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【原発事故と甲状腺ガン】検討委では把握されない再発・転移での再手術。「現実の福島のデータを使って議論して」と民間基金~日本女医会と無料電話相談も

「3・11甲状腺がん子ども基金」が改めて甲状腺検査の継続と「過剰診断論」の見直しを求めている。このほど、同基金が療養費を給付した甲状腺ガン患者のうち、約1割で再発・転移があったと公表。この数字は検討委員会では把握されていないとして「現実の福島のデータを使って議論して欲しい」と訴える。3日には日本女医会と連携して1日無料電話相談も実施した。あす5日午後には、30回目の「県民健康調査」検討委員会が福島市内で開かれる。初めから原発事故による被曝影響を排除するのではなく、建設的な議論を期待したい。


【給付者の約1割で再発・転移】
 「3・11甲状腺がん子ども基金」によると、福島第一原発事故後に甲状腺ガンと診断された25歳以下の患者に10万円の療養費を給付する「手のひらサポート」で、今年2月末までに原発事故当時1都13県に住んでいた114人(特例を含む)に対して療養費を給付している。
 同基金では「全摘となり、アブレーション治療をする方や、遠隔転移により入院加療によるアイソトープ内服療法が必要となった」甲状腺ガン患者を対象に10万円を追加給付することにしているが、原発事故当時、福島県内に暮らしていた受給者84人のうち、これまでに9・5%にあたる8人(男女、各4人)が再手術を受けて追加給付されたという。再手術を受けた8人は原発事故当時6歳~15歳で、1回目の手術は2012年~2015年(手術時年齢は10歳~18歳)。再手術は2014年~2018年(12歳~19歳)だった。1回目の手術から再手術までの期間は平均2年4カ月だが、短い人で1年。長い人では4年4カ月だった。
 1日午後、福島県庁内の記者クラブで開かれた会見で、同基金の吉田由布子理事は「県民健康調査の検討委員会で『一生涯、見つからなかったガンを見つけているのではないか』というような声もあり、甲状腺検査を縮小した方が良いのではないかという事が議論となっている。では実際、本当にそのような臨床症状も現れないようなガンなのか。療養費の給付者の中に再発した人がいるという事を考えると、そうは言えないのではないか。若い人ほど甲状腺ガンの進行が速いという論文も発表されている」と語った。
 会見では、2016年9月に開かれた『第5回福島国際専門家会議』(日本財団主催)で、福島県立医大の鈴木眞一医師が『福島甲状腺癌の特徴』と題して報告したスライドを引用。「微小な甲状腺ガンをすぐに手術しない『非手術的経過観察』(アクティブサーベランス)が様々な病院で実施されているようだが、若い世代の甲状腺ガンは腫瘍増大の進行が速いため経過観察が出来ない、と鈴木医師は述べている。よく挙げられる韓国との比較についても『県民健康調査では過剰診断を防ぐために細胞診以降の基準を厳しくしており比べられない』と言っている」と指摘。
 「県民健康調査には再手術の件数までは報告する事になっておらず、分かっていない。真実の姿が分からない中で『検討』しても、本当に子どもたちを守る事につながるのだろうか。現実の福島のデータを使って議論して欲しい。臨床的な立場の意見が検討委員会では少ないのではないか」として、2016年3月に公表された「県民健康調査における中間取りまとめ」の中で「将来的に臨床診断されたり、死に結びついたりすることがないがんを多数診断している可能性が指摘されている」とされている見解の再検討を求めた。




(上)「3・11甲状腺がん子ども基金」の発表資料。約1割が再手術を受けたが、県民検討調査の検討委員会には再手術事例は報告されていない
(下)会見を開いた吉田由布子理事。「「県民健康調査には再手術の件数までは報告する事になっておらず、分かっていない。真実の姿が分からない中で『検討』しても、本当に子どもたちを守る事につながるのだろうか。現実の福島のデータを使って議論して欲しい」=福島県庁

