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【福島原発かながわ訴訟】今夏の結審控え、10日まで横浜でパネル展。初日の避難者トークでは原発事故へ改めて怒りの声。「くたびれた」「心折れる」と涙も

原発事故の原因と責任の所在を明らかにし、完全賠償を求めて神奈川県内に避難した人々が国と東電を相手取って起こしている「福島原発かながわ訴訟」が7月にも結審するのを控え、同訴訟の存在を改めて多くの人に知ってもらおうと「原発事故8年目 神奈川と福島のいま」が5日、神奈川県横浜市のかながわ県民活動サポートセンター1階で始まった。「かながわ訴訟」のこれまでの経緯だけでなく、保養の受け入れや横浜、横須賀での原発事故後の問題に取り組んでいる団体の活動が分かるパネル展示。フォトジャーナリスト・豊田直巳さんの写真展も開かれている。入場無料。10日まで。初日の5日は避難者が本音を語るオープニングトークが開かれた。


【疲弊と困窮の中での裁判闘争】
 「くたびれたな…」
 原告団長として法廷に立ち、メディアの取材を受け、国や東電と闘っている村田弘さん(福島県南相馬市から神奈川県横浜市に避難中)の言葉が重く響いた。「心は毎日のようにポキポキと折れている。ちっちゃな〝骨折〟を何とかつないできた感じです」。
 年に数回、南相馬市の自宅に帰るが、横浜に戻ると3日間くらいグッタリとしてしまうという。物理的な距離による疲労だけでは無い。「なんだかわが家が遠くに行っちゃったみたいで…」。あふれる涙をハンカチで拭った。妻の公美子さんも「こういう人生を送るとは夢にも思いませんでした。すごく疲れました。この先、どのようにして生きていけばいいのか」とマイクを握った。
 今村雅弘復興大臣(当時)は2017年4月4日の記者会見で「裁判だ何だでもそこのところはやればいいじゃない」と言い放ったが、疲弊した心身を自ら奮い立たせながら司法の場で闘っているのが原発避難者の現実の姿なのだ。全国での原発訴訟で、国や東電の責任はほぼ明確になった。一方で、「7年間の苦労に対して1万円や20万円という具体的な賠償額を見ると、判決として出す裁判所って何なのだろうと思う。裁判官が原発事故被害を描き切れていないのではないか。司法に対して懐疑的になっているというのが率直な気持ち」と村田弘さん。司法への怒りとわずかな期待を抱きながら結審を迎える。「限界があるとしても唯一、頼れるのが司法。一歩進んだ判断を引き出し、積み重ねていく。本当に狭いが、そこから差し込む光に向かって進むしかない」。
 松本徳子さん(福島県郡山市から川崎市に避難中)は「『風評被害』と『復興』という言葉に心が折れそうになる。これだけの被害があって実害であるにもかかわらず、市民が裁判を起こさなければいけない。人権が無視されている。しかも犠牲になるのは常に子どもたち」と語った。原発事故後に制定された「子ども被災者支援法」は〝骨抜き〟にされ、被害者救済につながっていない。
 福島県福島市から川崎市に母子避難中の女性は「福島市で生まれ育った。両親も福島市。ふとした時に、どうして私はここに住んでいるのだろうと考えてしまう事がある」と吐露した。〝自主避難者〟向け住宅の無償提供打ち切りなどで2回の転居を強いられた。受験を控えた子どもにいかにストレスを与えないかに腐心する日々。新しい友人をつくる気力も失せた。「避難指示区域内外で賠償に差があるのに、まだまだ理解されていない」とも話した。交通費を考えると避難者同士の集いにも足が遠のくという。








①オープニングトークで「くたびれた」、「なんだかわが家が遠くに行っちゃったみたいで…」と涙を拭った村田弘さん。
②福島市から神奈川県内に避難中の女性は「ふとした時に『どうして私はここに住んでいるのだろう』と考えてしまう事がある」と語った。避難指示が出されていない区域からの〝自主避難者〟向け住宅の無償提供打ち切りなどで2回の転居を強いられた
③100人近い聴衆が原発避難者の言葉に耳を傾けたオープニングトーク
④会場の一角では、「かながわ訴訟」のこれまでの歩みが分かるパネルが展示されている=横浜駅近くの「かながわ県民活動サポートセンター」

