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【福島原発被害東京訴訟】「ようやく被害者と認められた」。東京地裁が「2011年12月までの避難の合理性」認める判決。国と東電の過失責任認定は4例目

原発事故により東京都内への避難を強いられた人々が、事故の過失責任を認め損害賠償をするよう国と東電を相手取って起こした「福島原発被害東京訴訟」で、東京地裁の水野有子裁判長は16日午後、国と東電の過失を認め、両者に対し、42人の原告に計5923万9092円を支払うよう命じる判決を言い渡した。2011年3月に発生した福島第一原発の爆発事故に関し、国や東京電力の責任を明確に認めた判決は4例目。避難指示の出ていない区域からの〝自主避難者〟の避難の合理性も認められ、原告たちは一様に安堵の表情を見せたが、原則として2011年12月までと区切るなど限定的で不十分。弁護団は東京高裁への控訴も視野に、判決の詳細な検討を始める方針だ。


【弁護団「国の加害責任論争に決着」】
 判決のポイントは2点。1つは被告・東電の津波予見義務違反と結果回避行為義務違反。
 「遅くとも2002年中には福島第一原発1~4号機にO.P.+10m(O.P.は小名浜港の水位)を超える津波が到来することを予見する義務があったのに、それを怠り、そのことによって、2006年頃までに開始すべき本件事故を回避するために必要な対策をとる義務を怠り、本件事故を惹起したものといえ、その点に、義務違反があったと解される」と東電を断罪。
 一方、被告・国(経済産業大臣)も東電と同様に津波の予見義務はあったとして、「経済産業大臣の本件各規制権限不行使には違法性があると認められ、それによって、本件事故がひきおこされたといえるから、被告国は、本件事故と相当因果関係のある損害賠償を負うと解される」と、福島第一原発事故に対する国と東電の過失責任を明確に認定している。
 東京・霞が関の司法記者クラブで開かれた記者会見で、原告弁護団共同代表の中川素充弁護士は「国と東電は同等の責任を負う、としている点は高く評価出来る判決だ。国と東電の責任を明確にした判決は、昨年3月の前橋地裁、10月の福島地裁、そして昨日の京都地裁に続いて4件目だ。福島第一原発事故における国の加害責任は揺るぎないものであり、この論争については決着がついたのではないか。被害救済の観点からも、国は無用な争いを一刻も早くやめていただきたい」と述べた。
 2つ目は、避難指示区域外からの避難(いわゆる〝自主避難〟)の合理性。
 判決は、原発事故がなければ、憲法22条で保障されている「自己の生活の本拠を自由な意思によって決定する権利(居住地決定権)」を侵害されなかったとして、「本件区域外原告らがその時点での放射性物質の汚染や本件事故の進展による将来的な放射性物質の拡大による健康への侵害の危険が一定程度あると判断した上で、その判断を踏まえ、避難開始をするとした判断は居住地の選択についての判断として合理的なもの」と認定。「本件事故によって、従来の居住地での居住を継続するか、危険を回避するため避難をするかの選択を迫られることとなった」、「避難の開始後も、避難を継続するか事故時住所地へ帰還するかの選択を引き続き強制されるという不安定な地位に立たされた」などとして、原告の精神的苦痛や平穏生活権の侵害を認めている。
 判決を受け、原告団に加わった母親らは「避難の合理性を司法が認めてくれたのは大きい。あの時、私が動いたのはやっぱり間違っていなかった。裁判長が女性という点も、避難母子に対して理解ある判決になったのではないか」などと喜びを口にした。






(上)判決を受け、弁護団は「勝訴」「国を四度断罪」「区域外避難者の賠償を命じる」と3つの旗を掲げた=東京地裁
(中)原告団長の鴨下祐也さん。判決後の記者会見で「避難の正当性も含めて被害者として認められた。加害者だということを自覚して、加害責任に基づいた賠償的な施策をやってもらいたい」と語った
(下)中川弁護士は国や東電の責任を認めた判決を評価しつつ課題も指摘。「一歩一歩進めていくものだ」とも

