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【自主避難者から住まいを奪うな】「寄り添う」言葉の裏で切り捨て進める内堀知事、都内イベントで避難者らが〝直訴〟 小池都知事は帰還を促す問題発言

今年も〝自主避難者〟の怒りが会場に響いた。23日、JR有楽町駅前の東京国際フォーラムで開かれた「FUKU FES 2017 ふくしま大交流フェスタ」(福島県、東京都共催)で、ステージ上の内堀雅雄福島県知事に「住まいを奪うな」と〝直訴〟した。だが、内堀知事は来年も帰還促進を加速させる。オープニングセレモニーに出席した東京都の小池百合子知事は「(避難者は)福島に戻っていただく」と問題発言。夕方に顔を出した吉野復興大臣も「自主避難者への暴言」を否定しないなど、原発事故から丸7年になる来年は、〝自主避難者〟を取り巻く状況はますます厳しくなりそうだ。


【「避難者」ではなく「支援対象者」?】
 「知事!」
 中田英寿氏との対談「福島の酒と福島の魅力」を終え、ステージを後にしようとした内堀知事に客席から声が飛んだ。今年3月末で住宅の無償提供を打ち切られた〝自主避難者〟と支援を続けている「福島原発かながわ訴訟を支援する会」(ふくかな)のメンバーたちだ。「住まいを奪うな、避難を認めろ」と書かれた紙製の横断幕を掲げて訴えた(昨年の抗議行動はこちら)。
 ステージの運営を請け負っている東北博報堂の男性社員が慌てて横断幕を下げるよう命じたため、わずかな時間しか掲げる事が出来なかった。周囲の観客からは冷ややかな視線も浴びる。何も好き好んで抗議行動をしているわけでは無い。福島県庁に何度も求めて来たが、内堀知事は頑なに当事者たちとの面会に応じない。自分たちの声を届けるにはこうするしか無いのだ。会場で取材に応じた東北博報堂の植木博隆福島支社長(福島復興推進局長)は、やむにやまれぬ行動を制した理由について「周囲のお客さんの迷惑になるし、仮に好意的な内容であってもやめて欲しいと中田氏サイドからも要望があった。掲げた内容を問題視したのでは無い。応援メッセージでも同じように対応した」と説明した。
 別会場での「ふくしま避難者交流会」に出席した後、囲み取材(朝日新聞、本紙)に応じた内堀知事は、当事者たちの訴えについて「拝見しました。横に長いものでしたね」と話した。
 「大切な事は今、いろんな状況で避難生活を続けておられる方がいる。避難指示区域外の方もおられる。区域内の方もいる。避難指示も既に解除された所、解除されていない所、それぞれ全部異なる。行かれている(避難している先の)自治体によって支援の状況が違うので、比較的手厚く対応してもらっている方もいれば、そうでない方もいる。こういった状況を現地の駐在職員であったり、復興支援員であったり、とにかくきめ細かくお話を聴きながら、出来るだけサポートしていく。その努力を続けて行きたい」
 内堀知事があらゆる場面で口にする「避難者」には、区域外避難者(いわゆる自主避難者)は含まれているのか。それを問うと、内堀知事は直接は答えず、別の言葉に置き換えながら次のように語った。
 「われわれは『支援対象者』という言葉を使っている。今年の春、一つの切り替わりがあった。今、県としての独自支援を行っている。そういった意味で支援対象となる方々。これからも支援が必要なんだ、と一生懸命コンタクトをとっていただいている方もおられるので、そういった方々を『支援対象者』としてわれわれとしては出来る限りの対応を続けていく。そういう想いだ。出来得れば福島に戻って来て欲しいと思っているが、ただ、やはり、お一人お一人の御意思、それを尊重したいと思う」






(上)今年3月末での住宅無償提供打ち切りに抗議して、今年も〝自主避難者〟たちが内堀知事に向かって横断幕を掲げた
(中)「FUKU FES 2017 ふくしま大交流フェスタ」には小池百合子東京都知事も来場。内堀知事とともに「大七酒造」(福島県二本松市)の日本酒を試飲した
(下)好々爺の表情で避難者の作品に見入った吉野復興大臣。大臣室で〝自主避難者〟たちに向かって「そろそろ自立して然るべきだ」という趣旨の発言をした問題については「ノーコメント」を貫いた=東京国際フォーラム

