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【85カ月目の福島市はいま】にぎわう花見山。0・3μSv/h前後はもう安全?「安全一辺倒でなく本当の事を伝えて」。ベテラン・ボランティアガイドの怒り

厳しかった冬から急激に気温が上昇したため例年より大幅に満開の時期を迎えている福島県福島市の花見山。日曜日の8日は肌寒かったものの、多くの観光客でにぎわった。幼い子どもを釣れた家族は一様に「被曝リスクを心配したってしょうがない」と語り、市職員も「除染の効果が出ているから大げさな事はしない」と空間線量の掲示を外した。原発事故から7年超。もはや「汚染」「被曝」は過去の話なのか。その問いに「NO」と答えたのは、花見山で観光客の案内に汗を流すベテラン・ボランティアガイドだった。


【「気にしてもしょうがない」】
 福島市の父親は、幼稚園に通うきょうだいを連れて花見山に来ていた。
 「放射能?全然気にならないです。数値も全然見ていないですね。はっはっは。気にしてもしょうがないかな。ここに住んでるわけだから。こういう所に子どもを連れて来たって大丈夫っしょ」
 宮城県石巻市から来たという若い夫婦も「全く心配していないですね」と笑った。ベビーカーでは生後5カ月になる娘が手を叩いていた。
 思えば原発事故後の花見山は、福島市〝復興〟のシンボルと位置付けられ、大規模な除染が実施された以外は放射線防護とは無縁の場所だった。原発事故の翌年には既に「数値に慣れてしまっているんですよね。0・6μSv/hだと『あ、1・0μSv/hより低いんだ』って思ってしまうんです。本当は低くないんでしょうけど。線量が高いのであれば、なぜ国や県は住民を避難させないのでしょうか」、「福島で生きていくということは、線量の高さなんて気にしてはいられないんですよ。そりゃ、子どもにとって良くは無いでしょう。では、どうすれば良いんですか?避難したくてもできないのであれば、受け入れるしかないんですよ。悲しいですよ。あなたに分かりますか?この悲しみが」という声が聞かれた。
 客足が戻り始めた2013年には、福島市職員は取材に対し「福島市は警戒区域にも何にも指定されていない。つまり、放射線量は国の基準を下回っているということです。こうして問われるまで、放射線量が高いということを理由に一般公開を中止するという発想は全然ありませんでした」、「慣れてしまったのでしょうか。ここに住んでいる者としては、今の放射線量が高いと感じないんですよね。実際、原発事故直後は福島市内でも空間線量で10μSv/h~20μSv/hありましたから」と答えている。
 「放射線量を気にしている人は、もはや福島県内にはいないんじゃないかな。県外に避難しているでしょう。このくらいの線量なら気にしてもしょうがないですよ」、「放射線を気にしすぎて家の中に閉じこもっても…。知り合いの子どもは、被曝を気にして屋外で遊ばないために体調が悪くなっていると聞きました。そもそも、飛行機に何度も乗っちゃってますしね。飛行機に乗るだけで被曝するんでしょ?」という声が聞かれたのは原発事故から3年後の2014年
 そして今年。手元の線量計は0・3μSv/h前後。原発事故直後と比べれば、確かに大幅に下がった。しかし、福島市の主婦は「除染の目安である0・23μSv/hを上回っていますからね」と表情を曇らせた。そんな、地元で暮らす人々の複雑な心情を代弁したのは、意外にも花見山で「ボランティアガイド・ふくしま花案内人」を長年務めている男性だった。






ボランティアスタッフは「まだまだ震災前のにぎわいは戻っていない」と言うものの、それでも多くの観光客でにぎわっている花見山。タイヤ台湾などからの外国人の姿も目立つ。手元の線量計は0・3μSv/h前後。敷地内には、空間線量は全く掲示されていない=福島県福島市渡利

