【モニタリングポスト撤去】いわき市でも母親たちが継続配置求める。郡山市、福島市に続いて3例目。「今後も撤去反対を国に伝える」と清水市長。
- 2018/04/24
- 06:11
福島県内(避難指示区域を除く)に設置された「リアルタイム線量測定システム」と呼ばれるモニタリングポスト(MP)の撤去計画問題で、いわき市内に住む母親たちが23日午前、同市役所を訪れ、継続配置を求める要請書を清水敏男市長に手渡した。MP撤去に反対する福島県内での要請行動は郡山市、福島市に続いて3例目。清水市長は「MPの存在が風評の源になっている」との考えを否定。県議会議員や国会議員との意見交換を通して国に市民の想いを伝えるだけでなく、福島県市長会としてもこの問題に取り組む意向を示した。
【「地震起きるとMP見に走る」】
継続配置を求める市民の声を今後も国に届けて欲しいと要請したのは、郡山市や福島市と同じように「モニタリングポストの継続配置を求める市民の会」の動きに呼応して集まったいわき市内のお母さんたち。仕事を休んだり、幼子を抱き抱えたりしながら13人が要請に参加した。参加者を代表して、鈴木さおりさんが市役所内の会議室で清水市長に要請書を手渡した。
要請書では、いわき市が「廃炉作業が完了するまで配置を継続するべき」などとする意見を国に出している事、今年1月10日に原子力規制委員会の更田豊志委員長がいわき市役所を訪ねた際、清水市長自ら継続配置を求めてた事に感謝を述べた上で①MPが不要か否かの決定権は住民が持つものだという事②廃炉作業が完了するまで撤去しない事③今後予定されている住民説明会は撤去を前提として開催しない事─を国に訴えるよう求めている。
参加者たちは、「放射能の数値は測定器で測らないと分からないので、地域に目で見られるMPがあるというのはとても心強い。私たち市民の安全を守るために、反対の姿勢を貫いて欲しい」、「(放射線を)可視化出来るものがあると、幼い子どものいるお母さんにとっては多少の安心材料にはなる。お母さんたちは、見ていないようで結構見ている。『今日は普段と変わらない』とか『今日はちょっと高くなってる』とか、そういう声を聞く。まだまだMPは必要だ」などと訴えた。
幼い子どもを育てている母親からは、「普段、保育園に子どもを預けているが、園長も(撤去計画に)驚いている。毎日MPの数値を確認するのが、保護者にとっても保育園にとっても日課になっている。ちょっと大きな地震が起きると先生たちはMPの数値を確認しに走ると聞いている。インターネットを使っていない人も多くいる中で、見てすぐに確認出来るMPの存在は本当に私たちの生活の一部になっている。これから(福島第一原発が)どうなるか分からないので、このまま継続して設置しておいて欲しい」、「何かあった場合に子どもの一番近くにいるのは幼稚園の先生。すぐに確認するためにも、幼稚園や公園など子どもが遊ぶ場所には今後も置いて欲しい」、「原発ではまだまだ危険な作業も残っている。このまま配置を継続して欲しい」という声もあった。
「もはや空間線量が低く安定している」という原子力規制庁の物言いがいかに住民の想いとかい離しているかが良く分かる。



(上)清水敏男市長(右)に要請書を提出する福島県いわき市の母親たち。今後もMPの継続配置を求める住民の声を国に届けるよう訴えている
(中)参加者たちは、いわき市役所内の会議室で「インターネットを使っていない人も多くいる中で、見てすぐに確認出来るMPの存在は本当に私たちの生活の一部になっている」などと訴えた
(下)幼子をあやしながら要請行動に参加した母親も。非常事態が起きていない事を確認するという意味でも、MPは必要な存在になっている
【清水市長「風評の源とは思わない」】
