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【福島原発かながわ訴訟】いよいよ来月結審。原告団の村田弘団長「とどめを刺すような判決を勝ち取りたい」。判決言い渡しは来年2月~第28回口頭弁論

原発事故の原因と責任の所在を明らかにし、完全賠償を求めて神奈川県内に避難した人々が国と東電を相手取って起こしている「福島原発かながわ訴訟」の第28回口頭弁論が15日午前、横浜地裁101号法廷(中平健裁判長)で開かれた。結審を7月に控え、原告側代理人弁護士が福島第一原発が依然として深刻な状態にある事、神奈川県に避難した原告たちは避難元に戻りたくても戻れない状況で、故郷を喪失し、かつての生活は破壊されたままである事などを陳述した。次回期日は7月19日午前10時。次回で結審し、来年2月にも判決が言い渡される見込みだ。


【意義大きかった浜通りの現地検証】
 残された口頭弁論期日は、次回7月19日を残すのみ。2013年9月11日の提訴から約5年。原告団長として、仲間たちと共に時には悔し涙を流し、時には怒りの拳を振り上げてきた村田弘さん(福島県南相馬市小高区から神奈川県横浜市に避難中)は「いよいよ結論を引っ張り出すというところに至った。これまで既に7つほど判決が出ているが、残されている問題を克服して、とどめを刺す判決をぜひ勝ち取りたい」と力をこめた。国や東電の責任(巨大津波の予見可能性、過酷事故回避の可能性、行政の無作為)を認める流れは出来ているが、政府の避難指示が出されなかった区域からの避難(いわゆる〝自主避難〟)の合理性や賠償額については、不満が残る判決が相次いでいるからだ。
 「(判決が言い渡されるまでの)半年間で、裁判所に『きちんとした判決を出して欲しい』という行動に、私たち原告が先頭に立って全力を注いでいきたい。5万人分くらいの署名を集めて、3回くらいに分けて裁判所に届けるというような運動を展開していきたいと考えている。最終コーナーなので、頑張って、全国的にも注目される判決をしっかり勝ち取りたい」。
 今年2月には、被告側の再三にわたる抵抗を乗り越えて、「現地進行協議」という形での現地検証を浜通りで実現させた。今も帰還困難区域になっている大熊町も含め、南相馬市から浪江町、富岡町、いわき市を1日かけて巡った。
 弁護団副団長の小賀坂徹弁護士は「裁判官から『大体の土地勘は分かったので、各原告の避難元の自宅を地図に落とし込み、避難指示や汚染の変遷が分かるような資料を提出して欲しい』と要望があった。そういうリクエストがあるのは大きな前進だと思う」と評価。黒澤知弘弁護士も「裁判官は『現地の状況が肌感覚で分かるようになった』と言っている。汚染の実態や(避難指示が解除された区域で)帰還が進まない理由など、現地の様子を写真で見るのと実際に行って肌で感じるのとは違う。特に裁判官の1人は若い女性で、『被曝する』という事をどう実感したか。そこは確実に響いているはずだ」と語った。






(上)結審を来月に控え「とどめを刺す判決をぜひ勝ち取りたい」と語った原告団長の村田弘さん
(中)次回7月19日の進行予定について説明した黒澤知弘弁護士は「朝からせわしないが、裁判所に入るところから、しっかりと行動スケジュールを組んで取り組みたい」と語った
(下)原告の支援を続けている「福島原発かながわ訴訟を支援する会」(ふくかな)共同代表の錦織順子さん。「結審となる次回期日には最低でも150人は集まってもらい、横断幕やデモ行進でバックアップしたい」と呼びかけた=神奈川県横浜市中区の横浜情報文化センター

