FC2ブログ

記事一覧

【県民健康調査】無視され続ける調査外の甲状腺ガン手術、再発・転移。「これから話し合う」と県立医大。学校での集団検査など「倫理的に危険」とする声も

原発事故後、福島県が実施している「県民健康調査」の第30回検討委員会が5日午後、福島県福島市で開かれ、県民健康調査外で判明した甲状腺ガン数や、再発・転移による再手術数が全く把握できていない問題点が改めて浮き彫りになった。再手術数の把握方法については「これから話し合う」としているが、調査外での症例把握については依然として消極的。一部委員からは学校での集団検査など「甲状腺検査は倫理的に危険な状態」と指摘する声も出た。間もなく原発事故から丸7年。甲状腺検査は縮小に向かうのか。甲状腺ガン以外の疾患も含めて、幅広い健康影響調査が改めて求められる。


【「再発事例にも向き合う必要ある」】
 配布資料によると2017年12月31日現在、県民健康調査で「悪性ないし悪性疑い」とされたのは計197人(1巡目116人、2巡目71人、3巡目10人)。このうち161人が手術を受けた。性別では男77人、女120人。5月1日から4巡目の甲状腺検査が始まる。
 前回の委員会で、自身の執刀した甲状腺ガン手術に関して問題提起した清水一雄委員(医師、金地病院名誉院長)が急きょ欠席したため、「県民健康調査を受けずに甲状腺ガンが見つかった患者」が集計に反映されていない問題は全く取り上げられなかった。委員会終了後の記者会見で質問したが、福島県立医大の大津留晶教授(甲状腺検査部門長)は「この検査の枠組みとして、県民健康調査の甲状腺検査を受けた方に関して報告している」と回答。原発事故後に甲状腺ガンと診断された場合でも、県民健康調査を受けていない場合には集計に反映されないとの考え方を改めて述べた。
 共同通信の記者は、甲状腺ガン患者に療養費を給付しているNPO法人「3・11甲状腺がん子ども基金」(代表理事崎山比早子)の調べで、甲状腺ガン手術を受け療養費を給付された患者の約1割が再発・転移によって再手術を受けていた事が分かった事例について質問。星北斗座長(医師、福島県医師会副会長)は「再発事例をどのように扱うかというのは、県民健康調査以外の方法で(甲状腺ガンを)見つけたものについてどうするのかというのと同じ。どういう権限でどこまで立ち入るのかというのは非常に難しい問題だ。しかし、そういった事が福島県民の不安を煽るような事にもしなっているのだとすれば、検討委員会なり県なりがきちんと向き合うという姿勢は重要だ。そういう観点から議論していく事になると思う」と若干前向きな発言。
 一方、大津留教授は「県民健康調査は診療情報を集めるものでは無い。診療情報をまとめたものが検診をより良くするためにフィードバックしなければいけないのであれば、検討委員会や評価部会でこれから話し合われる事になるかと思う」と答えるにとどまり、現時点での再発・転移の有無については言及しなかった。高野徹委員(大阪大学大学院医学系研究科内分泌代謝内科学講師)は、有症状で確認された小児甲状腺ガンの再発について「アメリカの1900年代のデータで40%と非常に高率だ。イタリアで全摘して放射線治療までした例で15%。大人の場合はだいたい20%なので、子どもは非常に再発率は高い」と述べた。春日文子委員(国立環境研究所特任フェロー)は「疫学的な解析も大変重要だが、いま福島県で起きている病気の性格・予後について可能な範囲でどこまで議論出来るか。評価部会の中で十分に検討していただきたい」と語った。






(1)今回も「過剰診断論」を展開した高野徹委員。現行の甲状腺検査は「倫理的整合性を取られていない」と指摘した
(2)富田哲委員は、過剰診断論について「甲状腺検査を縮小する根拠に使われているだけのような」と話した
(3)福島県立医大の大津留晶教授は改めて、県民健康調査外での甲状腺ガン手術例や再発事例について現状では把握できていないと語った=ホテル福島グリーンパレス

