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【原発事故と甲状腺ガン】「福島県民が望むのは『被曝の影響無い』との結論」。元検討委員の清水修二氏が講演。「遺伝しない。産まないのは『人命の損失』」とも

甲状腺ガンなど原発事故による健康影響について調べている福島県の「県民健康調査」の検討委員を2017年7月まで務めていた清水修二氏(福島大学名誉教授)が2月28日夜、福島市内で「県民健康調査から見えるもの」と題して講演し、甲状腺検査継続の必要性を述べた一方で「(甲状腺ガンが)被曝の影響で無いという風になった方が心理的に患者にとって救いになる」、「(遺伝的影響が)心配だから次の出産をためらうなんていう事が事実だとすれば、生まれるべき子どもが生まれなかったというような形での人命の損失だって無かったと言えない」などと90分間にわたって〝本音〟を語った。


【「『被曝の影響ある』は苦しみ増す」】
 「先ほど言った事が、だいぶカチンと来る方が多かったみたいですけれども…」
 講演後の質疑応答で批判的な意見が続出し、清水氏が苦笑する場面があった。
 「被曝の影響については、『心配ない』という結論の出る事を(福島)県民は願っているという事は、私は全く躊躇は無いんです。当たり前の事だという風に思ってましてね。そうなるかどうかは、きちんと調査しなければいけない事であって。ただ、私がそう思っている事自体が検討委員会のメンバーとして予断を持って臨んでるんだという風に受け止められてしまったかもしれません。そういう趣旨では無かったです。心情的な問題として、そういう想いが私の行動につながっている可能性は否定できないと思いますけれども、県民感情としては当然だと思います」
 〝問題〟となったのは、講演内での次の発言だった。
 「福島県民は、被曝の影響については『心配ない』と結果が出る事を心から望んでいるわけであります。そんな事になったら原発がまた再稼働されるんじゃないかとか、そういう問題とは切り離して考えなければいけないと私は思っているわけです。これが最初に言いました『政治的な価値判断を排除しましょう』という事の端的な意味です」
 福島県民に限らず、悪い結果を「心から望んでいる」人はいないだろう。それは心情としては当然だ。しかし、心情を乗り越えて県民健康調査を「検討」するはずの委員が初めから「福島県民は、被曝の影響については『心配ない』と結果が出る事を心から望んでいる」という姿勢では、委員会の客観性が担保されるのかを疑問視されても仕方ない。
 こんな発言もあった。
 「去年のいつ頃だったかな。『3・11甲状腺がん子ども基金』をやっている崎山比早子さんが私に会いたいといって東京から3人で来られた。いろいろと意見交換をしたんですが、今見つかっている甲状腺ガンが被曝のせいであるという風になる。あるいはそうではないという事になる。両方可能性があるんですが、どっちが患者にとっては『救い』になるか。どっちが患者にとって苦しみを増す事になるかという事について私は聞いてみた。私の考えでは、被曝のせいだとなった場合に親は非常に苦しむと思いますよ。『あの時にすぐに避難しなかったのが悪いんじゃないか』、『水道の水を飲ませてしまった』など、親の責任を非常に強く感じる。確実にそうなりますね。子どもだって、ずっと偏見の目にさらされる事になるかもしれない。他方で『被曝のせいでは無いだろう』と落着した場合には、早く見つかって良かったじゃないかという風に考える事も出来るわけですよね。患者とその家族に寄り添うというのはどういう事なのか」




(上)講演で「甲状腺ガンなどの健康影響は被曝の影響で無い、と結論付けられた方が患者は救われる」などと語った福島大学名誉教授の清水修二氏
(下)昨年まで県民健康調査検討委員会の委員だった清水氏の講演会には、多くの聴衆が訪れた=福島県福島市の「アクティブシニアセンター・アオウゼ」