【「原子力緊急事態宣言が継続中」】
 この日の口頭弁論は30分ほどで終了。原告側弁護団の山崎健一弁護士が、準備書面(58)の概要について陳述した。
 陳述では①福島第一原発の現状②原発周辺地域の現状─を軸に、原発事故は今も収束していない事、原告たちの故郷は喪失・変容し、生活が破壊されてしまった事が改めて示された。
 山崎弁護士は、今年1月に撮影された福島第一原発の航空写真や原子炉のイラストなどを法廷の画面に映しながら「溶け落ちた核燃料(デブリ)の地路出し作業は、まさに人類が経験した事の無い、全く未知なものへの挑戦。米・スリーマイル島の原発事故でも先例はあるが、当時は自己をおこした原子炉は1基だけで、デブリは圧力容器内部にとどまっていた」と指摘。「廃炉に向け、極めて長期間にわたりリスクの高い作業が継続される事は間違い無い。増え続ける汚染水についても、地元漁協は海への放出に強く反対している。1・2号機の排気塔も支柱に破断や損傷が確認されており、再び相当程度の地震に襲われれば倒壊し、放射性物質が環境中に大量飛散する恐れが否定出来ない」などと、依然として事故を起こした原発が厳しい状況にあると述べた。
 「現在もなお原子力緊急事態宣言が継続されており、原発事故が収束したとは到底言う事が出来ない」。
 また、放射線による健康影響に関して「空間線量だけでなく、土壌汚染も重視する必要がある。空間線量だけでは汚染の実態を正しく評価出来ない。原告の調査では、ほとんどの避難元自宅で放射線管理区域の基準値(1平方メートルあたり4万ベクレル)をはるかに上回る土壌汚染が確認されている」と述べた。被告国が提出した書証から引用したイラストを示しながら「地表に堆積している放射性物質を吸い込んだり傷口などから取り込んだりして内部被曝の原因になる」と指摘。今年2月の現地検証時の写真も使い「住居周辺のみを除染作業の対象としても、その効果は限定的であると言わざるを得ない」と指摘した。
 既に避難指示が解除された浪江町や楢葉町などでは避難した住民の帰還が進まず、戻った住民も高齢者が中心である点も陳述。現地検証の写真を示しながら、避難元の自宅が泥棒や野生動物によって酷く荒らされている様子も「地域の姿はすっかり変容してしまっている」と述べた。そして、こう締めくくった。
 「原告は『戻りたいのに戻れない』という状態が続いている。生活は破壊されたまま。このような現実を直視したうえで完全かつ正当な賠償を被告らに銘じていただきたい」










原告の代理人弁護士が陳述に使用した資料(一部)。被告国が提出した書証のイラストも示しながら、福島第一原発の危険性や被曝リスクについて改めて述べた

【結審日はデモ行進も計画】
 結審となる次回期日は7月19日。黒澤弁護士によると、10時に開廷。「朝からせわしないが、裁判所に入るところから、しっかりと行動スケジュールを組んで取り組みたい」。10時半から原告側が国と東電の責任に関する最終的な主張をする。昼休みをはさみ、午後も原告側が原告の損害についてプレゼン。14時半から30分ほど被告東電が陳述し、最後に原告団長の村田さんが意見を述べて16時ごろ閉廷する見込み。
 「裁判を締めくくっていただくのはやはり、原告ご本人の言葉。全原告一人一人に結審にあたっての想いを一言ずつ書いてもらい、それを集約したものを村田さんに法廷で語ってもらう予定」(黒澤弁護士)。被告国は5月の第27回口頭弁論で既に陳述しているため、次回期日での陳述は無い。
 この日の進行協議で、判決日について裁判官は「来年の2月を予定している」と語ったという。ずれ込む可能性はあるが、遅くても3月には判決が言い渡される。閉廷後は報告集会に加えて記者会見も予定されている。
 この訴訟を支援し続けてきた「福島原発かながわ訴訟を支援する会」(ふくかな)も、支援行動を計画。共同代表の錦織順子さんによると、横浜公園から横浜地裁までの約300メートルにわたって支援者が赤い横断幕を持って立ち並び、入廷する原告団や弁護団にエールを送る。昼休みには、横浜地裁近くの東電神奈川総支社など裁判所周辺をデモ行進する計画を練っているという。錦織さんは「少なくても150人の参加が無いと出来ない。ぜひ多くの方の力をお借りしたい」と報告集会で呼びかけた。
 本来であれば、訴訟など起こさなくても被害に見合った賠償がされるべきだが、残念ながら原発事故被害者にとっては闘い続けている7年間。しかも、裁判所の判断は決して区域外避難を幅広く認めず、今なお避難を継続している事の合理性を認めようとしない。横浜地裁は来春、どのような判断を下すのか。一区切りの夏がもうすぐやってくる。



(了)
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