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【モニタリングポスト撤去】福島市でも母親たちが継続配置を要請。「当面は外させない」と木幡市長。一方で「風評」「風評」と連呼、近い将来の撤去に含み

福島県内(避難指示区域を除く)に設置された「リアルタイム線量測定システム」と呼ばれるモニタリングポスト(MP)の撤去計画問題で、福島市内に住む母親たちが18日午後、同市役所を訪れ、継続配置を求める要請書を木幡浩市長に手渡した。母親たちの訴えに、木幡市長も「当面はむやみに外さないよう、福島県とともに国に求めて行く」と寄り添う姿勢を見せたものの、一方で「MPの存在が風評の源になっている事も総合的に判断しなければならない」とも。子育て中の母親たちの想いよりも風評払拭を重視するような言葉が随所に出て、集まった母親らを落胆させた。


【「あの時、何も知らされなかった」】
 継続配置を要請したのは、「モニタリングポストの継続配置を求める市民の会」の動きに呼応して集まった福島市内のお母さんたち。地元市町村への要請は、郡山市に続いて2例目。代表して、NPO法人「ふくしま30年プロジェクト」の理事も務める佐原真紀さんが要請書を読み上げ、木幡市長に手渡した。
 今回の撤去計画に対し「大きな不安を抱えている」、「強引さに大きな憤りを感じている」などとして①MPが不要であるか否かの判断や決定する権利を住民に持たせるよう今後も訴え続けること②福島第一原発の廃炉作業が全て完了してから撤去に着手するよう今後も訴え続けること─を求めている。
 佐原さんは「風評払拭も大事だが、食品にしても空間線量にしても、出来るだけ細かな測定を続けている事が復興につながるのではないかという声を多く聴いている。今後も現状の体制を続けて欲しい」と求めた。
 参加した母親たちからは「今後、もし福島第一原発で何かがあった場合、MPは情報をキャッチ出来る要となるはず。皆が平等にきちんと『知る』ために、このまま継続配置を強く望みます」、「7年前、原発事故が起きた時に私たち市民には、空間線量もSPEEDIも知らされなかった〝苦い思い出〟がある。数値を簡単に目にする事が出来るMPはぜひ残して欲しい」、「小学生と中学生の息子がいるが、息子たちも『なんで撤去するの?』、『市長は僕たちを守ってくれないの?』と驚いていた。子どもたちを守るのは大人の責任。どうか撤去しないで欲しい」、「原発事故によって子育ての状況が180度変わってしまった。せめて私たちの要望を受け入れて欲しい」と市長に頭を下げた。原発事故当時は高校生だったという女性は「私たちと同じ目線にたって考えて欲しい」と求めた。
 これに対し、木幡市長は「皆さんの不安な気持ち、よく分かります。私も除染廃棄物の搬出も出来ていない状況で外す(撤去する)という判断はあり得ない、と国には話をした。国と第一義的に動くのは県。自治体の要望を聴いて動くのは県の仕事になる。なので、県と市町村とが一体となって『ここで外すというのはおかしいと言おう』と申し入れをした。県からも、福島市も一緒になってやってくれという話をいただいている。原子力規制庁からは『除染廃棄物が残っている段階では撤去はしない』という意向を聴いているし、やみくもに撤去される事は無いだろうと考えている。モニタリングポストは、この地域が安全であるというエビデンス、証拠になるといった面で大事だと思っている。当面は、ともかく国もむやみやたらに外す事はないと思う。我々も県を中心にまとまって対応して行きたい」と答えた。






(上)代表して木幡浩市長に要請書を提出した佐原真紀さん(右)。「出来るだけ細かな測定を続けている事が復興につながるのではないか」とも=福島市役所
(中)平日の昼間ながら、多くの母親が福島市役所に集まった。中には幼い子どもとともに参加した母親も。一様に「せめて廃炉作業が完了するまで存続させて欲しい」と訴えた
(下)要請書ではモニタリングポストが不要か否かを「決める権利」、日々の空間線量を確認するなどの「知る権利」にも言及。撤去に反対する姿勢を貫くよう木幡市長に求めている

