【福島県知事選】支持率80%で早くも〝当確〟 福島県の内堀雅雄知事がようやく出馬表明。合言葉は「復興」「風評払拭」。汚染や〝自主避難者〟は置き去り
- 2018/06/22
- 06:11
原発事故による〝風評〟の払拭にまい進してきた福島県の内堀雅雄知事が21日午後、福島県議会本会議で今秋の県知事選挙(10月11日告示、10月28日投開票)への再出馬を表明した。地元紙の世論調査では、福島県民の支持率は80%。共産党支持者までもが内堀知事の「風評払拭」への取り組みを高評価する状況で、再選は揺るがない。いまだ継続している汚染や〝自主避難者〟は置き去りにしたまま、2020年の東京五輪を使って、さらに「復興」、「風評払拭」への取り組みを加速させる事になる。
【「〝被災の地〟から〝復興の地〟へ」】
相変わらず分かりにくい〝内堀話法〟での出馬表明だった。
この日始まった福島県議会6月定例会。知事提出議案の説明に立った内堀知事は最後に「この際、若干時間を頂き、次期知事選挙についての所信を申し上げさせていただきます」と前置きした上で「私は来る秋の知事選挙におきまして、改めて県民の皆さんから御負託を頂けるのであれば、引き続き福島県知事の使命を自らに与えられた使命とし、揺るぎない信念の下、全身全霊で挑戦を続けて参ります」と述べた。
内堀知事は「『現場主義』や『進取果敢』などを県政運営の基本とし、国や東京電力との交渉、国内外への正確な情報発信、これまでに無い大胆かつきめ細かい施策を進めて来た結果、避難指示区域の縮小や福島イノベーションコースト構想が具体的に動き出すなど、県内各地で希望の光が灯り、故郷福島の復興が着実に進んでいると実感出来る場面が増えて参りました」と自らの成果を強調。
一方で、「避難地域の再生、廃炉・汚染水対策、根強い風評と急速に進む風化。さらには急激な人口減少など〝陰〟の部分がより鮮明になってきたのも事実であり、依然として課題が山積しております」とも。「福島復興と地方創生。この福島県知事に課せられた使命は非常に困難を伴う長い闘いであり、いまだ途上にあります。これからも、福島を築き上げた先人たちのように新しい時代を切り開くため、郷土への誇りと不屈の精神をもって一つ一つ課題を解決し、成果を積み重ねていくと共に、必ず福島を〝被災の地〟から〝復興の地〟へ変えるという強い想いを若い世代にしっかりつないでいかなければなりません」と二期目への意欲を示した。県議からは「よし」、「がんばれ」などの〝激励〟が飛んだ。



(上)県政記者クラブからの要請で急きょ、県議会閉会後に記者会見を開いた福島県の内堀雅雄知事。10月の県知事選では①福島の復興再生と根強い風評対策②人口減少対策を軸とした地方創生─の2点を重要課題として掲げるという
(中)議場で〝出馬表明〟する内堀知事。自民党系の県議は大きくうなずき、「がんばれ」との声も飛んだ
(下)2020年の東京五輪で野球・ソフトボールの一部試合が福島県営あづま球場(福島市)で開催される事が決まり、祝賀セレモニーで笑顔を見せる内堀知事。この日の県議会でも「東京五輪を通じて、福島の復興が進んでいる姿を国内外に広く発信したい」と述べた
【「東京五輪で福島の復興を発信」】
提出議案の説明でも、内堀知事は〝復興〟〝風評対策〟の成果と今後の意欲を強調した。
「(避難指示が解除された区域で)小中学校が再開し、子どもたちの元気な笑い声が地元に戻り、大熊町では準備宿泊が始まった。〝復興〟は着実に進み、新しいステージへ移行している」
「福島復興のシンボルであるJヴィレッジ(7月28日一部再開、2019年4月全面再開)の復興・再整備にしっかりと取り組む」
「福島県内の面的除染は、帰還困難区域を除き今年3月に全て終了した」
「福島第二原発の廃炉については今月14日、東電社長から直接私に対し、全号機を廃炉にする方向で具体的に検討を進めるとの方針が表明された。廃炉・汚染水対策についても、国と東電の取り組みをしっかりと監視していく」
