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【85カ月目の葛尾村はいま】英文で「速く通過を」。帰還困難区域の県道50号線が自由通行に。村職員が思わずポロリ「時間短縮をとるか被曝リスクをとるか」

また一つ、いまだ避難指示が解除されていない帰還困難区域を通る道路が自由通行になった。福島県双葉郡葛尾村と浪江町川房を結ぶ「県道50号浪江三春線」。今月19日午前11時をもってバリケードが撤去され、四輪車であれば自由に通行出来るようになった。葛尾村役場は「村民の利便性が増す」と歓迎するが、被曝リスクを抱えたままの自由通行。時間短縮をとるか被曝リスクをとるか、理不尽な選択を強いる原発事故の〝傷跡〟を、帰還困難区域から避難中の浪江町民の案内で取材した。Please pass through as quickly as possibleと書かれた英文の注意看板が生々しく映った。


【呆れる浪江町民「おかしい」】
 自由通行(特別通過交通制度の適用)が始まったのは、「県道50号浪江三春線」のうち、これまで通行証を携帯しなければ通る事が出来なかった双葉郡浪江町川房の「大柿ゲート」(帰還困難区域)から双葉郡葛尾村野行地区の「野行ゲート」(帰還困難区域)にまでの約10km。今月19日午前11時以降、通行証の有無にかかわらず通れるようになった。これにより、葛尾村中心部から既に自由通行になっている浪江町の国道114号線を経て南相馬市方面に抜ける事が可能となった。ただし、今回も県道50号線を通れるのは四輪車のみで、二輪車や自転車、歩行者は通行出来ない。
 19日、浪江町側の大柿ゲートには町職員などが駆け付け、ゲート撤去を見守った。大きな鉄製のバリケードは前日に外されており、警備員が通行する車両の通行証を確認して移動式のゲートを開けた。「今回の自由通行は、うち(浪江町)というより葛尾村の住民の利便性が増しますよね。南相馬へのルートですね」と町幹部。腕時計で午前11時を確認すると、業者がゲートや看板などを全て撤去。さっそく数台の車が葛尾村方面に走って行った。
 野鳥の鳴き声が響き渡る静かな森の道路。しかし、現実には汚染度が最も高いとされる「帰還困難区域」。手元の線量計は3・5μSv/h超。ゲート近くの旧大柿簡易郵便局前に設置された可搬型モニタリングポスト(福島第一原発から北西に約18km)の数値は4・4μSv/hを上回っていた。線量計をアスファルトに近づけるとさらに数値は上がり、15μSv/hや30μSv/hという高い値を示した。「こんなに汚染されているのに自由に通れるなんておかしいよ。車に乗ってさえいれば赤ちゃんだってフリーパスなんだから」。取材に協力してくれた浪江町津島地区の住民(福島県中通りに避難中)が呆れたようにつぶやいた。










①国は通行による被曝リスクを否定するが、一方で「なるべく速い通過を」と呼びかける英語表記の看板も=今月19日、双葉郡葛尾村野行
②通行できるのは四輪車のみ。こちらも英文で「バイク、原動機付き自転車、軽車両、自転車、歩行者」の通行を禁じている事を示している
③日本語での看板は英語看板と異なり婉曲的な表現。「速く通過しろ」ではなく「長時間の停車はご遠慮を」
④葛尾村内の県道50号線沿いに設置された可搬型モニタリングポストは、4μSv/hを上回る数値を示していた
⑤県道50号線内は携帯電話がつながらないため、緊急時用に非常電話が1台設置されている。ここまでたどり着くことが出来ればWi-Fi接続も可能だが、空間線量は2μSv/hを超えている

