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【モニタリングポスト撤去】埋まらぬ溝。母親「目視出来る唯一の手段」、規制庁「空間線量下がったのに…」。要請受けた県は「市町村が判断」と主体性放棄

「リアルタイム線量測定システム」と呼ばれるモニタリングポスト(MP)の撤去計画問題で、継続配置を求める福島県民と方針通り撤去を進めたい原子力規制委員会の溝が埋まらない。18日には、県民有志でつくる「モニタリングポストの継続配置を求める市民の会」が福島県庁を訪れ、継続配置や意見交換の場を求める要請書を提出したが、原子力規制庁の官僚は「空間線量下がったのに、なぜMPでなければ駄目なのか」と首を傾げる。折しも、大阪で震度6弱の地震が起きた。「再び何かあった時のために、子どもを守る手段の1つとして残して欲しい」という母親たちの声はしかし、霞が関には届いていない。


【県「一律に継続求めるのは困難」】
 あの時、国や自治体は住民を守ってくれただろうか。子どもたちを被曝させぬよう全力を尽くしただろうか。「直ちに健康に影響無い」と言われ、SPEEDI(緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム)の情報は住民に伝えられず、無用な初期被曝を強いられたではないか。絶対に起きないと言われていた原子力発電所で爆発事故が起き、大量の放射性物質が拡散された。盤石だったはずのモニタリング体制は機能しなかった。18日朝、大阪府北部を震源として発生した最大震度6弱の地震ではライフラインがダウンした。万が一の事態が再び起きたら、国の言うモニタリング体制や情報提供は本当に機能するのか─。
 7年前、必死に情報を集めながらわが子を守った福島の母親たちは、だからこそ「色も匂いも無い放射性物質の存在を目で確認出来る唯一の手段」としてMPの継続配置を求めている。既に7自治体(郡山市、福島市、いわき市、伊達市、会津若松市、三春町、白河市)に対して継続配置を求める要請書が提出されている。東京に出向き、原子力規制委員会にも要請した。三春町議会は今月7日、継続配置を求める意見書を国と福島県に提出した。しかし、この日もすれ違いが際立った。
 〝自主避難者〟の住宅問題同様、今回も福島県の内堀雅雄知事が直接、母親たちから話を聴く事はしなかった。代わりに要請書を受け取った危機管理部の成田良洋部長は「非常に重要な、大切な問題だととらえている」としながらも「強引に進めるのでは無く、とにかくていねいに進めるよう最初の段階から原子力規制庁に対して言っている。規制庁からは『ていねいにやります』という答えは少しずつ頂いている。先々週も国に対する要望活動があり、住民説明会で意見を良く聴くよう再度、お願いしてきた。規制委の更田豊志委員長も『十分に認識してやります』と話していた」と答えた。
 だが一方で、県として明確に継続配置の意思表示をしているわけでは無い。成田部長も「そこまでは国に言っていない」と認めつつ「正直に言って、福島県内全部を1基たりとも撤去してもらっては困るとまではなかなか言えないかなと思っている。そこはいろんな意見があって、もう撤去しても良いよ、全然心配してません、早く撤去して欲しいと言っているところもある。(福島第一原発からの)距離とか当初からの汚染濃度の違いとかで意識の違いが福島県内の自治体や住民の間にはある。心配している方もいるし、そうじゃない方もいる。いろんな方がいる。そのために、住民説明会をていねいに開くよう言っている。福島県全体で一律に、というのはなかなか難しい」として、各市町村の判断に委ねる方針を示した。
 「気持ちは分かる」が「リーダーシップは発揮しない」。これが福島県の姿勢だ。






(上)福島県に要請書を提出する「モニタリングポストの継続配置を求める市民の会」。県としてMPの継続配置を原子力規制委員会に強く求める事、内堀知事との意見交換の場を設ける事を求めている
(中)内堀知事に代わって要請書を受け取った、福島県危機管理部の成田良洋部長。「気持ちは分かる」としながらも「いろんな意見があり、福島県内一律に継続配置を求めるのは難しい」として、「ていねいに進めるよう原子力規制庁には言っている」と答えるにとどまった
(下)福島県庁内の県政記者クラブで会見した「市民の会」。共同代表の千葉由美さん(中央)は「私たちの声が国に届いていないし、国も聴くつもりが無い」と国の姿勢を批判。廃炉作業が完了するまで継続配置するよう改めて訴えた

