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【汚染土壌の再利用】県外搬出へとにかく減らしたい環境省。「県内最終処分だ」「福島県民を実験台にするな」。二本松市民が市道での実証実験中止を要請

福島県内の除染作業で生じた大量の汚染土壌を減らす目的で8000Bq/kg以下の汚染土壌を公共事業に再利用する計画を環境省が進めている問題で、国際環境NGO「FoE Japan」は11日午後、東京・永田町の衆議院第一議員会館で中止を求める政府交渉を行った。福島県二本松市の住民2人も参加。同市内の市道で計画されている実証実験の中止を求めた。大量の放射性物質を拡散した原発事故から7年超。今度は「生活圏での汚染土壌再利用を受け入れろ」と迫られている。仮置き場からフレコンバッグを減らしたいという住民の想いにつけ込むような〝人体実験〟に、参加した二本松市民は「福島県民を馬鹿にするな」と怒りをあらわにした。


【「焼却炉に続いて再利用もか」】
 「福島県民を〝実証〟するわけですか?福島県民を〝再利用〟するんですか?(再利用の根拠となる)法律も無いのに。福島県民を馬鹿にしないでくださいよ。これから法律作ります?福島県民に実験台になってください?安全とか技術という以前の問題ですよ。人間として倫理として、福島県民をそういう形で実験に使うんですか?」
 原発事故以前から福島県二本松市の東和地区で有機農業に携わってきた菅野正寿さん(「みんなでつくる二本松・市政の会」事務局長)は、厳しい表情でマイクを握った。「そもそも汚染土壌の再利用をいつ、だれが決めたのか不透明だ。環境省や一部の大学教授だけで決められて、肝心要の福島県民を参加させずにあらゆる事が決められてきた」。
 菅野さんの住む東和地区ではやはり、「除染で生じた汚染廃棄物」の減容化を目的に仮設焼却炉の稼働が決まった。7500筆を超える反対署名で一度は白紙撤回されたものの、場所を変えて新たに計画を作り直し、二本松市も受け入れた経緯がある(2016年7月6日号2016年8月6日号参照)。「東京ドーム1個分の森を削った焼却場。4km先には小学校があるが、住民の反対を無視して強行された。今度は岳温泉のふもとでの汚染土壌の再利用。あらゆる現場で住民不在のまま決められ、進められている。福島の現場で行われている事がなかなか伝わっていない」
 同じく「みんなでつくる二本松・市政の会」で反対運動を続けている鈴木久之さんも「新野洋・前市長の任期満了になる直前の2017年12月5日、市議会全員協議会で突然、実証実験計画が示された。私たちにとっても寝耳に水。2月20日には環境省に質問と白紙撤回を申し入れたが、いまだに回答は無い」と怒りの声をあげた。
 「環境省は『合意を得た』と言うが、実証実験が計画されている地区に住む21世帯のうち、説明会には9世帯しか参加していない事が分かった。そのうち1世帯は市議で、もう1世帯は行政区長。実質7世帯しか出席していない中で異論が出なかったのが『合意』なのか。なぜ二本松なのか。実証実験という名の最終処分ではないか。さっそく予定地周辺で作った飼料の購入を拒まれるという実害が生じているんだ」
 これまでに集めた約5000筆の反対署名は既に環境省に提出済み。さらに署名集めを継続していくという。






(上)「みんなでつくる二本松・市政の会」が作成した白紙撤回を求めるチラシ。二本松市内での実証実験実施に強く反対している
(中)環境省に提出された反対署名は4万2620筆に上る。この日の政府交渉でも異論が相次いだ
(下)環境省環境再生・資源循環局環境再生事業担当参事官室の山田浩司参事官補佐(左)は「白紙撤回も選択肢の1つ」としながらも「除染で大量に発生した汚染土壌をこのまま福島県外に持って行くのは難しい」と「減容」の必要性を強調した