【「被曝者手帳は差別・偏見招く」】
 県民の心情に寄り添う発言が目立った清水氏。被曝者手帳の配布を求める声には否定的な意見を示した上で、「福島県民に対する差別や偏見」という視点での発言も多かった。
 「調べても、それ以上調べられないくらいのリスク。確認出来ないリスク。そういう、ごくわずかな可能性を無視して良いのかという事が一方ではあります。ゼロだという証拠は無いわけですからね。しかし、そのわずかな可能性にあくまでもこだわる事に伴うリスクというものもまたあるわけでありまして。原爆の被爆者に遺伝的な影響があるかどうかについて『無い』という証明は出来ていないとあくまでもこだわるという事になりますと、いつまでも被爆者の皆さんは差別されたり、偏見の目を向けられたり、レッテルを貼られたりする可能性がある。どういう方法が、被害者や社会とって幸せなのかという基準で判断すべきだと思っています。加害者を許すのか、とかそういう観点ではなくて、あくまでも人々の幸せのために社会的合意をどう作るかというのが問題のポイントじゃないかな」
 原発事故後、被曝による遺伝的な健康被害が生じる事を懸念する考え方が根強い事には「そういう心配は要らない。広島・長崎でのデータが基本になっているんですけど、被爆二世に影響は見られていないという風になっていますので、線量も含めまして福島で遺伝的影響は出ないと思います」と持論を展開。さらに、こんな発言で会場の女性を驚かせた。
 「心配だから次の出産をためらうなんていう事が事実だとすれば、生まれるべき子どもが生まれなかったというような形での人命の損失だって無かったと言えないわけであります。福島民報に『広島・長崎の悲劇を繰り返してはならないと思う』と投稿したが、これがネットで炎上しまして、『御用学者』だとか『変節漢』だとか意味の分からない事を言う方がいらっしゃいまして、そういう事を言うのがなぜ『変節漢』になるのか分からない」
 「過剰診断」や「縮小論」が根強い甲状腺検査については「現段階で調査をやめたら未解明のままになってしまう」と継続を求めつつ、福島県小児科医会(太神和広会長)が2016年8月に甲状腺検査体制の縮小も含めた見直しを求める「平成28年度福島県小児科医会声明」を要望書として福島県に提出した事については「かわいそうじゃないかという現場の医師たちの気持ちも分かる。そういう気持ちを汲んで過剰診断の議論をしなければならない」と理解を示した。




清水氏が講演で使用したスライドの一部。特に被曝の遺伝的影響に関しては「心配ないのに出産をためらうのは人命の損失」とも

【「福島市での生活に不安無い」】
 講演後の質疑応答で、筆者は「県民感情」について尋ねた。前述したように、原発事故による健康被害が生じないか否かを時には心を鬼にして客観的に判断するはずの検討委員会の元委員が、心情を優先していたのでは委員会のあり方そのものが揺らいでしまう可能性があるからだ。
 しかし、清水氏は「被曝の影響で無いという風になった方が心理的に患者にとって救いになるよという風に申し上げたつもりです。遺伝的な影響も含めて被曝の健康影響に関しては心配する事はないとなった方が福島県民の気持ちは安らかになる。これは当然なんですよ。誰が健康被害を望みますか。崎山さんにそういう事を申したら変な顔をされましてね。そこに基本的な違いがある。私たちは心情的には、遺伝の事については特にそうだが、影響が無いとなった方が良いに決まってるじゃないですか。そういう気持ちはある。だからといって調査の結果をそっちの方向にねじ曲げたりする事は良くない。それは調査の信用を落とす事になる。こんな事、言わなかった方が良かったんですかね。『何も無かった』で済めば一番良いという、私はそれは当たり前の事だと思っているんですよ。そんな事言ったら東電や政府が喜ぶとか、そういうようなものをやっぱり入れない方が良いと私は思っている」と答えるばかりだった。
 福島大学の副学長も務めた清水氏の専門は、財政学や地方財政論。講演では、たびたび「私は専門家ではないので」と口にしていたが、一方で「チェルノブイリ原発事故による住民の被曝量は福島の数百倍と言って間違いない」、「『基本調査』で推計してもらった原発事故後4カ月間の私の追加的被曝線量は3mSv程度」、「福島市に住んでいるが、市のガラスバッジによる測定でも、3年連続して年間の追加外部被曝線量は0・4mSvぐらいで安定している。日本で一番自然放射線量の低いと言われている神奈川県から、一番高いと言われている岐阜県に引っ越した程度の増加量で、私はそんなに不安を感じない」とも。「甲状腺ガンばかりに注目が集まるのは問題」として「最大の健康被害は『震災関連死』。避難した結果であり、原発事故による被害を避けるための被害だ」と指摘した。
 講演会は「ふくしま復興支援フォーラム」の主催。同フォーラムは2011年11月以降、月1~2回のペースで原発事故関連の講演会を開いており、今回で123回目。過去には川内村長、川俣町長、飯舘村長も登壇。清水氏は2013年8月に続いて2回目。



(了)
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鈴木博喜

Author:鈴木博喜
(メールは hirokix39@gmail.com まで)
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