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【福島原発かながわ訴訟】焦る国。結審控え法廷で28分間の反論。「対策講じても事故は防げなかった」「過失責任認めた4地裁の判決は誤り」~第27回口頭弁論

原発事故の原因と責任の所在を明らかにし、完全賠償を求めて神奈川県内に避難した人々が国と東電を相手取って起こしている「福島原発かながわ訴訟」の第27回口頭弁論が18日午前、横浜地裁101号法廷(中平健裁判長)で開かれた。次々回7月の期日で結審するのを控え、国側の訟務検事が28分にわたって国家賠償法上の違法性を否定するプレゼンを実施。原告の代理人弁護士も反論する陳述を行った。国の規制権限不行使に違法性は無く、震災前の知見に基づいて津波対策を講じていても事故は防げなかったと主張する国。「国の責任を認めた4つの地裁判決は多くの点で誤解している」という主張を原発事故被害者は納得して受け入れられるだろうか。


【「国賠法上の違法性は認められない」】
 大学教授の講義を聴いているような、専門用語ばかりの難解な主張が続いた。原発事故に対する国の過失責任を認める判決が続く中、〝形勢不利〟を何とか逆転しようと必死になっている様子が伺える28分間だった。
 「かながわ訴訟」では、2011年の原発事故に関して、経済産業大臣が規制権限を行使して東電に津波対策を講じさせる義務を怠った(規制権限不行使)として損害賠償請求をしている。国側は「国家賠償法(国賠法)上の違法性の存否を(裁判所が)正しく判断するためには①絶対的安全性と相対的安全性の考え方②工学分野の考え方(決定論的安全評価と確率論的安全評価、グレーデッドアプローチなど)に対する理解③理学的・工学的知見の到達点に対する正確な評価─が必要」として、「『長期評価』の見解の取り扱いも含め、当時の国の判断が著しく合理性を欠くものでは無かった事は明らか」、「国賠法上の違法性は認められない」と強調した。争点の柱になっている事故の回避可能性についても「事故前の工学的知見に照らして、正しく御判断いただくべきだ」と主張した。
 また、既に複数の地裁で言い渡されている集団訴訟の判決に関しても言及。「これらの判決では国の責任や東電の津波対策の合理性について判断が分かれているが、国賠法上の違法性を認定した4つの判決については、いずれも正しく御理解していただけなかったために誤解に基づいた判断がされている」と述べた。
 土木学会が2002年に作成した「津波評価技術」で想定された津波の高さが6・1メートル。中央防災会議が2006年にまとめた「日本海溝・千島海溝報告書」の示した「5メートル前後」よりも高かったのは「波源の設定を安全寄りにしているからに他ならない」と評価。「推進本部自身が、長期評価について『信頼度C』(やや低い)との評価を付して公表している」などとして「理学的に成熟していなかった」とした。
 津波対策については、「長期評価」が試算した津波と2011年3月11日に実際に発生した津波とは「地震のエネルギーが約11倍大きいなどケタ違いに異なる」との見解を示した上で、「試算津波とは方向も規模も全く違う」と分析。「『長期評価』の試算に基づいて福島第一原発の南側に浸水防止のための防潮堤を設置したとしても、東側からの津波を阻止する事は出来なかった」と結果回避可能性についても否定した。
 これまでに前橋地裁(2017年3月17日)、福島地裁(同10月10日)、京都地裁(2018年3月15日)、東京地裁(同3月16日)で言い渡された判決については「根本的な誤りが多数」、「理解が欠如している」などとして「正当に判断された千葉地裁、福島地裁いわき支部以外は御理解いただけなかった」と述べた。










国のが法廷でのプレゼンで使った資料の一部(全26ページ)。これらを画面に映し出しながら、「国の過失責任を認めた4地裁判決は誤解に基づいており、規制権限不行使の違法性も結果回避可能性も無い」と主張した