【「万が一の際の『知る権利』」】
 「空間線量が低い値で安定している」と撤去を進めたい原子力規制委員会。危険を伴う廃炉作業が長く続く中、継続配置を求める住民。この日、内堀知事宛てに提出された要請書でも、撤去対象となっているリアルタイム線量測定システム(モニタリングポスト)について「原発事故後の生活を強いられている福島県民にとって『日常的に空間放射線量を目視できる唯一の情報源』として最低限の『知る権利』を保障するもの」と定義。内堀知事に対して、①原子力規制委員会に対し、リアルタイム線量測定システムの撤去を撤回し配置を継続するよう強く要請する事②リアルタイム線量測定システムの継続配置について福島県知事と県民が意見交換をする場を設定する事─を求めている。
 「市民の会」は4月、原子力規制庁に対しても継続配置を求める要請書を提出しているが、今回の要請書に「福島県民に問うことなく一方的に撤去することは、私たちの権利を蔑ろにする行為であることを繰り返し主張しました。しかし、武山松次原子力規制庁監視情報課課長は、避難指示区域外の空間線量は充分に低くなっていることから、同システムによる連続的な測定は科学的に役割を終えていると断言しました」と、県民不在の国の決定に強く抗議する文言を盛り込んだ。
 さらに、「私たちはこの『役割は終えている』との発言に強い怒りを禁じ得ません。なぜなら、2011年3月11日に発令された原子力緊急事態宣言は、今も解除されていないからです。福島原発事故は収束しておらず、困難な廃炉作業はこれからも何十年と続くからです。そして何よりも起きるはずがないと信じ込まされていた原子力発電所事故が恐ろしい現実となり、あの日から存在するはずがない人工放射性物質が、私たちの周囲に存在するようになったからです。これは紛れもない事実です。私たちはこの事実に対する怒りや悲しみ、不安や恐れを片時も忘れずこの7年の年月を過ごし、放射能汚染から子どもや自分自身の健康を守ることに今も日々心を砕いているのです」と、MPの継続配置を求める理由を綴っている。
 「市民の会」共同代表の鈴木真理さん(須賀川市)は「もし何かあった時の『知る権利』を奪われてしまう事を危惧している。それは各市町村が決めるのではなく、県として知る権利を守る体制を整える事を求めている」と成田部長に訴えた。やはり共同代表の千葉由美さん(いわき市)も「原発事故が起こった自治体としての姿勢を問うている。私たちにとって一番大切なのは子ども。県も『子どもの安全を一番大切にする』と即答出来るような姿勢を示して欲しい」と求めた。




(上)福島県南会津郡只見町を皮切りに始まる住民説明会について県政記者クラブで記者会見する原子力規制庁の南山力生氏。「ていねいに進めていく」と繰り返した
(下)福島県西白河郡西郷村は「広報にしごう」6月号で、村内のMP撤去についての告知記事を掲載した。「行政区長会への説明では異論が無かった」との理由で住民説明会が開かれないまま、今月中にも撤去が始まる

【西郷村では説明会経ずに撤去へ】
 原子力規制委員会は第一弾として25日夜、福島県南会津郡只見町の只見振興センターで住民説明会を開く。規制委は「市町村からの要望があれば説明会開催に応じる」との姿勢で、今のところ、只見町も含めて19市町村(国見町、福島市、二本松市、本宮市、大玉村、郡山市、須賀川市、三春町、小野町、白河市、泉崎村、中島村、会津若松市、喜多方市、北塩原村、金山町、南会津町、いわき市)から住民説明会を開くよう要望が寄せられているという。只見町以外では7月16日13時半から喜多方市での開催が決まっている。その次は会津若松市になりそうだという。
 「市民の会」の要請書提出と並行して開かれた福島県庁内で開かれた記者会見で、原子力規制庁・地域原子力規制総括調整官の南山力生氏(福島県南相馬市の原子力規制事務所)は「住民説明会を開いた結果、撤去せずに残す可能性は当初からある。そうで無ければ住民説明会を開く意味が無い。『技術的に2400台は必要無い』というのが規制委の考えだが、われわれとしても十分に納得出来る形になれば、最終的に撤去台数が1000台になるかもしれないし、500台になるかもしれない」と継続配置に含みを持たせた。
 しかし、一方で「全般的に空間線量が下がっている所にいつまでも(MPを)置いておくというのはいかがなものか、というのが当初からの規制委の立場」、「まずは御理解いただいた上でていねいに進めていく」と語り、方針通り2021年3月末までには2400台の撤去を完了させたい意向を改めて示した。会見の途中では「空間線量が低く安定してきたという事で御理解いただけるものと思っていた」とも。ここまで反対の声が起きるのは〝想定外〟だったということか。
 会見では、福島県西白河郡西郷村で住民説明会無しにMP撤去が始まる事も明らかになった。
 「今年4月、行政区長会に招かれて概要を説明したが、特に異論は無かった。自治体から要望が無いので住民説明は開かない」と南山調整官。西郷村役場放射能対策課によると、昨年末までに既に3台撤去。残る27台についても今月中にも撤去されるという。放射能対策課の担当者は電話取材に対し「会見での国の説明通り。MPは役割を終えた。浜通りで活用されるのであればぜひ協力したい。撤去しても可搬型のMPは9カ所残るし、村独自に村内122カ所の空間線量を定期的に測定して公表している。今月号の広報紙に撤去を知らせる記事を掲載したが、村民からは問い合わせや反対意見などは寄せられていない」と話した。今後も住民説明会の開催は求めないという。
 会見後、南山調整官は「あくまで個人的意見」としたうえで「(MPを)毎日見てるから(残して欲しい)と言われると困ってしまう」、「MPの存在が足かせになっているのではないか」、「この数字が無いと駄目なんですか、と思う」と筆者に本音を漏らした。この感覚のズレが埋まらない限り、福島で子育てをしている住民の安心感は担保されないのでは無いだろうか。



(了)
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鈴木博喜

Author:鈴木博喜
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