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【84カ月目の郡山市はいま】公園から消えた空間線量の表示板。「いまだに危険なのかと誤解招く」と昨年末までに全撤去。進む被曝リスクの〝見えない化〟

郡山市で、被曝リスクの〝見えない化〟が進んでいる。これまで、子どもたちが利用する公園には定期的に測定された空間線量率がモニタリングポストとは別に手書きで掲示されていたが、「国の基準値である0・23μSv/hを継続的に下回っている」として、市が昨年末までに全ての表示板を撤去したのだ。市議会でも空間線量の低さを撤去の理由に挙げたが、担当者は「表示があると『まだ危ないのか』と誤解を招く」、「わざわざ表示する必要は無い」と本音も明かす。リスク回避や安心感には少しでも多くの判断材料が提供されるべきだが、逆行する動きに市議からも反発の声があがっている。


【「今も測定、HPで公開している」】
 「空間線量が低いレベルで安定しているのであれば、わざわざ表示する必要は無くなってきたのかなと思います。空間線量というのは少し動いただけでも数値が変化しますから、『表示板の数値と食い違っている』という指摘もありましたし」
 取材に応じた郡山市役所・原子力災害総合対策課の幹部は本音を口にした。「原発事故から7年も経っているのに郡山はまだ(公園に空間線量を)表示しなきゃいけない状況なのか、と考える方もいらっしゃいますよね」。
 同課によると、郡山市役所にはこれまで、福島県の「絆づくり応援事業」の一環で県から委託を受けた業者の関係者が数人、常駐。2カ月ごとに公園などの公共施設を巡って地表からの高さ50㎝の空間線量を測定し、モニタリングポストとは別に設置された表示板に手書きで記入していた。除染の効果をより強調するかのように、表示板には除染前の最も高かった空間線量と日付も併せて記入されていた。
 「絆づくり応援事業」が2016年度末で終了。常駐していた係員も去った。「公園は市内に何百カ所もあり、予算の関係などからも市独自で人を配置するのは難しい」との理由で手書きの表示板への記入も打ち切り。2017年4月から順次、表示板の撤去を進め、12月末までに終えたという。「公園に関しては公園緑地課が全て撤去したが、公共施設の中には施設管理者の意向で今も撤去せずに残っている所もあるかもしれない」と同幹部。現在は、市が委託した業者が年2回測定した空間線量が市のホームページで公表されている。除染効果が継続しているか否かのモニタリングが目的で、地表からの高さ50㎝と1メートルの数値が掲載されている。
 撤去にあたっては広報紙などでの事前告知はしなかったが「市民からの問い合わせは特に無い」という。「手書きの表示板は撤去したが同じように測定は続けている。数値を出したくない、というわけではありません」(原子力災害総合対策課)。






(上)郡山市内の講演に設置されていた表示板。「一定の目的を達成した」として昨年末までに全て撤去された=2016年11月撮影
(中)福島市では今も、市内に500カ所以上ある公園の空間線量を外部委託して測定・掲示している
(下)郡山市同様、放射線防護に消極的な伊達市ですら、いまだに空間線量の表示板は撤去されていない