母親たちの訴えを受け、清水市長は「皆さんの不安に思う声を、今までも更田委員長に伝えて来た。これからも皆さんの声を国に伝えていきたい。いわき市だけではなく、福島県や関係自治体とも連携するようにしている。庁内においても関係各課連携を密にして、情報共有を図りながら対応して行きたいと考えている。既に庁内各課の連携会議は立ち上げたところだ」と答えた。さらに「本日(23日)、地元いわき市選出の県議会議員との意見交換会が市内で開かれるので、その場でも(MP撤去反対について)話をさせていただく。25日には都内で(吉野正芳復興大臣など)地元選出国会議員との意見交換会もあるので、その場においても皆さんの声は届けたいと考えている」と語った。
「福島県市長会(会長は立谷秀清相馬市長)でもMPの件が話題になっている。国に対して(まとまって)意見を述べようという機運にもなって来ている」
「国には改めて、継続配置を要請していきたい」と強調した清水市長。一方で「毎年、福島第一原発のサイトの中に入って定点観測している。事故直後は戦場のようだったが、今は飛躍的に環境が改善されている。限りなく普通の職場環境に近づいている。最近は女性も働いている。空間線量も非常に下がっている」と原発の〝安全性〟に言及する場面も。「ただ、その中でもまだまだ危険な作業はある。万が一、何か起きないとも限らないという皆さんの不安も当然だと思う。そういった事も含めて、原子力規制委員会には伝えたい」。
福島市民の要請行動では、木幡浩市長は住民の想いは理解しつつ「モニタリングポストが存在することによる風評は存在するのは事実」、「逆に風評の源になってしまう場合もあり得る」などと、風評払拭の観点から撤去方針にも一定の理解を示した。終了後、取材に応じたいわき市の清水市長は、この点について「それは木幡市長がそう思われた事なので…。私はそうは思いません」と驚いた表情を見せた。その上で「私はMPの存在が風評の源となっているは思っておりません。お母さんたちの想いは理解出来るので国に伝えて行きたい」と語った。



(上)清水敏男市長に提出された要請書。地元市町村への要請は郡山市、福島市に続いて3例目
(中)清水市長は事前に用意されたコメントを読みつつ、要請に沿った形で国に継続配置を求めて行くことを〝約束〟した
(下)いわき市内に設置されているモニタリングポスト(リアルタイム線量測定システム)。要請行動では、「毎日MPの数値を確認するのが日課になっている」との意見もあった
【「なぜ国が勝手に決めるのか?」】
清水市長への要請行動に参加した市民からは、次のような意見も出された。
「(国は)原発事故が起きた事を忘れさせようとしているのではないか。MPは原発事故があったという象徴のような存在でもある。そもそも、子どもたちの近くから撤去されるというのがおかしい。市長は原発事故があった地域の代表として、住民を守る事をお忘れないようお願いしたい」
「どうしていつも、国が勝手に決めるののでしょうね。住民説明会といっても、結論が決まってからなんでしょ?そういうのを何とか改善して欲しい」 だからこそ、MPの継続配置を求めているのであり、要請書で「決定権は住民に」と求めているのだ。
いわき市原子力対策課の担当者によると、原子力規制庁からは今のところ住民説明会の具体的な開催時期についての話は無いという。
「当初は『5月中の開催』と国は言っていたが、この時期に何も連絡が無いという事は先送りになっているのだろう。市民への周知をしっかりして欲しいと市から国に要望している事もあって『市の広報紙に掲載するにはどのタイミングが良いのか』などの問い合わせはあった。それに対しては『2カ月くらい前には具体的な計画を頂きたい』と答えている。急に『来週やります』と言われても、きにんと市民へのお知らせが出来ませんから。そういった事を国が考慮してくれるのであれば、住民説明会は早くても7月か8月に開かれるのではないか。やるとしたら、会場は『いわき芸術文化交流館アリオス』でしょうか」。
原子力規制庁は、MP撤去の理由の1つに「年間5億円に達する維持管理費」を挙げているが、いわき市の担当者は「我々からすると、コストを理由に配置を見直すというのは違うんじゃないかと思う」と反論する。「原子力政策を進めてきた国にも原発事故の責任の一端はある。コストと市民の安全安心を天秤にかけるのは、ちょっと違うと思う」。
