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【モニタリングポスト撤去】「撤去前提で進めるな」「配置継続を」。福島の住民たちが都内で要請。方針変えぬ、と原子力規制庁。「科学的に必要無い」

福島県内(避難指示区域を除く)に設置された「リアルタイム線量測定システム」と呼ばれる約2400台のモニタリングポスト(MP)が2021年3月末までに撤去される計画が浮上した問題で、福島県民でつくる「モニタリングポストの継続配置を求める市民の会」が16日午後、MPの配置継続などを求める要請書を原子力規制庁に提出した。しかし、規制庁職員は「空間線量は科学的に見て低い数値で安定しており、役目を終えた」などの説明に終始。基本方針に変わりは無いとの姿勢で、放射線と日々、向き合いながら生活している住民と霞が関の官僚たちとのかい離が浮き彫りになった。


【「不安を抱くのはおかしい?」】
 更田豊志委員長宛ての要請書は、「モニタリングポストの継続配置を求める市民の会」共同代表の千葉由美さん(福島県いわき市在住)が読み上げ、原子力規制庁監視情報課の武山松次課長に手渡された。「線量が低くなったとして撤去を決定したことに対し、取り消しを求めます」、「事故時に、放射性物質が大量に放出されたことを知っていれば、せめて子どもだけでも無用な被曝から守ることはできたはずです」、「給水車やスーパーの列に子どもを連れて並んでいたことにより、被曝させてしまったことを悔やみ、今も自分を責め続けながら暮らしています」、「福島県民の健康や安全、特に子どもの健康や安全を軽視していると言わざるを得ません」、「このような決定が被災地に暮らす私たちの思いとは別のところで強引に進められていくことに対し、私たちは原発事故に対する国の責任の取り方に改めて疑問を感じざるを得ません」と訴えている。
 その上で①モニタリングポストが不要か否かの「決定の権利」を住民に持たせること②これまで通りに配置を継続すること③住民説明会は撤去を前提として開催しないこと、情報収集が困難な住民をとりこぼさないこと─を求めている。
 提出後の話し合いで千葉さんは、「福島県内の市町村からさまざまな意見が出されているが、それに対する国の回答が、私たちが原発事故後に置かれている現実とかけ離れている。会議室の中で決められた言葉の羅列だという印象を強く持っている。空間線量が低くなって安定している、というのが撤去の根拠として示されているが、これから何も起こらないと保証出来るのか。実際に起こってはならない原発事故が起こってしまった。私たちはどんどん見捨てられてしまっている」と抗議。
 やはり共同代表の片岡輝美さん(福島県会津若松市在住)も「常日頃見ているMPは、日常生活の中で生かされている。それをなぜ今になって撤去しなければならないのか全く分からない。廃炉作業は始まったばかり、原子力緊急事態宣言も解除されていない。それなのになぜ筋が通らない事をしなければならないのか。私たちが不安を抱いているのはおかしい事ですか?起こるはずが無いとされた原発事故が起きて、不安を抱くのは当然ではないですか?そのような状況で7年間、私たちは毎日毎日生活しているんです。福島県内の市町村からも『撤去は時期尚早』という声があがっているのに、なぜ撤去が前提となっているのか。なぜ方針を変えられないのか」と語気を強めた。




(上)「モニタリングポストの継続配置を求める市民の会」の共同代表として、要請書を読み上げる千葉由美さん。福島の母親たちから託されたメッセージも代読した=東京・永田町の参議院会館
(下)要請書では、モニタリングポストの配置継続や〝結論ありき〟の住民説明会にしない事などを求めている

