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【原発事故と甲状腺ガン】福島だけの問題じゃない「低線量被曝」や「甲状腺検査」。牛山元美さんが宮城・柴田町で講演。検査に消極的な行政、試験焼却も開始

医師で、NPO法人「3・11甲状腺がん子ども基金」顧問の牛山元美さん=神奈川県相模原市、さがみ生協病院内科部長、循環器内科=が17日、宮城県柴田郡柴田町で講演し、福島県で実施されている「県民健康調査」から見えてくる問題点、内部被曝の危険性などについて話した。原発事故による放射性物質の拡散は当然ながら福島県内にとどまらない。柴田町の滝口茂町長は町による甲状腺検査の実施を拒み続けているが、民間団体の検査には多くの人が訪れているのが実情。20日からは8000Bq/kg以下の放射性廃棄物の試験焼却も始まる。住民の関心は決して低くない。


【「無用な被曝避けるのは常識」】
 牛山さんはまず、自身の子どもが通う神奈川県相模原市内の小学校の中庭で2011年5月に採取した土壌の放射性セシウム137の濃度が1360Bq/kgだったとの実体験を明かした。「原発事故前、東京・新宿の土壌は0~2Bq/kgだった。それが相模原の子どもたちのいる学校は1360Bq/kgもある。放射性セシウム134も合わせると2700Bq/kgに達した。校長に伝えたが『ありがとうございました』と言われただけ。『国が安全と言っているから動けない』と言われた」と振り返った。
 「妊娠している医師や看護師の職業被曝は、妊娠中に1mSv以上浴びてはいけないと法律で決められている」、「数mSvの医療被曝であっても乳ガンや白血病などが増えるという論文がこの10年くらいで発表されるようになった」、「一般公衆の追加被曝線量は年間1mSvなのに、福島県だけは年間20mSvまでは浴びて良いというか、浴びても我慢してそこに居なさいという事になっている。これは差別だ」と牛山さん。「10Bq/kgの食べ物を毎日食べても、体内には放射性物質が蓄積されていく。低線量被曝も内部被曝も、まだ解明されていない未知の世界。とにかく被曝は少ない方が良い。余計な被曝はしない、というのは医療の世界では常識だ。放射性物質は目に見えないから測って、知って、避けるのが大切」と語った。
 「甲状腺ガンは予後が良いガン」、「韓国では不要な甲状腺ガン手術が行われた」と言われる事も多いが、牛山さんは「それは成人の話。小児甲状腺ガンと一緒に考えてはいけない。小児甲状腺ガンを『攻撃的な腫瘍』と読んでいる学者もいる」と異議を唱える。福島県の県民健康調査で実施された甲状腺エコー検査で「悪性ないし悪性疑い」と診断された子どもは、2017年12月31日現在197人。このうち160人が甲状腺ガンと確定している。この点について牛山さんは「多発と言わざるを得ないし、放射能汚染土との関係もありそうに見える」と評価。
 自身が顧問を務める基金の「手のひらサポート」への申請で、原発事故当時4歳だった子どもが甲状腺ガンと診断され福島県立医大で手術を受けていた事が判明したが、福島県に問い合わせると「隠ぺいでは無い。県民健康調査でいったん経過観察となると、その後に甲状腺ガンと診断されても集計されない仕組みになっていると言われて驚いた。これでは、県民健康調査のデータは正確では無かったと言うしかない。再発・転移による再手術も集計されていない」と批判した。






(上)講演で「とにかく被曝は少ない方が良い。余計な被曝はしない、というのは医療の世界では常識だ。放射性物質は目に見えないから測って、知って、避けるのが大切」と語った牛山元美さん=槻木生涯学習センター
(中)講演会には仙南地域の住民が参加。「内部被曝」や「福島県の県民健康調査」、「放射性廃棄物の焼却」などの質問があった
(下)講演後には個別の健康相談会も開かれ、希望者には問診した上で安定ヨウ素剤が渡された

