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【自主避難者から住まいを奪うな】打ち切り強行まで8カ月。威圧的な戸別訪問で退去迫られる避難者~地方議会は反対の意見書を相次ぎ採択

福島県が自主避難者向け住宅の無償提供を2017年3月末で打ち切る方針を撤回しないことを受け、避難者らでつくる「原発被害者団体連絡会」(ひだんれん)と「原発被害者訴訟原告団全国連絡会」(原訴連)は8日午前、福島県職員と打ち切り撤回を求めて話し合った。避難者らは「当事者の意見が無視されている」と内堀雅雄県知事との直接対話を求めていたものの、県側は今回も拒否。打ち切りを前提に威圧的な戸別訪問を続けながら、避難者を受け入れ自治体の公営住宅などから追い出す方針を覆さなかった。内堀知事は、全国の地方議会から提出された打ち切り反対の意見書も〝無視〟して打ち切りを強行する構え。避難者らは知事との直接対話を含め、8月にも再度、交渉の場を設けるよう申し入れた。避難者切り捨てまで8カ月。


【「除染で生活環境整った」】
 「繰り返しになって恐縮ですが…」
 福島県避難地域復興局生活拠点課の職員。何度も聞かされてきた言葉を、この日も苦し紛れに繰り返す。避難者がどれだけ深々と頭を下げても、どれだけ怒鳴っても、どれだけていねいな言葉で説明しても、福島県の打ち切り方針は変わらない。
 「国と協議を重ねた結果、応急救助という考え方から、これ以上の延長は難しいと判断しました」
 なぜ難しいのか。根拠は答えない。「住宅支援を継続しないことと引き換えに、福島県はある公共工事の予算を国から引き出した」との指摘もあるが、そんなことは口が裂けても言えまい。挙げ句に、こんな言葉で避難者を愚弄する。
 「福島市も避難指示区域外ですが、除染によって生活環境が整いつつある。もはや直ちに避難するような状況にありません。元々、避難をしていない方もいらっしゃいます」
 福島県庁に隣接する自治会館1階の会議室。怒りといら立ちが飽和した。まるで放射線を避けるための避難が悪い、避難者が過剰に心配しているかのような言い方。これまでも様々な場面で浴びてきた。一方で県職員も論理破綻は明らかだった。顔を紅潮させ、しどろもどろ。「私1人、説得してみてくださいよ」。避難先の京都から交通費をかけて駆け付けた女性の訴えに、返す言葉も無い。来年4月以降、みなし仮設住宅としての住宅無償提供を継続しないと最終的に決めたのは他ならぬ県知事だ。70%を超す支持率をバックに公共事業主導型の「復興」を進める内堀雅雄知事は、エベレスト登頂に成功したタレントや〝食べて応援〟に取り組む団体とは面会するが、住宅支援継続を求める避難者とは頑なに会わない。この日、提出された要請書でも次の項目が盛り込まれた。
 「内堀知事は話し合いに出席して、避難者の疑問に答えること」
 「窮地に追い込む恐れの強い決断をされた責任者として、避難者の声に誠実に耳を傾けることを重ねて要請します」
 内堀知事にとって避難を続ける県民は、復興を妨げ〝風評〟をまき散らす害悪でしか無いのだろう。東京五輪に便乗して、ますます「復興」を進めるのだ。国道6号線では聖火リレーも計画されている。避難者を切り捨て、公共事業による「復興」に邁進する内堀知事は、来年3月まで避難者から逃げ続けるおつもりか。