【「風評では無い。実害だ」】
 福島県南相馬市から神奈川県愛甲郡愛川町に避難している山田俊子さんは「豊かな土地での暮らしが壊されて、元に戻るのは何百年後。私たちの力ではどうにもならない。そういうのをしっかりと想像してもらいたい。再稼働なんて聞くとすごく悔しい」と語った。しかし、国や行政は避難指示の出されていない区域からの〝自主避難〟は「心配しすぎ」、「大げさ」とし、世間には「風評を助長する存在」との声すらある。
 アイドルグループ「TOKIO」のメンバーが起こした強制わいせつ事件では、彼らが福島県の農林水産物PRに携わってきたことから、別のメンバーがテレビ番組の中で「福島の野菜を食べて」と涙ながらに訴える場面まであった。村田弘さんは「芸能人のスキャンダルでも何でも良いから『福島はもう大丈夫なんだよ』というアピールに使っちゃおう、という動きの象徴だろう。早く無かった事にしようという政権の意思があって、それに行政が引っ張られて原発事故被害を見えないようにしようという大きな流れの1つだと思う」と話した。
 松本さんも「(TOKIOの騒動を風評払拭に結びつけるのは)本当に筋違いで怒りしか無い。住宅の無償提供打ち切りも含めて、福島県のやってきた事は本当に酷いのに。福島の人々がどのような想いで8年目を迎えているのか本当に分かっているのか。福島の桃やキュウリは本当に美味しいです。でも、生産者が苦労している事も知った上で、それでも私はやはり、福島県が実害をきちんと提示しない限り復興にはならないと思う。芸能人や子どもを使って実害を無かった事には出来ないんです」と語気を強めた。
 〝原発事故を無かった事にする動き〟の1つが現在、福島県内で反対運動が起きている「モニタリングポスト撤去問題」だ。原子力規制庁は「空間線量が低い数値で安定している」事を撤去の大きな理由として挙げているが、一方で「風評払拭」の思惑も見え隠れする。撤去反対の要請書を受け取った福島市の木幡浩市長も「モニタリングポストの存在が風評を招いている」と口にしたほどだ。東京五輪で野球・ソフトボールの試合会場になっている福島市としては、観光客の目にモニタリングポストが映っては都合が悪いのだろう。
 村田公美子さんは「本当の事を言って欲しい。ごまかしが多すぎる」と語った。母子避難中の母親も「避難指示の有無で区別せず、避難する事を認めて欲しい」。全ての実害を明らかにし、いかなる選択をした被害者をも救済する。それこそが「かながわ訴訟」に原告として名を連ねた避難者たちの願いなのだ。








①「教育現場で取り組んできたこと」と題して報告した元小学校教員の青島正晴さん
②会場では、横浜市の「汚染土壌埋設問題」についての展示も
③神奈川県内に福島の子どもたちを受け入れている保養団体もパネル展示をしている
④飯舘村や浪江町を撮影し続けているフォトジャーナリストの豊田直巳さんの写真展「叫びと囁き」も同時開催されている

【「横浜でも土壌測定必要」】
 今回のイベントでは、訴訟の周知だけでなく、神奈川県内で放射能汚染問題に取り組んでいる団体の報告も行われている。原発事故当時、横浜市立小学校の教員だった青島正晴さん(62)は、原発事故から5カ月後の2011年8月末、勤務する横浜市鶴見区内の小学校の腐葉土置き場で1・17μSv/hを計測した経験を報告。別の測定でも0・77μSv/hしたため、子どもたちも立ち入る場所である事を考慮し、同年10月に教員らで200kg近い腐葉土を撤去したという。
 複数のごみ袋に入れられた腐葉土は、プール管理棟に昨年3月まで〝保管〟され、現在は鶴見区内の中間保管施設に移管されている。「横浜市教委は『既に埋めてしまった300の保育園や学校(4校)の放射性物質については処分完了』と言っている。しかし、住民は埋設を知らされていないし、何度言っても土壌測定をしてくれない」と市の姿勢を批判した。
 また、福島県から横浜市内に避難した子どもへの〝いじめ〟問題では横浜市教委が「再発防止報告書」をまとめたものの「放射線等に関する正しい理解を深める教育」に力点が置かれているとして「被曝の心配など要らない、100mSvまでは安全という政府の被曝許容や原発政策追随の横浜市政を変えないと〝避難者いじめ〟は無くならない」と指摘した。
 横須賀市の中井美和子さんは、自身の子どもが通う横須賀市立小学校で0・7μSv/hを計測した事例を報告。市が除染・埋設し、最終的に下水処理場に移設するまでの経緯を話した。「福島とは汚染度は違うが気持ちは同じ。福島のためにも私たちが放射能汚染を許してはいけないと思う」と語った。
 今回のイベントは「福島原発かながわ訴訟を支援する会」(ふくかな)が中心となって企画した。「ふくかな」の錦織順子さんは「これから結審、判決という大きな波を迎える中で、裁判所以外の場でも『かながわ訴訟』を広めなければいけないと考えています。一方で、神奈川にも原発問題に取り組んでいる市民団体がこんなにあるという事も知ってもらい、原発事故の風化に抗いたい」と話す。7日15時半からは土井敏邦監督のドキュメンタリー映画「福島は語る」が約5時間にわたって上映されるほか、8日17時からは、城南信用金庫顧問の吉原毅さんが「原発ゼロで日本経済は再生する」と題して講演する。
 「かながわ訴訟」は今月18日10時から、横浜地裁で口頭弁論期日が開かれる。国側の代理人弁護士が主張を陳述する予定。7月に結審し、来年3月までに判決が言い渡される見通しだ。



(了)
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鈴木博喜

Author:鈴木博喜
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