【「役割終えたものは外したい」】
 千葉さんや片岡さんは努めて冷静に再考を促したが、国の撤去方針は覆らなかった。
 原子力規制庁監視情報課の武山松次課長は、「(避難指示区域外の)空間線量は十分に低く安定しており、連続的な測定は科学的に役割を終えている」、「役割を終えているものは外したい」と繰り返した。「我々も原発事故はまだ終わっていないと考えている。『リアルタイム線量測定システム』以外の可搬型などのMPは残すので、福島第一原発で何か起きてもカバー出来ると考えている。いろんな意味で維持もかかる。その時に応じた体制にしていくというのが一番良い」。
 「原発事故が終わっているとは思っていない。ただ、今回のMP撤去、再配置方針については2016年2月の原子力規制委員会で了承されている。機器としての傷みも激しく、早く対応していかないといけない。ただし、皆さんの御心配もあるでしょうから、しっかりと聴かなければならない。機器の寿命も含め大方針は示したが、地域の理解を得ながら出来る限りの事をやっていきたい」と語ったのは、監視情報課の滝田敏宏課長補佐。
 今月、日本原子力研究開発機構から原子力規制庁に異動してきたという監視情報課の斎藤公明技術参与は「規制庁から委託を受けて大規模環境測定を行ってきたが、原発直後と比べて放射線のレベルはだいぶ低くなっている。80km圏内で言うと、放射性セシウムの放射線量は事故直後の2011年6月に比べて7年間で1/10程度になっている。全体のレベルとしてはかなり低くなっている。航空機モニタリングや走行サーベイなど、さまざまなモニタリングを行っており、その中に『リアルタイム線量測定システム』もある。科学者の観点で言うと、今はかなり空間線量率は下がってきており、かなり安定した状態。避難指示区域外についてはかなり低いところで推移しているのが現状で、密に測定する必要は科学的には無い。MPをそのまま残すのが最適の策だとは思わない」と述べた。
 「住民説明会は撤去前提では無い、説明会開催が(撤去容認の)既成事実にはならないということで良いか?」という問いに、武山課長は「そういう事です」と即答したが、規制庁職員の本音は違っていた。終了後に取材に応じた滝田課長補佐はこう語っている。
 「撤去の基本方針は2016年2月の原子力規制委員会で了承されており、撤去しないという事は無い。市町村との個別の話し合いで変わってくる事もあるが、それはあくまで時期の問題。コストの問題もある。住民説明会では我々の考え方を説明するので、それで考えていただいて、住民の皆さんは自治体と話し合って欲しい。自治体の方が最終的に調整して欲しい。その結果『時期尚早』という声があれば、ある程度は考慮させていただく。100%では無い。撤去時期をずらすという事はあると思っている」




(上)原子力規制庁からは、監視情報課の武山松次課長(中央)ら3人が出席。態度や言葉遣いはていねいで「皆さんの不安はおかしいとは思わない」と語ったものの、撤去方針に変わりは無いと繰り返した
(下)原子力規制委員会が「リアルタイム線量測定システム」を撤去する根拠に挙げているのが空間線量の低下。話し合いでも、武山課長は「役目を終えたものは取りたい」と強調した

【「撤去で〝現実〟にフタしないで」】
 要請に参加した福島の住民からは「原子力規制委員会の配布資料では、『県民が正しく理解し、無用な不安を抱かせない』という文言が20カ所近くで使われている。じゃあ、私たちは何なのか。正しく理解していないのか。無用な不安を抱いているのか。国民主権だから、決めるのは住民の側だ」(郡山市の蛇石郁子市議)、「多くの住民が心配している。『リアルタイム線量測定システム』は子どもが活動する施設の線量を把握するために設置されたもので、身近にあって数値を見ながら保護者は判断している。可搬型のモニタリングポストは身近では無い。廃炉作業の中で何が起こるかも分からない。原発構内での労働問題の相談を受けているが、彼らは何が起こるか分からないというのが前提となっている。撤去は納得出来ない。見直しを強く要望したい」(いわき市の狩野光昭市議)などの声があがった。
 都内に避難中の女性も「半減期の短い核種が無くなっただけ。原発事故前の数値とはまだ違うのに、安定しているから撤去というのは信じられない。これまで開かれてきた住民説明会は結論を押し付けるものだった。どうか当事者の声を聴いて欲しい」と訴えた。
 平日の日中、しかも都内での要請行動には、実際に福島県内で子育てをしている保護者の参加は容易では無い。そこで、千葉さんが代読した3通のメッセージを最後に紹介したい。それでも撤去を強行するのか。
 「原発事故当時、初期被曝を免れなかった事が今でも悔やまれます。また大きな地震が起きたら、といつも心のどこかに不安を抱えています。もしもの時にMPが無かったら、私はまた3人の子どもを被曝させてしまうのか。とても怖い。どうかこれ以上の不安を与えないでください」(福島市の母親)
 「昨年、母子避難の限界を感じて郡山に戻りました。自宅近くの公園には今も0・5μSv/hの個所もあり、汚染と隣合わせで子育てをする事に苦しんでいます。現実にフタをするようにいろんな事が無かった事にされてしまう事にも大きな不信感を抱いています。福島の現実をとらえる存在であるMPを撤去しないでください」(郡山市の母親)
 「幼稚園に勤めていますが、大きな地震が起きると、私たち職員も、またあの時のようになるのではないかとドキドキしてしまうというのが実際のところです。MPは、何も起きていない事を確認するためになくてはなりません。私たちは『MPをいつも見ているので大丈夫ですよ』と保護者に説明しています。どうか撤去はしないでください」(いわき市の母親)



(了)
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