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【伊達市長選2018】仁志田市長敗れる。「Cエリア問題が敗因でない」。最後まで強気の姿勢。「公約違反じゃない」「科学的に必要無い除染をやらないだけ」

任期満了に伴う福島県伊達市長選挙は28日、投開票され、現職の仁志田昇司市長が新人・須田博行氏に1134票差をつけられ落選。4選はならなかった。前回選挙で掲げた「Cエリア除染」の〝公約違反〟や「本当に必要なのは『心の除染』」などと被曝リスクを心配する市民を見下すような発言が相次いだ事などに対して市民から「NO」を突き付けられた格好だが、仁志田市長は「Cエリア除染問題が敗因だとは思わない」「科学的に必要無い除染はやらない。それだけだ」などと最後まで強気の姿勢を貫いた。しかし〝公約違反〟には、CエリアだけでなくAエリアの住民からも批判の声が上がっている。市民の想いを無視し続けた仁志田市長の落選は、ある意味、当然の結果だった。


【「意見聴くが判断するのは市長」】
 最後まで強気の姿勢を崩さなかった。
 「やるべき事はやっている。必要な除染はやった」
 「公約違反などとは全く考えていない」
 阿武隈急行・保原駅近くで開かれた「選挙結果報告会」。華々しい当選祝賀セレモニーになるはずが一転、お通夜のように静まり返った会場で、仁志田市長は午後9時すぎ、サバサバとした表情で「市民の選択には潔く従う」などと敗戦の弁を述べた。
 集まった支持者一人一人と握手をし、地元記者らの囲み取材を受けた。地元テレビ局の質問には時折、笑顔を交えながら答えていた。しかし、筆者が唯一「Cエリア除染問題」について質すと表情が一変。〝逆ギレ〟にも近いような口調で、これまで市議会での答弁でも度々、展開して来た持論を口にした。
 「市民が言うから全てやりますと言うんじゃ、それは市長では無い。意見は聴くけど、その判断は市長がする。除染が必要ならやりますよ。でも、科学的に必要ないんだから、やる必要が無い。だから、やらなくても良いんじゃないですか」
 そして、こうも語った。
 「必要無ければ除染はやらない。その結果を気に入らないと言う人がいても、それは『ポピュリズム』と言うんじゃないですか」
 2018年1月26日号で取り上げたように、3選を果たした前回2014年の市長選では、仁志田市長は「Cエリアも除染して復興を加速」と明記した「後援会NEWS」を配った。しかし、実際に行われたのは住宅敷地内のうち、地表真上で3μSv/hを上回った箇所だけの除染だった。0・9μSv/hでも2・9μSv/hでも除染はされなかった。市民から「NO」を突きつけられてもなお「子役違反では無い」と言い切るのは理解に苦しむ。
 相馬市から駆け付けた、いとこの立谷秀清市長(福島県市長会長)は「2人で東北中央自動車道・相馬福島道路(復興支援道路)の建設に力を尽くしてきた。もうすぐ完成という時に一緒に完成を祝えないのは極めて残念だが、3期12年間、伊達市のリーダーとして地域のために尽くしてきた事実は永遠に残る」と最大限の賛辞を送ったが、あまりに市民感覚とかけ離れている。




(上)「市民の選択には潔く従う」などと敗戦の弁を述べた仁志田市長。一方で「Cエリア除染問題」については「公約違反などとは全く考えていない」と述べた
(下)前回2014年の市長選で配布された「後援会NEWS」。「Cエリアも除染して復興を加速」と明記されている