【「MPの存在が風評を招いている」】
 しかし、木幡市長の頭にあるのは「風評払拭」だった。
 「モニタリングポストが存在することによる風評は存在するか?ありますね」。終了後に取材に応じた木幡市長はきっぱりと言った。2016年7月から復興庁の福島復興局長を務めただけあって、風評払拭には人一倍の思い入れがあるようだ。
 「そもそも米の全量全袋検査が良いのかという議論の中で、検査自体が『危ないんじゃないか』という事を示しているという意見も現実にある。将来的なモニタリングポストの集約というか、どの程度のものが良いかという議論はあり得るでしょう。でも、今別に大きく減らすべきだと言うつもりは無い。ただ、僕らは、『風評』と『自分たちの気持ち』の両方を常に考えなければならないと思う」
 ここで、要請書を手渡した佐原さんが「市民の気持ちを守ってこその復興かなと私は思う」と口にした。これに対し、木幡市長は「今も(モニタリングポストが)各家庭にあるわけでは無いし、あとは密度の問題でしょ?どの程度の密度まで許容できるかという議論はあると思う。1個も減らさないというのでは無くて…」と応じ、国の配置見直し方針に理解まで示してみせた。
 木幡市長は「当面の間」という表現を何度か口にしたが、これは「除染で生じた汚染土が全部無くなるまで」だという。
 「福島第一原発が廃炉になるまで(継続配置して欲しい)と言うが、その影響はピンポイントではそんなに(福島市には)来ませんから。確かに原発事故で放射性物質は福島市にも降った。だから『要らない』と言っているわけでは無い。どの程度の密度にするかは別の議論でしょということ。市民の皆さんも今は現状維持を希望しているけれども、これから(考えが)変わるかもしれないし…」
 福島市は、昨年12月の原子力規制庁からの意見照会に対し、「撤去は、少なくとも(除染で生じた)汚染土壌の搬出するべき」などとする回答を寄せている。しかし、母親たちが求めているのは、30年とも50年とも言われている廃炉作業完了までの損座奥だ。認識は大きくずれている。しかも、こんな発言までして母親たちを驚かせた。
 「除染廃棄物は、目立つところから早く消さなければいけないと思っている。外の人が福島市に来て、そこで(フレコンバッグを)見ると『なんだ、まだ福島は危ないじゃないか』と言われたり、農地のそばに仮置きされていると農産物が危険であるという言われ方もされたりする」






(上)母親たちの言葉に耳を傾ける木幡市長(左)。「当面はむやみに撤去しないよう国に求めて行く」と答えたものの…
(中)後半では一転して「風評」を連呼した木幡市長。除染で生じた汚染土壌の搬出順序についても「目立つところから早く消さなければいけないと思っている」と強調した。
(下)福島駅近くに設置されているモニタリングポスト。この存在が「風評を招く源になっているのも事実」と木幡市長は言う

【「こっちも大変」文書回答を拒否】
 「我々が気にしているのは、農産物の検査のあり方もそうだが、あんまりうそういうのが大きすぎて逆に風評の源になってしまう場合もあり得るということ。そこは我々の気持ちとは別に、外の人が見る目というのは違う。そういったものも考えながら、今後どういうあり方が良いのか、よく考えて対応して行かなければいけないのかなあと思っている。我々の安心感と風評を総合的に考えながら、最終的には住民の皆さんも納得して物事が進むように国とも折衝して行きたい」とも語った木幡市長。
 今後、予定される住民説明会で、国は空間線量が低く安定している事や年間5億円のコストがかかることなどを前面に出して住民を〝説得〟する方針だが、市長の姿勢がこれでは、本当に「住民の皆さんも納得して物事が進むよう」に出来るのか。
 福島市議会では、原子力規制委員会が最初に撤去方針を了承した直後の2016年3月8日、村山国子市議(日本共産党福島市議会議員団)が代表質問で「多くの市民は、線量測定システムの数値を通りすがりに確認する習慣になっているのではないでしょうか。その数値を確認することで、とりあえず自分を納得させて生活しているのです。住民の合意なしの撤去はあり得ません。移設のメリットよりも移設によるデメリットを考えれば、リアルタイム線量測定システムの移設の申し出は断るべきであります」などと市側の見解を質している。当時の環境部長は「現在のところ本市への具体的な要請はございません」として「住民の不安や懸念が起きないよう十分な対応をしてまいります」と答えるにとどまっていたが、今後はこれに「風評払拭にも十分配慮して」という文言が加えられる事になるのだろう。
 首長として分刻みのスケジュールに忙殺されている様子の木幡市長。この日もすぐ後に別の公務が控えていた。しかし、要請に対する回答を文書で出すよう求めた佐原さんに対し、木幡市長が「もう、今ので良いじゃない。こっちも大変なんですよ、そういうの。はい、お願いします」と一蹴する場面は、周囲の母親たちを驚かせた。自分たちの想いはきちんとリーダーに届いたか。首を傾げる母親もいた。子育てに忙しい中、幼いわが子をあやしながら参加した母親の想いに寄り添うか、国の方針に理解を示して風評払拭を重視するか。市民は注視している。



(了)
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鈴木博喜

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