要請には、佐藤和良市議や狩野光昭市議(ともに創世会)が立ち会った。佐藤市議は「廃炉作業の中で、排気塔の解体など〝大物〟の作業では放射性物質が舞う。そう考えるとMPの必要性は一向に減じていない。地元選出の県議会議員や国会議員との意見交換が続くようなので、市長会も含めて、いわき市の立場を伝えて欲しい。市民が安全安心にして暮らせるような形に持って行って欲しい」と清水市長に求めた。
(了)
【「地震起きるとMP見に走る」】
継続配置を求める市民の声を今後も国に届けて欲しいと要請したのは、郡山市や福島市と同じように「モニタリングポストの継続配置を求める市民の会」の動きに呼応して集まったいわき市内のお母さんたち。仕事を休んだり、幼子を抱き抱えたりしながら13人が要請に参加した。参加者を代表して、鈴木さおりさんが市役所内の会議室で清水市長に要請書を手渡した。
要請書では、いわき市が「廃炉作業が完了するまで配置を継続するべき」などとする意見を国に出している事、今年1月10日に原子力規制委員会の更田豊志委員長がいわき市役所を訪ねた際、清水市長自ら継続配置を求めてた事に感謝を述べた上で①MPが不要か否かの決定権は住民が持つものだという事②廃炉作業が完了するまで撤去しない事③今後予定されている住民説明会は撤去を前提として開催しない事─を国に訴えるよう求めている。
参加者たちは、「放射能の数値は測定器で測らないと分からないので、地域に目で見られるMPがあるというのはとても心強い。私たち市民の安全を守るために、反対の姿勢を貫いて欲しい」、「(放射線を)可視化出来るものがあると、幼い子どものいるお母さんにとっては多少の安心材料にはなる。お母さんたちは、見ていないようで結構見ている。『今日は普段と変わらない』とか『今日はちょっと高くなってる』とか、そういう声を聞く。まだまだMPは必要だ」などと訴えた。
幼い子どもを育てている母親からは、「普段、保育園に子どもを預けているが、園長も(撤去計画に)驚いている。毎日MPの数値を確認するのが、保護者にとっても保育園にとっても日課になっている。ちょっと大きな地震が起きると先生たちはMPの数値を確認しに走ると聞いている。インターネットを使っていない人も多くいる中で、見てすぐに確認出来るMPの存在は本当に私たちの生活の一部になっている。これから(福島第一原発が)どうなるか分からないので、このまま継続して設置しておいて欲しい」、「何かあった場合に子どもの一番近くにいるのは幼稚園の先生。すぐに確認するためにも、幼稚園や公園など子どもが遊ぶ場所には今後も置いて欲しい」、「原発ではまだまだ危険な作業も残っている。このまま配置を継続して欲しい」という声もあった。
「もはや空間線量が低く安定している」という原子力規制庁の物言いがいかに住民の想いとかい離しているかが良く分かる。



(上)清水敏男市長(右)に要請書を提出する福島県いわき市の母親たち。今後もMPの継続配置を求める住民の声を国に届けるよう訴えている
(中)参加者たちは、いわき市役所内の会議室で「インターネットを使っていない人も多くいる中で、見てすぐに確認出来るMPの存在は本当に私たちの生活の一部になっている」などと訴えた
(下)幼子をあやしながら要請行動に参加した母親も。非常事態が起きていない事を確認するという意味でも、MPは必要な存在になっている
【清水市長「風評の源とは思わない」】
母親たちの訴えを受け、清水市長は「皆さんの不安に思う声を、今までも更田委員長に伝えて来た。これからも皆さんの声を国に伝えていきたい。いわき市だけではなく、福島県や関係自治体とも連携するようにしている。庁内においても関係各課連携を密にして、情報共有を図りながら対応して行きたいと考えている。既に庁内各課の連携会議は立ち上げたところだ」と答えた。さらに「本日(23日)、地元いわき市選出の県議会議員との意見交換会が市内で開かれるので、その場でも(MP撤去反対について)話をさせていただく。25日には都内で(吉野正芳復興大臣など)地元選出国会議員との意見交換会もあるので、その場においても皆さんの声は届けたいと考えている」と語った。