「ラグビーW杯2019日本大会に出場するアルゼンチン代表チームの公認キャンプ地に内定した事は、復興が進む福島への理解が深まった結果だ」
「外国人旅行者の延べ宿泊者数が昨年、初めて震災前年を超えた」
「東京五輪の福島での聖火リレーが3日間に決まった。東京五輪を通じて、福島の復興が進んでいる姿を国内外に広く発信出来るよう取り組む」
閉会後、県政記者クラブの要請に応じる形で開かれた約9分間の記者会見でも、内堀知事は10月の県知事選で①福島の復興再生と根強い風評対策②人口減少対策を軸とした地方創生─の2点を重要課題として掲げると語った。
不幸にして起きてしまった原発事故から87カ月。汚染や被曝リスクを不安視して福島県を訪れないのは〝風評被害〟。福島県産の野菜や果物、水産物を食べないのも〝風評被害〟。復興が着実に進んでいる「のに」、現状への理解が不足している事になってしまう。10月の県知事選で再選を果たした内堀知事は、2020年の東京五輪で「原発事故から再起した福島の姿」を世界にアピールし、〝誤解〟を解きたい考えだ。
今月10日に福島県南相馬市で開かれた全国植樹祭では、天皇皇后を乗せた車両が国道6号を北上した。福島県内で3日間実施される東京五輪の聖火リレーでは、その国道6号を高校生に走らせたい意向を持つ団体もある。内堀県政に「汚染」や「被曝リスク」の文字は無い。



(上)(中)〝復興〟への成果を強調する内堀知事だが、一方で政府の避難指示が出されなかった地域からの〝自主避難者〟には非常に冷淡な態度を取り続けた。〝自主避難者〟が何度直訴しても直接声を聴こうとはせず、廊下の奥の知事室にこもったまま。2017年3月末であっさり住宅の無償提供を打ち切った。内堀知事にとってもはや「避難者」とは「避難指示区域からの避難者」に限定されている
(下)2014年10月26日に投開票された前回知事選の選挙公報。49万384票を獲得し、2位の熊坂義裕候補(12万9455票)に大差をつける圧勝だった。投票率は45・85%。〝敵なし〟の今回はさらなる低下が予想される
【語られぬ〝自主避難者〟施策】
会見で「政党からの推薦は念頭に無い。復興再生や地方創生に政党の垣根は無く、『福島県民党』という枠組みで進めていただきたい。だが応援したい、支援したいという話があれば、喜んでお受けしたい」と語った内堀知事。ここまで強気に出られるのも、県議会は共産党を除いてほぼオール与党である事。ここに来て福島県内の首長や財界から再出馬を強く要請されている事が背景にある。
吉野正芳復興大臣に至っては、今年1月に福島県庁を訪れた際「内堀知事は『余人をもって代え難し』。次の選挙に出馬していただいて、われわれも一生懸命応援する」などと堂々と〝越権発言〟する始末。安倍政権からのお墨付きも得られた「内堀一強」はさらに、経済的な〝復興〟を柱に県政を担って行く。
日本共産党福島県議団は独自候補の擁立を模索する構え。〝出馬表明〟を聴いた神山悦子県議は「ハード事業や〝復興イベント〟ばかり。本当に意味で県民に寄り添っていない。向いている方向が違うのではないか。被災者を含む福祉型県政というのは、内堀知事に言わせると〝陰〟の部分になってしまうのだろう。もちろん復興への取り組みは大事だが、車の両輪で無ければいけない」と批判した。
宮本しづえ県議も「内堀知事の言う『避難者』には〝自主避難者〟は全く含まれていない。今後〝自主避難者〟にどうしていくのか、出馬表明では全く触れられていなかった」と語る。内堀知事は〝復興〟に貢献する個人や団体とは喜んで時間を割き面会するが、〝自主避難者〟などとは頑なに会おうとしない。〝復興〟には何らプラスにならないと考えている証だ。宮本県議は25日に予定されている代表質問の中で、原子力規制委員会が計画しているモニタリングポスト(リアルタイム線量測定システム)の撤去(避難指示区域外のみ)も含め、内堀知事の姿勢を質す方針。
