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【県民健康調査】やはり〝ザル〟だった甲状腺ガン患者数の集計。漏れていく原発事故後のガン患者。福島県立医大は「本格検査受けていない」と把握に消極的

公式データに載らない甲状腺ガン症例が再び発覚した。原発事故後、福島県が実施している「県民健康調査」の第29回検討委員会が25日午後、福島県福島市で開かれ、清水一雄委員が自身が執刀した患者がデータに含まれていないと指摘。福島県立医大側は「本格検査を受けずに医療機関で甲状腺ガンと診断された症例はデータに含まれない」と〝開き直り〟とも言える姿勢。9月30日現在で「悪性ないし悪性疑い」と診断された194人以外にもさらに原発事故後の甲状腺ガン患者が存在する可能性が改めて高まった形で、国や福島県の公表するデータの信頼性が大きく揺らいでいる。


【集計されない「今秋の手術例」】
 「今年、こういう一例を見てきた」
 検討委員会の中盤。静かな口調で、しかし大変重要な問題提起をしたのは清水一雄委員(医師、金地病院名誉院長)だった。
 「私の働いている病院で、甲状腺ガンと診断されて手術をした患者がいた。入院して、手術をする前日に福島の被災者である事が分かった。県民健康調査の甲状腺検査を受けているかどうかお聞きしたところ、一巡目だけ受けたが、中通りに避難してしまったので本格検査は受けていないという事だった。手術後、所見も含めて福島県立医大には報告してある。こういう症例は登録(集計に含まれている)のか。別枠なのか。そこのところをお聞きしたい」
 清水委員によると今秋、福島県浜通りからの避難者(原発事故当時18歳以下)が、県民健康調査ではなく自主的に受診した医療機関で甲状腺ガンであると診断され、自身の勤務する病院に入院。清水委員の外来患者では無かったが、執刀した。術後、所見も含めて福島県にメールで症例を報告したという。
 福島県立医大の大津留晶教授がマイクを握ったが、歯切れが悪い。
 「基本的には『診療機関の情報』なので、よりご配慮をいただいて提出されたものに関しては、病理や所見をもう一回検討させていただく」
 委員会で配られた資料には、今年度は9月30日現在の手術症例は「ゼロ」となっている。清水委員は「福島県への報告が9月30日以前だったかどうかは記憶が定かでは無い」とした上で「今回、私が手術した症例は入っていないという事か」と重ねて質した。大津留教授は「(県民健康調査の)2回目や3回目の本格検査を受けずに医療機関で甲状腺ガンと診断されて手術をした症例に関しては、このデータには入らない」と回答。原発事故後の小児甲状腺ガンに関しては既に、事故当時4歳だった子どもの手術例がデータに反映されていない事が明らかになっているが、他にも集計漏れがある可能性が高い事を改めて認めた。




(上)自身が執刀し福島県に報告した甲状腺ガン患者について質した清水一雄委員。「」と語った
(下)「(県民健康調査の)2回目や3回目の本格検査を受けずに医療機関で甲状腺ガンと診断されて手術をした症例に関しては、このデータには入らない」と答えた福島県立医大の大津留晶教授