【「風評被害じゃない、実害だ」】
 「今年の開花は、早いもんじゃないっていうくらいに早い。友人が11日に来る事になっているが、どうしたものか」と苦笑した「ふくしま花案内人」の男性。話が放射能汚染に及ぶと、怒りをあらわにして語った。
 「政治的には、偉い方々は『福島の復興なくして日本の再生なし』なんて言うけれど、そう言ってる人たちが福島に住んでいるわけじゃ無い。私たちにとっては、原発事故前の、あの混雑が戻って来て初めて『復興出来た』と思えるんです。総理が福島市に来て、おにぎり食べたから〝安全〟なんてとんでもないです。それだったら、避難指示が解除された区域に家族を連れて住めって言いたいですよ」
 福島県のまとめによると、原発事故前年の2010年、花見山には約33万8000人が訪れていた。それが原発事故で約10万人に激減。2013年から増加に転じたが、2016年の観光客数は約25万4000人。男性は「以前はバスも大渋滞。トイレも長い列が出来ていたんです。今日は日曜日ですが混雑していない。こんなもんじゃないですから」と振り返る。
 台湾やタイなどからの外国人観光客の姿も目立ち「本当にありがたい」とガイドの男性。一方で「残念ながら、60km離れた花見山にも放射性物質が降り注いだのは事実です。私が一番嫌いな言葉が『風評被害』なんです。根拠の無い被害なんかじゃ無い。ちゃんと『原発被害』と言って欲しいですよ。国が安全だとか勝手に言うのではなくて、ちゃんと本当の事を伝えて科学的に皆が怖がったり、科学的に避難したりする事が大事だと思います。私は畑で採れた野菜を測って安全だと思って食べているけれど、じゃあ100Bq/kg以下だから、はいどうぞって言われても、そんなの誰だって嫌ですよね。受け止め方の問題ですから。7年経った今の数値(空間線量)に対する考え方は様々ですからね」とも。
 「でもね」と男性。「気に病んでばかりもいられません。前を向いて歩かなければ。それに、私たちは生きてるんですから。ちゃんとこの街で生活出来ているんですから。逆に言うと何が悪いの?とも思ってしまいます」とも話した。
 「現状をきちんと伝える事が、私たちのような者、新たな被害を二度と生み出さないという事につながるんです。私の親族も中通りに住んでいますが、原発事故後に畑仕事が出来なくなって認知症になってしまいました。東電に言わせれば原発事故のせいではないと言うかもしれない。だけど、私たちにすれば、原発事故が無ければ認知症なんかにならなかったと考えますよね」と男性は言って、再び案内に戻った。






原発事故から1年後の2012年、花見山公園の「本部」には、訪れた人向けに空間線量が掲示されていたが、現在は「大げさにする必要は無い」と掲示されていない。福島市のホームページ内に定点観測した数値が掲載されているだけだ

【「大げさな事」と線量掲示せず】
 原発事故から1年後の2012年に花見山を訪れた際には、「本部」のプレハブ小屋の外壁に、空間線量が手書きで掲示されていた。しかし、現在はそれも無い。敷地内にはモニタリングポストも無い。
 本部で観光客に対応していた福島市職員は「人の立ち入らないような場所も除染をして空間線量も下がりましたから、数値を貼り出すといった大げさな事はしていません。市のホームページではきちんと公開していますから、心配な方はそちらで確認していただくと良いと思います」と語る。福島市観光コンベンション推進室の担当者は昨年、取材に対し「花見山のある渡利地区は生活圏で多くの人が住んでいるので、市としては安全だという認識です。ホームページで放射線量は公表しているので、気になるようであれば自己判断で控えていただくのがよろしいかと思います」と答えている。「人が住んでいるから安全」だから、空間線量を貼り出すのは「大げさ」なのか。こうした〝風評回避〟が、ますます現実の汚染を闇に押し込んでしまうのではないか。
 2年後の東京五輪で、野球・ソフトボールの一部試合開催が決まっている福島市にとって、花見山を軸とした集客増は喫緊の課題。特に外国人観光客を呼び込むとなれば、原発事故による放射性物質の拡散という悪夢は振り払いたいのだろう。当時の佐藤雄平福島県知事が避難に消極的で、国の制度がきちんと確立されなかった事も手伝い、福島県外に避難した人の方が結果としてはるかに少ない。避難せず中通りに暮らす人々にとっては、心配ばかりしていては暮らしていかれないという心情も理解出来る。
 しかし、避難した人もしない人も同様に、無用な被曝は避けなければならない。そのためには数値も含めて全てを積極的に公開して判断を仰ぐ。それこそ再興の近道なのではないか。



(了)
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