかだ。所有権の無い機構には追い出す権限は無いはずだから、裁判所は裁判所で判断するだろう。厚労省は機構を監督する立場として、厚労大臣が『私は関係ありません』と言えるのか。あるいは総理大臣が『私は関係ありません』と言えるのか。売却して所有権の無い事がはっきりしている機構には訴訟を続ける権限は無いのではないか、と分かりやすい事だけ尋ねている。厚労省の態度を聞いてるんだ」
 厚「答弁書にもあるように、訴訟を行うことに関して厚労大臣との協議が必要というものでは無い。繰り返しになるが、所有権を持っていないという事については現在、裁判所に所要の手続きを行っている」
 菅「厚労大臣は訴訟を事前に承諾する関係に無いと言うが、事後はどうなのか。現時点で、この訴訟に対して所管官庁として指導する責任は無いのか」
 厚「機構は独立行政法人なので、自立性・自主性をもって業務にあたる。それに対して国が一つ一つ指導する立場には無い」
 菅「『子ども被災者支援法』の理念でも、安倍内閣としても、出来るだけ被災者に寄り添って対応しなければいけないと決めている。単に管理関係が機構にあるという事と追い出しの訴訟をするという事は意味が違う。現時点でも、厚労大臣は一切、指導責任も含めて無いというのが公式見解か」
 厚「指導という面では(責任は)無い。ただ、話し合いなり助言という事ではもちろん、話はしていけると考えている」




(上)質問主意書に対する内閣の答弁書を掲げながら厚労省の官僚と〝対峙〟した菅直人元首相
(下)署名を受け取った厚労省雇用開発企画課の官僚は「厚労大臣には機構を指導する責任は無い」と繰り返し答えた

【「避難者は自立しろ」と復興相】
 前日には立憲民主党の同僚議員と福島県を訪れ「妻子を西日本に避難させている人などに会って来た」という菅議員。今回の問題に力を入れる理由として「3.11当時の首相として、全部やりきれたとは思っていない。いろんな意味で反省もある。私はもともとが市民運動がスタート。一番弱い立場に立たなければならない役所がなぜこんな酷い事をやるのか、という想いが直接的にはある。『贖罪』という想いはあるとも言えないし無いとも言えない」と語った。「避難・移住した人としなかった人という二つの立場がある。両者のつながりも考えなければならない」。
 「避難の協同センター」事務局長の瀬戸大作さんは今月12日、〝自主避難者〟たちとともに吉野正芳復興大臣と非公式に面会している。
 「その日に、復興庁が『風評払拭・リスクコミュニケーション強化戦略』を発表した。その中で『放射線に関する正しい知識の理解と誤解の払拭』として『人の身の回りには日常的に放射線が存在し、日常生活において放射線被ばくをゼロにすることはできない』、『放射線被ばくをした場合、子供への遺伝性影響が出ることはない』、『放射線による発がんリスクの増加は、100~200 ミリシーベルトの被ばくをした場合であっても、野菜不足や高塩分食品摂取による発がんリスクの増加に相当する程度である』などを周知するよう明記されている」と指摘。
 「その背景には、福島は安全なんだ、復興と避難者の帰還を加速しろと求めた復興大臣の指示文書がある。面会時にも、吉野大臣は『原発事故から7年近く経ったから、避難者は自立して然るべきだ』という趣旨の発言があった。復興大臣がそのような認識で避難者が被告にされた。避難者はなめられていると言わざるを得ない」と復興大臣を強く批判した。
 瀬戸さんの元には、世間のクリスマスムードとは関係なく避難者からのSOSが寄せられているという。
 「年末年始を無事に迎えて欲しいというお母さんたちが何人もいる。福島県は家賃補助を始めたが、再来年3月末で終了する。それ以降は支援がなくなるという事で今から『行き場がなくなる』と心配している。今日も、働いていてこういう場に来られないお母さんがいるという事も忘れないで欲しい」
〝追い出し訴訟〟の次回口頭弁論期日は1月12日。午前11時半より山形地裁で開かれる。



(了)
スポンサーサイト



プロフィール

鈴木博喜

Author:鈴木博喜
(メールは hirokix39@gmail.com まで)
https://www.facebook.com/taminokoe/


福島取材への御支援をお願い致します。

・じぶん銀行 あいいろ支店 普通2460943 鈴木博喜
 (銀行コード0039 支店番号106)

・ゆうちょ銀行 普通 店番098 口座番号0537346

最新記事

最新コメント

アクセスランキング

[ジャンルランキング]
ニュース
53位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
時事
23位
アクセスランキングを見る>>

アクセスランキング

[ジャンルランキング]
ニュース
53位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
時事
23位
アクセスランキングを見る>>