【「検査縮小の根拠に過剰診断論」指摘も】
 今年1月に開催された「第9回甲状腺検査評価部会」に関する質疑では、高野委員が現行の甲状腺検査の問題点を指摘。「どうしても確認しておきたい事がある」として「私は甲状腺超音波検査が非常に危険な状態にあると思っている。国際的な医学倫理の基準であるヘルシンキ宣言に沿っていない。普通、医学調査だったらただちに中止で、もう一回考え直しなさいというレベルだ。5月に4巡目が始まるとすると、その後、数カ月間は倫理的に担保が出来ない状態で検診が進む。この状態で仮に健康被害だと思われるような症例が出てしまうと、かなり大きな問題になる可能性がある。県立医大の先生は、本当にこの状態を良しとしているのか。県は、問題が起きた時にどなたかが責任を取る事になるが、その危険性を認識しているのか」と発言した。
 福島県県民健康調査課の鈴木陽一課長は「これまでの検討委員会や評価部会での議論の蓄積のもとに甲状腺検査は実施されている」と答えたが、高野委員は「4巡目は倫理的整合性を取らないままに始めるという事でよろしいですか。評価部会で議論していると5月に間に合わない。本来であれば倫理的整合性を取った上で始めるのが筋だと思う」と再質問。見かねた星座長が「約束している検診を受けるのを期待されている方も一方でいる。どうすれば高野委員は納得するのか」ととりなす場面も。甲状腺検査評価部会の鈴木元部会長は「次回、この問題を取り扱う予定だ。福島県立医大の倫理委員会で審議して来てゴーサインが出ている。まずその経緯をしっかり伺った上で、さらに改善すべき事があるのであれば出していくというスタンス」と述べた。
 他の委員からは「評価部会では『学校検診の強制性』について十分に議論していただきたい。学校で(甲状腺検査を)やっているから、『僕だけ嫌です』というのはなかなか大変だろうと思う。強制性があるのであれば倫理的に問題が生じてくるだろう。ぜひ、学校検診のあり方について議論して欲しい」との意見が出た。
 「報道ステーション」の平野記者は、会見で「甲状腺検査のデメリットと言うが、具体的に言わないと県民は分からない。必要のない手術が具体的にあったと言えるのか」と質問。高野委員は「最大のデメリットは『過剰診断』。これまで過剰診断を正面から議論して来なかったのは非常に問題。避けずに県民に伝えていかないといけない」と回答。星座長は「『過剰診断』というものがあるとすればそれはデメリットかもしれない。結果を導くための検査をするのは間違いだというのは何度も言っている。これまで議論を避けて来たというわけでは無いが、定義しにくいという面もあり、議論が深まっていない部分もある」と述べた。
 春日委員は、会見で「県民の声が十分に反映されていない」と発言。富田哲委員(福島大学行政政策学類教授)は「切る必要の無い手術が行われる事が最大のデメリットだと思うが、今の議論は、どうも甲状腺検査を縮小する根拠に使われているだけのような印象を持っている」と指摘した。






(上)検討委員会では、原発事故後に福島県内で生まれた子どもの先天異常を否定する資料も配布された
(中)一方、避難生活による健康影響を指摘するデータも。「被曝リスクより避難のリスクの方が大きい」とする声を後押しするかのようだ
(下)甲状腺検査で「悪性ないし悪性の疑い」と診断された子どもは197人に達した

【「妊産婦の放射線不安は減少」】
 13時半から始まった検討委員会では、「妊産婦に関する調査」や「健康診査」の説明に約2時間を費やし、終了予定時刻の16時を過ぎても続けられたものの、「甲状腺検査」に関して話し合われたのは15分ほど。「第9回甲状腺検査評価部会の開催報告」でのやり取りを含めても1時間程度だった。197人という検査結果に対しては、委員からは質問も意見も一切出されなかった。
 委員の1人は「甲状腺検査ばかりを話し合うわけにはいかない。今日、取り上げられた妊産婦調査や健康診査も県民健康調査の大切な要素の1つ。だからこそ甲状腺検査の評価部会がある」と話した。それは正論だが、資料を1枚ずつ読み上げるのに時間を要して時間が足りなくなる状況は改める必要がある。
 「妊産婦に関する調査」では、放射線の影響を理由に次回の妊娠・出産を希望しない人は2016年度は1・2%で、2012年度の14・8%と比べて大きく減少した。自由記載欄に書かれたもののうち、胎児や子どもへの放射線の影響に関する内容は6・1%で、こちらも2011年度の29・6%から大幅に減った。原発事故の発生から時間が経過し、県外避難せず福島で出産・子育てを選択した人々が放射線への不安を声高に叫ばないのは、ある意味当然とも言える。調査は「2015年8月1日から2016年7月31日までに福島県内の市町村から母子健康手帳を交付された」、「上記期間内に福島県外から母子健康手帳を交付された者のうち、福島県で妊婦健診を受診し分娩した(いわゆる里帰り分娩をした)」 1万4154人を対象に実施された。
 検討委員会には、避難生活による影響(いわゆる〝避難のデメリット〟)に関する論文を集約した資料も配布された。それによると、「避難生活が危険因子と考えられる疾患」として肥満や高血圧症、糖尿病、肝機能障害、多血症などが挙げられ、震災後に心房細動が増加しているという。
 なお、学校での集団検査に関しては、「いわきの初期被曝を追及するママの会」が今年2月、「原発事故による影響を詳細に調べるためにも、甲状腺検査の学校での集団検査を続けてください」、「健康影響については長期的な見守りが必要であり、二十歳を過ぎれば安心できることではありません。二十歳以降は成人となり自主的判断が可能です。受診率の高低に関わらず、最低でも希望者に対し二年ごとに受診できるシステムを構築して下さい」などとする要望書を福島県の内堀雅雄知事宛てに提出している。



(了)
スポンサーサイト

プロフィール

鈴木博喜

Author:鈴木博喜
(メールは hirokix39@gmail.com まで)
https://www.facebook.com/taminokoe/

最新記事

最新コメント

アクセスランキング

[ジャンルランキング]
ニュース
39位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
時事
14位
アクセスランキングを見る>>

アクセスランキング

[ジャンルランキング]
ニュース
39位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
時事
14位
アクセスランキングを見る>>