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【自主避難者から住まいを奪うな】期限ありきの〝自立〟支援策。来年3月で追い出される国家公務員宿舎の入居者。「公平性保てぬ」と福島県は延長拒否

原発事故による〝自主避難者〟や支援者、国会議員による共同の政府交渉が17日夕、東京・永田町の衆議院会館で行われた。「区域外避難者の住宅問題を考える」と題した政府交渉は、今年4月に続き2回目。2019年3月末で退去を迫られている国家公務員宿舎への入居延長や民間賃貸住宅入居者への家賃補助期間延長などが議題としてあがったが、福島県はいずれの要求も拒否。財務省や国交省、復興庁の官僚からも消極的な発言が相次いだ。原発事故から7年が過ぎ、「自立」の名の下に切り捨てられていく〝自主避難者〟。生活再建を果たした避難者からも、国や福島県の姿勢に疑問の声があがった。


【福島県「国に延長要請しない」】
 2時間にわたる交渉を終えても、福島県の答えは「NO」だった。
 政府の避難指示が出されなかった区域からの〝自主避難者〟向け住宅の無償提供は2017年3月末で打ち切られたが、国家公務員宿舎に入居する避難者については、宿舎を管理する財務省が2年間の期間限定で〝一時使用〟として有償での継続入居を福島県に対し許可。入居している避難者は、2019年3月末までに新たな住まいを探すよう迫られている。しかも、今年度から財務省が当初計画通りに家賃を値上げ。中には月額9000円も増額された避難者もいる。
 〝自主避難者〟の住宅問題に取り組んでいる「避難の協同センター」事務局長・瀬戸大作さんによると、多くの〝自主避難者〟で月収に占める家賃負担の割合が40%を超えているという。心身ともに限界に達している避難者もいる。福島県は、戸別訪問で都営住宅などの公営住宅への応募も促すが、そもそも避難者数に見合った戸数が募集対象になっていないのが実情。瀬戸さんの調べでは、例えば東京都江東区内での都営住宅の募集は、今年1月の時点で1部屋だけだったという。
 交渉に出席した福島県生活拠点課の担当者によると、新たな住まい探しを迫られている国家公務員宿舎への入居者は約130世帯。財務省理財局は「2019年4月1日以降の継続入居に関し、福島県から何らかの意向があればていねいに対応する」と繰り返したが、現時点で福島県側は新たな住まいの確保が難しい〝自主避難者〟の入居延長を財務省に申し入れる意向は無い。「上の方まで諮ったが、延長については『(交渉の場で)無いと回答するように』という事だった」。
 進行役を務めた山崎誠衆院議員(立憲民主党、比例東北)が「現在、国家公務員宿舎に入居している避難者全員が来春までに新たな住まいを確保出来る保証は無い。福島県は国に延長を申し入れ、財務省は検討を始めてもらえないか」と何度も求めたが、県側の意思は変わらず、「持ち帰って検討する」という言葉も無かった。出席した避難当事者や支援者が「福島県はなぜ、国に延長の要請すら出来ないのか。どんな阻害要因があるか」と迫ると、福島県の担当者は「やはり県としては、(入居期限が来年3月末までという)スケジュールにあわせて既に新しい生活再建をスタートされている方との公平性という問題もございます」と答えた。
 民間賃貸住宅に転居した〝自主避難者〟のうち、一定の収入要件を満たした世帯を対象に実施されている家賃補助制度(1年目は月額3万円、2年目は同2万円)についても、福島県は現段階で延長する計画は無く、予定通り2年で打ち切るという。




(上)福島県j郡山市から静岡県に避難した長谷川克己さん。「『(生活再建を)している人もいるのだから、この人たちのように、あなた達もやらなくちゃ駄目ですよ』と言われてしまうのは心外だ」と語気を強めた
(下)〝自主避難者〟の住宅問題に取り組む「避難の協同センター」事務局長・瀬戸大作さん。