【「国は直ちに無用な争いやめよ」】
 これに対し、弁護団副団長の栗山博史弁護士が反論。「被告国の主張は既に瓦解していると言わざるを得ない。これまでに原告が提出した証拠によって十分に反証済みだ」と述べた。国側証人として千葉地裁に出廷した佐竹健治氏(東大教授)が、「津波評価技術」では波源設定については詳細な検討をしていないと述べたとして「被告の言うような『津波評価技術の波源設定が安全寄りに行われている』という事は断じてない」と反論した。また「国は『長期評価』をあまりにも軽んじている」と批判。「国は東電の言い分を鵜呑みにし、簡単に方針を変更してしまうなど弱腰で、規制省庁としての役割を軽視していると見るほかない」などと主張した。
 事故の結果回避可能性についても「試算の結果、津波が南側からのみ遡上するとの結果が出たからといって、南側にのみ防潮堤を設置するという手法は工学的に合理性を有しない」、「津波対策は防潮堤の設置にとどまらず、建屋内電源設備の高所化などもある。小名浜港の最低水面から35メートルの高さに電源設備を設置すれば、事故を回避出来た事は火を見るより明らか」などとして「国の主張は全く当たらない」と述べた。
 これまでに言い渡された判決から「被告国の責任を認める流れは定着している」と評価。「原発事故被害は、一度奪われると元に戻らない不可逆的なもので、万が一にも事故は起こしてはならないため、極めて高度な安全性が求められる。『より安全側の視点に立って何らかの対策を講じなければいけない』と司法は戒めているのだ」として、「国はこのような司法の想いを謙虚に受け止め、血税を投入した無用な争いを直ちにやめるべきだ」と主張した。
 小賀坂徹弁護士は、準備書面を基に低線量被曝の健康影響について陳述。昨年3月の前橋地裁判決が「年間20mSvを下回る低線量被ばくによる健康被害を懸念することが科学的に不適切であるということはできない」、「避難を選択する者もいれば避難しないことを選択する者もおり、社会通念から見て、いずれも合理的ということがあり得る」などと「避難の法的相当性を認めている」と評価。一方で「極めて遠慮した、抑制的な表現はいささか気にならないわけでは無い」とも述べた。
 今年3月の東京地裁判決に関しては、前橋地裁判決と異なり「LNTモデルを前提とした低線量被曝の健康影響を肯定しており、避難開始の合理性や事故との相当因果関係を認めている」と評価した。一方で、東京地裁判決の大きな問題点として「放射線量の低減や〝冷温停止状態〟 による被害拡大の可能性減少を根拠に2011年12月までしか避難の合理性を認めていない」点を挙げた。「原告は、幅広く汚染された地域で長期間生活する事によって累積被曝を受容する事を避けるために避難を選択し、継続している。被害拡大可能性の減少は、避難継続の合理性を否定する理由にならない。主張整理として誤っていると言わざるを得ない。わずか数カ月というのは絶対にあり得ない」。












①②③栗山弁護士が法廷での反論に使った資料の一部(全37ページ)。「被告国の主張は既に瓦解していると言わざるを得ない」、「被告国の責任を認める流れは定着している」などと述べた
④⑤法廷で「区域外避難の合理性」について陳述した小賀坂徹弁護士。東京地裁判決が「LNTモデル」を採用した点を評価した上で「避難者の苦しみや損害は、避難指示区域内か否かによって質的に差は無い」と主張した
⑥原告団長の村田弘さんは「放射線に対する裁判官の認識を変えてもらわないと、本質的にわれわれが救われるような判決は出ない」、「これだけ判決が出ているのだから、そこで出ている基本的な判断を基にして、全体的な救済策を国が考えるべきだ」と語気を強めた

【判決への期待と避難者の窮状と】
 閉廷後の報告集会で、原告団長の村田弘さん(福島県南相馬市小高区から神奈川県横浜市に避難中)は「原発事故被害の重さ、深さ、長さを裁判官に理解させない限り、この壁は突破出来ないと感じている。特に東京地裁の放射線量に対する考え方、あれは本当に許せない。LNTモデルを認めながら、避難の合理性は2011年12月までで切ってしまっている。放射線に対する裁判官の認識を変えてもらわないと、本質的にわれわれが救われるような判決は出ない。その意味で、弁護団はそこに力を入れてくれているので、何とか判決に書き込んでもらえるように努力したい」と話した。
 一方で、避難者に対する国や福島県の施策は「2020年東京五輪に向けて原発事故を終わらせ、避難者など存在しない事にしようとしている」と改めて〝避難者切り捨て〟への怒りを口にした。
 「〝自主避難者〟向け住宅の無償提供打ち切りや山形県米沢市に避難した人々への〝追い出し訴訟〟など、暴力的と言っていいような施策が現実的に進んでいる。神奈川県内でも、自ら死を選んだ避難者がいる」と力を込めた。「現実に進んでいる避難者の問題は本当に深刻で、裁判の結果を待っていては被害者は救えない。これだけ地裁判決が出ているのだから、そこで出ている基本的な判断を基にして、全体的な救済策を国が考えるべきだ。まずは、一生懸命この法廷での決着をつける事。正しい判決、より強い判決を引き出して積み重ねていく事が基本だが、外側で厳しい現実が進んでいる事にもご理解いただきたい。来年3月にも言い渡される判決文に言い訳を許さない、ちゃんとした事を書き込んでもらうために頑張って行きたい」
 栗山弁護士は「国は地震とか津波のような人間がコントロール出来ないものに対する謙虚さが全く欠けている。原発は絶対に事故を起こしてはいけないのなのに、対策を先送りにしてきたという姿勢は本当に許し難い。裁判所に断罪してもらえるように、7月の結審に向けてさらに準備を進めて行きたい」、小賀坂弁護士は「ふるさと喪失や生活破壊。人生そのものが大きく狂わされてしまった。自分が望むような形で臨む場所で望む将来像を描いて、それに基づいて生活をしていく。こういう事が全部、破壊されてしまった。そこに対して賠償を求めている。これまで出された判決では、特に区域外避難者に対してはそこは全くと言って良いほど認められていない。そこをどう認めさせるかが大きな課題だ。避難指示区域内外を問わず、もう7年以上にわたって神奈川県に避難して歯を食いしばって頑張っている人たちに裁判所が報いるように最大限努力したい」と決意を語った。
 次回口頭弁論期日は6月15日午前10時。次々回7月19日で結審する予定。



(了)
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鈴木博喜

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