【「原発事故直後は3ケタだった」】
 「これまでは、村民が通院や通勤などで県道50号線を通行する場合には村役場に申請していただき、有効期限の無い通行許可証を携帯していただいていました。許可証を持っていない人は北側に迂回して国道114号線に出るなどしなければいけなかったので、村民からも『早く通して欲しい』という声はありました。今回の自由通行によって浜通りに行くのに時間的には大幅に短縮されます。南相馬市などに避難している村民にとっても便利になりました。(同じように浪江町津島地区で国道114号と合流する)国道399号線がまだ通れないので、そこが自由通行になると村から福島市方面へ行くのが便利になりますね」
 そう話すのは、葛尾村住民生活課の担当者。被曝リスクについて問うと、「ここに住んでいるとマヒしてしまうというか…」と苦笑した。「自分の住んでいる所より高いな、と言う人もいるし、感じ方は十人いれば十人それぞれ違います。危ない危ないって言ってもね…。ある程度の時間内に通過すればリスクも少ないですからね。目に見えるんであればね…」。
 復興推進室の担当者も「南相馬市に行くには時間が大幅に短縮されます」と語った。「私たちからも国に(自由通行をと)要請しましたし、南相馬市からも要望がありました。国道114号線が自由通行になった時には特に強い要請があったようです」。
 県道50号線の汚染や被曝リスクについて質問すると「初期の頃の空間線量を知ってますからね。それに比べればずいぶん下がりました。原発事故直後は3ケタでしたから」との答え。原発事故から2カ月ほど経った2011年5月7日に文部科学省が測定した数値は、県道50号線沿いで19・9μSv/hだった。同年5月21日に採取された土壌の検査では、ヨウ素131が3800Bq/kg、セシウム134、137合算で24万Bq/kg、テルル129mは4万7000Bq/kgだった。これだけの汚染があっても、空間線量が1ケタなら良いのだろうか。
 ある村役場職員は、こう言って苦笑した。
 「時間短縮をとるか被曝リスクをとるか、ですよね」
 そして結局、国も役場も利便性を選択したのだった。










①浪江町側の「大柿ゲート」。今月19日午前11時に撤去された=双葉郡浪江町川房
②「大柿ゲート」付近で、手元の線量計は3μSv/hを上回った
③大柿簡易郵便局前に設置された可搬型モニタリングポスト(福島第一原発から北西に約18km)の数値は4μSv/h超。郵便局は当然ながら営業していない
④今回、自由通行になった県道50号線は、葛尾村と浪江町の帰還困難区域を通る(経済産業省の資料より)
⑤経産省による事前調査の結果、県道50号線を通過する事による被曝線量は「胸部X線集団検診(1回当たり60μSv)と比較すると約86分の1」という

【「X線検診の86分の1」】
 経済産業省の原子力被災者生活支援チームは、バリケードの撤去を一週間後に控えた今月12日、県道50号線を車で通過する際の被曝リスクについて公表。その結果、時速30kmで通過した場合の1回の被曝線量は0・69μSvで「日常生活で受ける放射線被ばくの一つである胸部X線集団検診の被ばく線量(1回当たり60μSv)と比較すると、約86分の1」として、危険性は無いとの認識を示した。車道上の空間線量は0・35~6・44μSv/h(平均2・53μSv/h)で、1地点の車道脇の空間線量は7・7μSv/hだったという。
 車道の外側で、空気中の浮遊粒子状物質等を捕集するダストサンプラを使った調査でも、放射性セシウムは「検出限界地未満だった」としている。事故や故障などで車外に出た場合の1時間あたりの被曝線量は7・7μSvで、これも「胸部 X線集団検診の被ばく線量の約7分の1だった」として、危険性を否定している。
 被曝リスクを全否定する国。しかし、帰還困難区域はいまだに避難指示が解除されず、空間線量だけ見ても原発事故前の50~100倍はある。住む事は許されないが、一時的な通過なら構わないという事か。そもそも原発事故など無ければ、利便性か放射線防護か、などという理不尽な選択を住民に強いる事も無かった。原発事故から7年が過ぎ、表面的な〝復興〟ばかりが次々と福島県外に発信されていく。



(了)
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プロフィール

鈴木博喜

Author:鈴木博喜
(メールは hirokix39@gmail.com まで)
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