【高野委員「学校での検査やめるべき」】
 同基金が危惧するのは、検討委員会で甲状腺検査の「過剰診断論」や「検査縮小論」が根強い事だ。実際、昨年12月25日の第29回検討委員会で高野徹委員(大阪大学大学院医学系研究科内分泌代謝内科学講師)は「2036年まで見守りをするという福島県の計画だが、韓国ではこの世代に超音波をかけて大量の過剰診断が出て、2036年まで続けると想像するのも恐ろしいぐらいの過剰診断が出るかと思う」と指摘。「検査で甲状腺ガンを見つけたからといって、その後の死亡率が改善するわけでは無い」、「超音波で早く見つけたからといって特に良い事は無いというのは学術的には決まっている話だが、福島県民はかなり誤解しているのではないか。早く見つけたら良い事があると思って子どもを(検査に)連れて来るという状況があると思う」、「授業の合い間に学校で甲状腺検査を行うのは強制性を持っているのでやめるべきだ」と発言している。
 また、任期満了で昨年夏で委員を退任した清水修二氏(福島大学名誉教授)は、2月末に福島市内で行われた講演会で「県民健康調査の継続は必要」としながらも、「手術を受ける不利益は非常に大きい。傷が残るというだけでは無い。全摘すればずっと薬を飲まなければいけないし、健康影響は残る。生命保険に入る時に不利な扱いを受ける可能性がある。何よりも『あいつは被曝者だ』というような目で一生見られる可能性がある」との見解を述べた(2018年3月1日号参照)。
 しかし現実には、原発事故当時4歳だった子どもが経過観察後に甲状腺ガンと診断された事例は、検討委員会に報告されていなかった。第29回検討委員会では、清水一雄委員(金地病院名誉院長)が自身が執刀した甲状腺ガンの手術例がデータに含まれていないと指摘(2017年12月26日号参照)。福島県立医大の大津留晶教授は「(県民健康調査の)2回目や3回目の本格検査を受けずに医療機関で甲状腺ガンと診断されて手術をした症例に関しては、このデータには入らない」として事実上、集計漏れの可能性を認めた。今後、どのように数字を把握していくかについては依然として検討委員会でも結論が出ていない。原発事故当時5歳以下だった子どもの手術例や再発・転移についてはいずれも民間基金の調べで分かった。同基金の崎山比早子代表理事は「フェイクのデータで議論している検討委員会など茶番だ」と厳しい言葉で批判する。吉田理事も「再手術を受けた人の年齢を考えても、学校での甲状腺検査は非常に重要だ」と訴える。




(上)(下)日本女医会の女性医師が全面協力して都内で実施された「1日無料電話相談」。様々な相談を傾聴して医学的見地からアドバイス。療養費給付の申請に関する問い合わせもあった

【日本女医会が電話相談】
 3日には、日本女医会(前田佳子会長)の女性医師が全面協力し、1日無料電話相談が都内で行われた。
 福島県内外からの相談を傾聴し、医学的見地からアドバイスする。住んでいる地域で受けられる甲状腺検査を勧めたり、基金の療養費申請につながるような相談もあった。一般的には大げさととらえられてしまうような不安も否定しない。原発事故による健康影響は、まだ「分からない」のが実情だからだ。本来であれば国や行政が福島県に限らず広範囲で健康調査や健康相談を実施するべきだが、厚労省は福島県以外での健康調査には否定的。2020年東京五輪を〝目標〟とした復興ムードの中で、福島県内でも県外避難先でも汚染や被曝による健康影響について語りにくくなっているのが実情だ。実際に電話を受けた女性医師の1人は「日本女医会がこういう取り組みに関わる事で、全国の他の医師にも波及する事を期待したい。そうすれば避難者が避難先で孤立する事も防げるし、福島県内で子育てしている親たちが気軽に相談出来るようになる」と語る。
 甲状腺ガンばかりが注目されるが、それ以外の疾患は全て「因果関係が立証されない」として原発事故由来である事は否定される。「だるい」などの統計として集計しにくい症状はなおさらだ。中には、被曝による健康影響は「デマだ」とするグループもある。ネット上では「過剰不安」、「考えすぎ」、「放射脳」などと口汚い表現で罵られる事さえある。だからこそ、県民健康調査で継続的でていねいな調査が必要なのだ。



(了)
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