早くも「信任投票」の様相を呈している福島県知事選挙。原発事故後2回目の知事選挙は〝復興〟〝風評払拭〟の大合唱の中、大事な「汚染」や「被曝リスク」は〝陰〟の部分にますます押し込まれて終わる事になりそうだ。
(了)
【「〝被災の地〟から〝復興の地〟へ」】
相変わらず分かりにくい〝内堀話法〟での出馬表明だった。
この日始まった福島県議会6月定例会。知事提出議案の説明に立った内堀知事は最後に「この際、若干時間を頂き、次期知事選挙についての所信を申し上げさせていただきます」と前置きした上で「私は来る秋の知事選挙におきまして、改めて県民の皆さんから御負託を頂けるのであれば、引き続き福島県知事の使命を自らに与えられた使命とし、揺るぎない信念の下、全身全霊で挑戦を続けて参ります」と述べた。
内堀知事は「『現場主義』や『進取果敢』などを県政運営の基本とし、国や東京電力との交渉、国内外への正確な情報発信、これまでに無い大胆かつきめ細かい施策を進めて来た結果、避難指示区域の縮小や福島イノベーションコースト構想が具体的に動き出すなど、県内各地で希望の光が灯り、故郷福島の復興が着実に進んでいると実感出来る場面が増えて参りました」と自らの成果を強調。
一方で、「避難地域の再生、廃炉・汚染水対策、根強い風評と急速に進む風化。さらには急激な人口減少など〝陰〟の部分がより鮮明になってきたのも事実であり、依然として課題が山積しております」とも。「福島復興と地方創生。この福島県知事に課せられた使命は非常に困難を伴う長い闘いであり、いまだ途上にあります。これからも、福島を築き上げた先人たちのように新しい時代を切り開くため、郷土への誇りと不屈の精神をもって一つ一つ課題を解決し、成果を積み重ねていくと共に、必ず福島を〝被災の地〟から〝復興の地〟へ変えるという強い想いを若い世代にしっかりつないでいかなければなりません」と二期目への意欲を示した。県議からは「よし」、「がんばれ」などの〝激励〟が飛んだ。



(上)県政記者クラブからの要請で急きょ、県議会閉会後に記者会見を開いた福島県の内堀雅雄知事。10月の県知事選では①福島の復興再生と根強い風評対策②人口減少対策を軸とした地方創生─の2点を重要課題として掲げるという
(中)議場で〝出馬表明〟する内堀知事。自民党系の県議は大きくうなずき、「がんばれ」との声も飛んだ
(下)2020年の東京五輪で野球・ソフトボールの一部試合が福島県営あづま球場(福島市)で開催される事が決まり、祝賀セレモニーで笑顔を見せる内堀知事。この日の県議会でも「東京五輪を通じて、福島の復興が進んでいる姿を国内外に広く発信したい」と述べた
【「東京五輪で福島の復興を発信」】
提出議案の説明でも、内堀知事は〝復興〟〝風評対策〟の成果と今後の意欲を強調した。
「(避難指示が解除された区域で)小中学校が再開し、子どもたちの元気な笑い声が地元に戻り、大熊町では準備宿泊が始まった。〝復興〟は着実に進み、新しいステージへ移行している」
「福島復興のシンボルであるJヴィレッジ(7月28日一部再開、2019年4月全面再開)の復興・再整備にしっかりと取り組む」
「福島県内の面的除染は、帰還困難区域を除き今年3月に全て終了した」
「福島第二原発の廃炉については今月14日、東電社長から直接私に対し、全号機を廃炉にする方向で具体的に検討を進めるとの方針が表明された。廃炉・汚染水対策についても、国と東電の取り組みをしっかりと監視していく」
「ラグビーW杯2019日本大会に出場するアルゼンチン代表チームの公認キャンプ地に内定した事は、復興が進む福島への理解が深まった結果だ」
「外国人旅行者の延べ宿泊者数が昨年、初めて震災前年を超えた」
「東京五輪の福島での聖火リレーが3日間に決まった。東京五輪を通じて、福島の復興が進んでいる姿を国内外に広く発信出来るよう取り組む」