「福島県市長会(会長は立谷秀清相馬市長)でもMPの件が話題になっている。国に対して(まとまって)意見を述べようという機運にもなって来ている」
「国には改めて、継続配置を要請していきたい」と強調した清水市長。一方で「毎年、福島第一原発のサイトの中に入って定点観測している。事故直後は戦場のようだったが、今は飛躍的に環境が改善されている。限りなく普通の職場環境に近づいている。最近は女性も働いている。空間線量も非常に下がっている」と原発の〝安全性〟に言及する場面も。「ただ、その中でもまだまだ危険な作業はある。万が一、何か起きないとも限らないという皆さんの不安も当然だと思う。そういった事も含めて、原子力規制委員会には伝えたい」。
福島市民の要請行動では、木幡浩市長は住民の想いは理解しつつ「モニタリングポストが存在することによる風評は存在するのは事実」、「逆に風評の源になってしまう場合もあり得る」などと、風評払拭の観点から撤去方針にも一定の理解を示した。終了後、取材に応じたいわき市の清水市長は、この点について「それは木幡市長がそう思われた事なので…。私はそうは思いません」と驚いた表情を見せた。その上で「私はMPの存在が風評の源となっているは思っておりません。お母さんたちの想いは理解出来るので国に伝えて行きたい」と語った。



(上)清水敏男市長に提出された要請書。地元市町村への要請は郡山市、福島市に続いて3例目
(中)清水市長は事前に用意されたコメントを読みつつ、要請に沿った形で国に継続配置を求めて行くことを〝約束〟した
(下)いわき市内に設置されているモニタリングポスト(リアルタイム線量測定システム)。要請行動では、「毎日MPの数値を確認するのが日課になっている」との意見もあった
【「なぜ国が勝手に決めるのか?」】
清水市長への要請行動に参加した市民からは、次のような意見も出された。
「(国は)原発事故が起きた事を忘れさせようとしているのではないか。MPは原発事故があったという象徴のような存在でもある。そもそも、子どもたちの近くから撤去されるというのがおかしい。市長は原発事故があった地域の代表として、住民を守る事をお忘れないようお願いしたい」
「どうしていつも、国が勝手に決めるののでしょうね。住民説明会といっても、結論が決まってからなんでしょ?そういうのを何とか改善して欲しい」 だからこそ、MPの継続配置を求めているのであり、要請書で「決定権は住民に」と求めているのだ。
いわき市原子力対策課の担当者によると、原子力規制庁からは今のところ住民説明会の具体的な開催時期についての話は無いという。
「当初は『5月中の開催』と国は言っていたが、この時期に何も連絡が無いという事は先送りになっているのだろう。市民への周知をしっかりして欲しいと市から国に要望している事もあって『市の広報紙に掲載するにはどのタイミングが良いのか』などの問い合わせはあった。それに対しては『2カ月くらい前には具体的な計画を頂きたい』と答えている。急に『来週やります』と言われても、きにんと市民へのお知らせが出来ませんから。そういった事を国が考慮してくれるのであれば、住民説明会は早くても7月か8月に開かれるのではないか。やるとしたら、会場は『いわき芸術文化交流館アリオス』でしょうか」。
原子力規制庁は、MP撤去の理由の1つに「年間5億円に達する維持管理費」を挙げているが、いわき市の担当者は「我々からすると、コストを理由に配置を見直すというのは違うんじゃないかと思う」と反論する。「原子力政策を進めてきた国にも原発事故の責任の一端はある。コストと市民の安全安心を天秤にかけるのは、ちょっと違うと思う」。
要請には、佐藤和良市議や狩野光昭市議(ともに創世会)が立ち会った。佐藤市議は「廃炉作業の中で、排気塔の解体など〝大物〟の作業では放射性物質が舞う。そう考えるとMPの必要性は一向に減じていない。地元選出の県議会議員や国会議員との意見交換が続くようなので、市長会も含めて、いわき市の立場を伝えて欲しい。市民が安全安心にして暮らせるような形に持って行って欲しい」と清水市長に求めた。
(了)
スポンサーサイト