【Aエリアの住民からも批判の声】
 この「Cエリア除染問題」。実は批判の声が上がっているのはCエリアの住民からだけでは無い。
 市内で最も汚染が酷かったと位置づけられた「Aエリア」の1つ、小国地区(旧霊山町)。小国小学校で妻と投票を終えた70代男性は「小国では仁志田市長の評判は悪いと思うよ」と厳しい表情で語った。
 「特定避難勧奨地点に関する住民説明会が開かれた時、仁志田市長にも出席して欲しいと頼んだんだ。それなのに顔を出さなかった。Cエリアの問題もあるしね。だいたい、うちだって除染はしてくれたけど雨どいの真下をちょこっと取り除いただけ。それで終わり。地震で壊れた家は程度にもよるけど直せば住める。でも放射能は長くかかる問題だからね。食べ物だって、100Bq/kg以下だからと言ってもやっぱり心配なんだよ。そういうもんだ。だから、全部除染して欲しいよ」
 小国地区は、避難指示の代わりに年間積算線量が20mSvを上回るとされる世帯が「特定避難勧奨地点」に指定され、避難の支援や各種減免措置が講じられた。しかし、指定が集落ごとではなく世帯ごとだったため、わずかな数値の差で指定を受けられなかった世帯との間で激しい軋轢が生じた。当時、自宅が特定避難勧奨地点に指定された男性は、今でも「俺自身は何も悪い事をしていないのに、かなり責められた」と苦い表情で語る。
 そのAエリアの複数の住民たちが「Cエリア除染問題」に関して厳しい批判を口にした。それはつまり、Cエリアの住民がただ単にわがままを言っているわけでは無いという事を物語る。しかも、Cエリアには「福島県外に避難したいが難しいので、せめて少しでも汚染の程度の低い土地で子育てしたい」と移り住んだAエリアの住民も暮らしているのだ。移住先の環境を少しでも安心出来るレベルにして欲しいと願うのは当然だ。仁志田市長もそこに付け込むようなキャッチフレーズを掲げて当選したにもかかわらず、手の平を返すように除染に消極的な4年間だった。しかも、「Cエリア除染を求めているのはごく一部の住民」、「本当に必要なのは『心の除染』だ」などと、まるでCエリア除染を求める住民が過剰不安に陥っているかのような言動を繰り返した。
 仁志田市長は、敗因の一つに「世代交代」を挙げたが、決してそれだけでは無い事は明らかだ。




(上)雪深い小国地区でも、一票が投じられた。Aエリアの住民からも仁志田市政への厳しい批判が聞かれた
(下)5人が立候補した伊達市長選挙。須田氏が仁志田市長に1134票差をつけて当選した

【どこまで市民に寄り添えるか】
 もちろん、当選した須田博行氏が果たしてどれだけ期待に応えられるかは未知数だ。Cエリアに住む母親は「アンチ仁志田なら誰でも良いものか」と誰に投じるべきか非常に悩んだという。
 59歳の須田氏は元県職員。選挙公報では「国基準に基づいた除染の実施」を掲げているものの、放射能対策への言及はこれだけ。本人が強調する「国・県との太いパイプを活かして」どこまで市民の想いに寄り添えるか。きちんとチェックしていく必要がある。仁志田市長のような「勝てば官軍」は許されない。
 市長選挙の投票率は、前々回が65・30%、前回は59・95%。今回は18歳にまで選挙権が拡大されたにもかかわらず、さらに下がって54・12%だった。須田氏が市民参加の市政を再構築出来るかにも注目したい。
 敗戦の弁を述べている間、仁志田市長はずっとサバサバとした表情だった。支持者と握手をしながら笑顔を見せる場面もあった。もはや市政への情熱を失っていたのかもしれない。だが、放射能対策だけは、頑なに持論を曲げず、最後まで被曝リスクへの不安を抱く市民の想いを理解しようとしなかった。「若さと行動力」をアピールする須田氏には、ぜひ現場を歩き、少しでも多くの市民の声に耳を傾けて欲しい。「国・県との太いパイプ」が逆に、国・県の方針に従順なだけ、になってしまっては、市民の失望を招くだけだ。
 市長選挙の結果はこちら



(了)
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鈴木博喜

Author:鈴木博喜
(メールは hirokix39@gmail.com まで)
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