【小池都知事「福島に戻っていただく」】
 内堀知事の言葉だけを聞いていれば、いかにも〝自主避難者〟に「ていねい」に「寄り添って」いるかのように思える。しかし、実際には「もはや、災害救助法で言う応急救護の状況ではなくなった」として今年3月末で住宅の無償提供を打ち切り、2年間限定の家賃補助に移行。しかし収入要件を設けているため、全員が月額3万円(次年度は月額2万円)の家賃補助を受けられているわけではない。当事者との話し合いは全て担当部局に一任し、知事は一度も、なぜ反対するのか直接話を聴く事のないまま、打ち切りを強行した。本音は帰還推進。戻らない避難者は復興に寄与しない、と切り捨てる。その証拠に、内堀知事は復興推進、風評払拭に貢献するような人や団体とは時間を割いてでも面会する。汚染や被曝リスクを心配する人とは会わない。
 14時過ぎから開かれた「ふくしま避難者交流会」では、避難元自治体別に用意されたテーブルを巡り、イスに座って区域内外の避難者から話を聴いた。しかし、出席した〝自主避難者〟によると「何度お願いしてもちっとも会ってもらえない」と訴えても内堀知事は笑って聞き流すばかり。別の男性は「〝自主避難者〟の実態調査を早急に実施するべきだ」と求めたが、内堀知事は「それは大事な事ですね」と答えて終わったという。これでは単なるガス抜き。「機会をとらえて当事者の話を聴いている」と言えるのか。
 オープニングセレモニーでは、そんな内堀知事の想いを忖度したかのような発言が東京都の小池百合子知事から飛び出した。
 「東京に今お住まいの方々(避難者)も、また福島に戻っていただくというような、そんなきっかけになれば、このイベントも意味がさらに深まる」
 本人は軽いリップサービスのつもりだったのだろう。しかし、「居たいだけどうぞ」ではなく「早く福島に帰れ」と避難者に言っているともとれる。避難の権利を否定しているとも受け取れる問題発言に、早くも〝自主避難者〟を中心に反発の声があがっている。「もう被曝リスクなど無い」、「みんなで帰りましょう」の大合唱では、まるで〝自主避難〟がおかしい行動であるかのようだ。






(上)開錠前から長い列が出来た「FUKU FES 2017 ふくしま大交流フェスタ」。中通りの自治体は、米など食品の安全性や観光のPRに力を入れた
(中)2020年東京五輪では、野球・ソフトボールの一部試合が福島市で開催される。内堀知事は風評払拭に活用したい考え
(下)会場では、避難者たちが〝米沢追い出し訴訟〟や住宅無償提供打ち切りに反対する署名集めをしないよう、主催者側が先手を打って「一切禁止」の掲示をしていた

【復興大臣「一切ノーコメント」】
 16時すぎには、福島県選出の吉野正芳復興大臣も姿を見せ、「ふくしま避難者交流会」で避難者たちの話を聴いた。
 「私も津波の被災者。自宅は大規模半壊。選挙事務所は全壊した」とあいさつした吉野大臣。「復興行政はハンドルを切り替え、心のケア・心の復興を重点化している。どんなに復興が進んでも、ステージステージで必ず問題は生じる。それを皆さんから聴いて解決していくのが私の仕事だ」と語り、内堀知事と同様にテーブルを約40分間、巡った。
 終了後の囲み取材(河北新報、本紙)では、事務方の用意した文書をそのまま読み上げる形で「昨年も出席したが、一人一人のお声をじっくりと伺わせていただいた。様々な御苦労や悩み事を抱えている事を改めて感じた。いただいたご意見はしっかりと受け止め、復興庁としても被災者の心に寄り添いながら、一層きめ細かい支援をしていきたいと考えている」と述べた。
 河北新報の記者が〝自主避難者〟への今後の支援のあり方について質すと「私が大臣になってからハードからソフトへ、心のケア・心の復興を重点的に取り組んでいるが、その方向は間違いの無いものだなというところは強く感じた」と回答。一方で「初期のステージでの支援の仕方と、今のステージでの支援の仕方が変わってくるのは当然だと思う。その辺のソフトランディングがなかなか難しいところだなという感じだ」とも語った。
 筆者は、大臣室で面会した〝自主避難者〟に対し、吉野大臣が「原発事故から7年近く経ったから、避難者は自立して然るべきだ」という趣旨の発言があった問題(2017年12月22日号参照)について質問した。ていねいに寄り添うのか、もはや支援に頼らない自立を促すのか。どちらが本音なのか知りたかったからだ。ところが、今月22日の定例会見で田中龍作氏から質問を浴びたこともあって、吉野大臣は答えをはぐらかした。
 「今月12日の会見(大臣室での面会)は、元々は私の親戚の方が大臣就任のお祝いをしたいというような趣旨で来られたものだから、そこでのお話はノーコメントとさせていただきたい。自主避難の方々が来るという事を私は知らなかったので、そこでお話ししたという事をについてはノーコメント。それを22日の会見でも申し上げた。お会いした事は間違い無いんだから否定しない。後は一切ノーコメントとさせていただく」
 ここで事務方が打ち切った。〝自主避難者〟が来訪する事を知っていたか否かと、酷い表現で自立を促した事実の有無とは全く関係が無いのだが、こうやって逃げるしか無いのだろう。きっぱりと否定しないあたり、問題発言があったと認めているのも同然だ。結局、考え方は今村雅弘前大臣と何ら変わらないのだ。



(了)
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鈴木博喜

Author:鈴木博喜
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