【甲状腺検査拒み続ける滝口町長】
 講演会が開かれた柴田町は、福島第一原発からの距離は約75km。福島県の相馬市や伊達市と隣接している丸森町、角田市を挟んで柴田町だ。原子力規制委員会の公表している空間線量(町役場に設置されたモニタリングポスト)は0・04μSv/hを推移しているが、柴田町役場のホームページによると、2011年5月12日に町立船岡中学校で0・45μSv/h、5月17日には第一幼稚園で0・35μSv/hを計測している(いずれも高さ1メートル)。公園の空間線量は2011年10月3日に並松公園で0・43μSv/h(高さ5センチ)を計測しており、原発事故による放射性物質の拡散が決して福島県内にとどまらなかった事が改めて分かる。町役場は2011年6月30日に採取した土壌も調べており、放射性セシウム濃度が最も高かったのは船岡保育所の園庭で、636Bq/kgだった。
 母親らのグループ「小石族とかたつむり(甲状腺検査を実現させよう会)」が2015年9月、甲状腺検査の実施を求める要望書(190世帯325名分)を提出したが、滝口茂町長は「柴田町は汚染状況重点調査地域に指定されていない」として拒否。2016年11月18日には、「子どもの甲状腺エコー検査を希望する町民に対し、町が年1~2回程度、継続的に検査を実施することを求める請願」を町議会に提出した。
 請願は12月8日の本会議で賛成多数で採択されたものの、2017年2月22日の町議会本会議で、滝口町長は「宮城県の有識者会議が原発事故後に、科学的・医学的な観点からは健康調査の必要性はないとの見解を示した」、「柴田町は汚染状況重点調査地域ではないということですので、放射線量の影響に量が違う」、「甲状腺がんは比較的予後が良いがんと言われ、症状が出てから治療する方がほとんどであり、無症状のお子さんに甲状腺検査をすることは、検査を受けることによる負担がある」などとして、「現在のところ、町として甲状腺検査を行う必要はない」との考えを改めて示した。
 滝口町長の消極的な姿勢の一方で、2015年3月に「日本キリスト教団東北教区放射能問題支援対策室いずみ」が柴田町内で実施した甲状腺エコー検査について、町長は「問い合わせをしたところ、今回の定員45人に達したため締め切りました、という回答をいただいております」と町議会で答弁している。これだけのニーズはしかし、行政は無視し続けているのが現状だ。






講演で牛山さんが示した資料の一部。無用な被曝は避けるよう呼びかけた

【「汚染や被曝リスクを語りにくい」】
 講演で、牛山さんは「不安も少ない方が良い」として「語り合える場に参加しよう」、「他人の助けを借りよう」と呼びかけた。「親も子も自己肯定感を持つ事が大事」とも。「子どもの未来を守るためにか、過去を後悔するばかりではなく、今出来る事をしましょう。まずは被曝を避けましょう」と語った。
 講演後の質疑では、参加者から「この辺りのものを食べていたら1日10Bq/kgくらいにはなってしまうのではないか」、「宮城県内で放射性廃棄物の焼却が始まるが、風に乗って放射性物質が二次拡散されるのではないか」などと不安も声もあった。仙南地域広域行政事務組合は今月19日夕から8000Bq/kg以下の「農林業系廃棄物」を仙南クリーンセンター(角田市)に搬入。翌20日から試験焼却を始める。まずは白石市内の100Bq/kg以下の「ほだ木」を1日1トンずつ5日間にわたって燃やすという。講演の終了後には個別の健康相談会も開かれ、希望者には問診した上で安定ヨウ素剤が配られた。
 講演会は、仙南地域の母親グループ「かたつむりの会」と「いずみ」の共催。「かたつむりの会」は2012年9月に設立され、現在は2カ月ごとに甲状腺エコー検査を実施。次回は4月に岩沼市内で行われる。鹿児島県内のNPO法人「11311疫学調査団」と連携し、甲状腺検査や血液検査のデータ提供に協力しているという。「かたつむりの会」のメンバーは「放射性物質は県境を超えたにもかかわらず、公的な健康調査はほとんど行われていない。そのため、汚染や被曝リスクの問題をなかなか語りにくい、話題にしにくい、情報を得にくいという状況が生まれている」と語る。
 「いずみ」は無料の甲状腺エコー検査を宮城県内で続けており、今月25日には加美郡加美町で、4月1日には柴田郡川崎町で行われる予定。



(了)
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鈴木博喜

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