【表面線量から濃度を推計して分別】
 福島県二本松市内での「除去土壌の再生利用実証事業」は、環境省が同市原セ才木地区の市道で実施を計画。幅3メートルほどの舗装されていない道路を200メートルにわたって掘り返し、同地区で実施された除染作業で生じた汚染土壌(フレコンバッグ約500袋分)を路床材として〝再利用〟。50センチほど土をかぶせてアスファルトで舗装し、〝再利用〟による追加被曝線量が年1mSvを超えないこと(〝安全〟であること)を確認するのが目的だ。
 今年3月29日には「除染・減容事業協同組合」(相馬郡飯舘村草野宮内2、桑田興次代表理事)と約3億5000万円で契約したが、「反対の声が上がったために着手出来ていない状態。実施のめどは立っていない」(環境省)。
 政府交渉に出席した環境省環境再生・資源循環局環境再生事業担当参事官室の山田浩司参事官補佐によると、500のフレコンバッグにはさまざまな濃度の汚染土壌が混在しており、「1000Bq/kg程度と想定されるが、実際に測ってみないと分からない」。そのため、フレコンバッグを米の全量全袋検査の要領でベルトコンベアーに乗せ、表面の線量から袋全体の平均濃度を推計。高濃度の汚染土壌は使わないという。
 「南相馬市小高区で行われた実証実験では濃度の上限値を3000Bq/kgに設定したが、二本松市では上限値はまだ決まっていない。おそらく2000~3000Bq/kgになるのではないか」(山田参事官補佐)。飛散防止のため作業はテントの中で行い、作業員には身体の複数部位に線量計を装着させてデータを得るという。これで〝安全〟が確認されれば除染で生じた汚染土壌の〝再利用〟を進められ、最大で2200万立法メートルに達するとされる汚染土壌を減らせるという算段だ。
 これには、「ちくりん舎」副理事長の青木一政さんらが反発。「そもそも、実際に人が住んでいるような場所で実証実験など行って良いのか」、「なぜ濃度そのものを測らないのか。命にかかわる事なのだから手間を惜しむべきでは無い」などと迫ったが、山田参事官補佐は「細かく測る、というのは物理的な限界がある」と答えた。
 既に実証実験が行われた南相馬市と今回、問題となっている二本松市には環境省から要請をしたという。「他のいくつかの市町村にも声をかけたが全く数をカウントしていない。いくつの市町村に実際に要請したかは分からない」(山田参事官補佐)。






(上)厳しい表情の菅野正寿さん。「福島県民を馬鹿にしないでくださいよ」と怒った
(中)鈴木久之さんも「なぜ二本松なのか。実証実験という名の最終処分ではないか」と白紙撤回を求めた
(下)日大生物資源科学部教授の糸長浩司氏は、法的根拠の無い再利用推進を「税金を使う根拠が無い」と厳しく批判した=衆議院第一議員会館

【「福島県外最終処分に資する」】
 政府交渉でさらに問題視されたのは、実証実験の根拠となる法律が存在しない点だ。
 「飯舘村放射能エコロジー研究会」(IISORA)の共同世話人で、日本大学生物資源科学部教授の糸長浩司氏は「根拠法は何か」と質したが、山田参事官補佐は「現在は『放射性物質汚染対処特措法』に汚染土壌の再利用に関する条文が無いため、実証実験を行いながら基準を設けて、将来的には同特措法の改正なりを考えている。福島県外での最終処分に資する、という事で実証実験を正当化できないかと考えている」と答えた。法的根拠の無い再利用推進に、糸長教授は「税金を使う根拠が無い」、「野党は『汚染土壌再利用禁止法』を制定するべきだ」と繰り返した。
 糸長教授たちが支援を続けている飯舘村では、今も帰還困難区域となっている長泥行政区で村内の除染作業で生じた汚染土壌の再利用実証実験を行う事が「『特定復興再生拠点区域復興再生計画』に絡んだ村からの要請」という形で決まっており、花を栽培する農地も含まれている。糸長教授は「長泥の住民に聴くと、実証実験を受け入れないと自宅周辺の除染をしてもらえないのではないかという意識が強い。戻りたい住民からすれば除染が人質にとられたようなもの。住民に苦渋の選択を強いる国とは何なのか」と批判した。
 政府交渉には、栃木県那須郡那須町で子どもたちの甲状腺検診に取り組んでいる田代真人さんも参加。同町では「除去土壌の埋立処分に係る実証事業」が計画されており、伊王野山村広場旧テニスコート内に埋められたフレコンバッグを掘り出し、汚染土壌だけを再び埋め戻して「周辺の空間線量に変化が生じない」事を確認する。茨城県那珂郡東海村でも同様の実証実験が予定されており、福島県外では初の実証実験だ。
 田代さんは「回覧板だけで『地元は了解した』ことにされてしまった。実験で得られたデータをどう評価するかが問題。広くデータを共有して評価する形をつくらないといけない」と話した。
 環境省としては、とにかく除染で生じた汚染土壌を減らしたい環境省。中間貯蔵施設(双葉町、大熊町)は最終処分を想定しておらず、30年以内に福島県外に搬出しなければならない。2200万立法メートルもの膨大な汚染土壌を快く受け入れる自治体など現実的にはあり得ないため、減容は至上命題なのだ。
 東京大学アイソトープ総合センター長・児玉龍彦氏は、2017年3月に福島県南相馬市で行った講演で焼却・再利用による減容について、技術的な安全性に〝お墨付き〟を与える発言をしている。一方で「早く生活圏からフレコンバッグを無くして欲しい」という声があるのも事実。方針を撤回して中間貯蔵施設を最終処分地にするのか、福島県外で最終処分をするために燃やし、道路工事などで再利用しながら量を減らすのか。ここにきて、福島県民は再び理不尽な選択を強いられているのだ。



(了)
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鈴木博喜

Author:鈴木博喜
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