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【85カ月目の福島はいま】「廃炉完了まで継続を」。モニタリングポスト撤去問題で市民が郡山市長に要請。徐々に広がる反対の輪。原子力規制委へも要請予定

福島県内(避難指示区域12市町村を除く)に設置されたモニタリングポスト(MP)のうち、「リアルタイム線量測定システム」と呼ばれる約2400台のMPを2021年3月末までに撤去する方針を原子力規制委員会が固めた事を受け、郡山市民有志が11日午前、品川萬里市長に要請書を提出した。廃炉が完了するまで撤去しないことを求めている。福島県内では「モニタリングポストの継続配置を求める市民の会」が発足。インターネットを利用したオンライン署名集めも始まっている。週明けには原子力規制委員会への要請も予定されており、「撤去反対」の輪が徐々に広がりつつある。


【数値を確認しながらの生活】
 要請したのは、蛇石郁子市議など市民有志11人。郡山市役所で品川市長に直接、要請書を手渡した。
 要請書は「国の決定に対して郡山市民から疑問や不安の声が寄せられている」、「廃炉作業は予定より大幅に遅れており、天災や事故などで再び放射性物質が放出され汚染されてしまう危険性は全く無いとは言い切れない」などとして「市民の健康を守るためにもモニタリングポストの継続は重要」としている。その上で①廃炉が完了するまで撤去しないこと②郡山市民に対する意見聴取の場と住民説明会の場を早急に設けること─を求めている。
 蛇石市議は「国の決定には唐突感がある。原子力規制委員会に出された資料によると、郡山市も含めて福島県内の自治体の意見としては『廃炉が完了するまで維持するべきだ』となっている。そもそも、モニタリングポストの種類も含めて一般市民には分かりにくく、正確な情報が伝わっていない。郡山市内の公園から空間線量の表示板が無くなってしまった件でも同じで、全く気にしない方もいるが、不安に思っている住民がいるのも確か」と要請の趣旨を説明。参加した女性は「学校などにモニタリングポストがあることで空間線量の低減を確認出来るし、風向きや風の強さで数値が変動する事も分かる。私たち福島県民、郡山市民がここに住むということは、数値を確認しながら生活するということ。これからさらに数値が下がればもっと安心出来る。ぜひ廃炉が完了するまで設置を続けて欲しい」と語った。
 「市民の会」設立に携わった母親の1人は「撤去反対の声が高まっている中で、私たちは何が出来るのだろうと口にし始めたのがきっかけだった。インターネット上にサイトを開いているが、反応の大きさに驚いている。こういう場で声をあげなくても、不安に感じている人が多いと痛感している。市民の声に耳を傾けて欲しい。細部にわたるまで聴き取りをして欲しい」と頭を下げた。オンライン署名は1日で500筆を超えたという。




(上)要請書を手渡す蛇石郁子市議(右)。廃炉作業が完了するまで、現在のモニタリング体制を維持するよう求めた
(下)品川萬里市長は取材に対し「原子力規制庁長官が責任を持って話すべき内容だ。まずは先方の話を聴きたい」と語った=郡山市役所

【「規制庁長官が説明を」】
 要請に対し、品川市長は「少なくとも市長レベルでは、原子力規制庁や環境省からどうするかという話は正式には聴いていない。新聞報道で知っている限りだ。どういう考えなのか、なぜこういう判断に至ったのか、まずは国の考えを伺いたい」と語った。「市民の安全と安心を最大限擁護する義務のある者として、総合的に考えて、原子力規制庁や県、関係市町村とよく連絡をとって対応方針を決めて参りたい」。
 中通りやいわき市など政府による避難指示が出されなかった地域でのモニタリン体制見直しは、2015年11月25日の原子力規制委員会第42回会合で田中俊一委員長(当時)が投げ掛けたのが出発点(3月22日号参照)。これを受けて郡山市は2016年11月、インターネットによる市民アンケート「まちづくりネットモニター」で市民の意見を聴いている。
 「郡山市における環境放射線モニタリングについて」と題したアンケートに285人の郡山市民が回答。53.7%が「福島第一原発が廃炉となるまで環境放射線モニタリングは継続するべき」と答えた。「きりがない。必要無い」、「測定地点によっては終了して良い」などの意見は4・9%にとどまった。継続する方式に関しても、「現在の測定箇所と頻度を維持して継続」が44・5%、「測定箇所は維持し、頻度を減らして継続」は32・6%。多くの郡山市民が、現行のモニタリング体制の見直しを求めていない事が分かる。
 終了後、取材に応じた品川市長は「(昨年4月と10月に原子力規制庁の担当者が郡山市職員と意見交換しているが)担当課の話では無いでしょ、これは。原子力規制庁長官が責任を持って話すべき内容だ。そもそも原子力規制庁の話なのか、環境省の話なのか。環境問題なのだから」と語った。
 郡山市は、昨年12月の原子力規制庁からの文書照会に対し「市民の半数は廃炉になるまで設置を希望しており、現状のまま維持すべき」、「除染による除去土壌が住宅や公園などで現場保管されており、完全に市内から搬出されるまでは市民も安心できない」、「万が一撤去する場合は、問い合わせ窓口を開設して欲しい」などの回答を寄せている。




(上)郡山市長に提出された要請書。福島第一原発の廃炉が完了するまでの設置維持を求めている
(下)福島駅西口に設置されているモニタリングポスト(リアルタイム線量測定システム)。福島市でも「毎日、何気なく見て確認する事で安心感を得られている」という声は少なくない

【福島県「反対はしない。進め方」】
 モニタリングポスト(リアルタイム線量測定システム)の撤去・再配置問題に関し、「福島県内の汚染状況は一律ではなく、市町村の間でも『モニタリングポストの撤去はまかりならん』という声もあれば、『いつまでこんな事をやっているんだ』という声もある。県としては市町村の意見をよく聴いて納得する形で進めて欲しいと国には言っている。撤去するなとは言っていない」と語るのは、福島県放射線監視室の酒井広行室長。
 県は「今の線量状況を見れば、1分単位で数値を知らせるような状況では無い。落ち着いて来たのは紛れもない事実」という考え方では国と一致している。酒井室長は「整理するという方向性には物申すつもりは無い」とい繰り返す。「問題は整理のやり方。住民の声をきちんと聴いて欲しい」。
 一方で、モニタリングポストが存在する事による住民の安心感には一定の理解も示す。
 「国の考えは一辺倒で、用が済んだら撤去するというものだが、今はモニタリングポストの性格(設置している目的)が原発事故直後と変わっている。地域の人たちに溶け込んでいる。あることで安心感を得られるし、逆に正しい数値を発信する事で風評払拭にもつながっている。それだけ馴染んでいるものを撤去するのだから、国はそれなりのやり方をして欲しい」 
 「新日本婦人の会福島県本部」(福島県福島市)は今年3月、福島県内の各支部にモニタリング体制見直しについて意見を求めた。その結果「廃炉作業で事故が起きる可能性があるので、廃炉が完了するまでは現在のモニタリングは必要」、「福島で生活している住民にとっては、日々変化する数値を見ながら暮らしている。東京五輪などで来県する人たちの手前、撤去したいのかもしれないが、住民の側にたって考えて欲しい」、「まだホットスポットは存在するので撤去しないで欲しい」などの反対意見が寄せられたという。これを受けて「住民の意見を尊重し、一方的な縮小などは行わないこと」を求める要望書を内堀雅雄福島県知事宛てに提出している。



(了)
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鈴木博喜

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