【「土壌汚染」退け、「冷温停止」採用】
 課題も残った。
 判決は〝自主避難〟の合理性を認め、70万円から200万円の避難慰謝料を認定した。さらに、低線量被曝による健康影響について、「放射線の被曝線量と健康影響との間には、しきい値が無い」とする「LNTモデル」を採用。「科学的に証明された事実であるとまで認めることはできない」としながらも「科学的に有力な見解であり、100mSv以下の低線量被曝においてもLNTモデルに従った確立での低いがん死リスクの増大につながる可能性がある」、「国際的には、放射線防護の観点からLNTモデルに従った運用が多く採用されていると認められる」、「一般通常人としては、LNTモデルが科学的に真実であると考えることは合理的であると認められる」として避難の合理性を後押ししている。判決を見届けた「福島原発かながわ訴訟」原告団長の村田弘さんも、この点を高く評価した。
 しかし、判決は一方で「客観的な危険性の内容や程度を勘案して回避行動(避難)が損害賠償の対象となるほどの相当性を有するものかを判断すべき」とも言及。原告の避難元である福島市や郡山市、いわき市では「2011年12月の段階では年間追加被曝線量は約1mSv未満から約5mSvであって、その後も漸減したと推認できる」、「LNTモデルを前提にしたときの年間1mSvのがん死リスクは0・0055%(100万人に55人)となり、他疾病のリスクは数値化することはできない」などとして、「2011年12月を超えては合理的であるとまでは認めることができない」と結論付けた。原告は土壌汚染による内部被曝の危険性も主張したが「それを考慮しても、この判断は左右されるものではない」と退けた。18歳未満の子どもや妊婦については「放射性物質に対する感受性が高い」として、同居家族も含めて8カ月長い「2012年8月まで」の避難合理性を認めた。
 避難の合理性を2011年12月までと区切った理由について判決は、2011年12月16日に当時の野田佳彦首相が「事故収束に向けた道筋のステップ2が完了したこと」を記者会見で表明(いわゆる〝冷温停止状態宣言〟)したことを挙げている。「健康に対して客観的または具体的な危険を生じさせるほどの放射性物質を拡散させるおそれは低くなったものであって、そのことを原告らは知り得たと認められる」。
 この点について、中川弁護士は「2011年12月の〝冷温停止状態宣言〟は、翌2012年3月に安倍首相のもとで撤回されている。にもかかわらず、判決のキーになっているのは理解に苦しむ。低線量被曝のリスクがあるという判断にまで至らなかったのは残念。控訴審においてしっかり立証を補充していく必要があるかと思う」と述べた。




東京地裁は避難指示が出ていない区域からの〝自主避難〟に関して合理性を認めた。しかし、合理性を認めたのは原則として2011年12月まで。課題も残した判決となった(判決要旨より抜粋)

【「7年間苦しかったです」】
 矛盾をはらむ判決ではあるが、原告は一様に安どの表情を見せ、一定の評価をしている。
 原告団長の鴨下祐也さん(福島県いわき市から避難中)は、記者会見で「もろ手を挙げて喜べるというわけでは無いが、国の責任が認められたのはうれしい。国は『社会的責任』などと言わず、加害者だということを自覚して、加害責任に基づいた賠償的な施策をやってもらいたい」と述べた。
 「この訴訟の原告は区域外避難者がほとんどだが、子どもを守るために避難した母親は、周囲から『そんな事をする必要は無かったんじゃないか』と言われて常に説明を求められている。昨年3月末で住宅の無償提供も打ち切られ、精神的にも金銭的にも追い詰められて来た。しかし、ここで『被害者』としてはっきりと認められた。司法の判断が下った。今後も被曝を避けるために避難を続けたい」。
 会見に同席した40代の母親も「7年間苦しかったです。避難した事が正しかったのか、誰も言ってくれなかった。司法の場でこういう結果を得た事で、これでまた明日から避難生活を続けられる」と涙を流した。「本当に認めてもらいたかったんです。分かってもらえる人が多くなると思う」。弁護団によると、個々の損害額認定にあたっては、子どもたちの受けた〝いじめ〟も考慮されたという。
 別の母親は「福島で生活し子育てをしているお母さんたちは、この判決をどんな想いで受け止めるのだろう。それを考えると心が痛む」とも話した。本来は、避難を選択するか否かにかかわらず、被曝リスクから避けるべく守られなければならない。前日に判決が言い渡された京都訴訟の原告は「司法が『避難して良い土地』だと認めた。避難していない人々も国は守って欲しい」と語った。
 2013年3月11日の提訴から5年。原告たちはひとつの区切りを迎えた。法廷では緊張で手が震え、涙を流しながら意見陳述した。被告・国や東電の代理人弁護士からは「もう危なくないのになぜ戻らないのか」などと、避難の正当性を否定されるような質問も浴びた。不十分だが、判決は避難指示が出ていない区域からの〝自主避難者〟も原発事故の被害者だと明確に認めた。報告集会後、原告として闘って来た母親が漏らした言葉が、最も冷静に現状を表しているのかもしれない。
 「判決が出たって何も変わりませんよ。何も変わりません。今日の判決で世間の私たちに対する見方がほんの少しだけ変わってくれたら…それで良いかな」
 避難の合理性を認めた判決は、これまで〝自主避難者〟を「放射脳」、「心配性」などと嘲笑って来た人々にも突きつけられているのだ。



(了)
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鈴木博喜

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