【「市が重視するのは『風評払拭』」】
 2017年12月6日に開かれた、郡山市議会の本会議。一般質問に立った蛇石郁子市議(虹とみどりの会)は「放射線モニタリングと除染について」として、次のように市当局の見解を質した。
 「看板の撤去については不安に感じられている市民の方もいらっしゃいますので、公園管理者として引き続き放射線量の計測、計測日及び数値等の表示を続けるべきと考えます。見解を伺います」
 これに対し、佐藤嘉秀都市整備部長が「空間放射線量率の表示板につきましては、公共施設利用者の不安解消のため、主に子どもが利用する公園について実際の測定値を表示する目的で設置したものでありますが、自然減衰、雨雪等のウエザリング効果、除染の効果により、平成26年7月以降ことし3月までの33カ月にわたり、国の基準値、これは0・23μSv/hでございますが、これを下回った状態が安定的に継続しているため、4月から撤去を進めております。なお、今後につきましても市民の皆様に安全に利用していただけるよう、空間放射線量率の監視を行ってまいりたいと考えております」と答弁した。
 蛇石市議はさらに、「いわき市の公園のモニタリングの結果の表示の仕方なんですが、大変詳しいです。測定場所が四隅であったり、それぞれ遊具のところもはかって、高さ50cmのところではかっておりますよという表示です。表示自体は大変大きくはないんですけれども、きめ細やかに住民の公園を利用する方々にとって不安のないような掲示となっている」として「もう終わりということではなく、引き続き、やはりきちんと市民に対して不安解消を進めるような公園の測定なども必要だと思います」と再考を促す。
 しかし、佐藤部長は「先ほどご答弁申し上げましたように、平成26年7月から33カ月にわたって国の基準を下回っていると。3月では平均値が0・14μSvということで、基準の半分ぐらいまでになったと。この0・14が高いか低いかというのは、それぞれ考え方はあろうかと思いますが、公園を利用している特に学童や幼児の方々も震災前の水準近くまで戻ってきているという状況でございまして、この表示板については一定の目的を達成したものと考えております」と答えるにとどまった。
 取材に応じた蛇石市議は「市民から『どうして表示板がなくなっちゃったのか』という問い合わせが寄せられています。郡山市が重視しているのは風評払拭なんですよね。後から検証するためにもデータは必要です。市役所は県庁ではなく住民の方を見て仕事をして欲しいです」と語る。






(上)開成山公園からも空間線量の表示板が撤去された。12日午前に訪れると、手元の線量計は0・25μSv/h前後を示した
(中)11日夜に福島駅東口で開かれた福島県主催の「キャンドルナイト」。「復興」、「福島に来て」というメッセージが目立った。空間線量の表示板撤去は、これらの想いと連動している
(下)「キャンドルナイト」では、数こそ少なくなったが、原発事故や被曝リスクに関するメッセージもあった。

【「市民の安全より経済性優先」】
 福島第一原発から約60km(郡山市役所で59km)離れている郡山市。政府による避難指示が出されなかった事もあり、市民の危機感は表向きは年々下がっているように見える。天気の良い日には、開成山公園は多くの親子連れでにぎわう。福島県内外で起こされている訴訟で被告になっている東京電力も、「被曝線量100mSv以下では発ガンリスクは他のリスクに隠れてしまうほど小さい」、「現在では年20mSvを大きく下回っている」などとして、繰り返し〝安全性〟を主張。特に県外避難者に対しては「なぜ避難をやめて戻らないのか」と厳しく迫る。
 しかし、無用な被曝は出来るだけ避けるという原則に従えば、行政は判断材料としての情報を可能な限り住民に公開する必要がある。蛇石市議は「市民の安全より経済性が優先されている」と批判するが、郡山市が委嘱している「原子力災害対策アドバイザー」も含め、予防原則に立って対応するべきだ。しかし、郡山市は学校での「屋外活動3時間ルール」を2012年3月末で早々と解除するなど、放射線防護には消極的だった。
 除染作業や自然減衰で、確かに空間線量は下がった。しかし、土壌汚染状況は公的には測定されていない。福島県内の子どもたちが安全な地域で教育を受ける権利の確認を求め、原発の爆発事故後、国や福島県などの無策によって無用な被曝を強いられたことへの損害賠償を求めている「子ども脱被ばく裁判」でも、土中の放射性微粒子を吸入する危険性もある事から、原告は詳細な土壌測定を求めている。「いまだ危険だと誤解される」と数値を覆うのではなく、さらに詳細な調査をして公開する事こそ、原発事故による健康被害の予防につながる。求められるのは〝見えない化〟ではなく〝見える化〟だ。
 なお、福島市や伊達市では、今のところ公園などでの空間線量の手書き表示はやめていない。



(了)
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鈴木博喜

Author:鈴木博喜
(メールは hirokix39@gmail.com まで)
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