閉会後、県政記者クラブの要請に応じる形で開かれた約9分間の記者会見でも、内堀知事は10月の県知事選で①福島の復興再生と根強い風評対策②人口減少対策を軸とした地方創生─の2点を重要課題として掲げると語った。
不幸にして起きてしまった原発事故から87カ月。汚染や被曝リスクを不安視して福島県を訪れないのは〝風評被害〟。福島県産の野菜や果物、水産物を食べないのも〝風評被害〟。復興が着実に進んでいる「のに」、現状への理解が不足している事になってしまう。10月の県知事選で再選を果たした内堀知事は、2020年の東京五輪で「原発事故から再起した福島の姿」を世界にアピールし、〝誤解〟を解きたい考えだ。
今月10日に福島県南相馬市で開かれた全国植樹祭では、天皇皇后を乗せた車両が国道6号を北上した。福島県内で3日間実施される東京五輪の聖火リレーでは、その国道6号を高校生に走らせたい意向を持つ団体もある。内堀県政に「汚染」や「被曝リスク」の文字は無い。



(上)(中)〝復興〟への成果を強調する内堀知事だが、一方で政府の避難指示が出されなかった地域からの〝自主避難者〟には非常に冷淡な態度を取り続けた。〝自主避難者〟が何度直訴しても直接声を聴こうとはせず、廊下の奥の知事室にこもったまま。2017年3月末であっさり住宅の無償提供を打ち切った。内堀知事にとってもはや「避難者」とは「避難指示区域からの避難者」に限定されている
(下)2014年10月26日に投開票された前回知事選の選挙公報。49万384票を獲得し、2位の熊坂義裕候補(12万9455票)に大差をつける圧勝だった。投票率は45・85%。〝敵なし〟の今回はさらなる低下が予想される
【語られぬ〝自主避難者〟施策】
会見で「政党からの推薦は念頭に無い。復興再生や地方創生に政党の垣根は無く、『福島県民党』という枠組みで進めていただきたい。だが応援したい、支援したいという話があれば、喜んでお受けしたい」と語った内堀知事。ここまで強気に出られるのも、県議会は共産党を除いてほぼオール与党である事。ここに来て福島県内の首長や財界から再出馬を強く要請されている事が背景にある。
吉野正芳復興大臣に至っては、今年1月に福島県庁を訪れた際「内堀知事は『余人をもって代え難し』。次の選挙に出馬していただいて、われわれも一生懸命応援する」などと堂々と〝越権発言〟する始末。安倍政権からのお墨付きも得られた「内堀一強」はさらに、経済的な〝復興〟を柱に県政を担って行く。
日本共産党福島県議団は独自候補の擁立を模索する構え。〝出馬表明〟を聴いた神山悦子県議は「ハード事業や〝復興イベント〟ばかり。本当に意味で県民に寄り添っていない。向いている方向が違うのではないか。被災者を含む福祉型県政というのは、内堀知事に言わせると〝陰〟の部分になってしまうのだろう。もちろん復興への取り組みは大事だが、車の両輪で無ければいけない」と批判した。
宮本しづえ県議も「内堀知事の言う『避難者』には〝自主避難者〟は全く含まれていない。今後〝自主避難者〟にどうしていくのか、出馬表明では全く触れられていなかった」と語る。内堀知事は〝復興〟に貢献する個人や団体とは喜んで時間を割き面会するが、〝自主避難者〟などとは頑なに会おうとしない。〝復興〟には何らプラスにならないと考えている証だ。宮本県議は25日に予定されている代表質問の中で、原子力規制委員会が計画しているモニタリングポスト(リアルタイム線量測定システム)の撤去(避難指示区域外のみ)も含め、内堀知事の姿勢を質す方針。
早くも「信任投票」の様相を呈している福島県知事選挙。原発事故後2回目の知事選挙は〝復興〟〝風評払拭〟の大合唱の中、大事な「汚染」や「被曝リスク」は〝陰〟の部分にますます押し込まれて終わる事になりそうだ。
(了)
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