要請書を提出する際、福島県職員に深々と頭を下げた武藤類子さん。原発事故被害者がどれだけ頭を下げても、住宅支援打ち切りの方針は変わらない=福島県自治会館

【打ち切り前提の戸別訪問】
 福島県は5月16日以降、全国10都道府県に避難した約1万800世帯を対象に戸別訪問。6月26日までに約77%の訪問を「終えた」という。しかし、これには実際に避難者と会えずに不在票を残しただけのケースも含まれており、実際に避難者と会って意向確認できた数字は明らかになっていない。これまで福島県の実施したアンケート調査に答えていない避難者を中心に、健康状態や仕事、子どもの就学、福島に戻るか否か、困り事などを確認するのが目的という。しかし、県職員が「トラブルが起きているという認識は持っていない」と語るのに反して、各地で追い出しの一環ともとれる「一方的」、「威圧的」な戸別訪問が展開されているのが実態だ。
 東京都内の避難者は「悲鳴が上がっている」と訴えた。「開口一番『来年3月31日で出て行ってもらわなければ困るんだけど』、『ここは公務員宿舎だから国に返さなければならない』と言われるんですよ」。ある避難者は、電車に乗っている時に携帯電話に着信があった。そのままにしておいたら翌日、いきなり自宅に福島県と東京都の職員がやってきたという。訪問を拒んだ避難者にはショートメッセージが送られ、挙げ句に「訪問させてください」と書留まで届いたケースまである。これでは避難者が精神的に追い詰められても無理はない。
 「ていねいに対応する」、「追い出しではない」。福島県職員は繰り返すが、そもそも訪問調査の大前提として「来年3月末での無償提供打ち切り」があるのだから、論理的に破たんしている。仕事を休んで京都から参加した別の女性も「打ち切りという前提が避難者には重荷なんです。不安なんです」と訴えた。打ち切りに向けて、実績を積み重ねたい思惑ばかりが見え隠れする戸別訪問。山形県の避難者は「私の家にも6月22日に訪問依頼の書類が届いた。読んだら翌23日に訪問したいとのことだった。そんなこと社会通念上あり得ないだろう」と怒った。訪問した職員が、避難者が入居している公営住宅の管理人に「なかなか出て行ってくれないから困っているよ」と愚痴をこぼしたケースまであるという。
 戸別訪問は8月末から2回目が、来年1月にも3回目が実施される予定。県職員は「改めて指導する」と答えたが、避難者の中には県職員と会うだけでプレッシャーを感じる人もいる。「避難者に会えないと意向が確認出来ない。反対であれば反対と言って欲しい。これだけ反対があったと報告出来る。訪問が嫌なら電話だけでも良い。意思表示をして欲しい」と県職員。福島県庁と現場があまりにもかい離している。自分で言いにくければ支援者経由でも良い。避難者の想いを県庁に届ける必要がある。


全国の地方議会から住宅の無償提供延長を求める意見書が福島県知事に提出されているが、内堀知事は〝無視〟し続けている(「原発事故被害者の救済を求める全国運動」のHPより)

【意見書〝無視〟する内堀知事】
 「全国からイエローカードが出ている」
 避難者が言うイエローカードとは、地方議会が採択した請願や意見書のことだ。避難者らでつくる「原発事故被害者の救済を求める全国運動」による今月6日現在での集計によると、東京・武蔵野市議会(2月24日)を皮切りに、北海道・釧路市議会、山形・米沢市議会、新潟・新潟市議会、京都・木津川市議会などが福島県知事にあてて意見書を提出している。いずれも「原発事故による避難者向けの公営住宅や民間賃貸住宅などの無償住宅支援の延長を行うこと。現在の入居者に対して平成 29 年度末での退去を迫らないこと」(釧路市議会)、「自主避難者を含め、避難当事者の意見を十分に聴取する機会を設けること」(米沢市議会)、「原発事故による避難者用無償住宅支援の延長を行うことをここに強く求めます」(木津川市議会)と、住宅の無償提供の延長を求めている。しかし、内堀知事は〝無視〟し続けている。
 「今と同じ家に住みたいという意向があるということは十分に認識しております。ただ公営住宅に入居している避難者が多く、受け入れ自治体の事情もある。そのままということにならないか、とお願いはしている」と県職員。しかし、受け入れ自治体に「お願い」する一方で、着々と戸別訪問を続けていく矛盾。実はこれまでの政府交渉で、国は「福島県が打ち切り方針を撤回すると言うのなら、意向を尊重したい」と語っている。内堀知事さえ誤りを認めて打ち切り方針を撤回すればいい。それで改めて避難者と会話し合う場を設け、避難先での生活をどのようにしていくか皆で考えればいい。順番が逆なのだ。
 「内堀知事は、県民の命を守る立場として避難者の声を聴くべきだ」
 武藤類子さん(福島原発告訴団長)はそう言って交渉を終えた。避難者切り捨てまで8カ月。



(了)
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鈴木博喜

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