【「濁流から抜け出せた側に立つな」】
 「福島県は『公平性』という言葉を使うが、過去の交渉でも、そもそも手順がおかしいという事は何度も言って来た。住宅の無償提供打ち切りに関しても、先に2017年3月末という期日が決まっていて、後から戸別訪問をしている。しかも、あたかもそのスケジュール通りに進んだかのように聞こえるが、実際はそうでは無かった。期日を先に決めて、それを後から追いかけていくというやり方をされると、避難者はそこに追いつかなきゃいけないので必死にならなきゃならない。行政はそれを良しと思っているが、このやり方を改善しないと行政と避難者とのギャップは広がるばかりだ」
 福島県郡山市から静岡県に避難した長谷川克己さんがマイクを握った。避難先で福祉関係の会社を立ち上げた。行政から見れば、生活再建の〝成功例〟にあたる。しかし、長谷川さんは「濁流から抜け出せた側に立つな」と強調した。
 「私は収入が少しだけ増えたので家賃補助制度を利用する事が出来ない。それでも生きていかなければならない。2人の子どもたちを路頭に迷わすわけにはいかない。この流れの中に飲みこまれるわけにはいかないと必死に生きているし、自分のやり方で抜け出そうとしている。しかし周囲を見たときに、本当にこれで大丈夫なのか、みんなちゃんと濁流から抜け出せるのかと思う。抜け出せた側に立って『公平性を保つ』と言われると、それは違うと思う。私は私のやり方で、目の前の子どもたちを濁流の中から救い出さなくちゃいけないとやってきた。でも、はっと後ろを見た時に、そう出来ていない人もいる。『(生活再建を)している人もいるのだから、この人たちのように、あなた達もやらなくちゃ駄目ですよ』と言われてしまうのは心外だ」
 岩渕友参院議員(日本共産党、比例東北)も「『公平』と言うが、最初からそもそも『公平』などでは無かった。避難指示区域の中か外かは、勝手に線引きされたものではないか。原発事故という特別な事情に鑑みて、1人1人の選択をきちんと保障して欲しい」と福島県や国に求めた。
 原発事故当時、首相を務めていた菅直人衆院議員(立憲民主党、東京18区)は「政権を手放してしまった事をこれほど残念に思った事は無い。廃炉や除染の費用を考えれば、〝自主避難者〟という名前で差別されている人々が、少なくとも自分の判断で『もう大丈夫』と思うまで出来る範囲のフォローをするのに、相当な事が出来るはずだ。いくらでも方法はある。自分たちの狭い範囲で『公平性』などと考えず、何とかしようという立場で考えて欲しい」と官僚に求めた。




(上)国家公務員宿舎に入居する〝自主避難者〟も見守る中、約2時間にわたって行われた政府交渉=衆議院第二議員会館
(下)国や福島県の担当者は毎回、熱心にペンを走らせる。しかし、取られたメモが実際の施策に生かされた事は無い

【避難元に自宅あれば「特定入居」不可】
 交渉では、都営住宅など公営住宅への「特定入居」に避難指示区域外からの避難者も加えるよう求める声もあがったが、国土交通省住宅局の担当者は「公営住宅は、そもそも住宅に困窮する低所得者のためのもので、公募の原則がある。特定入居は公営住宅法の第22条で『災害によって住宅を失った場合』などに限って認めている。区域外避難者は支援対象地域内(避難元)に住宅がある人もいるので、一律に特定入居に加える事は出来ない」と拒んだ。「大阪市や京都市に確認をしたが、避難者を区域内外で分けてなく、住宅が失われたか個別に確認した上で要件にあえば特定入居を適用しているという事だった」。
 これには、「原発避難者住宅裁判を準備する会」の世話人代表をしている熊本美彌子さん(福島県田村市から東京都に避難。都営住宅に継続入居中)が「私の福島の自宅は、玄関先の汚染密度が1平方メートルあたり8万Bqもある。実際にそこで生活するという事は考えられない状況だと判断している。それなのに『家がある』とおっしゃるのか。私にとって福島の家というのは全く無いに等しい。『子ども被災者支援法』では、放射線の健康影響が科学的に解明されていない中で、どのような選択をしようと国が支援をするよう定めている。家があっても使えない人に対してもきちんと配慮するべきだ」と訴えた。
 だが、国交省の担当者は「どうしても法律の解釈になってしまうが、国としては実際に住宅をお持ちかお持ちでないか。住宅を失ったか失っていないかというところでもって、特定入居を認めるか認めないかとなっている」と答えるばかり。山崎誠衆院議員も「物理的には建っているが住む事が出来ない。放射能で被害を受けた住宅は『喪失した』と解釈するべきだ。それで特定入居の要件は満たすと思う。喪失要件の拡大を検討して欲しい。放射能汚染も喪失要件に適用して欲しい」と求めたが、国交省の担当者は「持ち帰らせて欲しい」と答えるにとどまった。
 交渉に出席した復興庁の担当者は「引き続き避難者の生活再建が果たされるよう、全国に設置した相談拠点を通じた相談支援に関係省庁や福島県と連携して取り組む」と用意した文言を読み上げるだけ。吉野正芳復興大臣は4月17日の記者会見で「国家公務員住宅、東雲等の国家公務員住宅、ここも有料でございますけど、2年を限度として入居が可能になっております」などと〝前向き〟な発言をしているが、果たして入居者の実情を把握した上での発言なのか。疑問だ。
 「子ども・被災者支援議員連盟」会長の荒井聰衆院議員(立憲民主党、北海道3区)は「〝自主避難者〟の住宅確保が最も切実だ」と話した。しかし、現実は切り捨てられていくばかり。今日も「早く自立しろ」と迫られているのだ。政府交渉は続けられる。



(了)
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鈴木博喜

Author:鈴木博喜
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