【理由は「本格検査を経ていない」】
 原発事故後の甲状腺ガンに関して、またも発覚した集計漏れ。閉会後の記者会見で、清水委員は「私たちは県民健康調査検討委の委員として、このような症例は把握しておくべきだ」と強調した。県民健康調査の信頼性を大きく揺るがす重要な問題点が再び露呈したが、進行を急ぐ星北斗座長は別の話題に切り替え、委員会ではわずか3分ほどでやり取りは終わってしまった。会見で改めて問うと、大津留教授はこう〝解説〟した。
 「県民健康調査で『悪性ないし悪性疑い』としているものは、一次検査二次検査を受けていただいた中で甲状腺ガンと診断され、紹介した医療機関から手術の結果を提供いただいているもののみ報告している。清水先生から報告のあった『本格検査を受けない例』に関しては『悪性ないし悪性の疑い』には入らないということだ」
 福島県県民健康調査課の鈴木陽一課長は毎日新聞記者の質問に対し「これまでにそういう症例が寄せられたという事は無いはずだ。清水委員の報告が初めて」と答えたが、記者席からは「そんなはずはない」との声があがった。
 2016年7月20日に設立された「特定非営利活動法人 3・11甲状腺がん子ども基金」は、メイン事業である「手のひらサポート」で、原発事故当時、岩手県、宮城県、山形県、福島県、新潟県、栃木県、群馬県、茨城県、千葉県、埼玉県、東京都、神奈川県、静岡県、山梨県、長野県の1都14県に住んでいた25歳以下の住民で、2011年の原発事故以降に甲状腺ガンと診断された人を対象に一律10万円を支援してきた。今月1日現在で107人(うち福島県は77人。特例給付含む)に給付。その中には、原発事故当時4歳だった子どもも含まれており、経過観察後の甲状腺ガン発症例が県民健康調査の統計に含まれていないという問題提起の端緒となった。甲状腺ガン発症が福島だけにとどまっていない事が良く分かる。
 この日の報告では、県民健康調査でこれまでに把握された「悪政ないし悪性疑い」は194人(9月30日現在)。しかし、清水委員が指摘するように、果たして〝本当の〟原発事故後の小児甲状腺ガン患者がどれだけ存在するのかは未知数だ。一方で、国も福島県も東京五輪を控え、「原発事故による健康被害は出ていない」という世論形成に躍起になっている。検討委ではこの日、一部の委員から「過剰診断」を助長するとして「学校での甲状腺検査」の中止を求める声まであがったのだ。


多くの傍聴者で席が埋まった検討委員会=ホテル福島グリーンパレス

【「過剰診断」強調する委員も】
 高野徹委員(大阪大学大学院講師)は検討委の議論の中で「検査の体制について福島県に確認したい」として「韓国ではこの世代の方に超音波をかけて大量の過剰診断が出た。韓国では受診率10%程度だったが、福島では受診率100%を目指すという事なので想像するのも恐ろしいくらいの過剰診断が出ると思う」と主張した。
 さらに「超音波で甲状腺ガンを早く見つけたからと言って良い事は無いというのは学術的には決まった話」、「ガンを早く見つけたら良い事があるんじゃないかと福島県民も誤解をしていると思う」とも。「各学校で授業の合間に甲状腺検査をしていると聞いた。これは子どもに対して強制性を持っている。やめた方が良い」と学校での集団検査中止にも言及した。
 福島県立医大の緑川早苗准教授は、甲状腺検査のデメリットに関する説明が不十分である事や学校での検査には強制力が現実に生じている事に対して賛同する意見を述べた。他の委員からも「過剰診断」に同調する意見が出たが、成井香苗委員(NPO法人「ハートフルハート 未来を育む会」理事長、スクールカウンセラー)は「いまの議論は、いわゆる普通の病気の場合だと思う。福島の甲状腺ガンの問題というのは、原発事故があったために発症したのではないかという住民の不安の元にあるという事を考えていただきたい。保護者や子どもたちにとって、まだ『かもしれない』という段階。とても不安がある。(被曝による健康影響が)将来遺伝するという危惧も消えていないのも事実。それを『科学的じゃ無い』と言っても、実際に福島で生きている方たちは、やっぱり『もしかしたら』という想いがあるのも事実。ていねいなインフォームドコンセントだけではなくて、不安を支えてあげる事で弊害はある程度防げる」と反論した。
 富田哲委員(福島大学教授)も、社会学の立場から「調査というのはある程度継続して行わなければならない。場当たり的に変えてしまっては、正確な数字はつかめない。これは基本だ。そのために子どもたちにはある程度の負担はかかるかもしれないが、原発事故があったという事からすればやむを得ないだろう。コロコロ手法を変えるというのは、社会科学をやる者からすれば非常にまずい」として、現行の検査体制を維持するよう求めた。
 高野委員に対しては、閉会後の記者会見で質問が集中したが、「剖検によると15歳以下では自然発生か放射線による影響か分からないが、過剰診断以外の原因を考えた方が良い」、「高精度の超音波で甲状腺ガンが見つかった場合と自然に見つかった場合とは全く状況が違う」と答えるなど、発言が二転三転した。



(了)
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鈴木博喜

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